最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
始まりの霧を引き連れた貝の女王は、新たな戦いへの一歩を踏み出した。
side Another.
暗殺部隊、ヴァリアーの幹部であるレヴィ・アタンの指示を聞き、黒は暗闇を走り抜ける。
向かった先に、何が待ち受けているのかなど知らないで。
レヴィに情報を告げた
程なくして
それを確認した
「・・・・・・やっぱり来たね、こっちの方に。」
「何!?」
そんな中、聞こえたのは少年の声。しかし、その声音はどこか大人びており、
それを見計らったように振り向いたのは3人組のうちの身長がもっとも高い少年で、彼は不敵な笑みを浮かべては、2人の幼児を抱えてその場から走り出した。
「待て!!」
走り出した3人を追うように、
「待てって言われて待つような奴はいねーだろ。」
再び聞こえた声は、明らかに青年の声だった。しかし、少年を追いかける
─────・・・・・・常日頃からヤベーとは思っていたが、まさかここまでバレねーとはな。
追いつけるか追いつけないかの付かず離れずの距離になるように調節しながら地面を蹴り上げた赤毛の青年、始まりの嵐ことGは、現状を引き起こしている原因となっている物へと視線を向ける。
・・・・・・
道具の先につけられていたバングルに腕を通し、道具とバングルを繋げていた紐は、道具に灯されていたインディゴの死ぬ気の炎により、ジリジリと焼かれていく。
まるで導火線のようなそれを確認したGは、一度だけ目を細めたあと、軽くジョギングするように、住宅街を走り抜ける。
彼の脳裏に思い浮かぶのは、自分達が味方をして守ろうとしている琥珀色の瞳を持つ親友の子孫に寄り添うように姿を消した、裏切りの同胞の姿だった。
─────・・・・・・昔っからアイツの霧の炎は強力だったが、こんな連中まで平然と騙すことができんのか。
まぁ、オレ達からしたら、確かに下っ端も下っ端でいいところだが、それでも、暗殺部隊って言われてる奴らだぞ?
幻術にもそれなりに耐性があるはずだし、サツキの言葉からして、向こうには術士もそれなりにいるはずだ。
しかし、自身の背後を追ってきている存在は、自分が追いかけているものが幻術を纏った別人であることに気づいていない。
いくら強力な術士であっても、完璧に騙し切ることはよほどの実力者でなくては不可能で、暗殺部隊ともなると、気配の方にも敏感であることが当たり前のはずなのだ。
だが、純粋な術士ではなく、霧の炎を借りただけの紛い物の術士を相手にしていると言うのに、背後の男は全くと言っていいレベルでわかっていないのである。
─────・・・・・・こんなことで改めてアイツの炎の強さを把握することになるとはな。まぁ、敵に回ってねーだけまだマシ・・・・・・いや、マシじゃねーな。ナツキにちょっかい出し過ぎだろあの変態。
苦虫を噛み潰したような表情をしながら、Gは自身の腕に嵌めたバングルから垂れ下がっている紐へと目を向ける。
ジョギング感覚で行っていた、黒服との鬼ごっこのおかげで紐は、すでに3分の2が燃え尽きていた。
─────・・・・・・そろそろだな。
それを確認したGは、自身がいる場所から見える範囲の景色へと視線を巡らせたあと、ある場所を目指して一気に走り出す。
幻術により子供の姿しか見えていなかった
・・・・・・それが、1人の女王の罠とは知らずに。
逃げた子供が入り込んだのは、一つの袋小路だった。
あらかじめ場所を把握していた
しかし、そこには1人も子供がおらず、暗闇だけが広がっていた。
「何!?」
「
「!?」
まさかの事態に動揺し、動きを止めた
すかさず声の方に視線を向けようとした
「まずは1人目。」
そんな彼の様子など気にすることなく、女性は囁くように声を紡ぐ。
首元に何かが突き刺さるような感覚に陥った
だが、それが何かを確認する前に、そのまま意識を手放した。強烈な倦怠感と重たくなる頭。それにより自身の耐性すらも貫通するような、何らかの薬を使われてしまったのだと理解しながら。
「・・・・・・Dさん?この薬、何か混ざってる?」
「それですか?懐柔しておいたボンゴレの薬剤師に開発させた一時的に抗体を破壊し、薬物への耐性を剥ぎ取る薬と、特殊な調合により作られた睡眠薬です。
ヴァリアーがどのような薬物に耐性があるのか知ってる人間だったので、ナツキの話を出して味方につけておきました。
