最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
桜に呼ばれた少年は、桜の妹に断りを入れ、彼女と言葉を交わした。
あれからしばらくの間、凪と姉妹の時間を過ごし、穏やかな時間を満喫していた。
思ったより凪は、わたしと父さんに早く懐き、少しだけ甘える素振りを見せるようになった。
ちゃんと彼女と向き合うこと……それによりしっかりと相互理解が可能だったと言うのに、いやはや、彼女の母親と義父は何を考えていたのか……。
「さて……もうちょっと凪と仲良く話したいところだけど、骸にもこのことを教えないといけないから、少しだけ骸を呼んでもらえるかな?」
そんなことを思いながら、わたしは凪に骸とも話したいことを伝える。
わたしの言葉を聞いた凪は、一瞬だけ目を丸くしたあと、静かに頷き返してくれた。
「骸様……。奈月がお話したいみたいです……。……はい。直ぐに体を貸しますね……」
穏やかな声音で紡がれる言葉。同時に凪の気配は一瞬にして塗り替えられていき、とても落ち着く気配と雰囲気をその身に纏う。
「……骸?」
「……はい。あなたの六道骸です。どうやら、ちゃんと凪と合流できたようですね。」
静かに気配の持ち主の名前を呼べば、彼は口元に笑みを浮かべて、骸であることを告げて来た。
声や容姿は凪のもの……だと言うのに、ここまで雰囲気が変わるのかと、初めて遭遇したわたし以外の存在への憑依の感想が脳裏を過ぎる。
しかし、その思考は直ぐに、凪の姿をした骸がわたしを抱きしめたことにより霧散した。
「凪の姿でしか触れ合えないと言うのは少しばかり寂しいですね。できることならば、僕自身であなたのことを抱きしめたかったのですが……」
「それは仕方ないでしょ。今の骸は、イタリアから出ちゃいけません扱いなんだから。」
「自業自得なのはわかっていますが、やはり寂しいものは寂しいです。この姿では、キスもできませんからね。」
「キ!?」
「おや?そう言えばここにはあなたの父親がいたのでしたね。忘れてました。」
クフフフ……と小さく笑い声を漏らしながら、凪の姿で抱きつく骸と、ワナワナと震えている父さん。
明らかに骸はわざと挑発するような言葉を紡ぎ、わたしにくっついているようだった。
父さんは直ぐにでも骸に掴み掛かろうと思ったのだろうが、中身は骸でガワが凪と言う状態のため、何もできなくなっている……と言ったところだろうか。
「ナツ!!父さんはナツが男とキスなんてもんしてるなんて聞いてないぞ!?」
「言ってないし。」
「そもそも言う必要がありませんよね?奈月だって恋愛事に興味を示してもおかしくない年齢ですし、どこに怒る要素が?」
「ぐぬぬ!!許さん!!父さんは許さんからな!?」
「やれやれ……記憶で知っていましたが、随分とあなたの父親は親バカのようですね?
