最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 精神世界から目を覚ましたら桜の花は、自身の中にある繋がりから、藍色と少女の繫がりがしっかりとできたかを確認し、次の行動に移る。
 彼女がイタリアに帰る父親に預けたのは、一つのペンダントだった。


桜の先手

 意識の浮上と同時に目を覚ます。締め切ったカーテンの外側の明るさが、明確に朝であることを告げる中、少しだけわたしは目を閉じた。

 そのまま骸とわたしの間にある繋がりから、彼と凪の繋がりがちゃんとできていることを把握して、わたしはベッドから起き上がった。

 

「さてと……じゃあ、次の行動に移しますか。」

 

 父さんがいるからと言う理由から、一緒に寝ることができなかったリボーンの代わりに、わたしの隣で寝ているランボ。

 彼を起こさないように部屋の床に足をつけると、枕元で眠っていた桜月が目を覚まし、わたしの肩に飛び乗ってきた。

 

「おはようございます、ナツキ様。本日もいい天気のようですね。」

 

「うん。おはよう桜月。よく眠れたかな?」

 

「はい。ナツキ様がご配慮くださっているので、本日もぐっすり快眠です。」

 

 音符が付きそうな雰囲気で、わたしの問いかけに答えた桜月に小さく笑いながら、寝起きでも触り心地のいい毛並みを優しく撫でる。

 桜月は気持ち良さそうに目を細めながら、ふわふわの尻尾を揺らしていた。

 

「……さて、桜月。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど。」

 

「?お願いしたいこと……にございますか?」

 

「うん。ねぇ、桜月。神谷さんとメテオライトさん……明確な繋がりがあるよね。」

 

「!」

 

 そんな彼女に、確信を込めた声音で、神谷さんとメテオライトさんの繋がりに関してを口にすると、彼女は驚いたように目を見開く。

 しかし、わたしの目を見て何かを確信したのか、次第にその口元には不敵な笑みが浮かび上がった。

 

「んふふ。やはりわかってしまいましたか。

 “ボンゴレの血”(ブラッド・オブ・ボンゴレ)による超直感の話は度々聞いておりましたが、これ程までとは。」

 

「わたしの場合は多分特例だよ。不思議とわたしは、自身の体に流れている血の声が聞こえるみたいだから。」

 

「血の声が……?ふむ……初代の皆様がナツキ様に憑いて回っているからでしょうか……?

 まぁ、いいでしょう。その力はナツキ様が恵まれた強力な力ですので、大事にしてくださいまし。」

 

 少しだけ不思議そうな様子を見せながらも、その力は大事にするようにと言ってくる桜月に頷き返したあと本題へと話を戻す。

 

「もし、可能だったら灯火石を骸に渡してほしいんだ。できれば、今日イタリアに戻る父さんに託して骸に手渡る方がいいんだけど、難しかったら急がなくてもいい。

 ただ、今月の半ばになるまでには骸に渡るようにしてほしくてね。」

 

「灯火石を……ですか?少々お待ちください。ユキヤ様に確認を取ってみます。携帯電話をお借りしても?」

 

 携帯を貸してほしいと言ってくる桜月に、わたしは直ぐに自分の携帯電話を差し出す。

 携帯電話を受け取った桜月は、その場で鳥の姿へと自身を変えて、今日に足で操作する。

 

「……ユキヤ様。早朝に御連絡してしまい申し訳ありません。ナツキ様からの依頼で、少々伺いたいことが………え?彼女が何を言おうとしているかはわかってる?

 灯火石ならばすでに用意していると……?相変わらずと申しますか……流石と申しますか……仕事が早いですねぇ、ユキヤ様は。

 では、イタリアにお戻りになるイエミツ様に、それを手渡し、ムクロ様の手元に渡るように手配をしてくださいますか?