お前の写真を見せた瞬間、
「ボンゴレファミリー暇人か。」
「暇人ではないと思いますが、どうやらボンゴレファミリーの内部にお前の話はそれなりに回っていたようですね。
まぁ、ヴァリアー側にはその話が伝わっていないようでしたが。それに関して調査したところ、沢田家光と跳ね馬、そして、9代目ファミリーの中核連中による隠蔽工作がされていたようです。」
「何やってんの父さん達・・・・・・。」
意識を失ってしまった暗殺部隊の傍でに姿を現した琥珀色と寒色は、その場で軽く言葉を交わしたのち、意識を奪った暗殺部隊の男が持つ通信機をその場で破壊する。
そして、再び霧に溶けるようにその場から忽然と姿を消した。
「・・・・・・相変わらずナツキの奴、野郎の股間を狙うんだな。」
一部始終を見ていたGは、姿を消した少女を思い浮かべては、その場でやれやれと首を左右に振る。
彼の腕には、赤い石の装飾が彩るバングルだけが残されており、霧の炎は消えていた。
܀ꕤ୭*
「
離れた距離にて、1人の男がインカムに向かって言葉を吐く。
それは、バキンッと言う無機質な音と共に通信が途絶えた部下への確認を取るレヴィ・ア・タンの声だ。
彼の耳には少女の声は届いていない。人間が地面に倒れる音と、インカムを破壊する音のみが聞こえていた。
それは、女王に付き従う寒色の青年による影響だった。
幻術を利用することにより、インカムを通じた記録すらも騙してみせたのである。
しかし、レヴィがそれに気づいているはずもなく、部下の1人がなんらかの要因で削られたことしか把握できていなかった。
「完全に通信が途切れたか・・・・・・!!
ガキ3匹を見つけたら直ちに報告を!!オレが向かう!!」
《こちら
《こちら
指示を聞いて再び動き出した部下達の声に、レヴィは一度深く息を吐く。
しかし、直ぐにその表情には怒りが滲み、自身が感じ取れる気配をたどり着い、建物などで遮られていないそれを見つけ出す。
「あっちか・・・・・・!!」
すかさず気配の方へと移動するレヴィ・ア・タン。
そんな彼の姿を、1人の青年が見つめていた。
「・・・・・・ふぅん?自身が幻術の中に閉じ込められていることに気づいてないんだ、彼。」
自身が着ているコートの裾を揺らし、その青年は軽い身のこなしで先程までレヴィがいた位置へと移動した。
彼の手首にもG同様、紫色の装飾石により彩られたバングルが嵌められており、霧属性の炎にジリジリと焼かれている紐が、そこから垂れ下がっている。
「Gはどうやら成功したみたいだね。ナツキが作った迎撃ポイントへの誘導。
あとの2つ・・・・・・
プリーモはなんとかナツキの雷の子と合流できたかな?雨月は同じように幻覚を使った工作をすると言っていたけど、できてるかな。」
レヴィ・ア・タンの気配を感じ取りながら、コートを纏う青年、アラウディは、とんとんと軽い身のこなしでレヴィ・ア・タンを一定の範囲内に入るように行動を取った。
・・・・・・そう、アラウディは襲撃者として現れたレヴィ・ア・タンを幻術によるフィールドの中へと閉じ込めていたのである。
類稀なる戦闘センスを持ち合わせていたこともあり、
そして、把握できた影響範囲から、レヴィ・ア・タンが離れないように、距離を調節して移動をすれば、霧の炎が消えるまで、本当の世界を見ることがない。
─────・・・・・・知っていたことではあるけど、やっぱりアイツの霧の炎ってかなり強力なんだね。
適当にレヴィ・ア・タンを逃がさないように散歩をしておけばいいだけの現状の中、アラウディはやれやれと肩をすくめる。
彼の脳裏には、自身が気に入って可愛がっている1人の少女と共に姿をくらませたかつての同僚だった寒色が浮かんでおり、そのまま溜め息を吐く。
─────・・・・・・もし、彼が生きていたとしたら、間違いなく彼は、この世を生きる術士の中で、最も強力な霧の炎を宿す存在になっていたかもしれないね。
あの子を気に入っている分、味方に引き込んだままにすることができるから、野放しよりかはマシだけど。
そこまで考えて、アラウディは静かに首を左右に振る。監視下に置けるだけマシではあっても、やはり霧の炎の持ち主たるかつての同僚は、危険因子に変わり無いと思いながら。
─────・・・・・・最近、やけにあの子に対して本格的に踏み込み始めてるし、警戒しておいた方がいいかな。
