最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
群れを嫌う風紀委員の少年と顔を合わせた桜の花は、自身の立場を明かすのだった。
ディーノさんと共に移動して、たどり着いた並盛中学校の応接室。
存在感を放つそこのドアをノックすれば、中から入室許可が下ろされた。
「失礼します。遅れてすみません、恭弥さん。」
「………随分と人が多いみたいだけど、何かあったの?」
応接室に足を運ぶと、いつものように仕事用の机に着いていた恭弥さんから一つの疑問をぶつけられる。
その表情は少しだけ不機嫌さを見せており、何で群れできたんだと言う苛立ちを感じ取ることができた。
「……メールでお伝えしたように、今日は恭弥さんに話したいことがあって来ました。
ただ、この話はかなり複雑な話で、私自身、話すのも少々躊躇ってしまう内容だったので、説明中、至らないところがあった場合の補足をしてもらうため、数人一緒に連れて来ました。」
「…………そう言えば、大事な話があるって言ってたね。いいよ。今回は連れてはいっても。
ただし、人数はせめて2人まで。あまり近づいてほしくないから、付き添いは出入口の方に立っててもらえる?」
「……ディーノさん。ロマーリオさん。お願いできますか?」
「ああ。いいぜ、ナツ。」
「了解したぜ、姫さん。」
「ラウルさん達は部屋の外に。」
「了解、お嬢。じゃあ、オレ達は外に出ようか。」
恭弥さんからの指示を聞き、誰を部屋の中に残し、誰を部屋の外に出すかを瞬時に決めて指示を出す。
わたしの言葉を聞いたキャバッローネファミリーの人達は、直ぐにこちらの言葉に従い、それぞれ室内組と外組に分かれてくれた。
「話って何?」
「……わたしの立場……これから先の未来、わたしがどのような存在になるのかに関しての話です。」
恭弥さんの質問に答えるように、わたしは隼人達にもした自身の身の上話を口にする。
将来、自分はボンゴレファミリーと言うマフィアをボスとして引き継ぐことになること。
ボスになるにあたり、自身を支えてくれる人材を集めなくてはならないこと。
その人材の候補者の1人として恭弥さんの名前が挙がっていたこと……他にも、マフィアに関する話を行っていく。
話し出したわたしに耳を傾けてくれていた恭弥さんは、まさかそのような話をされることになるとは思わなかったのか、驚いたように目を丸くする。
しかし、わたしが真剣に話をしていることを感じてくれているのか、その表情は直ぐに真剣なものへと変わり、しっかりと話を聞いてくれた。
「1年程前からこの話は上がっており、私はこの話を引き受けていました。同時に、恭弥さん達にこの話は黙ったまま、ずっと一緒に過ごしていたんです。
すみませんでした。このような話をしてしまって。同時に一般人である恭弥さんを巻き込むようなことにしてしまって……。
……本当は、恭弥さん達に関わることなく私は離れるべきだったんです。でも、恭弥さん達と過ごし、仕事をこなして行く日々は楽しくて……私は、恭弥さん達から離れることができませんでした。」
“申し訳ありません”……と謝罪の言葉と共に頭を下げれば、恭弥さんが驚いたような気配を纏う。
顔は見えていないけど、きっと彼は目を見開いているのだろう。
「……私としては、自身の周りを固める人材のうちの1人は恭弥さんだと思っています。
ですが、先程も言ったように、私が継ぐ予定になっているのはマフィアのボスと言う立場であり、常に危険と死の両方が隣にあるような状態です。
私は、できることなら一般人と言う立場である恭弥さんを巻き込みたくはないと思っています。
必要な人材であるとわかっているのに、なんとも矛盾した言葉ですよね。」
そこまで口にしたわたしは、箱の中から指輪のカケラを一つ取り出し、恭弥さんの仕事机の上にそれを置く。
