最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

261 / 385
 始まりの大空により伸びてしまった始まりの霧。
 そんな彼から向けられた感情に、頭を抱えたくなった女王は、しばらくは気絶させておこうと考えながら死ぬ気の炎を灯し続ける。
 そんな中、彼女の携帯がメールを受信して……?


嵐の相談

 Dさんが気絶したことにより、一時的に解けてしまった全体的な幻術。

 他の人が寄りつかないようにするためにかけられていたそれが無くなっている以上、訓練の再開は難しいと考え、気絶したDさんを放置したまま、わたしは静かにお茶を飲んでいた。

 

『……ナツ。Dのヤツ起こさないの?」

 

「……今起こしたら、間違いなく何かしらの行動を取ると思うから放置してる。ちょっと落ち着いてもらいたい。」

 

『あー……確かにそれは言えてるかも。じゃあ、しばらくDは放置だものね。』

 

『では、しばらくはゆっくりお茶の時間にしましょうぞ。』

 

『人が寄らぬようであれば、このままでも訓練はできるしな!』

 

『ロリコンの不審者なんて起こさなくていいんじゃない?』

 

『オレ達は1、2世紀前に死んでるわけだから、ロリコンなどの枠組みに入らないんじゃないか?

 いや、考え方を変えれば冥婚を迫る変態の悪霊に見えるか。』

 

『どっちも質がわりーな……。』

 

 気絶したDさんを起こすか否かをジョットさん達と話し合いながら過ごしていると、わたしの携帯電話がメールを受信した。

 直ぐに携帯電話に手を伸ばし、メールボックスを開いてみると、そこには獄寺隼人の文字。

 隼人からメール?と首を傾げながらメールを開いてみれば、『相談したいことがあるんスけど、今、大丈夫でしょうか?』と言う短い文字が記されていた。

 

「……これは……家庭教師になるはずだった人に断られたか何かしたな?」

 

 開いたメールから判断できたため、わたしは直ぐに返信するために指を走らせる。

 今いる場所からかなり近い位置に公園があることを思い浮かべながら、その公園の名前を打ち、そこで待ってると文字を刻んでメールを返せば、了承のメールが返ってくる。

 

「ちょっと近くの公園に行ってくるよ。わたしの右腕志望がちょっとトラブったみたいだから。」

 

『わかった。じゃあ、オレ達はここに残ってDを見張っとくから行ってくるといい。』

 

「うん。」

 

 少しだけ席を外すことを伝えれば、ジョットさんが行ってこいと言ってくる。

 彼の言葉に頷いたわたしは、公園に向かうための道のりを行く。さて、隼人の家庭教師になる人って誰だったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奈月さん!お待たせしてすみません!」

 

「チャオ、隼人。別にそこまで待ってないから気にする必要はないよ。」

 

 公園のベンチに座り、携帯に入っていたアプリで遊んで時間を潰すこと10分。メールを送って来た張本人である隼人が姿を現した。

 特に待っていたわけじゃないことを伝えながら、携帯電話を収めていると、隼人からペットボトルを手渡される。

 

「奈月さんに話を聞いてもらう以上、何の差し入れもなく……は気が引けたんで、道中飲みもん買って来ました!どうぞ!」

 

「気を遣わなくてもよかったんだけど……まぁ、いいや。ありがとう。」

 

 隼人の手元からペットボトルを受け取り、開栓して口をつける。

 うん。いつも飲んでるカフェラテだから美味しい。

 

「それで?話ってのは今回の特訓に関してかな?」

 

「……そうです。実は………。」

 

 一口二口とコーヒーを飲んで喉を潤し、メールに書いてあった相談事の話を聞くために話を切り出せば、隼人は小さく頷いた。

 そして、ここに来るまであったことを、彼は丁寧に教えてくれる。

 