 どうやらナツキ様は、それを使って骸様と何やら企てているようなので。」

 

 神谷さんと繋がったらしい電話で、桜月はわたしのお願いをサクサク教える。

 そして、一言二言最後に話したのち、彼女は携帯電話を閉じた。

 

「ありがとうございます。どうやら、ユキヤ様はナツキ様の企てに気づいていたらしく、手配はスムーズに終わりました。」

 

「そのようだね。これで、わたしの作戦を一つ進めることができた。」

 

 9代目の手紙を見た時に聞こえたプリーモとしてのジョットの声。

 何もしていなかったら間違いなく9代目は危険な目に遭っていたため、少しでも予防線を張ることができてひとまず安堵する。

 小さく息を吐いていると、わたしの体を巡るプリーモの血が、わずかな温もりを帯び、頭を撫でられるような感覚を覚える。

 同時に聞こえてきた彼の声は、父さんに作成を伝えればことは全て上手く行くと言っていた。

 

「さて……次は凪をどうやって迎えに行くかだけど……」

 

「おや……あのお嬢さんと出くわしていたのですか?」

 

「え?確かに会ったけど……」

 

 9代目のことが終われば、次は凪のこと……。彼女を引き取るためには、どのような手を使うべきか考えていると、桜月が凪と会ったのかと聞いてきた。

 直ぐに凪に会ったことを伝え、知ってるのかと問いかければ、桜月は直ぐに頷いた。

 

「ナギ様は必ずムクロ様に関わりのある存在として現れるお嬢さんです。これまで観測してきたどの世界の記録でも、彼女を通じてムクロ様がナツキ様に力を貸す流れができていましたね。」

 

「骸が力を貸す際に、必ず関係してくる女の子……」

 

「はい。ちなみに、ムクロ様とナツキ様は敵対者でありながらも目的が重なれば協力すると言う世界線がほとんどでして、此度のように、明確な味方としてムクロ様がナツキ様のお側にいることを選ぶ世界線はごく僅かだったりします。

 いわゆるレアケースと言ったところですね。ついでに言うと、ムクロ様がナツキ様の絶対的な味方になる世界線は、必ずムクロ様がナツキ様に恋慕を抱く世界線なので、度々ナツキ様がお受けになるムクロ様からの猛アタックは確定事項だったりします。」

 

「……その話は別に要らなかったかな。」

 

 何やら楽しげな様子で骸の色恋を語る桜月に、わたしは思わず苦笑いをこぼしてしまう。

 て言うか、骸が完全な味方になるルートってレアケースだったんだ……。

 

「まぁ、他の世界線の話は詳しく話し過ぎるとめんどくさいことにしかならないので、これまでにしておくとして……ナツキ様はナギ様を沢田家に引き取るつもりでいる……と考えたらよろしいでしょうか?」

 

 いろいろとツッコミどころ満載ではあるが、桜月の質問に対して直ぐに肯定するように頷く。

 わたしが頷いたことを確認した桜月は、なるほどなるほど……と小さく呟きながらも、口元にニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

「ユキヤ様とメテオライト様は、ナツキ様とナツキ様に関わる者達全ての幸福を願っておいでです。

 ええ。それはわたくしも変わりなく。ですので、ナギ様を引き取るまでの準備に関しては、このわたくし、サツキにお任せくださいまし。

 本来ならば子供を守らなくてはならない親と言う立場を持ちながら、我が子を蔑ろにするようなあの方々には、きっちり反省を促しつつ、ナギ様をナツキ様が引き取れるようにするための小細工をしておきますので。」

 

 んふふふふふふ……などと悪巧みをしている顔を見せる桜月に、思わずドン引きしてしまう。

 いや、まぁ、凪の親に反省してもらいたい気持ちはものすごくあるわけだけど、なんか、その……ちょっと怖い………。

 

「えっと……ほ、程々にね?一応、わたしはボンゴレの後継者だから、あまり目立つような行動を大々的に行った場合、何を言われるかわからないから。」

 

「ご安心くださいまし。ナツキ様とボンゴレの不利益になるようなことは致しません。

 ただ、ちょ〜〜〜〜〜〜っとナギ様の元家族の皆様に反省を促すだけですので。」

 

 不敵に笑いながら、わたしの自室から意気揚々と立ち去って行く桜月を見送りながら、わたしは無言になる。

 一応は凪の親だった2人……痛い目に遭わないといいんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから少しだけ時は過ぎ、わたしは空港へと母さんと一緒に足を運んでいた。

 今日は父さんがイタリアへと帰る日。2泊3日の休暇を終えた父さんは、すごく名残惜しげな様子で空港のエントランスに立っている。

 

「もうイタリアに帰っちゃうのね。また寂しくなるわ……」

 

