最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 霧の少女を迎え入れ、落ち着きを取り戻した頃。
 霧の少女が席を外している間に、貝の女王は雷電を宿す少年と言葉を交わす。
 彼女と言葉を交わした少年が出した答えは……


10代目の守護者達Ⅵ

 凪を自宅に迎え入れ、歓迎会と言う名の夕飯を食べ終えた頃。わたしは、自身の手元に残されていた最後の証を手に取る。

 証に刻まれているのは雷の紋様。雷の守護者と言う立場を示すものだった。

 

「……ねぇ、ジョットさん。」

 

『……どうかしたか……と言いたいところだが、ナツキが何を言いたいのかはわかってる。

 10代目の雷の守護者として候補に挙げられていたランボのことだろう?』

 

 部屋の中にいるジョットさんに、わたしは静かに声をかける。

 最近は、Dさんばかりがわたしの部屋に居座っていたのだが、今回は珍しくジョットさんが居座り組として立っていた。

 なんでも、最近Dが近すぎると言う理由から、初代組総出で彼を部屋から追い出したようだ。

 でも、わたしの様子も気になるからと、誰か1人は残ろうとなり、ジョットさんが残ったのである。

 

「…………。」

 

 ジョットさんの問いかけに、わたしは静かに頷いた。

 そう、わたしが考えていたのはジョットさんの言う通り、ランボのことだった。

 わたしの守護者として挙げられたメンバーの中に、雷の守護者として彼の名前が挙げられたこの子は、他の誰よりも幼い。

 他のメンバーには、説明した上でついてくるのであれば証を託そうと考えることができたし、実際、その流れで証を手渡せた。

 でも……ランボには……あの子には………。

 

「……わたしは……あんなに小さな男の子に、争いに身を投じろなんてことを言わないといけないの………?」

 

 小さく呟いた本音の弱音。同時に溢れる両目の雫はポタポタとわたしのパジャマにシミを作る。

 わたしの言葉を聞いたジョットさんは、言葉をわたしに返すことなく静かに隣に座り込んだ。

 

「ランボは、確かにマフィアの世界で生まれ育った男の子だよ?マフィアの世界で生きて行くことは知っているし、一般の出であるメンバーに比べたら慣れていると思う。

 でも、今回の争いは、間違いなく苛烈で命懸けの争いになる。他のみんなはそれでも大切なものを守れるのであればとついてきてくれたけど、あの子にもそれを言わないといけないの?」

 

 次々出てくる言葉を口にする度に、わたしの視界は滲んでいき、服のシミは増えて行く。

 Dさんがこの場にいたら、きっとそんなことを言ってる場合じゃないと行ってくるだろうし、わたしもそれはわかってる。

 わかってるけど………!!

 

「どうして……5歳の男の子まで巻き込まないといけないの……!!」

 

 絞り出すように口にした訴えは、この場にいるジョットさんと、わたしの精神状態に気づいたらしい骸のみが聞いている。

 きっと、ジョットさんもわたしの中にいる骸の気配に気づいているだろう。

 彼はわたしに流れる彼の血により、遺伝する力の始まりなのだから。

 

『……ナツキ。少しだけお前の霧の力を借りてもいいだろうか?

オレは、Dのように自分自身で有幻覚による器を作ることはできないからな。ナツキの力を借りなくては、姿を現すこともできない。』

 

 ジョットさんが、いつもの穏やかな笑みを浮かべながらわたしの方にてを差し伸べる。

 その手を少しだけ見つめたわたしは、枕元に置いていた黒皮の手袋を手に嵌め、“私”(奈月)としての自分から、“わたし”(桜奈)としての自分へと意識を切り替え、死ぬ気の炎を手元へと集中させる。

 その瞬間、わたしが嵌めていた手袋は、ボンゴレの文字とXが記されているグローブへと変わり、霧を連想させる藍色の死ぬ気の炎を灯した。

 それを触媒にするように、ジョットさんから差し伸べられた手に自身の手を触れさせ、いつもの仔猫のものではない、ジョットさん本人の肉体を基にした有幻覚の器を作り上げる。

 ジョットさんに重ねるようにして器を完成させれば、先程までわたしにしか見えなかった状態のジョットさんが、わたしの部屋に姿を現した。

 

「ありがとう。やはりナツキはすごいな。Dが幻術の使い方を教えていただけある。

 まぁ、オレとしては複雑な気持ちではあるがな。あまり、オレの子孫に余計なことを吹き込まないでほしいものだ。

 最近の傾向は、少しばかり気がかりな部分がある。ナツキの意思を尊重してはいるようだが、いつ目に余る行動を取り始めるか……。いや、今はDのことよりこれからのことだな……。」

