最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
自身が助けた純粋無垢な少女と再会を果たすために。
並盛中学校を離れたわたしは、父さんから送られて来た居場所を目指して足を進める。
居場所を知らせるメールの中には、可愛い妹ができるぞと言う明るい内容が記されており、それを見たわたしは静かに笑う。
「……人気女優、再婚相手と児童虐待か……随分とまぁ、デカデカと記事になったもんだね。」
なんとなく買っておいた一つの女性誌。そこには1人の女性の顔が目隠しされた状態で記されており、様々なことが文章として連ねられていた。
「……虐待の証拠として提示されたものは音声データの他に仕事仲間やマネージャーからの証言、それと、再婚相手の証言か。
その後、女優はこんなことしてない、言ってないと否認して、娘にも同意を求めるが、娘からは全てやられたことだと言われ、カッとなった女優が警察がいるにも関わらず娘に暴行を加えてしまい、そのまま現行犯と。
他にも一連のやり取りが映像データとして残された上、その時の発言も録音されていた……これ、絶対桜月だよね?」
わたしの肩に乗り、リラックスしている様子の桜月に声をかけると、桜月はすぐにわたしの方へと目を向けて、口元に笑みを浮かべた。
「んふふ……ええ。その通りでございます。ちょ〜っとユキヤ様に協力を仰ぎ、徹底的に埃を叩き出しておきました。
ユキヤ様のコネを使い、凄腕の探偵を雇い調査してみれば大量に出て来ましたよ?女優のよ・ご・れ♡
汚いものはしっかりとお掃除しなくてはダメですからねぇ……徹底的に綺麗にしておきました。
いやはや、プライドが高い女優とワーカーホリックな男と言うのはなかなかに相性が悪いものですねぇ?
女優の不祥事の共犯になったら大きな取引に支障が出ると言う理由から洗いざらい何があったのか教えてくださったご様子で。
あ、ちなみにその再婚相手側にも嫌がらせは完了しておりますよ?
なんでもユキヤ様が再婚相手が取ってきた取引先にそこ以上にメリットをもたらす取引を持ちかけ、マイナスにしかならないそこを蹴飛ばしてもらったのだとか。」
“今頃会社でその責任を追求されてると思いますよ”、と笑って見せる桜月に、わたしは思わず遠い目をする。
サラッと他人の人生台無しにしてるんだけどこの子……。まぁ、凪にひどいこと言ってたみたいだし、別に構わないけどさ。
「それじゃあ、心置きなく凪を迎えに行けるかな。父さん自身も、あの子と養子縁組をしっかりと結んできたって言ってたし。」
そんなことを思いながら、わたしはメールに記されている住所を確認する。
……凪にも……マフィアのこと話さないとなぁ………。
❀
最終的に交通網を少し利用してたどり着いた住所の建物は、ボンゴレファミリーが保有している屋敷の一つだった。
どうやら、保護施設では流石にマフィア諸々の話を行うのはあれだからと言う理由で、こっちの方へと連れて来たようだ。
まぁ、一般人が多い施設で話すような内容ではないし……なんてことを考えながら、屋敷の方へと歩み寄れば、外にいたらしいバジルがわたしの姿に気づき、直ぐに走り寄ってきた。
「おひいさま!お待ちしておりました!!」
わたしが近寄った門の方まで走り寄って来たバジルが、目の前にある門を静かに開ける。
すかさず中へと足を踏み込めば、門はそのまま閉められて、門を閉めたバジルは、屋敷の方へとわたしを連れて行く。
「凪殿はすでに客室におります。」
「うん。ありがとう。」
先に屋敷の扉へ近づき、そのまま開けたバジルに短くお礼を言いながら、わたしは屋敷の中へと入る。
踏み入れた屋敷はとても広く、相変わらずの規模に少しだけ呆れた。
ボンゴレはいったいどこから資金を調達するのか……まぁ、今は触れないようにしよう。
「こちらの客室です。」
そんなことを思いながら、屋敷を少し案内された。たどり着いたのは一つの部屋。
その中からは、父さんの気配と、精神世界で出会した彼女の気配が感じ取れた。
「父さん。ついたよ。」
「おー。鍵は開いてるから入っていいぞー。」
中から聞こえて来た声に従い、部屋の中へと足を運ぶ。
そこにはスーツを着ている女性に寄り添われながら、マグカップに口をつけている凪の姿があった。
「凪。」
「!奈月様!」
わたしの声に気づいた凪が、マグカップを机に置いて、わたしの方へと走り寄る。
わたしの方からも凪に近寄れば、直ぐ側に来た凪が思い切り抱きついて来た。