恭弥さんはとても不思議そうな表情を見せながら、机の上にに置かれた指輪のカケラに視線を落とした。
「本音を言うと、私は恭弥さんにこちら側の世界に足を踏み入れてほしくないと思っています。
こちらの世界は今の生活から一転し、いつ命を散らしてしまうかもわからない世界ですからね。
だから、私の個人の意見としては、恭弥さんには離れてほしい……私から離れると言う選択をしてほしいと思っています。」
わたしから離れて……その言葉を聞いた恭弥さんは、驚いたように目を丸くする。
しかし、直ぐにその表情には苛立ちが浮かび、離れろって何?と問いかけるような視線を向けられる。
その反応は、ハッキリ言って読めていた。わたしのことを愛してくれている恭弥さんだから、きっと苛立ってしまうだろうと。
だって彼は、わたしをオオカミのツガイの雌狼と例え、自身をオオカミのツガイの雄狼と称する程に、わたしが側にいることを許してくれているのだから。
だからこそ、わたしはこの言葉を紡ぐ。本当は、こんな言葉は口にしたくないのだけど。
「……ですが、もし、恭弥さんがそれでも構わない……それでも側にいたいと思うのであれば……わたしの側で、危険と隣合わせになる世界を歩いてくれますか……?」
「!?」
この人には突き放す言葉ではなく、一緒に歩いてくれるかと言う問いかけをしよう。
突き放す言葉ではなく、誘う言葉を紡いで送ろう。例えそれが、間違いだとしても。
「……まるでプロポーズだね。」
「……?…………っ!?」
プロポーズのようだと口にした恭弥さんに、一瞬だけ言葉を失う。
しかし、直ぐに自身が言った言葉の内容を思い出しては、顔に一気に熱が上がってくる感覚を覚える。
「いや、あの、確かに発言的にはそんな感じに聞こえそうなニュアンスだったかもしれませんけど、別に深い意味はなく!!」
慌ててこっちが深い意味はないと口にすると、恭弥さんはわたしの反応を面白がっているのかくつくつと喉を鳴らすように笑って見せる。
程なくして笑いが落ち着いた恭弥さんは、わたしが机の上に置いた指輪のカケラに手を伸ばした。
「危険と隣合わせになる世界……ね。マフィアなんてものが、直ぐ近くに……しかも、奈月がその頂点に立つことになってるとは思わなかったな。」
手に取った指輪を見つめながら、恭弥さんは小さく口元に笑みを浮かべる。
そして、静かにわたしの方に視線を向けては、しっかりと頷く。
「いいよ。奈月の側にいてあげる。頂点が奈月なら僕も文句はないし、何より僕は、奈月にだけは味方してあげるつもりだから。
それに、話からすると、君が行こうとしてる場所は危険が伴うことが確定してる場所……だったら僕は、余計に側にいるべきだろ?
だって君は僕のもので、僕は、僕のものを害されることを嫌ってる人間なんだから。」
「……私は恭弥さんのものじゃないですよ。」
「今は……をつけ忘れてるよ、奈月。そこそこ時間はかかりそうだけど、僕は君を誰かに譲るつもりはないから。
六道骸にも、赤ん坊にも、君の周りによく集まってる獄寺隼人や山本武にも。そして、そこにいるあなたにもね。」
そこにいるあなた……と言う言葉と共に、恭弥さんが視線を向けたのはディーノさんだった。
急に自身の方へと視線を向け、宣戦布告をして来た恭弥さんに、ディーノさんは一瞬驚いたような表情を見せたあと、この野郎とでも言いたげな表情を見せた。
「それで?これを持って僕は何をしたらいいの?」
そんなディーノさんのことを気にしていないのか、恭弥さんは手にした指輪のカケラに視線を落とし、自分は何をしたらいいのかと聞いてくる。
それを聞いたわたしは、これから先起こることを彼に伝えるために口を開く。
「まず、この指輪はハーフボンゴレリングと言って、私が継ぐことになってる組織の中核に位置する人間が持ち合わす証の片割れです。