 

 本格的な肉体を得たのは久々だからか、ジョットさんは何度か拳を握ったり開いたりを繰り返したあと、わたしの方へと視線を向ける。

 死ぬ気の炎を灯していなくても、キラキラとした光を宿す同じ琥珀色の瞳が、緩やかに細められた。

 

「おいで、ナツキ。」

 

 静かに広げられた両腕を見て、わたしはそのままジョットさんの腕の中へと体を委ねる。

 わたしが腕の中にすっぽりと収まれば、ジョットさんは優しくわたしを抱きしめて、そのまま頭を優しく撫で始めた。

 

「ナツキの言う通り、10代目の雷の守護者に抜擢されてしまったランボは誰よりも幼い。

 ランボのような子どもを、ボンゴレリングを賭けた争いに出したくないと言う気持ちもわかるし、正直言って、オレも反対だ。

 彼のような幼子に、今回のような苛烈な争いに繰り出すなど、誰だってしたくないさ。」

 

 穏やかな声音で、ジョットさんもランボを争いに巻き込むことに関しては異議を唱えたいと口にする。

 ジョットさんも、わたしと同じ考えを持っていると言うことに、私の感性は間違いないのだと、大きな安堵に見舞われる。

 

「きっと、Dさんだったら、そんな考えは甘いって一蹴するんだろうね……。」

 

「するだろうな。Dはそう言う存在だ。オレ達とは全く別のベクトルから世の中を見ているからな。

 オレには無理だ。あのように厳しくなることができない。きっと、今のこの状態も、アイツからしたらあり得ないと言いたいだろうな。

 いつまでも弱音を吐き、迷っていては意味がない……そう強く言ってくるはずだ。」

 

 ジョットさんの言葉に、わたしは同意するように小さく頷く。頭上から小さな笑い声が聞こえて来た。

 同じことを考えていたことがおかしかったのだろうか……。

 

「ナツキの考えは間違いじゃない。幼い子供を巻き込むなど、あり得ないと抵抗する気持ちが出てくるのは当然のことだ。

 幼子は伸び代があるが、同時に少年少女に比べて直ぐに壊れてしまうほどに脆い。

 まぁ、今回の相手になる存在は、少年少女でもかなり厳しいどころか、容赦なく命を散らされてしまう可能性が高いのだが、鍛えれば耐え凌ぐことができる。

 だが、ランボは育てることができない。力を伸ばすには、あまりにも時間が足りなさ過ぎる。

 そう考えると、オレもランボを参加させたくない。できることなら、雷の守護者の枠組みだけは空け、不戦敗を狙った方が得策だろう。」

 

 ジョットさんの言葉に、その方がやっぱりとわたしも考える。

 ランボだけは参加させない……証を正式に継承することになってから手渡した方がいい……そう考えていると、ジョットさんがだが……と小さく呟く。

 その言葉に反応するように、静かにジョットさんに視線を向けてみれば、彼は少しだけ悲しげに、だけど、誰よりも優しい笑みを浮かべていた。

 

「だが……ランボ自身の意識はどうだろうな?もしかしたらあの子自身は、ナツキとは違う考えを持ち合わせているかもしれないぞ。」

 

 ジョットさんの言葉に思わず目を見開く。

 それはいったい、どう言う意味……?問いかけが口から出るより先に、わたしの部屋の扉がノックされる。

 

「ナツ〜!オレっちだよ!ランボだよ!お話ってなぁに?」

 

 ノックの音に反応して、顔を扉の方に向けると、ジョットさんから優しく頭を撫でられる。

 直ぐに視線をジョットさんに向けてみれば、彼は穏やかな笑みを浮かべて小さく頷いた。

 

「自分が思ってることをランボに話してみるといい。弱音でもいい。逃がしたいと思っていることでもいい。逃げることができたらと言うマイナスな言葉でもいい。

 それを教えればきっと、ランボは自分の想いを教えてくれるはずだ。」

 

 それだけ言って、ジョットさんはわたしに幻術を解くように言って来た。

 直ぐに幻術を解けば、彼の器は霧の炎となり消える。それを見届けたわたしは、自室の扉を静かに開けた。

 

「……ナツ?泣いてたの?」

 

 わたしの部屋に入って来たランボは、一瞬驚いたような表情をみせたあと、わたしに静かに近寄った。

 翡翠のような緑の瞳には、心配の色が宿っており、わたしが泣いていたことを気にしている。

 