「オレもだ奈々。だが、こっちもやっぱ何日も仕事をしないわけにもいかないからな……めちゃくちゃ名残惜しいが、どうしても戻らねーといけねーわけで……」

 

「次はいつ日本に帰ってくるの?」

 

「ん〜……いつ帰るかは断言できないな。直ぐ帰ってくるかもしれないし、またしばらく帰ってこないかもしれない……それがオレの仕事だからなぁ……」

 

 母さんの質問に、苦笑いをこぼしながら答える父さんに、まぁ、立場的にそんな反応になるよなと考える。

 ……一度だけ、わたしは9代目に父さんの立場を聞いたことがあった。『門外顧問C.E.D.E.F.』……これは、ボンゴレが創設された時から存在している組織であり、初代のボンゴレが権力を分散させるために作られた組織であると。

 

 『門外顧問C.E.D.E.F.』は、ボンゴレファミリーに属してはいるものの、普段はボンゴレとは無関係な諜報機関となっている。

 父さんはそこのトップを担っている存在で、ボンゴレファミリーが正常に機能している間は、ボンゴレファミリーとは関係ない人間として動いており、ボンゴレファミリーがなんらかの原因により異常を引き起こしてしまった際、ボンゴレファミリーのボスとほぼ同じ権力を振りかざすことができるらしい。

 その上、ボンゴレファミリーの次期ボス候補を指名することもできる力を持っており、実質No.2の立場にあるのだとか。

 そのため父さんは、9代目と同じくらい危険と隣り合わせな状態になっているため、仕事に関する行動や言動は、かなり慎重に行わなくてはならない。

 

 まぁ、だからと言って一度も連絡しないと言うのはいささかどうかとも思うが……と言うのが9代目の意見だった。

 特に、父さんの場合は家族が父さん以外全て女性……。女性や母親を大切にするイタリアの人間からすると、何年も放ったらかしと言うのは少しだけ見ていられなかったと手紙に記されていた記憶がある。

 

「まぁ、せめて連絡はちゃんとしてよ。残されてる側からしたら、音信不通ってかなり堪えるから。」

 

 そんなことを思いながら、わたしは連絡だけはたまにしてほしいと父さんに伝える。

 母さんもわたしの言葉に同意のようで、何度も首を縦に振った。

 

「ああ。それはちゃんと約束する。最愛の妻と愛娘に、何度も泣きながら殴られるのは、父さんも大ダメージ受けちまうしな……。」

 

 わたしと母さんの反応を見て、父さんは苦笑いをこぼしながらちゃんと連絡をすると約束してくれた。

 そのことに安堵の息を吐く。もし連絡してこなかったら鬼電してやる。

 

「あ、いたいたー!沢田さーん!頼まれたもの、お届けに参りましたよー!」

 

「あ、神谷さん。」

 

「え!?男!?」

 

 不意に、飛行機を使う客でごった返す空港に、1人の男性の声が響き渡る。

 その声が神谷さんのものであると直ぐに把握することができたわたしは、声の方へと視線を向けて、声の持ち主の名前を呼んだ。

 銀色の髪を靡かせながら、笑顔を見せている神谷さんに、父さんは過剰に反応している。

 

「いやぁ、すみません!サービスとしてちょっとした細工を施していたら、こんな時間になっちゃいました!まだ空港にいたようで安心しましたよー!」

 

 そんな父さんのことなど気にすることなく、神谷さんは遅れた理由を口にしながらもわたしの隣に並ぶ。

 すると、彼の肩を父さんは勢いよく掴んだ。

 

「おま!!ウチの娘とどんな関係だこのヤロー!!」

 

「ちょ、父さん!?何やってんのおバカ!!」

 

「あだ!?」

 

 怒鳴りつける父さんを怒鳴りつけながら、わたしはその頭を平手ではたく。

 べシンッと言う良い音が響き、父さんは痛みに表情を歪めた。

 

「あははは!まぁ、大事な娘さんが見知らぬ男と仲睦まじくしていたら、父親は怒っちゃいますよね!