絶対あれ、奈月が恋人や結婚相手を連れて来ても吠えるタイプの頑固オヤジですよ。」
むぎゅっとわたしに抱きつきながら、父さんの評価を口にする骸に、思わず内心で同意してしまう。
いや、申し訳ないとは思うんだけどさ。骸の意見はわたしも同じく考えていたことだったから、否定することができなかった。
「まぁ、そんな親バカなマフィアは放っておきましょう。僕を呼んだと言うことは、僕に用事があると言うことですよね?」
親バカマフィアって……と苦笑いをこぼしそうになりながらも、用事があることを肯定すれば、骸に憑依されている凪は話を聞くための姿勢を見せる。
表情から、大体予想はついていることを把握しながらも、わたしは凪が手にしていたハーフボンゴレリングを骸に見せた。
「これは……指輪ですね。」
「うん。ハーフボンゴレリングって言う代物で、ボンゴレファミリーの正統後継者の証なんだって。
代々、ボンゴレファミリーの中核に当たるボスを含めた7人の人間が手にすることになってるみたいで、今日は、みんなに自分の立場と指輪の説明をして回っていたんだ。」
ボンゴレファミリーの正統後継者の証……ファミリーの中核に身を置く人間が持ち合わせる指輪……その言葉に骸に憑依されている凪は目を丸くしたあと、静かに視線を落とす。
本格的に、ボスとしての道を歩き始めようとしていることがわかったのか、少しだけ悲しそうな表情をしながら。
「……随分と早く……本格的な道を歩き始めてしまったようですね。」
「……うん。本来なら、私が高校を卒業する頃に手渡される話だったらしいんだけど、どうやらトラブルが起こったみたいでね。
かなり早い段階だけど、この道に完全に足を突っ込んじゃったみたい。」
彼の様子から、わたしが本格的にマフィア沙汰に足を踏み入れることになってしまったことに対して心配を抱いていることを察しながらも、今回のトラブルを口にする。
一瞬、骸は悔しげに表情を歪め、拳を強く握りしめたが、戻った時に凪が痛い思いをしてしまわないようにと、その手を優しく握る。
すると、力が加わっていた手元から力がそっと抜け、彼はわたしの手を握り返して来た。
「だから……骸に私を守ってほしいんだ。マフィアを嫌ってる骸に、こんなこと言うのら正直言って心苦しいんだけど……」
“ボンゴレファミリーの守護者として、わたしのことを守って”……静かに紡いだ言葉に、凪に憑依している骸は静かに顔を上げる。
そして、少しだけ困ったような……どこか呆れたような表情を浮かべては、わたしの額にそっと口付けを落とした。
「骸……?」
急な口付けに少しだけ驚きながらも骸の名前を口にすると、優しく頬を撫でられる。
「言ったでしょう?僕は奈月だけには味方をすると。確かに、マフィアは僕が最も嫌う存在ではありますが、奈月に味方をすると言う枠組みであれば話は別です。
僕はあくまで奈月の味方をしており、奈月を守るために力を振るっているだけ……結果、マフィアに与する形になっているだけに過ぎません。
それに、あなたの側にいないと、あなたが逃げたいと思った時に逃がしてあげられないでしょう?」
告げられた言葉に思わず目を丸くする。でも、彼の言葉は同意することができるもので、思わず苦笑いをこぼしてしまった。
そうだった……六道骸は……ある種のわたしの片割れとなっている彼は、わたしにのみ力を貸すと言っており、マフィアに属すとは言っていない。
あくまでマフィアの女王の“私”ではなく、“わたし”と言う個人に与して力を振るうだけだった。
「そうだったね。……わたしのこと、しっかり守ってよ、骸。」
「当然のことをいちいち言わないでください。僕はあなたを守ると決めたんですから、改めて言わなくともしっかりとあなたを守ります。
なんせあなたは僕の春……僕が恋焦がれて止まず、独占してしまいたいと思っている桜の花であり、僕の大切な陽だまりなんですから。」
わたしの言葉に、骸に憑依されている凪は穏やかな笑みを浮かべる。
