最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 姿を消した大空の少女。始まりの霧は、かつての最愛を失った時のような喪失感に見舞われたまま、現世を彷徨っていた。
 そんな中聞こえた少女の声に、始まりの霧は顔を上げる。彼が視界にとらえた少女は、幻術により姿を偽っている大空の少女だった。

 side D.


始まりの霧の独白 Ⅱ

 ナツキに憑依し、行方をくらませた何者かの姿を見てから数日が経った頃。

 私は、どこか穴が空いてしまった心を抱えたような状態で、当てもなく現世を彷徨っていた。その穴が空いた感覚が心の喪失感であることを、私はすでに理解していた。

 冷たくなっていくエレナの体。彼女から告げられた、最期の願い。その時に感じた、心の喪失感・・・・・・。

 あの時に感じていたものと全く同じものだった。

 

 あの時に抱いた彼女に対するものと、全く同じ喪失感を抱いてしまう程に、私はナツキに対して情を向けていたのだ。

 そのようなものを抱く筋合いはない。ナツキは理想を体現するに相応しいだけの少女だと・・・・・・何度も思い込んでみても、喪失感は消えることがなかった。

 

 “私はまた・・・・・・大切なものを失うのか・・・・・・”

 

 そのような考えが脳裏に過ぎる。この大切は、ボンゴレではなく、間違いなくナツキを示すものだった。

 長き時を経て、再びそのような感情を抱くことになるとは思わなかった。もはや手遅れと言ってもおかしくはなかった。

 しかし、私は認めなかった。認めたくなかった。そのような感情を、二度も抱くことになるなんて考えたくもなかったのだ。

 これは気の迷い。一時的なものに過ぎない。一時的なものなのだから、さっさと消えてなくなってしまえ。

 吐き捨てるように、忘れるように、捨て去るように考える。しかし、その考えは、直ぐに塗り替えられてしまった。

 

 ─────・・・・・・咲良ー!蓮さーん!学校行く前にコンビニ寄ってもいいれすか?

 

 ─────・・・・・・はい?お昼は咲良がお弁当を作ってくれてるじゃないですか。コンビニに寄る理由などありますか?

 

 ─────・・・・・・んー・・・・・・でも、千歳と蓮はともかく、颯には確かにちょっと足りないかも?

 

 ─────・・・・・・いや、多分だけど颯はお菓子を買いたいだけだと思うよ。メシ代が浮く代わりにお菓子が多めに買えるとか言ってたし。

 

 それは、何気ない学生達の会話にしか聞こえなかった。仲のいい学生が学校に向かう中、ふざけ合って歩いているような、そんな日常的な会話だった。

 

 ─────・・・・・・またですか。しょうがないですね・・・・・・。

 

 ─────・・・・・・とか言いつつ、蓮もお菓子を買う気満々なのであった。

 

 ─────・・・・・・って何勝手に人の心境にナレーションをつけてるんですか咲良!?

 

 ─────・・・・・・だって伝わってくるんだもーん。

 

 ─────・・・・・・伝わってくるからってナレーションつけないでもらえます!?

 

 しかし、その中に紛れている声は、私がよく知っている声で、私が探している1人の少女のものだった。

 

 ─────・・・・・・あ、いちごジャムが入ったマシュマロ買っていい?

 

 ─────・・・・・・それは構いませんけど・・・・・・。て言うか、一応僕は、生徒会長の代理なのですが?

 

 ─────・・・・・・不良を容赦なく潰して統率してる人がなんか言ってる。

 

 ─────・・・・・・黙りなさい。

 

 鈴を転がすように明るい笑い声が辺りに響き、すかさず私は声の方へと視線を向けた。そこにいたのは女子1人と男子3人で構成された4人組だった。

 目の前にいる4人組は、これまで私が会ったことがない4人組。しかし、4人のうちの2人は明らかに覚えのある気配だった。

 片方は失踪したナツキの中から感じ取ることができた気配。あの時ナツキに憑依していた人間のもの。

 そして、もう片方は、いつも見ていた金糸の髪ではない淡い寒色の髪をした少女だが、間違いなくナツキが持ち合わせている気配だった。

 

 ─────・・・・・・ナツキ!!

 

 感じ取れた気配がナツキのものであると確信し、私は彼女の名前を呼ぶ。

 ようやく見つけることができた。早く連れ戻さなくては。次こそは私の手の届く場所へと考えながら。

 しかし、ナツキは私の声に反応するどころか、一瞥すら向けてくることなく、私の側を通り過ぎていった。

 

 ─────・・・・・・は・・・・・・?