「……うん。これからのことを考えたらね。どうしようもなく涙が溢れて来ちゃったんだ。」

 

 そんなランボに、これからのことを考えていたら泣いてしまったことを伝えれば、彼は表情を少しだけ歪める。

 そこから読み取れた感情は、何かできることはないかと言う疑問と、役に立ちたいと言う想いだった。

 

「……話って言うのはね……わたしと君の、これからのことについてなんだ。」

 

 ランボの表情に、少しだけ泣きそうになりながらも、わたしはベッドの上に置いていたハーフボンゴレリングを収めている黒箱。

 見たことない箱を目の当たりにしたからか、ランボは驚いたような表情を見せる。

 しかし、その表情は直ぐに何かを感じ取ったような真剣なものへと変わり、ランボはちょこんとわたしの前に来る。

 

「……ねぇ、ランボはさ……痛いことや、怖いことって嫌いだよね?」

 

「うん。ランボさんは痛いことも怖いことも嫌だよ。だって泣いちゃうもんね。」

 

「……そうだよね。誰だって痛いことも怖いことも大嫌いだ。でもね、わたしはどうやら、それから逃げることができないみたい。」

 

「?……どう言うこと?」

 

 不思議そうにするランボに、わたしは今回のことを掻い摘んで言葉を紡いでいく。

 近々、自分や自分の周りにいる人は大怪我を負い、最悪の場合は命を落としてしまう可能性がある危険な戦いに身を投じることになること。

 その危険は、わたしだけでなく、ランボの方にも降りかかる可能性があり、もしかしたら、ランボにひどいことをしてくる人が出てくるかもしれないこと。

 だから、ランボや小さい子達だけはなんとしても守りたいと思っていること。

 

 ……本当は、怖いことから逃げたいと言う感情がある。でも、これは今口にするわけにはいかない。

 辛いし、絶対に痛い目に遭うし、できることならば、こんな闘いから離れたいと思っているけど、それではわたしの目的を果たすことはできない。

 だからせめて、逃げたいと言う思いではなく、間違いなく訪れるであろう脅威に関しての警告と、その脅威から避難させることを伝える。

 争いに身を投じるのは、わたしだけでいい。いや、わたしだけじゃなく、他のみんなも戦いに身を投じることになるのだろうけど、せめて、被害を最小に。

 

「……イヤだ。」

 

「ランボ……?」

 

 そう思いながらランボにこれからのことを伝えると、小さな声で拒絶の言葉が聞こえて来た。

 驚いてランボに視線を向けてみると、彼は少しだけ泣きそうな表情をしながらわたしのことを見上げている。

 

「イヤだもんね!!オレっちだってナツに怪我してほしくないもん!!ナツに守られてばかりなんてイヤだ!!」

 

「でも、ランボ。今回ばかりはランボだって痛い思いも怖い思いもすることに……」

 

「確かに痛いのも怖いのもイヤだけど!!ナツが辛い思いをする方がもっとイヤだ!!

 ナツだって怖いって思ってるんでしょ!?それでも戦おうとしてるんでしょ!?ナツがいなくなっちゃう可能性だってあるんでしょ!?

 ナツがいなくなる方がオレっちは……オレはイヤだもんね!!もういなくならないでよ!!オレを置いていかないでよ!!」

 

「!?」

 

 涙を溜めた翡翠の瞳を向けられて、怒鳴るように紡がれた言葉に目を丸くする。

 自分を置いていかないで……その言葉は、桜奈として生きていた時にわたしが持っていたものと全く同じ感情だった。

 

「確かにオレはまだまだ子供だけど、絶対絶対強くなるから!!絶対絶対ナツを守れるようになるから!!だからそんなこと言わないでよ!!ナツと一緒に戦わせてよ!!!!」

 

 息切れをしてしまう程に言葉を紡ぎ、両目から涙をボロボロとこぼし始めるランボ。

 それでも、わたしに向けられている瞳は力強い光を宿しており、絶対に引かないと言う想いが込められていた。

 

「……わたしを……守りたいの?」

 

「うん……。オレだってナツを守りたい……。リボーンやナツの周りにいる奴らみたいに……オレもナツを助けたいもんね……。」

 

「どんなに痛くて怖くても?」

 

「うん……!」

 

「……下手したら、ランボだって死んじゃうかもしれないんだよ?」

 

「そうならないように強くなればいいもんね!ランボさんは偉い子だもん!!頑張れる子だもん!!ナツの手伝いだって……守ることだってできるもん!」

 

「…………ランボ……。」

 