“あの子は守ってあげないと”・・・・・・脳裏に自身が協力していた大空の青年とはどこか違う雰囲気を持つ琥珀色を思い描きながら、アラウディはレヴィ・ア・タンを幻覚による檻の中へと閉じ込めることに集中する。
緩やかに動く彼の腕のバングルに繋がっている紐は、まだまだその長さを維持していた。
܀ꕤ୭*
「・・・・・・うっわぁ・・・・・・こっちに来たし。めんどくさぁ〜・・・・・・。」
Gの手によって誘導され、そのまま制圧された
一部が分散されたことにより、行動を制限された存在がいる中、若草色の髪をした青年は、その表情を心底嫌ですと言わんばかりに表情を歪め、深く溜め息を吐く。
青年の腕には緑色の装飾石に彩られたバングルが嵌められており、そこから垂れ下がる紐には霧属性の死ぬ気の炎が灯されている。
「オレ様動き回るのあんま得意じゃないんだけど。割とあいつ速いみたいだし・・・・・・。
絶対ナツに頼まれなかったらこんなことしないものね。」
死ぬ気の炎が灯る紐を揺らしながら、若草色の髪の青年、ランポウは静かに目を閉じる。
彼が脳裏に浮かべたのは、あらかじめ琥珀色の女王から教えられた3人の子供達の姿で、それは、彼の前にやってきた襲撃者、
「!?レヴィ隊長!!子供を見つけました!!・・・・・・レヴィ隊長!?」
しかし、そのインカムは隊長たるレヴィ・ア・タンに繋がることなく、ただノイズだけを発生させていた。
「クソッ!!どうなって・・・・・・っ!?待て!!」
まさかの事態に混乱する
「えーっと・・・・・・大体の範囲はどこだっけ・・・・・・?」
それを確認したランポウは、マフィアとして行動を取ることにより、必然的に身についてしまった身体能力を使って、
その間、彼の目はあたりを忙しなく見回しており、何かを探していた。
「ん?お、あったあった。」
辺りを見渡す中、彼はあるものを視界に捉える。
それは、一定の範囲を旋回する霧の炎の幻術により作られた鷹だった。
「あそこまで誘導したらいいっと・・・・・・さっさと終わらせてやるものね。」
位置を確認したランポウは、自身が使用している幻術の子供達と、襲撃者である
いくら身体能力があるとは言え、あまり運動が得意というわけではない。だが、生前のように身一つで前衛に放り出されているわけじゃないため、体力には十分余裕を持てるとランポウは判断していた。
事実、追いかける程度であれば、現役の暗殺部隊の人間であっても余裕でこなせる体力と身体能力は持ち合わせていたため、彼も気にしていないのである。
「こうやって見ると、プリーモ達やナツに比べて全然アイツ弱いものね。動きは速いっぽいけど、追いつけない程じゃないや。」
軽い調子で
紐の先の方はメラメラとインディゴの炎が揺れており、絶えず幻術を発動させていた。
「Dの炎ってここまで強かったんだ。まぁ、今回のはナツの炎も混ざってるから、余計に強くなってるんだろうけど、それでも割合だとDの方が多いし、やっぱりDの能力は高いんだ・・・・・・。」
それを見て、ランポウは小さく溜め息を吐いて渋い表情をする。
同時に彼は考えた。もし、かつての同僚、D・スペードが本格的に琥珀色の少女・・・・・・沢田奈月に手を出し、自身の手中に収めようとした場合、自分にできることはあるのかと。
「・・・・・・何もなかったらそれでいいけど、やっぱり不安だものね。プリーモ達がいるから抑えられるけど、オレ様ができることは防御くらいだし・・・・・・。」
そこまで考えて、ランポウは首を左右に振る。今はまだ、D・スペードの行動を気にするより先にやらなくてはならないことがあるために。
意識を幻術に集中させた瞬間、それに反応するかのように、バングルから垂れ下がる紐に灯っていたインディゴの炎が勢いよく燃え上がる。
それに伴って灯された死ぬ気の炎は垂れ下がる紐を次々と焼いていくのだが、ランポウはそれを気にすることなく旋回しているインディゴの炎で生み出された鷹の元へと近づいて行った。
程なくしてたどり着いたそこで幻術が切れ、作られていた少年達は姿を消した。
目の前で少年達が消えたのを見た
その瞬間、彼の背後に美しい金色が舞い降りると同時に、その股間目掛けて容赦のない強撃が叩き込まれた。
動きを止めて痛みに悶える
「うっわ・・・・・・相変わらずナツは容赦ないものね。オレ様ちょっとヒュッとなった・・・・・・。」
一部始終を見つめていたランポウは、顔を青くしながらも、現れた金色・・・・・・奈月を見つめる。
すると、彼の視線に気づいたらしい奈月が振り返り、その手をひらひらと振った。