 ですが安心してください!自分はあなたの娘さんである沢田奈月さんとも、奥様である沢田奈々さんとも変な関係ではありませんから。」

 

 父さんに肩を掴まれ、怒鳴りつけられた神谷さんは、いつもの調子を崩すことなく父さんの質問に答える。

 

「初めまして。自分は神谷幸弥と申します。リボーン君から話は伝え聞いているのでは?あの時の情報提供者として……ね。」

 

「!!」

 

「?」

 

 神谷さんの言葉に、母さんは疑問符を頭上に浮かべ、父さんは驚いたように目を見開く。

 神谷さんが言った、情報提供者と言う言葉に心当たりがあるようだ。

 もちろん、わたしも心当たりがあった。家出騒動を引き起こした時、リボーンが神谷さんから話を聞いてから動いたと言っていたから。

 

「普段はレフティフ・セレニティーと言う宝石会社の社長兼、水月輝石商店と言う天然石商品を扱う商店のオーナーをしておりまして、奈月さんには、よく天然石商売の方でご贔屓にしていただいてるんですよ!

 いわゆる、店長とお得意様と言った関係性ですね。ただ、こう見えて情報等もそれなりに扱う人間でして……」

 

 そこまで聞いた父さんは、彼がどのような存在であるかを把握することができたのか、納得したように頷いた。

 母さんがいる手前、あまり深くそう言った商売の話をされたくないのだろう。

 

「レフティフ・セレニティー……って、もしかして宝石のように煌びやかなホテルとリゾートをコンセプトにしているあの……!?」

 

「おや、そちらの事業もご存知でしたか!はい!レフティフ・セレニティー総監修のスパつきリゾートホテル、セレニス・ラグナシオンも経営しておりますよー!

 『お客様に最高の癒しと宝石のような輝きのひとときを』、をコンセプトに、一般の方でも満喫していただけるようなサービスを一泊5万5000円から提供しておりますので、旅行や癒しをお求めの際はどうぞご利用くださいませ!」

 

「……神谷さん。初めて聞いたんですがその話。あのスパつきリゾートホテルを経営してるのあなただったんですか?」

 

「そうですよー!宝石商と天然石のお店だけでは会社を維持できないので、ここは思い切って大規模な商いもしてみようかと思いまして、20年程前から着手しておりました!

 お客様には当ホテルのサービスはかなりご好評でして、現在も売り上げは鰻登りです!

 他にも宝石のような輝かしさを、と言うコンセプトにした複数の事業を行っておりますので、よかったら探してみてくださいね。」

 

 どことなく某携帯獣の過去をモチーフにした物語に出てきた神話大好き商人お兄さんのような雰囲気で、自身が経営している施設をアピールしている神谷さんに、わたしは無言で何度か瞬きを繰り返す。

 ……20年前から着手してるってどう言うこと?お父様の代からやってるってことかな?

 

「と、まぁ、自分の事業の話はここまでにしておいて……どうぞ、奈月さん!頼まれた物、しっかりとお作りしましたよー!」

 

「ありがとうございます、神谷さん。」

 

 神谷さんが持ってきたものを受け取り、中に入っているものを確認する。

 そして、小さくそれに頷いたあと、わたしは父さんへとそれを渡した。

 

「イタリアに帰ったら、空港で待ってる人がいる。その人にこのペンダントを見せて話を聞いて。

 わたしの体に流れてる彼の血が教えてくれた。これであの人を守ることができる。」

 

「?…………!?」

 

 わたしが手にしていた箱の中身を見て、父さんは驚いたように目を見開く。

 それもそうだろう。今、父さんに渡したのは、神谷さんが灯火石と称している、死ぬ気の炎を灯すことができる石によりできたペンダントなのだから。

 

「あら、綺麗なペンダント。」

 

「うん。こう言ったアクセサリーを売ってるお店なんだよ。水月輝石商店って。

 でも、開店してる時はいつも気まぐれでね。そこにあるはずなのに触れることができない鏡花水月にちなんだ名前なんだって。」

 

「本業の方が忙しいものでして、輝石商店の方は開店日を不定期にしているんです!ですが、奈月さんはよくお店をご利用してくださるので、彼女には開店日のご連絡を度々しているんですよー!