 どうやら彼は、ダイナマイトを使っての戦闘方法を、幼い頃にシャマル先生から教えてもらったようで、小さい頃からダイナマイトを使って戦うことがよくあったようだ。

 しかし、シャマル先生はある日を境に、隼人に対してもうダイナマイトは教えないと吐き捨て、それっきり何も教えてくれなくなったらしい。

 それで、これまでは、とりあえず教えてもらった基礎と、その応用として身につけた独自の戦闘方法を利用することにより、問題なく暗殺者としてなんとかすることができたようだが、今回のわたしとスクアーロさんの戦闘を見て、もう一度シャマル先生にダイナマイトを教えてもらおうと直談判しに行ったようだ。

 でも、シャマル先生に声をかけたところ、技術はもう教えないと言ったはずだと追い返されたらしい。

 

「すみません、奈月さん……。奈月さんだって忙しいはずなのに、このような相談を……。

 奈月さんの邪魔をしないように、自分で戦い方を模索することも考えたのですが、奈月さんから言われた言葉を思い出して、こっちに足を運んだ次第です。」

 

 シュン……と申し訳なさそうな様子を見せながら、謝罪してくる隼人に、わたしは苦笑いをこぼす。

 わたしからすると、むしろ、ちゃんと指示通り1人で突っ走らずやって来てくれて嬉しいんだけどな……。

 

「家庭教師と上手く行かなかった時は来るように言ったのは私の方だから気にしなくていいよ、隼人。

 むしろ、ちゃんと来てくれてありがとう。相談に関してもね。」

 

「奈月さん……」

 

 口元に笑みを浮かべながら、ちゃんと指示を聞いてくれた隼人に感謝を述べれば、彼の暗い表情はいくらかマシになった。

 しかし、やっぱり家庭教師を得ることができなかったことに対する不甲斐なさはあるようで、再びシュンとしてしまう。

 そんな隼人に、苦笑いをこぼしつつ、わたしは少しだけ考え込む。最初は隼人に暗殺技術を教えていたのに、なぜ、急に彼は隼人にそれを教えなくなったのか……。

 一瞬、女性ではなく男性に教えるのが嫌になったのかと考えてしまったが、きっとそれは違うはず。

 だって一度は隼人に教えることを承諾したのだから。だから、急に教えることをやめたのには何か理由があるはずだ。

 まぁ、一つの理由として挙げることができるとしたら、技術を継承し終えた……と言うことだけど、何か違うような気がするんだよね。

 

「ふむ……ねぇ、隼人。シャマル先生は一度は隼人のお願いを聞いて暗殺の技術を教えてくれたんだよね?」

 

「え?あ、はい。そうなんスよ。ガキの頃、よくシャマルがうちに出入りしてた話はしましたよね?そん時、いつもいつもガキがやるような遊びばっかさせられて飽きちまって……。

 オレの周りにいるのは基本大人連中だったんで、余計につまんねーってなったんスよ。

 どうせなら、オレも他の連中みたいにもっといろんなことがやりたくて、そん時にシャマルに話しかけたんスよ。」

 

 子供の遊びには飽きた。トライデントモスキートを教えてくれ……小さい頃に、屋敷を出入りしていたシャマル先生に告げた言葉。

 隼人から告げられた言葉に、シャマル先生は髪型の次は殺しの技まで真似るのかと呆れたように言って、子供の隼人にはダイナマイトくらいがお似合いだと言われたようだ。

 最初、隼人はダイナマイトをすすめられ、ダサいし鈍臭いと言い返したようだが、そんな隼人に対して、ダイナマイトも使い方次第じゃ強力な中距離支援武器になると教えられたらしい。

 そして、その証拠を見せてやると言わんばかりに、当時、隼人が手にしていた紙飛行機をまとめて空に投げてみろと指示された。

 バラバラに逃げるだろと返した隼人だが、シャマル先生からいいから投げろと言われ、渋々その指示に従って投げてみれば、飛ばされた紙飛行機は予想通りバラバラに飛んでいった。