本来なら、私が組織を引き継ぐ時、完成された物を組織を継承する際に手渡されるはずの物だったようで、カケラとなったものを手渡される予定はなかったらしいんです。」
話を聞こうとしてくれている恭弥さんに、わたしはまず、ボンゴレリングの話を伝える。
不完全な状態で手渡されてしまった組織の継承の証の片割れ……恭弥さんは、口を挟むことなく話を続けてくれと催促してくる。
「ところが、どう言うわけか、この指輪のもう一つの片割れが、私が継ぐ予定になってる組織の継承権を狙った者に奪われてしまったようで、残りの片割れであるこちらも、程なくして狙ってくるだろうと言う結論が出てしまいました。
だから、私はそれまでに、恭弥さんにはこれまで以上の力をつけてもらいたいと思っているんです。」
「……僕が弱いって言いたいの?」
これからの説明をしていると、少しだけ恭弥さんから苛立ちの感情を向けられる。
程なくして狙ってくる組織を相手にするまでに、力をつけてほしいと言う言葉は、彼の癇に障ったようだ。
「いいえ。恭弥さんは弱くないです。私の守護者として選ばれている人の中では、最も強い人に分類しますよ。
ただ、今回、片割れの指輪を奪ったのであろう組織の人と対峙し、刃を交えてみたところ、ハッキリと、これまで出会した人間以上の実力を持ち合わせていると感じてしまったんです。
もし、少しでも戦闘が長引いていたら、間違いなく私も無事ではなかった。」
「!?」
そんな恭弥さんに、わたしは決して恭弥さんが弱いと言っているわけではないと否定の声をかけ、今回、なんとか撤退させることができたスクアーロさんと戦った際に感じたことを口にする。
恭弥さんからしたら、わたしは誰よりも強い存在と言う認識だけど、そんなわたしですら長引いたら間違いなく無事では済まなかったと口にするレベルであると知り、驚いたように目を丸くした。
「性別が女性であると言う理由から、いずれ私は強化の限界に到達する可能性があります。
一応、まだまだ伸び代があるとわかっていますが、男性に比べたら、短い可能性も否めません。
だから、私は恭弥さんにもっと強くなってほしいんです。可能であれば、私の実力に完全に並ぶか上回ることができるくらいには。」
「…………。」
恭弥さんが無言になる。可能であればわたしを上回る力をつけてほしい……その言葉にしっかり耳を傾けるように。
「……自分の身は自分で守れる……それくらい言いたいところではありますが、どうしても不安は拭えないんです。
自身が伸び代の限界を迎えたらどうしようとか、限界を迎えた時、力をつけることができなくなったら、私はみんなを守れなくなるかもとか、とにかく、様々な不安が過ります。
大きな組織……しかも、危険と隣り合わせになる組織の頂点ともなると、余計に。」
自身の中に存在している不安……それを恭弥さんに明かしながら、わたしは静かに視線を彼に向ける。
わたしの視線に気づいた恭弥さんは、真っ直ぐとわたしを見つめ返した。
「だから、どうか、今よりもっと強くなって、私のことを守ってください。恭弥さんが強くなる程、私も安心することができますから。
ただ、無茶だけはしないようにしてください。私が無茶をした時の心境を、あなたはよく知ってるはずですから。」
苦笑いをこぼしながら、わたしは恭弥さんに強くなってほしいと口にする。
彼ならきっと、わたしのお願いを聞いてくれるはずだから。
「……仕方ないね。奈月ですら不安になる相手に、僕が完全に対処できるかと言われたらわからないし、そのお願いを聞いてあげる。」
そんなことを思っていると、恭弥さんはわたしのお願いを聞くと言ってくれた。
そのことに安心して笑顔を見せると、彼はわたしの頭を優しく撫でる。
「ディーノさん。恭弥さんの特訓、お願いしますね。」
「ああ、任せてくれ。」
「何?あなたが僕の相手をするの?」