彼女の手を見たランポウは一瞬だけキョトンとしたのち、手をひらひらと振り返す。
しかし、直ぐに奈月の側に姿を現したDを視界に入れては、ゲッと表情を歪めた。
奈月の視線から、ランポウの位置を割り出したDは、一度彼を睨みつけたあと、側にいた奈月に近寄り、慣れたように彼女の肩を抱く。
その瞬間、奈月とDの姿は、霧に溶けるように消えていった。
「・・・・・・こっわ。めっちゃ睨まれたんだけど。」
引いたような表情をしながらランポウは睨んできたDに対する恐怖を口にする。
気に入らないなぁ・・・・・・と言う感情も乗せながら。
܀ꕤ୭*
しかし、
「・・・・・・やはり、向こう側の霧が動いているのか・・・!?」
立て続けに発生した不測の事態に、
しかし、自身だけが隔離されているのか、それとも全体的に隔離されているのかまで把握することができず、必死に頭を回す。
そんな彼の姿を、1人の青年が見つめていた。
青年はその身にカソックをまとい、十字架を首から下げており、片手には黄色の装飾石に彩られたバングルを嵌めていた。
始まりの晴の守護者、ナックルだ。
「うむ、ランポウとGは究極に囮役をこなしたようだな。」
ナックルは2人の同僚がしっかりと仕事を済ませたことに笑いながら、流石だと口にする。
そんな彼の元に、1人の青年が姿を現す。その青年は片腕に青色の装飾石に彩られたバングルを嵌めていた。
「ナックル。」
「おお、雨月か。どうかしたのか?」
「先程、Gやランポウ、アラウディが幻術による囮と檻を遂行していた故、こちらに合流させていただきました。
どうやら、我々の幻術による隔離作戦は上手くいっているようでござる。」
「そのようだな。これならば、なんとかナツキの企みを遂行することができそうだ。」
インディゴの炎が灯り、紐を徐々に短くしていく中、ナックルと、ナックルの側に現れた青年、浅利雨月は穏やかな様子で言葉を交わす。
同時に、自身が幻術により惑わされていることに気がついている様子の
「では、単純明快な幻術を使い、Dの元へとあの者を誘導してしまいましょうぞ。」
「ああ。構わんぞ。」
「「では、始めるとしよう!」」
声を揃えてナックルと雨月は借りた霧の炎を利用して幻術を発動させる。
冷静に分析している様子の
ナックルと雨月が展開したのは、至極単純な幻術だった。歩き回る
もちろん、そのような幻術を仕掛けたところで、
「やはり術士がどこかに・・・・・・!!」
すかさず
術士さえ抑えてしまえば、あとはどうにでもなると判断して。その判断を下すと同時に、1人の術士が罠を仕掛けるために行動を取り始めているとは気づかずに。
「・・・・・・なんだこれは・・・!?」
まるで雑踏の中に足を踏み入れてしまったかのように、気配を感じ取ることが難しくなっていたのだ。
もちろん、これを仕掛けたのは女王の側に控えていた術士、D・スペードで、彼は、
気配の中には自分自身と、自身が側についている女王の気配も混ぜ込んでおり、大量の気配を利用することにより、
強い存在を放つ気配。対して強くない弱い気配。一般人と思わしき者の気配から、裏の世界に存在している人間と思わしき気配など、沢山の気配を散りばめる。
「くっ・・・・・・!!術士の力によるものであるとわかるのに・・・・・・!!」
このような芸当ができるのは、相当の実力を持ち合わせている術士のみ。
不意に、そんな気配の中、一つだけ覚えのある気配が混ざり込む。その気配は彼が従うレヴィの物であり、
「この気配は・・・・・・!!」
冷静になっていれば、それが術士による物であるとわかるはずだと言うのに、彼の意識は完全にその気配に奪われていた。
一直線に向かう隊長の元。感じ取れた気配の元へと辿り着いてみれば、そこには確かにレヴィがいた。
隊長と合流することができた・・・・・・少しの安堵と、咎められるであろうことを頭に入れながらも、彼はレヴィに近寄る。
・・・・・・が、その瞬間
「・・・・・・・・・は・・・・・・?」
世界が周り、地面へと体が崩れ落ちる中、疑問の声を口にする
「・・・・・・暗殺部隊ともあろう者が、随分と情けないではありませんか。」
そんな彼の耳に、ひどく穏やかで優しい男性の声が届く。すかさず誰が声をかけてきたのかを確認する
「ヌフフフ・・・・・・自身が気配を追っている間に、マインドコントロールを仕掛けられていたと言うのに気づかなかったのですか?