すかさず受け取り抱きしめ返せば、凪はわたしにそっと擦り寄り、こちらの顔を見上げてくる。
その片目は眼帯に覆われており、かなり痛々しいと思ってしまったが、元気に走り寄って来た彼女に対して安堵の気持ちも溢れてくる。
「……ちゃんと、骸の幻術は機能しているみたいだね。」
「はい……。骸様のおかげで、走ることができるようになりました……。」
「それはよかった。彼にも今度、お礼を言わないとね。」
「はい……!」
にこにこと無邪気に笑う凪の頭を優しく撫でながら言葉を交わせば、彼女は再びわたしの体にぎゅっと抱きつく。
わたしの胸元に耳を当て、わたしの存在を確認するように。
「……本当に……奈月様に会えた……。」
「当然だよ。約束したんだから。」
「!」
無邪気な幼子のようにくっついてくる凪に、わたしは小さく笑いながら、そっと彼女を横抱きにする。
急に横抱きにされたからか、凪は驚いたような表情を見せたが、直ぐに顔を赤くして、そのまま軽く寄りかかって来る。
その姿に自身が人に甘えている時の姿を重ねてしまい、少しだけ苦笑いをしてしまったが、直ぐに頭を切り替えて、凪を抱えてソファーに移動した。
「……本当に、ナツと凪は知り合いだったんだな。」
わたしと凪の一連のやりとりを見ていた父さんが、驚いたような表情を見せる。
わたしと凪は直ぐに頷き、知り合いであったことを肯定した。
「私達はかなり特殊な体質でね。両方とも骸から洗脳や契約を施されることなく彼の精神を憑依させることができる器としての特性を持ち合わせてるんだよ。
共通しているのは、どちらも精神世界に入り込んだ骸の精神を認識することができて、言葉を交わすことができると言う特異性を持っていることでね。
まぁ、精神世界なんて本来は認識することができないし、寝物語としか思えないかもしれないけど、これは全部事実だよ。」
フィクションではないことを口にしながら、自身と凪の特性を教えれば、父さんとバジル、それと、凪に寄り添っていたスーツの女性が驚いたように目を丸くする。
そんな彼らの反応を見ながら、先程凪が机に置いていたマグカップを手に取り、隣に座らせた彼女に手渡せば、彼女はカップを受け取って、ちびちびと中身を飲み始めた。
「凪。お菓子食べる?ここに向かう時、コンビニでいくつか買ってきたんだけど。」
「何がありますか……?」
「んっと、チョコレートとクッキーとマシュマロとマカロン、あと麦チョコとかポテチなんかのスナック菓子。」
「麦チョコ……」
「……食べる?」
「はい……!」
買い物袋の中から麦チョコの袋を取り出して、凪にそっと手渡せば、凪は直ぐに袋を受け取り、こぼさないように袋を開けて、一粒一粒ちまちまと食べ始める。
この子、一気に複数の粒を手に取って食べないんだ……と少しだけ彼女の性格の片鱗に思いを馳せながら、わたしは買い物袋の中からマシュマロを取り出して口に放り込む。
すると、隣からこちらの手元を見る視線を感じ取り、思わず視線をそちらへ向ける。
隣に座っている凪は、どうやらわたしが食べてるチョコ入りのマシュマロが気になるようで、じ……と見つめて来ていた。
「ん。」
「!」
「食べたいんでしょ?いいよ。」
それならとわたしはマシュマロを一つ取り出し、凪の口元に持って行く。凪は一瞬驚いたような表情を見せるが、直ぐに小さく口を開けて、もふもふふにふにのマシュマロを口に入れた。
「ど?」
「美味しい……!」
「それはよかった。」
「えっと……奈月様……」
「ん?」
「これ……」
「麦チョコわけてくれるんだ?」
「はい……!」
「ありがとう、凪。」
わたしの真似をするように、いくつか摘んだ麦チョコを、わたしの口元に運んできた凪に応えるように口を開ければ、ころころと口内に麦チョコが転がり込んでくる。
しばらくサクサクの麦チョコを咀嚼して飲み込めば、凪が首を傾げる。
「ん。麦チョコも美味しいね。」
その反応の意味を直ぐに把握したわたしは、美味しいね、と凪に優しく声をかける。
それが嬉しかったのか、凪は笑顔で頷いた。
「仲良いな……」
「そうですね。おひいさまと凪殿の仲睦まじい姿はなんだかほっこりしてしまいます。」
「よかったですね、親方様。愛らしい娘さんが増えましたよ。」
「ああ。ここに奈々も加わったらますます最強の癒し空間になりそうだ。」
互いに食べていたお菓子をシェアしながら過ごしていると、父さん達がどこか穏やかな表情で言葉を交わす。