 

 私は理解できなかった。理解したくなかった。

 ナツキが私の声を無視するどころか、視界にすら入れようとしないなど・・・・・・。

 

 ─────・・・・・・ま・・・待って・・・ください・・・ナツキ・・・・・・?どうして無視をするのですか・・・・・・?迎えにきましたよ?早く・・・・・・早く、元の場所へ・・・・・・

 

 今度はナツキの視界にしっかりと映り込むように前に回り込み、ナツキに声をかける。

 私やプリーモ達の姿を見ることができたナツキならば、必ず反応をするはずだ。反応をする・・・・・・はずだった・・・・・・。

 しかし、ナツキは目の前にいる私に気づくことなく、そのまま2色の瞳を持ち合わせている少年と共に歩き続ける。

 すかさず私は彼女の肩に手を伸ばした。流石に触れたら反応をするはずだと。

 だが、私の手は彼女に触れることなく、そのまま通り抜けてしまった。

 

 ─────・・・・・・な、ぜ・・・・・・?

 

 彼女は・・・・・・ナツキは・・・・・・私達と交流する時の力を失っていた。初めからそのような力など持ち合わせていなかったかのように、彼女は普通の少女に戻っていた。

 嫌な汗が体から噴き出て、そのまま体温が急激に下がっていく。気持ち悪さに襲われて、私は吐き気を覚えて口を押さえた。

 パニック症状を発症していると気づくまで、そう時間はかからなかった。

 

 これまで接触することができていた存在との急な隔絶。彼女の中に残していたはずの精神の繋がりも完全に失われており、今のナツキは私を見ることがないのだと避けようのない現実が突きつけられる。

 繋がりが消えたのは隣にいる少年のせいなのか?それともナツキ自身が自ら繋がりを断つ方法を見つけて繋がりを消したのか?

 後者だとしたら・・・・・・そこまで考え、急激な眩暈と寒気に襲われ、私はその場で膝をつく。

 そんな中、一つの声が聞こえてきた。

 

 ─────・・・・・・こっわ。なんでお前、奈月ちゃんを見つけ出すわけ?折角巡り会わないように縁も切っといたのにさぁ。

 奈月ちゃんの力を封じておいて正解だったよ。切っていた縁をまた結ばれちまうところだった。

 

 ─────・・・・・・!?

 

 その声は聞き覚えのあるものだった。数年前まで企てていた計画をことごとく潰してきた忌々しい存在のものだった。

 声が聞こえた方へと視線を向けるために顔を上げる。そこには、金糸の髪と濃紺の瞳を持ち合わせている幻月のアルコバレーノの姿があった。

 

 ─────・・・・・・アルコバレーノ・・・・・・!!

 

 ─────・・・・・・よぉ、裏切り者。随分と彼女に執着してるようじゃないか。そんなにあの子が大切になったのかい?

 

 あの時と変わらない不敵な笑みを浮かべながら、アルコバレーノは言葉を紡ぐ。

 その姿に思わず舌打ちを漏らしてしまうが、アルコバレーノはこちらの苛立ちを理解していながらも、相変わらず笑ったままだった。

 

 ─────・・・・・・ナツキに何をしたのですか!?

 

 ─────・・・・・・別に?オレはただ、あの子がゆっくりと過ごせるようにお前らから伸びてる縁をいじっただけだぜ?

 なんせあの子が持ち合わせていた死者との交流能力はオレの管轄でね。月の満ち欠けと生死の巡回・・・・・・それらが結びつけられて考えられた結果、オレは生死と魂に関連した力を扱えるのさ。

 ようするに奈月ちゃんのプリーモファミリーと接触することができる力はオレからのプレゼントだったから、発現も封印もオレの思うままってわけ。

 

 私の問いかけに平然と答える幻月のアルコバレーノは、私の方へと手をかざす。

 その瞬間、私の体は何かに縛り付けられるような感覚に陥り、その場で容赦なく膝をつかされる。

 何をするんだと言葉を口にしようとするが、声を出すことができず、ただ、無意味に口を動かすだけしかできなくなった。

 

 ─────・・・・・・知らなかった?お前らは全部魂だったんだよ。奈月ちゃんのサポートができるように、オレが呼び寄せておいたのさ。

 つまり、オレはお前らを思うままに制御できるってわけ。最初はこんな力あっても使い道ないだろって思ったが、訂正だ。ちゃんと使い道はあった。

 こればかりはあのいけ好かない鉄帽子に感謝だわ。

 

 完全に動きを封じられ、何もできなくなっている私に、幻月のアルコバレーノは歩み寄る。

 そして、膝をつき下を向いている私を無理矢理上を向かせ、真っ直ぐとこちらを見下ろしてきた。

 

 ─────・・・・・・今の奈月ちゃんは考える時期だ。その邪魔をしないでもらえるか?