精鋭だと思っていたと言うのに、まさか三流以下だったとは・・・・・・。
術士のフィールドに足を踏み入れた瞬間、気づくべきでしたね?」
視界が暗くなり、何も見えなくなってしまった
語りかけられた
「そのまま大人しくしておきなさい。あなた方は私の女王にとって、最も邪魔な存在なので。」
「─────・・・・・・。」
自身でも聞き取れない程の承諾の言葉を口にして、
スペードが瞼の裏に焼きつく中、彼の耳にはインカムが壊される音だけが届いたのだった。
܀ꕤ୭*
「・・・・・・どうやら、D達は上手くやったようだな。」
住宅街の空の上。始まりと大空と呼ばれ、歴代最強とまで謳われていたボンゴレファミリーの初代ボス、プリーモことジョットは視界に映る複数のインディゴの炎を視界に入れながら、呟くように言葉を紡ぐ。
彼の腕にはオレンジ色の装飾石に彩られたバングルが嵌められており、例に漏れず、インディゴの炎を垂れ下がる紐の先に灯していた。
「ん?ああ、ようやく見つけることができた。」
自分達の行動が上手くいってることを確認する中、ジョットは眼下にある景色を歩く3人の子供達を見つける。
「あ、ナツだもんね!」
「本当だ!おーい!ナツ姉!」
「【奈月さん!ただいま戻りました!】」
いきなり目の前に現れたら驚くだろうと考えたジョットは、すぐ近くにあった道の角へと静かに降り立ち、自然な動きで子供達の前に姿を現した。
普段の自分自身の姿ではなく、彼らがよく知る子孫の姿で。
「ランボ。イーピン。フゥ太。遅くまでどこに行ってたの?」
「ご、ごめんなさいナツ姉!」
「オレっち達、京子とハルと一緒に遊んでたもんね!」
「【それで、ちょうど奈月さん達の家に帰っていたところなんです。ご心配をおかけしました。】」
3人の子供達は、現れた奈月の姿を見て、すかさず近くまで歩いてくる。
彼らと対峙している存在が、幻術によるガワを被った存在であることに気づかずに。
「もう・・・・・・暗くなる前に帰らないとダメじゃないか。母さんも心配してたんだよ?」
「「ごめんなさーい・・・・・・。」」
「【すみませんでした・・・・・・。】」
呆れたような少女の声に、3人の子供達は反省するように謝罪する。
その言葉を聞いた少女は、小さく溜め息を吐いたあと、口元に穏やかな笑みを浮かべた。
「いくら日本と言えど、不審者がいないわけじゃないんだから、次からは気をつけなよ?ランボ達が誘拐されちゃったら、私達を信じてランボ達を預けてくれてる家族の人やファミリーの人に顔を合わせられなくなっちゃうし、みんなも怖い目に遭っちゃうかもしれないんだから。」
少女の言葉に、3人は返事をしては彼女に群がる。
少女の姿をかりているジョットは、そんな彼らを見て小さく笑って、少女の自宅へと向かうための道を歩いた。
・・・・・・程なくしてたどり着いた沢田の表札がある家に、ジョットは子供達を連れて入る。
「奈月・・・・・・あれ・・・・・・?」
そんな彼らを出迎えたのは、片目に眼帯をしている1人の少女、凪だった。
凪は、自身が慕う少女、奈月と、目の前にいる少女が全く違う存在であることに気がついた。
凪の反応を見たジョットは、彼女の目を通して別の存在が自身を見つめていることに直ぐに気づき、口元に小さく笑みを浮かべる。
「・・・・・・あの子の霧の守護者だな。悪いが、今は少し緊急事態でな。オレの現状に対する言及は控えてもらえると助かる。」
凪だけ幻術の範囲外に出し、本来の姿を見せるジョット。
幻術により姿が変わっていたことに気づいてはいたが、誰が大切な少女の姿のガワを被っていたのかまではわからなかった凪は、驚いたように目を見開く。
しかし、目の前にいる青年が敵対者ではなく、自分達・・・・・・特に、自身の大切な少女の絶対的な味方であることを把握することができた凪は、小さく頷いた。
「凪。実はここに来る前に、プリーモ達から気がかりな話を聞かされてね。少しだけ様子を見てくるよ。この子達を任せても構わないかな?」