純粋無垢の愛らしさを持つ凪とは違い、大人びた色気を持ち合わせているその笑みと、流入してくる甘い恋慕……それらをしっかりと見つめ返して受け止める。
「……リボーンから聞いた。偽物を掴まされた後継狙いの組織であるヴァリアーの話。
曰く、10日くらいの猶予があるから、各自守護者は能力の強化に当たることを推奨してる。
だから、骸は骸で、凪に能力の使い方に関してのレクチャーを行ってほしいんだ。」
相変わらず骸からの想いは甘くて溶かされてしまいそうだ……なんてことを思いながらも、わたしはこれから取り掛かってほしいことを彼に伝える。
わたしの指示を聞いた骸は、静かにその場で頷いた。
「わかりました。凪には僕のスキルを貸すつもりなので、しっかりと使い方を教えておきます。」
「ありがとう。でも、無茶だけはさせないであげてね?凪は私の妹になったから、流石に骸相手であってもこの子に負担をかけ過ぎたら怒るから。」
「……はい?凪が……奈月の妹………?」
急にポカンとした表情を見せる、骸に憑依されている凪。
そう言えば骸には、凪を養子としてうちで引き取る話はしていなかった気がする。
「うん。父さんにお願いして、凪を養子として引き取ってもらったんだよ。凪の親だった2人は、ちょっと子育てには不向きな人達だったから。
だから、今の凪は沢田凪になっててね。それで、誕生日が私よりあとだったこともあって、今の凪は私の義妹なんだよ。」
骸に今の凪とわたしの関係を伝えれば、しばらくの間無言になる。
しかし、次第にその表情は拗ねたものへと変わり、膨れっ面になってしまった。
「な、なんですかその羨ましいポジションは!?つまり凪はこれから奈月と四六時中一緒に過ごせるってことですよね!?」
「ええ……?」
まさかの嫉妬を向けられて、少しだけ困惑の表情を見せる。
いや、まぁ、義妹になっている以上、一緒に暮らすのは当たり前だけどさ。そこまで嫉妬する……?
「うう……僕だって奈月と一緒に過ごしたいと言うのに……凪が羨ましいです……」
「うん。思うのは勝手だけど、凪の姿でそれを口にするのはやめな……?」
かなりシュールな光景に、思わず引き攣った笑みを浮かべてしまった。
ガワが凪になってるせいで、なんとも言えない状況である。
「守護者として完全に継承することができたら、骸もイタリアから日本に来ることができると思うし、もう少し辛抱しなよ……。」
「そうかもしれませんけど……僕としては早く奈月の側で過ごしたいです……。継承っていつになるんですか……。」
「それは、私の超直感でもわからないかな……?」
わたしの言葉に、骸に憑依されている凪はシュン……と落ち込んだ様子を見せる。
その姿に苦笑いしか返せないわたしは、苦笑いをしながら優しく頭を撫でた。
まぁ、憑依してる本人は、触られている感触とかわからないだろうし、逆に拗ねてしまいそうな気もするけど。
「なんにせよ、今回の戦いでちゃんと勝たないと、一緒に過ごすこともできなくなる。
とある人の言葉曰く、今回、私達の前に立ち塞がろうとしている存在は、かなり強力な力を持っている災害のような存在なんだって。
それこそ、負けるようなことがあれば、私の周りに集まった大切な人達すらも容赦なく始末するような弱肉強食を体現した、マフィアそのもののような人らしいんだ。」
「!」
骸に憑依されている凪が、驚いたように目を見開く。しかし、直ぐにその表情は真剣なものへと変わり、黙って話に耳を傾けてくれた。
「私達が一緒に過ごせる未来のためにも、今回の戦いは負けられない。だから、凪にしっかりと戦う術を教えてあげて。私達の未来を奪われてしまわないように。」
「……ええ。任せてください。絶対に、マフィア風情に僕達を引き裂かせたりなどさせませんから。」
頼もしい言葉を聞き、安堵の息を吐く。自然と上がる広角は、わたしの霧にも見えているからか、穏やかな笑顔を見せてくれた。
「……よし。すごく名残惜しいけど、わたしは他にも用事があるからそろそろ動かないと。」
「そうですか……。非常に残念ですが、仕方ありませんね。」
それを確認したわたしは、今日は他にもやることがあるからここら辺で切り上げることを骸に告げる。