 こんなの当たりっこない……隼人がそう思った矢先、シャマル先生は手にしていた小型のダイナマイト3つに火をつけ、空へと舞い上がる紙飛行機目掛けて投げ飛ばし、バラバラに逃げていた紙飛行機を全て撃ち落としてしまったようだ。

 

「それを見て、恥ずかしながら、少しばかり憧れちまって……それからは、判断が早かったと思います。

 時間がある時とかに、シャマルにダイナマイトを教えてもらって、そんで何回も敵対してきた奴をそれで退けて来たんスよ。

 なのにシャマルの奴、急にもう殺しは教えねーとか言って……」

 

 シャマル先生から言われた言葉を思い出したのか、隼人の眉間にしわが寄る。

 明らかに不機嫌ですと言っているような表情に、わたしは何度か瞬きを繰り返した。

 そして、ある一つの可能性を脳裏に浮かべる。小さい頃から敵陣をダイナマイトで使って倒していたことや、ダイナマイトを過信しすぎる癖、それと度々見ることになる彼の慢心……。

 

 ─────……だとしたら、シャマル先生が隼人にもう殺しの技術は教えないと言った理由も納得できるかな。

 

 これまでの言動や、幼い頃から敵対者を排除していた過去……それによりわたしは、シャマル先生の気持ちをハッキリと理解してしまった。

 それではたまったモンじゃない、うん。全くもってその通りだ。

 

「……シャマル先生の気持ちも、もう殺しの技術は教えないと言い放った理由もハッキリと理解できたよ。

 確かに、今の隼人にはその技術を教えたくない。もし、私がシャマル先生と同じ立場だったら、私も同じく突き放す。」

 

「え……?」

 

 溜め息を吐きたくなりながらも、シャマル先生の気持ちがよくわかったと口にするわたしに、隼人は驚いたような表情を見せる。

 そこから読み取れた感情は、答えがわかったのかと言う疑問と、答えを教えてほしいと言う2種類の感情だった。

 そんな隼人を一瞥したわたしは、静かにペットボトルに口をつける。本当、1人で突っ走らず報告しろってあらかじめ言っておいて正解だった。

 ちゃんと話を聞いてくれたおかげで、彼の悪癖を治すきっかけを得ることができたのだから。

 

「な、奈月さん……。わかったって……シャマルは……なんでアイツは、オレにもう何も教えないって言ったんスか!?」

 

 焦燥と戸惑いを感じ取れる声音で、どうしてと隼人が疑問を口にする。

 そんな隼人に、わたしは呆れと軽蔑を隠すことなく視線を向ける。かなり冷めた目をしていたのか、どことなく隼人の顔色は悪くなっているようだった。

 

「隼人はさ。私のことを守ってくれるんだよね?」

 

「当たり前スよ!奈月さんのことは命をかけてでも守ります!!」

 

「それ、ハッキリ言って迷惑。」

 

「な……!?」

 

 命をかけてと言う言葉が出てきたため、わたしは直ぐにそれを迷惑だと一蹴する。

 わたしからこんなことを言われるとは思わなかったのか、隼人は目を見開いて固まる。

 その表情にはなぜ?と言う疑問と、どうしてと言う怒りが含まれていた。

 それを見てわたしは目を細める。さぁ、少しだけ小言を言わせてもらおうか。

 

「なんで軽々しく命をかけるとか言うわけ?一つしかないモノを奪われたらそこで終了。それで君は終わるだけだろ。

 守るとかほざいてる暇があるなら、まずは自分の身を守ることくらいしたら?