そんな中、わたしは凪の側にいたスーツの女性へと視線を向ける。
「……ところで父さん。私、そこの女の人とは初めましてだと思うんだけど……。」
気配からも全く知らない人だな……と思いながら口を開くと、スーツの女性はハッとしたような表情を見せる。
しかし、直ぐにわたしの方に近寄っては、その場で頭を下げた。
「申し遅れました、奈月様。私はオレガノ。親方様……奈月様のお父上である家光様の部下を務めさせてもらっているものです。」
「オレガノは表向きは父さんの秘書ってことになっているが、歴とした父さんの優秀な部下の1人だ。
女な事情とかは、父さん、さっぱりだから、一緒に来てもらったんだ。」
「そうだったんだ。初めまして、オレガノさん。知っていると思いますが、私は沢田奈月です。よろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします、奈月様。」
丁寧に挨拶をしてくれたオレガノさんに、自分も挨拶を返せば、彼女は笑顔を見せて言葉を返してくれた。
小さく笑い返したわたしは、隣に座る凪に目を向ける。凪はわたしの視線に気づくなり、こてんと首を傾げた。
「……凪。前に話した、危険に足を踏み入れることになる理由なんだけど……聞いてくれる?」
「!はい……。大丈夫です。骸様からも、話は一応聞いてますけど……奈月様からちゃんと話を聞きなさいって言われました……。」
「ありがとう。……本当は、一般人の凪を巻き込んだらいけないってわかっているんだけど………。」
わたしは凪に静かに教える。わたしが将来、どのような道に足を踏み入れることになるのかを。その道を歩くために、今は何をしているのかを。
マフィアなんて言葉が出た時、凪は少しだけ驚いたような表情を見せたが、すぐに真剣にわたしの話を聞き、小さく相槌を打ち続けた。
「……これが、今のわたしの状況。そして、必要な人材と言うメンバーの中に、私達がよく知ってる骸の名前が挙がっていた。
骸の名前が挙がっている……と言うことは、必然的に凪にも協力を仰がなくてはならない状況でね……。
ごめん……。折角自由に動けるようになったのに、こんな道の話をして。」
わたしの謝罪に、凪は静かに首を左右に振る。そして、わたしの手元にある箱の中から、霧のような紋様が刻まれている指輪に手を伸ばした。
「……私は大丈夫です。確かに、怖いことばかりだけど、こうやって、私が動けるようになったのは、骸様と奈月様のおかげだから。
奈月様が私を助けたいって……そう言ってくれたから、私は動けるようになったんです……。
骸様にも、ありがとうって言ったけど、感謝ならば僕ではなく、奈月様に向けなさいって……。」
「……なんつーこと言ってんの骸…………。」
凪から告げられた言葉に遠い目をしてしまう。だが、それよりも気になることがあった。
「……ところで凪?なんでさっきから他人行儀な言葉遣いを?私のことを様付けで呼んだり、敬語を話したり……」
「だって……奈月様のおかげで、私は生きることができたから……」
「なるほど?」
どうやら、わたしが命の恩人であることから、このような言葉遣いをしてしまっていたようだ。
まぁ、確かにわたしと凪の関係は助けた人と助けられてた人……と言える関係だけど、それは一時的なもの。
わたしと凪の今の関係は、そんな浅はかなものじゃない。
「……うん。確かに、私は凪に生きてほしいって思ったから骸にお願いしたし、その呼び方や態度も問題はないんだけどね。」
凪の頭に優しく手を乗せ、そのまま緩やかに頭を撫でる。
わたしに頭を撫でられた凪は、一瞬だけ驚いたような表情を見せたが、すぐに気持ち良さそうな表情を見せて、頭を撫でられ続けた。
「今日から凪は私の妹なんだから。他人行儀の言葉遣いや呼び方はやめてほしいかな。」
「奈月……様の……妹……?」
「うん。凪って誕生日はいつ?」
「えっと……12月5日。」
「じゃあ、やっぱりわたしは凪のお姉ちゃんになるね。私の誕生日は10月14日だから。」
少しだけ困惑しながら話を聞いてくる凪に、わたしは静かに微笑みながら、再び口を開く。
「まだわからない?私と凪は、今日から家族になるんだよ。だって、父さんが凪を養子として迎えたんだから。
きっと、母さんも新しく娘が増えたって喜ぶだろうね。」
「実際、奈々に養子の相談をして、凪のことを教えたら、すごく喜んでたぞ。