 さっきも言ったように、お前やプリーモは現在魂の状態でこちら側へとやって来ている。オレの手引きによってね。

 つまり、お前はオレの支配下にあり、やろうと思えばお前を現世から叩き出して常世に逆戻りさせることもできるってわけだ。

 もちろん、二度とこっちに出さないように、道筋を全て途絶えさすことももできる。

 知ってるかい?今のお前は、オレの力の影響で精神と魂を完全に融合された状態にあるって。

 精神と魂を合わせることくらい、オレにとっては造作もなくてね。完全に支配下に置けるように、お前にはいくつか細工を施しておいたんだ。

 

 そう言われて、私はようやく気づく。いくつか存在していた自身の器になっていた人間に憑依することができなくなっていることを。

 これまで利用してきた、大空と対になっている特異な属性を持ち合わせているファミリーの中にいた人間にも、自身の精神が伸ばせなくなっていた。

 あまりにも遅い気づきに、思わず目を丸くする。私は、幻月に完全に抑え込まれている状態だったのだ。

 

 ─────・・・・・・オレから言えることは2つ。奈月ちゃんをお前の理想を体現させるための駒にするな。彼女に関わり続けたいのであれば、ちゃんと彼女の本質に触れ、その全てを受け入れる覚悟を持て。

 だってフェアじゃないだろう?彼女ばかりが受け入れ続けないといけないなんてさ。

 

 最後まで言葉を紡ぐと同時に、幻月のアルコバレーノはかざしていた手を思い切り横へ薙ぐようにして動かす。

 その瞬間、地面に縫い付けられ、言葉も失っていた私の体は薙いだ手の動きに合わせるように、勢いよく横へと飛ばされた。

 強烈な衝撃が背中を突き抜け、確かな痛みを生じさせる。同時に入り込んだ多量の空気に、思わずむせて咳き込んだ。

 

 ─────・・・・・・いいから黙って見てろ、“裏切りの幻霧”(アストゥート・ネッビア)

 今の彼女に、お前のような亡霊は邪魔でしかねーんだよ。

 

 痛みに表情を歪めながら、静かに顔を上げる。目の前にいる幻月のアルコバレーノは、その表情からあらゆる感情を削ぎ落とし、私のことを見据えている。

 濃紺の瞳には、煩わしいと言う感情と、確かな怒りが宿っており、色彩も相まって寒気を感じてしまう程だった。

 

 ─────・・・・・・ああ、安心してくれ。彼女がこっちに戻ると言うのであれば、ちゃんとお前らとの繋がりを戻してやるよ。

 だが、彼女が戻らないと言う選択肢を選び取るのであれば、お前らは全員常世行き。二度と彼女に関われなくするつもり。

 彼女がマフィアではなく、普通の女の子として生きたいと望むのであれば、オレはそれを全力でサポートする予定だ。

 なんせオレの行動起源は大切な愛し子が幸せになることなんでね。あの子が幸せになれるのであれば、どんな手を使ってでも幸せにしてやるつもりさ。

 

 幻月のアルコバレーノの姿が徐々に消えて行く。その姿に手を伸ばし、引き止めようとするが、再び行われた薙ぐような手の動きにより、容赦なく近場にあった壁に飛ばされる。

 同時に意識は朦朧として、視界が徐々に狭まり始めた。鋭い痛みの発生源は、自身の後頭部。

 衝突した壁に、頭から打ち付けられたことにより、脳震盪を起こしているのだと薄れゆく意識の中理解する。

 

 ─────・・・・・・じゃあな、“裏切りの幻霧”(アストゥート・ネッビア)

 借りられた猫のように大人しとけよ?現世から常世に叩き戻されたくなければな。

 

 吐き捨てるように言葉を紡ぎ、幻月のアルコバレーノは完全に姿を消す。

 それを見届けると同時に、私の意識はその場で途切れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ܀ꕤ୭*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、どれだけ意識を失っていたのかわからない。浮上した意識に従うように、瞼を静かに開ければ、頭部に鋭い痛みが走る。

 いくら魂だけであるとは言え、これ程までに鋭い痛みを覚えてしまうとは、あの男はどれだけ強く壁の方へと私を飛ばしたのか・・・・・・。

 痛みに表情を歪めながら、静かにその場で起き上がり、辺りへと視線を巡らせる。

 空の色は茜色。同じような制服を身に纏う人間達が、ぞろぞろと道のりを歩いていた。

 それを視界に入れながら、私は歩き回る人間達に視線を向ける。すると、一つの4人組が視界に入った。

 その4人組は、気を失う前に見ていたナツキが混ざってるグループで、直ぐに私は口を開く。

 しかし、今の私はナツキに声を届かすことができないことを思い出し、すかさず口を噤むことしかできなかった。

 

 ─────・・・・・・ひゃー・・・・・・腹減ったぁ〜・・・・・・。なー咲良ぁ。今日の夕飯はなんにするんら?