 確かに、私の立場上、部下になる君の命は軽いものかもしれない。でもさ。もし、本当にそれが奪われることになって、私が生き残ったとして、私がそれで喜ぶとでも思ってんの?」

 

 自身でもわかってしまう程冷たい声が出る。わたしの冷めた声と言葉を聞いた隼人は、驚いたように目を見開いた。

 そんな彼を見据えながら、わたしは再び口を開く。

 

「答えはノー。君の命を失ってまで守られるなんて喜べるわけがない。ふざけるのも大概にしろ、獄寺隼人。」

 

 少しだけ怒りを滲ませながら、隼人の名前を呼ぶと、彼はハッとしたような表情を見せる。

 それを見たわたしは少しは理解してくれたかと思いながら、最後まで言葉を紡ぐ。

 

「君は、私の命が守れるのであれば、自分の命など捨てても構わないと思っているのかもしれないけど、それは違う。

 私の嵐は君だけで、君以外がその席に腰を据えることを私は許さない。君の代わりなんていないんだから、自身の命を軽々しく投げ捨てようとしないでもらえる?

 そんなことをする人間はファミリーにいらない。他人の命を守る前に、まずは自分の命を守れよ。

 自身の命すら守れないバカに、私は守られたくなんかないんだけど?」

 

「!?」

 

 吐き捨てるように告げた言葉に、隼人は目を見開いた。しかし、どこか晴れやかな様子もあり、わたしの言葉はしっかりと彼に届いたのだとわかる。

 そのことに小さく笑みを浮かべたわたしは、静かに座っていたベンチから立ち上がる。

 答えがわかったのであれば、あとは彼らの問題だ。まぁ、それはそれとして、もう一つ彼には言っておかないといけないことがあるんだけどね。

 

「ねぇ、隼人。隼人はさ。私のことが好きなんだよね?恭弥さんや骸。リボーンやディーノさん。そして、武……。

 今挙げた5人と同じ、恋愛感情としての好意を私に向けている。違う?」

 

「い、いいえ!違いません!!オレは、奈月さんのことが好きです!!山本やヒバリ、骸やリボーンさん、それに、跳ね馬の野郎なんかにも負けないくらいに!!

 ボスとしての奈月さんのことも確かにお慕いしていますが、それ以上に奈月さんを1人の女性として好いています!!」

 

 わたしの問いかけに、間髪入れず自身の感情を伝えてくる隼人に一瞬だけ目を丸くする。

 隼人は自身が口にした言葉がかなり恥ずかしいものであることにあとから気がついたのか、何度か瞬きを繰り返したのち、ボフンッと爆発する勢いで顔を赤らめてわたわたと慌て始めた。

 わたしもわたしで、自身で促しておいてかなりの大胆告白を返されてしまったことに恥ずかしくなってしまったが、それ以上に慌てる隼人が恥ずかし気なため、不思議と落ち着いていた。

 

「だったら生きてもらわないと困るよ。その想いに対する答えを出せてないし、いつか答えを出した時、その答えを告げる相手がすでにこの世にはいないなんてことになったら悲しいし、すごく辛いから。」

 

「……!」

 

 隼人の翡翠色の瞳がわたしに向けられる。

 その瞳の中からは先程までの焦燥が消えていた。

 

「私のことが好きだとハッキリと口にすることができるのなら、自身の命を軽々しく扱って、私のためだなんだと言って手放さないでよ。

 そんなことされても全然嬉しくないし、世界でたった一つしかない、価値をつけることができない宝物を失って、冷たくなってしまった隼人の姿なんて見たくないからさ。」

 

 ─────……命を失うのは本当に一瞬なんだ。そして、残された側は、その一瞬で永遠の傷を負い、悲しみを抱えることになる。

 生きることの難しさに比べて、死ぬことは本当に簡単過ぎて、簡単だからこそ、易々と手放してはならない。

 

 前世で二度の大切な人との死別を経験してしまったわたしだからこそ……自ら命を放り投げて終わりを迎えたわたしだからこそ……どれだけ命が重たくて、どれだけ命が儚くて、どれだけ命が脆いものであるのか知っている。

 知っているからこそ、それを隼人に教えなくてはならない。

 