「そうなるな。ナツがそうしてほしいって言ってるってことは、これが最善だって話だ。」
「ふぅん?」
わたしがディーノさんに恭弥さんを任せると言えば、恭弥さんはディーノさんを興味深そうに見つめる。
そう言えば、雪合戦の時にディーノさんに目をつけてたっけ、この人。
「ディーノさんはとても強い人ですから、恭弥さんが本気で挑んでも十分過ぎるくらいに楽しめると思います。
とにかく全力で戦いまくって、ディーノさんを咬み殺すつもりで行ってみてください。」
「ちょ!?ナツ!?なんかめちゃくちゃ物騒なこと言ってねーか!?」
「へぇ……。全力で行っていいんだ?それなら遠慮なくそうさせてもらうよ。」
「お前まで本気になるな!!」
笑顔で恭弥さんにディーノさんには全力で挑んでくれと伝えれば、彼はすごく楽しげな様子でディーノさんへと視線を向ける。
生贄とも言えそうな扱いをくらったディーノさんは、やる気スイッチが入った恭弥さんに慌てながらツッコミを入れる。
「ディーノさんと本気でやりあえるようになったら、もっと実力が高い人を紹介します。
まぁ、私が実力を評価しているこの人は、ずっと相手をしてくれるかは分からないけど、ボーナスステージくらいにはなるかなと思っているので楽しみにしていてください。」
今直ぐにやりたいオーラを見せる恭弥さんに、レベルが上がったあとはもっと実力が上になる人にたまにでいいから恭弥さんの相手をしてほしいことを伝えてくることを告げれば、彼はわたしに目を向けた後、静かに頷いた。
その姿を見たわたしは、恭弥さんに笑顔を返し、応接室の出入口へと足を運ぶ。
他にも指輪を渡さないといけない人がいるから、今は急がないといけないから。
「……恭弥さん。」
「何?」
「……どうか、わたしのことを、支えてくださいね。だって、わたしとあなたはオオカミのツガイなのでしょう?」
「……そうだよ。だから僕は君の側にいる。」
「それなら頑張ってくださいね。本当の意味で、わたしをツガイにしたいでしょう?
わたし、特別な関係になる殿方を選ぶとしたら、誰よりも強く、尚且つわたしの事情を知り、それを含めて支えてくれる人がいいですから。」
わたしの言葉に、恭弥さんは口元に笑みを浮かべてしっかりと頷く。
それを確認したわたしは、応接室をあとにして、次の守護者の元へと向かうために足を動かした。
「……オオカミのツガイ……ね。随分と重い恋慕を向けてるじゃねーか、恭弥。」
「重い?何を言ってるの?あの子は前から僕のものだよ。」
「悪いが、それはオレが見過ごせねーんだわ。ナツの隣は、誰にも譲るつもりねーんだよ。」
「それはこっちも同じだよ。奈月は誰にも渡さない。」
わたしが退室したあと、恭弥さんとディーノさんの2人が、自身を巡って争っているなど気づかずに。
沢田 奈月
雲雀のことを突き放すのではなく、危険も承知の上で側にいてくれるなら、自分が歩く道を共に歩いて欲しいと誘う言葉を口にしたボンゴレ10代目。
オオカミのツガイの話を出し、彼に支えて欲しいと告げたのはいいが、まさかそのあとディーノと雲雀の2人が1匹のメスを巡って本気で争う2匹のオスになってしまうことは考え付かなかった。
周りの恋慕を知っているはずなのに……。
雲雀 恭弥
奈月から強くなって自身を支えて欲しいと言って来たことを直ぐに承諾した風紀委員長。
オオカミのツガイの話を出し、本当にツガイにしたいと思っているなら今以上に強くなってと言われ、やる気スイッチがオンになった。
奈月は誰にも渡さない……!!
ディーノ
雲雀の家庭教師を任されたはいいが、まさか好いてる女が自身と対峙している男に本当にツガイにしたいのなら、もっと強くなって支えてほしいなどと言う羨ましい以外の何ものでもないエールをかますとは思わず大人気なく嫉妬した。
奈月は誰にも渡さねー……!!