 ついでに常連さんですので、海外に出張している時に奈月さんが気に入りそうなチャームを見つけたら仕入れていたりもしております。」

 

「わたしが誕生日の時なんか、沢山のアクセサリー作りに役立つチャームと天然石を誕生日プレゼントだって無料でくれてね。

 だから、わたしもよく神谷さんにはお世話になってるんだ。」

 

「まぁ……!いつも娘がお世話になって……」

 

「いえいえ!自分も奈月さんにはよく投資していただいているのでそれのお礼ですよ!

 それに、奈月さんはアクセサリーを作るのが得意なので、お仕事ができる年齢になった時などに我が社で正規社員として入社してくだされば……と言う下心ありきの先行投資でもあります!」

 

「神谷さん?なんかまた初めて聞く話出てますけど?」

 

「言ってませんからね!」

 

「笑顔が爽やか過ぎる……!!」

 

 わちゃわちゃと神谷さんと言葉を交わしながら父さんへと目を向ける。

 父さんは、手元にあるペンダントを見つめながら、困惑の表情を浮かべていた。

 ……ジョットさん達もかなり困惑していたし、やはりこの石が流通していることはおかしな状況のようだ。

 

「その石は流通することがないので、度々自分が採掘しております。渡しているのも奈月さんだけですので、不安がる必要はありませんよー。」

 

「!?」

 

「フフフ!なぜわかったんだって顔ですねぇ。ええ、わかりますとも!こう見えて僕は、なんでもお見通しなものでして。

 世界の情勢や人の感情、過去も未来も現在も、僕は観測できるんですよ。」

 

 神谷さんの言葉に父さんは無言になる。目の前にいる男は何者なのか……その答えを見つけ出すために。

 

「……父さん。そろそろイタリアに行くための飛行機の搭乗時間だよ。」

 

 そんな中、ふと視界に映った時計に目を向け、そろそろここを離れないといけないことを父さんに告げる。

 わたしの言葉を聞いた父さんは、直ぐに時計に視線を向け、やばいと言うように表情を歪めた。

 

「い゛!?マジかよ!?」

 

 時計が指し示す時間に、父さんは慌ててわたし達に背を向けた。

 

「お前が何モンか知らねーけど、オレの娘と妻にちょっかい出すんじゃねーぞ!?」

 

「ご安心ください!魅力的なお嬢さんと奥様ではありますが、手を出すような無粋な真似は致しませんので!

 ではでは、安心安全なおよそ13時間の空の旅に行ってらっしゃいませ!」

 

「お前にそんなこと言われる筋合いはねーよ!!じゃあな、奈々!ナツ!イタリアにいても父さんは2人をしっかり想ってるからな!愛してるぞ!」

 

「Oh……」

 

「まぁ……!!」

 

 ドタバタと走り去って行く父さんに、わたしは呆れ、母さんは顔を赤らめる。

 人が大量にいる公の場で、すごい爆弾発言を投下してったな、あの人。声がでかいから周りにも丸聞こえだし。

 

「もう……お父さんったら……!!」

 

「嵐みたいな人だな、相変わらず……」

 

 あらあらまぁまぁ、な表情を見せる周りの視線を浴びながらも、わたし達は踵を返す。

 

「……あのペンダント……かなり独特な細工がされてましたが、何を仕掛けたんですか?」

 

「おや、バレましたか。」

 

 未だに顔を赤ながらも、るんるん気分で先を行く母さんの背中を見つめながらも、わたしは神谷さんに話しかける。

 わたしの問いかけを聞いた神谷さんは、バレてしまったと笑いながらも、静かに口を開いた。

 

「月は呪いを弱めることができますが、逆に増幅させることも可能です。なので、今回のペンダントには増幅させるための刻みを行ったんですよ。

 いわゆる燃料の自動装填機能と言うものです。一度灯された炎は夜の間に増幅され、日中にまた弱くなって行く……そのループと言ったところですね。

 とは言え、増幅できる回数は限られており、保って1ヶ月半くらいですけどね。」

 

「それだけでも十分ですよ。こっちの企ての間は持ちそうです。」

 

 神谷さんと話しながら、わたしは携帯電話を開き、よく使う連絡先に登録している一つの名前を画面に出す。

 そこに記されているのは、『ティモッティオ』の文字。現ボンゴレファミリーのボスである彼が、念の為にと用意してきた携帯電話の連絡先だ。

 これから先のことを考えて、互いに秘密裏に動く際に持ち合わせていた方がいいと言う理由から、この携帯電話には9代目と9代目が信頼をおく一部の人間の連絡先のみしか入っておらず、この存在を知っているのは、この連絡先に登録されている人間と、わたしのみである。