「その命を助けようとする人だって、折角繋ぐことができた命を何度も何度も軽々しく扱われたら軽蔑するし、もう、何もしたくないと言いたくもなる。

 だからさ……わたしが君の想いに対する答えを出して伝えることができるように、わたしのためにも生きてよ、隼人。

 自身の命を軽々しく扱わないで、自身の命を大切にして。わたしのことを守ろうとしてくれているその気持ちは、すごく嬉しいことだけど、自身のその命を大切にして、いつか未来で出すことになるであろう君の想い(恋慕)に対するわたしの答えを聞いてくれる方がもっと嬉しいから。」

 

 だからわたしは、君に一つの呪いをかけよう。

 彼に生きることを選び取らせ続けるためにも。

 

「わたしのことを守るために、命を賭して戦うのではなく、わたしのために生き抜いて。

 それとも君は、わたしを守ると言って命を捨てて、わたしに癒えない傷を残すつもりなの?

 そんなことされたら、わたしは自分のせいで隼人を死なせてしまったって、死ぬまで後悔することになると思うけど。」

 

 眉をハの字に下げながら、わたしは隼人に問いかける。

 わたしの問いかけを聞いた隼人は、一度だけ翡翠の瞳を目蓋に隠し、程なくして目蓋を静かに開けた。

 現れた翡翠に宿された光は、確かな恋慕と確かな決意。

 

「……奈月さん。」

 

 穏やかな声音でわたしの名前を呼んだ隼人は、その場で静かに跪く。

 胸元に片手を添え、深く頭を下げる隼人の姿は、さながら西洋の騎士のようだった。

 

「……奈月さんに言われるまで、ずっと、オレは見えていませんでした。自分自身の命のこと。

 そうですよね……。奈月さんが優しいことはオレだってよく知っていたはずなのに……例え自身が無茶をしていても、心配をかけたくないと必死にそれを隠そうとするくらいに、奈月さんが周りを大切にしていることもわかりきっていたはずなのに、自身の命をかけるなんて言葉は軽率な言葉でした。」

 

「……ようやくわかってくれた?自分が何を言ったのか……そして、わたしが何に怒ったのか。」

 

 申し訳ありませんと深々と頭を下げる隼人に、静かに問いかける言葉を紡げば、彼は静かに頷いたあと、再び顔を上げてきた。

 恋慕と感謝の感情が、翡翠の瞳から感じ取れる。しかし、今の彼の瞳には、さらに新たな光が宿っていた。

 それは、忠誠……マフィアランドで出会ったマフィア連合や、余程のことがない限りは、わたしの味方であり続けると口にしたDさんが宿すものと同じものだった。

 

「オレ、獄寺隼人は、奈月さんのためにも、自身の命も大切にします。ですが、やっぱりオレは、奈月さんの右腕であり、奈月さんの守護者です。

 だから、いざと言う時は守らせてください。例え、どれだけ過酷な争いが、これから先起こり続けることになろうとも。」

 

 わたしを守りたいと言う強い想いが、恋慕と忠誠が混ざり合う翡翠に鋭い光を灯す。

 命を捨てないだけマシ……と言いたいところだけど、ここまで強い忠誠だと、暴走する可能性も否めない……かな。

 

「……わかった。いざと言う時は任せるよ、隼人。でも、これだけは覚えていて。」

 

 だったら、少しでもストッパーになるように、わたしはこの言葉を隼人にかけよう。

 だって守るってことは、敵を排除することだけじゃないのだから。

 

「これから先、過酷な争いに苛まれて、追い詰められることになろうとも、命を賭して戦うのではなく、命を守り、生き抜くために、わたしを連れて遠くへと逃げて。逃げることは間違いじゃない。必要な時は逃げてもいいのだから。

 敵前逃亡と戦略的撤退は別物だ。避けられない争いが訪れて、わたし達を消そうとしても、生きるためにもわたしと足掻いて。

 これは、ボスとしての“私”の命令であり、君と一緒に未来を切り開いていきたい“わたし”の願いだよ。」

 

「!!………はい!!」

 