「うん・・・。大丈夫だよ・・・奈月・・・。気をつけて・・・。」
凪からの返事を聞いたジョットは、笑顔を見せたあと、ランボ達を凪に預けて玄関から走り去る。
「!?ナツ・・・・・・じゃねーな・・・・・・!?誰だお前は!?」
「おっと。」
そんな彼に1人の男性が声をかける。
話しかけられたジョットは、直ぐに足を止めては、声の方へと目を向ける。
そこにいたのは彼のもう1人の子孫であり、現在の門外顧問である沢田家光の姿があった。
ジョットは何度か瞬きをしたのち、そう言えばこの子は最近、超直感を会得していたな・・・・・・と考え込んだあと、その場で静かに口を開く。
「すまないな、イエミツ。少しだけお前の娘であるナツキの姿を借りさせてもらっているぞ。」
「なんでオレの名前・・・・・・いや、待て・・・・・・まさか、貴方は・・・・・・!?」
驚いたように言葉を口にする家光に、ジョットはすかさず彼に距離を詰め、自身の幻術を一時的に解きその口を片手で塞ぐ。
自身の口を塞ぐ存在の動きが全く見えなかった家光は、驚いたように目を見開いてその場で固まった。
「・・・・・・あまり、周りに姿を見せるわけにはいかないのでな。オレの名前を口にするのは遠慮してもらおう。」
ジョットから紡がれた言葉に、家光は頷くことしかできなかった。戸惑いながらも、自身の告げた言葉に頷いた家光を見て、ジョットは小さく笑ったのちそっとその側から離れる。
「そうだな・・・・・・見られてしまった以上教えておくが、オレはお前が思い描いている通りの存在だ。
元は死人で、今はとある縁を以ってお前の娘であるナツキの側に憑いている状態と言えるだろう。
まぁ、悪さをしているわけではないので、これに関しては黙っていてもらえると嬉しい。」
「わ、わかりました・・・・・・」
「把握してもらえて助かる。」
夢でも見ているのかと言いたげな様子で黙認を承諾した家光に、ジョットは穏やかに笑い返したのち、腕に嵌めているバングルに灯る霧の炎を使って幻術を纏う。
その姿は家光の愛娘である奈月の姿で、家光は目を見開いた。
「それは・・・・・・!?」
「かつての同僚から借りている霧の死ぬ気の炎だ。オレを含め、ナツキの元にはどうも全員集まってしまったようでな。
今手にしているこのバングルから垂れ下がる紐に他の属性である死ぬ気の炎を灯すことにより、一時的に使えるため、それを利用して行動を取っている。
これに関しても他言無用で頼む。ナツキを守るために必要なことだからな。
何が原因で敵対組織にこれがバレるかわからないため、なるべく明かさないようにしているんだ。」
「・・・・・・。」
ジョットの真剣な言葉に、家光は承諾の意味を込めて頷く。それを見たジョットは安心したように笑ったのち、静かに空を見上げた。
そこには霧の炎で作られた1羽の鳥が暗闇に羽ばたいており、ある方角へ向かって飛んでいる。
「早いとこ移動した方が良さそうだな。イエミツ。ついてきてくれ。襲撃者の居場所が特定できた。」
「!?それは本当ですか!?」
「ああ。念の為、幼い雷の守護者達を自宅へと戻したことは正解だったな・・・・・・。
行くぞ、イエミツ。ナツキ達に知らせなくてはならないことがあるのだろう?懐に入っている書状に関して・・・・・・とかな。」
「!・・・・・・はい!」
家光の返事を聞いたのち、ジョットは空を舞う1羽の霧の炎の鳥を視界に捉えながら、地面を強く蹴り上げる。
そのスピードは、家光ですら一瞬見失ってしまう程のもので、慌ててその背中を追うように走り出したが、一定の距離まで近寄れた以降、その距離が近づくことは叶わなくなる。
なんとか自身に追いつくように走ってくる家光。そんな彼の姿を、ジョットは度々確認しながら、自身の速さを調節していく。
それに気づいた家光は、自身の能力と目の前を走る先祖の能力の差を通関することとなった。
─────・・・・・・これが・・・・・・ボンゴレⅠ世・・・!!9代目や、ナツ、そして、オレの先祖でもある始まりの大空・・・・・・!!