「ナツが何言ってもオレやめないから!!」

 

 絶対にやめない……目は口程に物を言うとはよく言うけど、まさに、今のランボにはその言葉がピッタリだった。

 そんなランボを見つめながら無言になっていると、優しく肩を叩かれる。

 静かに視線を肩を叩いて来た人を見るために動かしてみれば、そこではジョットさんがこちらを見つめており、彼は口元に笑みを浮かべながら小さく頷いた。

 

「………わかったよ、ランボ。」

 

 ここまで言われてしまったら、流石のわたしも何も言えない。ランボがそれを望むのであれば、わたしもそれに応えよう。

 ……ベッドの上に置いてあったボンゴレファミリーのマークが記されている箱を手に取り、わたしはその中にあった最後の証のカケラを手に取る。

 見たことのないものに首を傾げるランボの前に、静かに差し出す。

 

「これなぁに?」

 

 先程までの大人顔負けの気迫から一転し、いつもの幼いランボが顔を出す。

 それを見たわたしは小さく笑いながら、ランボに手にしている証のカケラを握らせた。

 

「これはね。これから先、わたしを守ってくれる人に手渡す大切な宝物なんだ。この人はわたしを守ると誓った人なんだよって言う証でね。ランボ以外にも、5人程証を持ってるんだよ。」

 

「ナツを守る人が持つ……大切な宝物……。」

 

 小さく呟いたランボに、わたしは静かに頷き返したあと、指輪にそっと触れる。

 

「ランボに、これを預けるよ。わたしを守るって言ってくれてありがとう……。」

 

 口元に小さく笑みを浮かべながらお礼を伝えると、ランボは一瞬目を丸くする。

 程なくしてその表情は明るい笑顔に変わった。

 

「当たり前だよ!だってオレはナツが大好きだもんね!好きな人は守るもの、女の子は守るものってボスも言ってたし、ナツは将来のオレのお嫁さんなんだから絶対に守るもんね!!」

 

 無邪気で明る言葉を聞きながら、わたしはランボの頭を優しく撫でる。

 頭を撫でられたことが嬉しいのか、ランボはくふくふと無邪気に笑いながら、わたしから手渡された証を大切に握りしめる。

 

「ありがとう、ランボ。でも、無茶だけはしないでね。わたしが傷つくのが嫌だって言ってくれるランボと同じで、わたしもランボが傷ついて辛い思いをするのは嫌だから。」

 

「うん!約束するもんね!ランボさん、無茶しない!」

 

「うん。約束だよ。」

 

 指切りの歌を口ずさんだわたし達は、互いに笑顔を見せて少しだけ笑い声を漏らす。

 この子で最後。わたしの守護者は集まった。残り9日……と言いたいところではあるけど、きっと、争いはすぐにやって来る。

 明日からはそれに備えて、ジョットさん達に修行をつけてもらおう。

 

 

 

 

 




 沢田 奈月
 5歳のランボを守護者にすることを躊躇い、涙を流していたが、ジョットからの一言を聞き、ようやく一歩踏み出せた大空の女王。
 ランボと話をしたら、自分だけ守られるなんてイヤだと彼が言い返して来たため、かなり驚いていたが、再三警告を口にしても絶対に引かないとランボが言ってきたため、彼に証を託した。
 ランボの告白に関しては、小さい頃の憧れと言う認識をしているため、本気にしているわけじゃない。

 ランボ
 奈月が危ない目に遭うかもしれない……下手したらいなくなってしまうかもしれない……それを聞き本気でイヤだと怒鳴った雷電の少年。
 痛いのは嫌い、怖いのも嫌い、だけど、奈月がいなくなったり傷ついたりする方が大っ嫌い。
 絶対に守ると告げ、一つも引かずに彼女を見据えたことにより、ようやく彼女から認めてもらった。
 奈月は将来のお嫁さんと言う認識は本物であり、憧れから発生したものではない。
 成長するにつれ、落ち着きを得て行くが、恋慕は決して失われることなく、むしろ、同じように成長して大きくなって行くことになる。
 ランボさんやオレっちと言う言葉ではなく、オレと言う一人称を無意識に使っていた。

 ジョット
 最近、Dがやけに奈月に構うし自分の女王とまで言い出して彼女の側に仕えているため、初代ファミリー総出で彼を一旦奈月の側から物理的に引き離した始まりの大空。
 奈月の想いは痛い程理解していたし、ジョット自身、ランボを此度の争いに巻き込むことは反対だが、ランボと話をして、彼の思いを聞くように促した。




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