 隼人の翡翠に琥珀を重ねて、真っ直ぐと一つの命令とお願いを隼人に告げれば、彼は一瞬目を見開いたあと、明るい笑顔を見せながら、わたしの言葉に頷いた。

 そのことに満足したわたしは、口元に小さく笑みを浮かべて、一つの頷きを彼に返す。

 

「……ったく……奈月ちゃんって本当、女王って言葉が良く似合うレディだよな。

 そんなレディの下につける上、自分のために生きろなんて言われるとか羨ましいぜ。」

 

 不意に、覚えのある気配が近づくと共に、やれやれと言わんばかりの呆れたような声音が辺りに響く。

 直ぐに声の方へと目を向けてみれば、そこにはシャマル先生とリボーンがおり、シャマル先生の目線は隼人に固定されていた。

 

「随分と幸せモンじゃねーか、隼人。奈月ちゃんみてーなクールビューティーなレディから大切に想われてるんだぜ?本当、代わってもらいてーくらいだぞ〜?」

 

「シャマル……」

 

 いつもの調子で話しかけてくるシャマル先生の名前を呼ぶ隼人。彼に名前を呼ばれたシャマル先生は、やれやれと言わんばかりに首を左右に振り、隼人の方へと歩み寄った。

 

「こんなに素敵なレディに、自分のために生きろって言われたんだ。もう二度と無謀なことはすんじゃねーぞ。」

 

「言われなくてもわかってるっつーの……。オレだって、好きな女を……奈月さんを悲しませたくねーからな。

 それに、奈月さんは、こんなオレを叱ってくれて、それでいてオレが必要な存在だって言ってくれたんだ。

 必要な時は逃げることも戦略に入れて、自分を連れて遠くに逃げろとも言われたしな。

 だったらオレがやることは一つだけだ。奈月さんのためにも、簡単にくたばるような男にならねーためにも、自分の命を守ることも視野に入れて強くなってやる!!」

 

「おーおー……若者が一丁前に青春してやがらー。あのガキンチョがここまで男になるとはな。

 ……いいか?自分の怪我は自分で治せよ、隼人。オレは男は診ねーんだ。ったく……この10日間……いや、もう9日か?この期間でどれだけ女の子をナンパできると思ってんだ。」

 

 相変わらずの女好き発言を発揮しながらも、隼人に技術を伸ばすために、力を貸す意思を見せてくれるシャマル先生。

 彼の言葉に、隼人は呆れと嫌悪を軽く抱きながらも、静かに跪いていた体勢から立ち上がった。

 

「……シャマル先生。隼人のこと、よろしくお願いしますね。もし無茶をしそうであれば、容赦なく地面とキスさせちゃっていいので、しっかりと必要な能力を与えてあげてください。」

 

「任せといてくれ、奈月ちゃん。お礼はあっつ〜い口付けでいいぜ?」

 

「残念ながら、私のベーゼは私の大切な人達のみに解禁されるものなので、シャマル先生は対象外です。」

 

「え〜……?そりゃないぜ、奈月ちゃん……」

 

「私に気を許されたいのであれば、せいぜい隼人をしっかりと鍛え上げて、私と隼人自身をまとめて守り抜けるようになるまで成長させてくださいな。

 しっかりとそれができたのであれば、少しは考えてあげますよ。ええ、少しだけは……ね?

 あとは……まぁ、そうですねぇ……シャマル先生が私の専属の殺し屋としてファミリー入りするのであれば、多少は考えてあげますよ?