骸はとても残念そうな声音で言葉を紡ぐが、わたしの用事が何かを察しているのか、引き止めることはしなかった。
「では、僕もやるべきことをこなすために準備に取りかかりますね。」
「うん。」
「こうして話したからか、なんだかすごく奈月不足になったので、今夜精神世界にお邪魔します。
夜になったら呼びに行くので、精神世界に来てくださいね。そこで不足分をたっぷりと補わせてもらいますから。」
「あはは……。まぁ、程々にしてよ?こっちもやらないといけないことがあるんだから。」
「仕方ないですね……。」
少しだけ拗ねながらも、目を閉じた凪の中から骸の気配が霧散する。
同時に目を開けた凪は、何度か瞬きを繰り返したのち、こてんと静かに首を傾げた。
「骸様とお話できた……?」
「うん。ちゃんとできたよ。ありがとう、凪。彼と私を繋いでくれて。」
「どういたしまして……。」
完全に凪に戻ってる……と少しだけ思いながら、わたしは凪の頭を撫でる。
大人しくわたしに撫でられる凪は、気持ち良さそうな表情を見せて、わたしに無防備な姿を晒す。
「骸が凪に戦い方を教えてくれるから、彼に訓練をつけてもらってね。でも、凪はまだ病み上がりだから無茶だけはしないように。」
「うん。わかった。」
「ならよし。訓練をする前に、まずは今日から凪が暮らすことになる私の家に行こうか。
行きしなに日用品とかも買い揃えて、凪がゆっくり休める場所を作ろうね。」
「うん……!」
わたしの言葉に、凪は笑顔を見せて頷く。
それを確認したわたしは、明らかに普通の距離感ではなかった骸に対して頭を抱えている父さんへと視線を向けた。
「……父さん。もう骸はいなくなっちゃってるから落ち着いてよ。」
「ナツが……ナツが男の毒牙に……!!」
「随分と失礼なこと言ってるし……。別に女好きな間男から手を出されたわけじゃないんだから毒牙とか言わないでよ。」
「だってキスって言ったんだぞ!?キスって!!父さんはそんなハレンチな行動許しません!!」
「そんなの今はどうでもいいから、早く凪を迎え入れる準備を済ませるよ。」
「父さんは中学生で恋人を作るなんて認めないからなぁ!!」
「やかましい。」
少しだけめんどくさくなりなならがら、わたしはソファーから立ち上がり、凪にそっと手を差し伸べる。
差し出されたわたしの手を見た凪は、直ぐにわたしの手を取って、ソファーから静かに立ち上がった。
「ほら、さっさと行くよ、父さん。凪の必要なもの買ったりしないといけないんだから。」
「ナツ!?なんか父さんに冷たくないか!?」
「はいはい行くよ〜。」
ちょっとウザい、と思いながら凪の手を引いて部屋から外に出る。
ナツが反抗期だ─────!!なんて叫んでいる父さんのこと、もういっそのことガン無視して凪の買い物済ませに行ってもいいかな……。
沢田 奈月
凪の姿でいつも通りの対応をしてくる骸に少しだけ苦笑いをこぼしながらも、守護者として自身を守ってほしいと告げたボンゴレの女王。
精神世界に邪魔すると言われ、今夜はひたすら骸に付き合わされそうだと考えながらも受け入れる。
六道 骸
凪に憑依して奈月と言葉を交わしたことにより、逆に奈月不足になると言う真逆の反応を見せた奈月のための霧。
奈月が関わると途端に子供っぽくなってしまうのだが、本人は無自覚。
凪が奈月の妹……家族となったことにかなり驚き、さらには嫉妬すら見せていたが、精神世界で奈月を充電すればいいと言う結論に至り、今夜はとことん自身に付き合わせるつもりでいる。
凪
沢田家に引き取られたことにより、沢田凪となったもう1人の奈月の霧。
これからは奈月と一緒に暮らせると知り、かなり楽しみにしている。
このあと奈月から日用品や服、下着などを沢山買い与えられてしまうことをまだ知らない。
沢田 家光
奈月と話していた骸から、愛娘とキスをしている話を聞き憤慨するが、ガワが凪のせいで怒ろうにも怒れなかった門外顧問。
父さんはぁ!!中学生での恋愛なんて認めないからなぁ─────!!