再度目の前にいる存在を認識した瞬間、家光の視界は次々とひび割れが入っていき、まるでガラスが砕けるように崩れ去る。
同時に目の前にいた愛娘の姿は、愛娘が持ち合わせているものと全く同じ金色の髪を持つ青年の姿へと戻り、上質な黒のマントを靡かせて市街地を走り抜けていた。
─────・・・・・・は・・・・・・はは・・・・・・。実力が、違い過ぎるだろ・・・!!
時折自身の方へと視線を向けては、移動速度を緩める様子から、自身が目の前にいる先祖から力を加減されているのは明らかだった。
それだけではない。幾度も修羅場を抜けてきているからこそ、目の前にいる存在がどれだけ雲の上にいる存在であるかを痛感してしまう程の力と存在感を感じ取れてしまっていた。
どう言うわけか、目覚めてしまった超直感・・・・・・一度だけ、9代目からそれを指摘され、愛娘である奈月の考え次第では、門外顧問をやめ、10代目を引き受けないかと言われ、検討することもすすめられた家光だったが、彼は、突如現れた始まりの大空を見て、その考えは一瞬にして消え去った。
─────・・・・・・オレが、引き受けられるわけないじゃないですか、9代目・・・・・・!!
歴代最強と謳われた、全てを包み込む始まりの大空。原点にして頂点といっても過言ではない存在を目の当たりにして、家光は自身の能力の低さを思い知る。
自身が仕えている9代目すらも、弱いと思えてしまえる力や、惹きつけられるような眩いばかりの光は、彗星のように空を切り裂いていた。
その姿に一度俯く家光。しかし、次に顔を上げた時、彼の瞳には強い決意が宿っていた。
─────・・・・・・9代目。あなたの話はありがたいものでした。ですが、オレは、目の前を走る彗星のような輝きを放つことはできません。
だから、その話はなかったことに。オレは、目の前の彗星のように眩い光が通り抜ける先を邪魔する障害を無くしていくことの方がお似合いのようです。
同時に彼は脳裏に浮かべる。目の前を走り抜ける彗星のように、眩い光を放って走り抜ける愛娘の姿を。
─────・・・・・・9代目が引退する頃には、オレも結構年食ってると思うし、オレがいる場所にも後任が出てくるかもしれないが、後任に任せなきゃならねー時が来るまでは、父さんがお前の道を開けてやるからな、ナツ。
܀ꕤ୭*
ジョットが家光と共に町の中を移動すると同時刻、始まりの霧を連れて町を移動していた奈月は自身の方へと近寄ってくる複数の気配を感じ取り、その場で静かに足を止めた。
「ナツ!ただいまだものね!」
「お待たせいたしました、奈月。」
「究極に頼まれたことをこなしてきたぞ!」
「Dに変なことはされてねーよな?」
同時に現れたのは4人の青年達。
若草色の髪をした青年以外の手元には意識を失った3人の黒服の男達を縛ったロープが握られており、若草色の髪をした青年だけは、奈月にぎゅっと抱きついた。
「お帰りなさい、ランポウ君。雨月さんとナックルさん、それにGさんも。
現れた4人の青年・・・・・・初代ボンゴレの守護者達である、ランポウ、雨月、ナックル、Gの4人を出迎えた奈月は、自身に抱きついているランポウを優しく抱きしめ返しながら笑顔で言葉を返した。
「ちょっと、ランポウ。何私のナツキに抱きついているのですか?離れなさい。」
「はぁ〜?ナツはDだけのものじゃないものね。オレ様達のお姫様だし。」
「ずっと思ってたが、やっぱそうだよな?」
「そうでござるな。私達は奈月がいなくてはこの場にいることができぬ故、我々の姫君で間違いはありませぬ。」
「我々が守り、育てる対象でもあるからな。究極に同意だ。」
その瞬間、奈月に抱きつくランポウに対して、気に入らないと言わんばかりの表情を見せて言葉を紡ぐD。