 私の大切とはすなわち私が心を許せるとして懐に入れた人達のことですので。対象としてあげるとしたら、リボーンに隼人。武に恭弥さん。骸に凪に、京ちゃんにハル……ビアンキ姉さんにディーノさん辺りですかね、今のところは。あと、ランボと了平さんが一歩手前ですね。

 ああ、対象内の方々なら、私の秘密のお友達もそうですね。さて、あなたは私の懐に入れるか否か……きっちり見極めさせてもらいます。」

 

「手厳しいなぁ………。」

 

 わたしの言葉を楽しむように、どこか穏やかな声音で言葉を紡ぐシャマル先生に、わたしは小さく笑い返す。

 

「では、私はこれで失礼します。今の私では、まだまだ足りない部分がありますから、こっちも鍛えないといけないので。」

 

「おう。怪我したらいつでもオジサンを頼っていいからね〜ん♡」

 

「ありがとうございます。頼ることがないように怪我に気をつけますね。」

 

「たはは……相変わらずの返しだなぁ……」

 

 ハートがついてることがわかる猫撫で声を口にするシャマル先生を軽くあしらいながら、わたしは公園の外へと向かうために足を動かす。

 

「……無茶したらダメだよ、隼人。君は私の大切な人の1人なんだから。」

 

「……はい。奈月さんが悲しまないように、無茶はしないと誓います。だから、いつかはオレを、大切な人の1人と言う広い枠組みの中ではなく、オレだけに大切を向けてください。」

 

「……それは君次第だよ。君の行動次第で、私の気持ちも変わるだろうからね。」

 

 その際、隼人と少しだけ言葉を交わし、ジョットさん達が待っている場所へと戻るために歩き出す。

 

「……やっぱ、ナツは女王って言葉がぴったりだな。」

 

「……どうだろうね。わたしにはわからないや。」

 

「そうか。まぁ、それはオレが分かってりゃいい気もするし、今は気にしなくてもいいと思うぞ。」

 

 公園から道路に出て移動する中、リボーンがわたしの肩に飛び乗り話しかけてきた。

 わたしは、話しかけてくるリボーンと言葉を交わしながら、公園に辿り着くまでに歩いた道を遡るのだった。

 

 

 

 

 

 




 沢田 奈月
 Dからの感情に混乱したので、とりあえず気絶させたまま放置した貝の女王。
 連絡をして来た獄寺に、「命をかけて私を守るくらいなら、軽々しく命を捨てることなく、私のために命を守り、私のために生きろ」と告げたことにより、彼の考えを変えた。

 獄寺 隼人
 シャマルに声をかけにいったら門前払いを受けてしまった未来の右腕候補。
 シャマルが使えないならと、1人で技術を磨こうとしたが、奈月から告げられた言葉を思い出し、なんとか踏みとどまった。
 奈月に相談したところ、命を軽々しく扱うなと言う小言と共に、命を捨てるくらいならば、私のために命を守り生き抜けと告げられ自身の間違いに気づき、軽率なことは二度と言わないことを、彼女への忠誠とともに誓った。
 奈月の想いを聞き、いつかは自分だけを特別として見てほしいと言う感情が芽生える。

 Dr.シャマル
 獄寺の様子を見ていたら女王と女王に忠誠を誓う騎士のような図を見ることになってしまったドクター。
 超絶美少女な奈月から命令とお願いをされた上、私のために命を守って生きろなどと言う想いを告げられた獄寺を本気で羨ましく思っていた。
 奈月ちゃんからキスしてもらいたいなら、奈月ちゃんのファミリーに入って大切な人として懐に入れてもらえばいいのか?とクソ真面目に考え始めた。

 リボーン
 ほとんど黙っていたアルコバレーノ。奈月がキスしてもいいと思える大切な人枠に入っていたことにめちゃくちゃ嬉しくなった。
 やっぱナツはボンゴレの女王だな。

 D・スペード
 奈月に対する感情に気付いた結果、前回から気絶の刑を継続されてしまった始まりの霧。
 こいつを目覚めさせては行けない。目覚めさせたら最後、めちゃくちゃ迫ってベッタリしてくるぞ☆

 女王SECOMの会
 と言う名のDを除いた始まりの大空達。
 なんとしてもこの子をDから守らなくては……!!
 ↑ものすごく邪魔なのですが!? by気絶した術士




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。