 

 ──────────

 from:ティモッティオ

 ────────────────

 題名:突然のメッセージ、失礼します

 ────────────────────

 夜中であるにも関わらず、メッセージを送っ

 てしまい、申し訳ありません。

 本日、父がイタリアに戻るための飛行機に搭

 乗したことの報告および、少しばかりの協力

 要請のために連絡いたしました。

 どう言うわけか、私はこの身に流れるプリー

 モの血の声が聞こえるようになっています。

 それにより血が教えてくれた話があり、その

 ことに関してお伝えします。

 現在、あなたの身に危険が降り掛かろうとし

 ているようです。

 間違いなくあなたが言っていた怪しい動きを

 している人間が関係しています。

 そこで、あなたの安全を考慮して、一つの提

 案をご用意致しました。

 起床をされた際にでもご連絡ください。

 その提案についてお伝えします。

 

 ────────────────────

 

 9代目へと送るメールを打ち込み、送信する。

 10代目を正式に継いでいない人間からこのようなメールを送られて、困惑される可能性は十分あるが、何もしないで状況を静観することなどわたしにはできない。

 

「……心配しなくてもいいよ、桜奈ちゃん。」

 

「!?」

 

 じっと携帯を見つめながらそんなことを考えていると、不意に神谷さんから話しかけられる。

 驚いて神谷さんに視線を向ければ、彼は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「君の一手は正解だ。静観していたら間違いなく君は、予感している気配に最悪なワナに陥れられ、9代目もタダでは済まなかった。

 だから、安心していいよ。君の手段は間違いじゃない。君が取った行動は、これまでの世界のどこよりも最前で成功を手にする鍵だ。」

 

「…………。」

 

 一瞬だけ重なった神谷さんとメテオライトさんの影に、わたしは何度か瞬きをする。

 しかし、不思議な重なり方は直ぐに無くなり、今はもう神谷さん本人に戻っていた。

 

「さて、自分もお暇しましょうかね。昼から取引先様との会食があるので。

 まぁ、それまでは暇で仕方なかったので、良い時間潰しになりました!ではでは!良き休日を!」

 

 わたしと母さんにそう言って、神谷さんは空港から立ち去って行く。

 その背中を見送っていると、母さんが隣に並んできた。

 

「なっちゃん、いつのまにかすごい人と知り合っていたのね。お母さん、びっくりしちゃった。」

 

「わたしも知らなかったよ。なんでお金持ちと知り合いになってたのわたし……。」

 

 母さんの言葉に、よくよく考えれば確かにとんでもない立場の人間と知り合っていたと遠い目をしながらも、神谷さんが立ち去っていった方角を見つめる。

 一瞬だけ神谷さんから感じ取れた、メテオライトさんの気配は……いったい何だったんだろう……。

 

 

 

 

 




 沢田 奈月
 プリーモの血の声を聞くことができるようになり、着々と準備を重ねている10代目候補。
 神谷から一瞬だけ感じ取れたメテオライトの気配に首を傾げる。

 沢田 家光
 娘から手渡されたペンダントが明らかにボンゴレファミリーに伝わる証と同等の性質のものから作り上げられていることに気づき、かなり困惑していた門外顧問。
 イタリアに戻り、そこで再び驚くことになることをまだ知らない。

 神谷 幸弥
 時折月のアルコバレーノ、メテオライトの気配とよく似た気配を纏うことがある謎の青年。
 普段はレフティフ・セレニティーと言う宝石を扱う会社の社長を勤めており、多くの事業を展開している。

 桜月
 凪を引き取りたいと言う奈月のために行動を移す白狐。
 何やら企んでいる様子がある。

 沢田 奈々
 娘が知らないうちにいろんな人と知り合ってることにびっくりしている奈月の母親。
 娘と夫にしかわからない会話があるような気がして首を傾げる。

 9代目
 夜中に奈月から彼女と自身の守護者にしか繋がらない携帯にメッセージが届いていた現ボンゴレ。
 彼女のメッセージを見て、起床したあと直ぐに連絡を入れたのは言うまでもない。

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