ナツも知ってる女の子で、前の親に少しだけ冷たく扱われていたって話したら、心配していたしな。
まぁ、なんにせよ、凪はこれからウチの子なんだ。ゆっくりでいいから、オレ達を凪の家族にしてくれ。」
笑顔で凪にこれからのことを教えると、凪は大きな目を丸くする。しかし、直ぐにその表情は泣きそうな顔に変わっていき、とうとう彼女は泣き出してしまった。
泣き始めた凪を優しく抱きしめ、ゆっくりとその背中を撫でていると、がっしりとした手がわたしと凪をまとめて抱きしめる。
手の持ち主へと視線を向ければ、そこには穏やかに笑いながら、わたしと凪を同時に抱きしめる父さんの姿があり、その姿にわたしは小さく笑う。
「これまでよく頑張ったね、凪。」
「もう、寂しい思いや寒い思いをさせたりはしない。父さんもナツも、もちろん、この場にいない母さんの奈々も、凪の側に寄り添うぞ。」
「これから、ゆっくりでいいから家族になって行こうね。」
「ワガママとか言いたくなったり、甘えたくなったりしたらいつでも頼ってくれ!まぁ、父さんはちょっと一年くらい日本に常に滞在するってことができねーんだが……」
「その時は、私と母さんが凪に応えるよ。」
「そうしてやってくれ。あ、ナツもちゃんと甘える時は甘えろよ?また抱え込み過ぎて無言で失踪されたりしたら父さん泣いちゃうから。」
「……善処するよ。」
「それ前向きに検討しませんって意味だからな!?」
目を逸らしながら父さんとわちゃわちゃ話していたら、泣いていた凪から小さな笑い声が聞こえて来た。
視線を凪の方に向けてみると、彼女はさっきまでの涙と、今の笑いで少しだけ大変なことになっていた。
「あれ〜?凪、笑ってる?」
「ふ……ふふ……!ごめんなさい……!奈月様と、家光さんのやり取りが、少し、面白くて。」
「おーおー。笑える時は笑っとけ!その方がよっぽど明るくて父さん達は好きだぞ〜?」
少しだけ笑いながら、凪に話しかけてみると、凪はそのまま声を出して笑う。
笑顔を見せている凪の姿に、わたしと父さんは一度顔を見合わせて、互いに笑い合った。
「家族になるんだから他人行儀はなしだよ。私のことは奈月でいいし、敬語もいらないから。」
「オレのことは父さん呼びで……って言いたいところだが、直ぐにそう呼んでくれとは言わねーよ。
ただ、敬語だけは使わなくていいからな?家族に敬語なんて言葉はなしって話だ!」
「まぁ、せめてパパくらいにはしてあげて。父さんって割と拗ねたらめんどくさいから。」
「そーそー。拗ねたらめんどくさ……ってナツ!!なんだそりゃあ!?」
「あははは!!」
揶揄うように、巫山戯るように、父さんにちょっかいを出していると、凪は大きな声を出して笑い始める。
その姿を見て、ようやく凪から暗い雰囲気がなくなったことを把握したわたしと父さんは、彼女が見えないところでハイタッチする。
可愛い女の子は笑顔が1番。これから先、凪が沢山笑えるように、わたしもしっかりと凪を守らないとね。
「……ありがとう、奈月。」
そんなことを思っていると、凪が小さく呟くように告げ、わたしの頬に軽く唇を触れさせる。
突然のキスに驚いて、思わず目を丸くしていると、凪はわたしに笑顔を見せた。
「お礼……したかったから。」
「……どういたしまして。」
凪の笑顔に応えるように、わたしも彼女に笑顔を返す。
しばらくの間、わたしと父さんは新しくできた家族との時間を過ごすことにした。
沢田 奈月
自身がお願いした結果、まさか他人の人生をめちゃくちゃにして帰ってくるとは思わず、少しだけ桜月に引いてしまったボンゴレ10代目。
家光が引き取って来た凪としばらくの間ゆっくり過ごし、彼女に自分は家族の1人であることを印象付けるために動く。
凪
奈月が手を回したことにより、骸の幻術による生存を果たし、元の親元から離れて奈月達の元に新しい家族としてやって来た女の子。
目の前で繰り広げられた新しい家族になる奈月と家光のやり取りを見て、明るい笑顔を見せていた。
骸の裏工作により、危篤状態の事故被害者は別の人間と言う記憶の改変が行われ、真実を知っているのは奈月と骸と凪本人のみである。
沢田 家光
愛娘に言われ、凪を引き取りに行った門外顧問。
凪と奈月がどちらも骸の干渉を問答無用で受けることができる器であることにかなり驚いたが、余程のことがない限りは悪い方向には転ばないと悟り、直ぐにそれを受け入れた。
娘が増えたことに喜びながら、まずは家族になれるようにと奈月と一緒になって凪との時間を作る。