 

 ─────・・・・・・チーズ入りハンバーグとサラダとコンソメスープかな。

 

 ─────・・・・・・うっひょー!うんまそー!!

 

 穏やかに言葉を交わしながら、ナツキとナツキの周りにいる3人組が私の目の前を通り過ぎていく。

 この時のナツキは、2色の瞳を持ち合わせている少年の腕に自身の腕を絡ませ、それに応えるように少年はナツキの手を指を絡ませるカタチで繋ぎ止めていた。

 わずかに感じ取ることができる、少年とナツキの繋がりの気配。その気配に確かな苛立ちを抱く。

 なぜ、お前がナツキとそのような繋がりを持ち合わせているのだと。明確な私の嫉妬だった。

 

 ─────・・・・・・咲良が作るご飯はどれも美味しいじゃないですか。

 

 ─────・・・・・・最近、咲良が作る料理以外の味があまり美味しいと思わなくなり始めましたね。

 

 ─────・・・・・・あ、それ、オレも思ったびょん。まずいってわけじゃねーけど、普通っつーか・・・・・・

 

 ─────・・・・・・確かに、僕も最近は咲良の料理以外に感動しなくなりましたね。咲良、何か料理に工夫でも?

 

 そんな私の荒れた心など知らぬまま、少年とナツキは互いに相手へと体を寄せ合い、穏やかな会話を続けている。

 2人の側にいる他の少年達も、その会話に混ざってゆっくりとした時間を過ごしている。

 

 ─────・・・・・・え?特に工夫はしてないよ?ただ、蓮達の好みの味付けがわかったからそれに合わせてるだけ。

 

 ─────・・・・・・はい?

 

 ─────・・・・・・それ、本気で言ってる?

 

 ─────・・・・・・ん?うん。本気で言ってる。

 

 ─────・・・・・・マジかよ・・・・・・なんで好みの味わかってんら・・・・・・?

 

 4人を見送ることしかできない私は、ふつふつと沸いてくる苛立ちに舌打ちをこぼした。

 このように心が乱され、荒んだ時は何年振りだろうか?そのような疑問を浮かべながら、私は静かにその場から離れる。

 自身の執着が恋慕を伴いナツキに向けられていると言う事実に、このようなつもりはなかったのにと、確かな苦しみを抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 




 D・スペード
 失踪した奈月を見つけたはいいが、幻月の介入により彼女との接触を阻まれた始まりの霧。
 奈月に対する恋慕を否定し続け、蓋をしようとしていたが、それが少しずつ難しくなっていた。

 幻月のアルコバレーノ・メテオライト
 実はナツキの側に初代組を呼び寄せ、彼女に交流する力を与えていたアルコバレーノ。
 月に付随したいくつもの話が力となって完全に刻まれており、生死を司り、魂に触れることができる。
 Dの動きを制御するため、彼の魂と精神に細工を施し、魂と精神を融合させると言う荒技をこなし、彼の動きを封じ込めることが可能だった。

 沢田 奈月
 幻月の力により、骸達と行動を取る間は初代組と交流する力を失っていた転生者少女。
 骸から甘えていいと言われたことから、一緒に行動を取る間は、彼の腕に自身の腕を絡ませてくっつくことが多くなっていた。

 六道 骸
 奈月を普通の女の子に戻すため、彼女を攫っていた術士の少年。
 甘えていいと告げたことにより、奈月からのスキンシップが増えていた。
 彼女が腕を絡ませてくっついてくるので、彼はそれに応えるように、その手を恋人のように繋いで密着するように体を寄せていた。

 城島 犬&柿本 千種
 奈月にしっかりと胃袋を掴まれてしまっていた脱獄組の2人。
 甘えていいと骸に言われたあとの奈月は、2人にも度々くっつくことがある。
 基本的に奈月と骸を中心にして動いており、この2人の行動に合わせて日常を過ごしていた。



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