しかし、彼の言葉を聞いたランポウを始め、彼女の周りに集まっていた初代ファミリーは、奈月は自分達全員の姫君であり教え子だと称し、ランポウごと自分達の方へと彼女を引き寄せた。
これまでなかった返しを食らい、Dは一瞬目を見開いたが、直ぐに端正な顔に青筋を浮かべる。
「・・・・・・何やってるの?これ。」
「あ、アラウディさん。」
今にも喧嘩が勃発しそうになっている中、現れたのはアラウディだった。
奈月達に合流した彼は、Dから引き離すように奈月を囲み、人間団子になっている同僚達と、そんな彼らを苛立った様子で見つめているDを交互に眺めたのち、意味がわからないと言わんばかりの表情を浮かべながら言葉を紡ぐ。
「Dさんが私を自分の奈月だって言ったから、ランポウ君達が奈月は自分達の教え子でお姫様だって言い出した。」
「ああ、それで人間団子になってたんだ。」
ぎゅむぎゅむとランポウに抱きつかれ、Gからも肩に手を添えられ、ナックルと雨月の2人が奈月を隠すように壁になっていると言う完全防御体勢になっている奈月からことの顛末を聞いたアラウディは、納得したように頷いたのち、ランポウとGを彼女から離しては、そのまま彼女をコートの中にしまう。
「しまっちゃう雲さん。」
「ナツキはあったかいからね。それよりD。ナツキは君のものじゃないから、さっさと消えてもらえる?この子は僕達のだから、手を出さないで。」
「そーだそーだ!手を出さないで欲しいものね!」
「はぁ!?ナツキは私の女王ですが!?あの世に叩き返しますよ!?」
「「「お前が還れ。」」」
「奈月の独占は良くないでござる。」
「ああ。究極に良くないな。どこかに聖水はないだろうか?日本ならば清めの塩とかの方がいいのか?」
サラッとDを追い返そうとするGとアラウディとランポウの3人に、苦言を申し出る雨月。
ナックルに至っては、その場でDを退治しようと思っているのか、塩や聖水を探し始めた。
あまりにも賑やかな現状を見て、奈月は脳裏にいる呪いが解けたリボーンがCHAOSだな、と呆れたように言葉を紡いだ気がした。
「と、そうだった。そろそろこっちに、今回の相手側がやってくるよ。敵対行動を取ると思うから、ナツキは準備して。」
「わかった。」
奈月が静かに返事をする中、騒いでいた始まりの者達は、合流した始まりの霧の幻術により仔猫の器へと入り込む。
先程まで腕にはめていたバングルは、全て首輪へと変化しており、その場に落とすことはなかった。
警戒体勢を取る仔猫達を見て、奈月は静かに顔を上げる。
彼女の視界に入り込んだ場所に、一つの影が現れるのは、それとほぼ同時だった。
沢田 奈月
初代組と共に協力して襲撃者達を締め上げたボンゴレの女王。
この度、ボンゴレファミリーの内部に自身のファンクラブがあることを知り、遠い目をしてしまっていた。
D・スペード
奈月と共に行動を取り、敵対者にマインドコントロールも使っていた始まりの霧。
ボンゴレファミリーの内部情報を、我が女王のためにサラッと持ってくる。
実はファンクラブを立ち上げた張本人で、ボンゴレ内部で好き勝手動き、彼女の味方を増やしている。
霧を使った初代組
改めてDの霧の炎の強さを思い知る術士もどき体験をした始まりの貝。
奈月はオレ達全員のお姫様で教え子です!!
ジョット
とうとう家光に身バレした始まりの大空。
だけど本人は誰にもバラさない約束さえちゃんとしてくれるなら構わないと思ってる。
沢田 家光
超直感を会得したことにより、一時期に9代目から10代目になることを検討してみないかと言われた門外顧問。
しかし、現れた先祖が持ち合わせている力や、自身の愛娘の力が明らかに自身は持ち合わせてないと思い知り、その話は蹴ることにした。
黒服さん達
フルボッコにされた。
レヴィ・ア・タン
ようやく人を見つけた。