最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
隼人を追って外に出て、走り回ること約10数分。並盛にある小さなお寺の階段を上がった先で、隼人を見つけることができた。
彼は木の枝に寄りかかっており、少々呼吸を荒くしている。それだけ走ったと言うことか、それとも気分が悪くなってるせいなのか。
「は〜やと。」
「うお!?って10代目!?」
とりあえず今の彼の状態を見ようと考えた私は、手にしていた凍らせているスポーツドリンク入りのペットボトルをその首元に添え、漫画で見かけるキャラのように、軽い調子でその名前を呼ぶ。
ひんやりしたペットボトルを首に当てられた隼人はと言うと、結構びっくりしたような様子で、私のことを呼び返した。
あ、よく見ると隼人、私があげた棒付きキャンディー咥えたままだ。固まっていたから落としたと思っていたけど、そのまんまだったんだね。
「ほい。こんな炎天下の中だし、喉が渇いてると思ったからスポドリ持ってきた。君にあげるから飲みなよ。」
「ありがとうございます、10代目。それとすみません。あんな醜態を見せてしまって。」
「いんや?別に気にしてないから謝らなくてもいいよ。誰にだって苦手なもんはあるだろうからね。
まぁ、君の場合は、苦手どころか完全な拒絶反応のようにも見えたけど。」
木陰に入って話そうかと伝え、未だに木に寄りかかっている隼人の手を引き、この場からちょっと移動する。
流石にこんな神様が座すような場所で飲食するのは失礼だろうから、近場の公園辺りまで。
たどり着いた公園には、一休みするための座る場所と、日を避けるための屋根がある。
小さい子達が元気よく遊んでいるけど、この屋根の下辺りがいいかな。
「さて、じゃあ話を聞いてもいいかな?私から見たら、ビアンキさんは弟想いの良いお姉さんに見えたけど、隼人の反応からして、それなりに大きなトラウマがあるように見えるし、ね。
あ、スポドリ飲みながらでいいから。私も自分の持って来てるし、一緒に飲もうか。」
「っス。お手数おかけします……。」
「気にしないでいいって言ってるでしょ。ファミリーのボスたるもの、部下の様子や状況を把握するのも仕事のうちってね。まぁ、私はまだ完全にボスってわけじゃないけどさ。」
「10代目ぇ………!!」
私の言葉を聞いた隼人が、翡翠のような緑色の瞳をキラキラと輝かせる。
気にかけるだけでこの反応とはいかに……と一瞬思ってしまうけど、まぁ、彼の琴線に何かしら触れたんだろう。
そう思いながら、自分用に持ってきたスポドリを口にする。すると、隼人もそれに倣うようにして、スポドリを飲み始めた。
「多少は落ち着いた?」
「はいっス。」
「んじゃ本題。隼人のビアンキさんに対する拒絶反応は、何か原因があるのかな?」
「……ええ。あの、聞いてもらえますか?」
「ん。いいよ。聞いてあげる。」
「ありがとうございます、10代目。」
私に断りを入れた隼人は、ゆっくりと話し始めた。どうしてビアンキさんに対して、かなりの拒絶反応を見せてしまうのかを。
曰く、隼人は8歳になるまで、自身の親が持つ家……城でビアンキさんと暮らしていたようだ。
話によると、その城ではかなりの頻度で大きなパーティーが行われており、6歳になった時に、彼はパーティーの招待客の前でピアノを披露することになったらしい。
その時、隼人の父親が気を利かせたのか、それともビアンキさんが気を利かせたのか、どちらかはわからないけど、当時、幼かったビアンキさんからクッキーの差し入れをもらったらしいのだが、どうやらそれは、ビアンキさんが一番最初に作り上げたポイズンクッキングだったのだとか。
知らないうちにポイズンクッキングを口にしてしまった隼人は、もちろん体調を盛大に崩してしまい、ピアノの演奏もかなり悲惨なものとなってしまったようだ。
それを聞いた私は、思わず遠い目をしてしまう。ビアンキさんって、小さい時からポイズンクッキング作っていたのか……。
もう既にお腹いっぱいになってしまう程のとんでもカロリーストーリー……しかし、この話にはまだ続きがあった。
この世のものとは思えないピアノの演奏だったのに、それを聞いていた周囲の大人達は、彼の演奏を批判するどころか、大絶賛してしまったらしい。
結果、それに気をよくした隼人とビアンキさんの父親は、隼人のピアノの演奏会を増やし、演奏会があるたびにビアンキさんにクッキーを焼くように言ってしまい、隼人はそれを毎回食べる羽目になったようだ。
「結果的に、オレの体にはその恐怖がしみついてしまって、今ではアネキを見るだけで腹痛が……。そのあとにわかったのですが、どうならアネキは、作った料理が全てポイズンクッキングになってしまう才能の持ち主だったようなんです……。」
「ワォ……ここまで悲劇と言う言葉がぴったりと当てはまる話を聞いたのは初めてだよ。弟をよろしくねって言ってくるくらいには隼人のことを大切にしているいいお姉さんだと私は思っていたんだけど、どうやら君にとってはとんだ悪夢の権化だったらしい……。」
「ええ。大嫌いです。」
ピシャリと言い放つ隼人の姿に引きつった笑みが浮かぶ。ここまで感情が正反対な姉弟だとは思いもよらなかった。
見ただけで急激な体調不良に陥るのは困ったもんだ。
「10代目……こんなことを言うのはあれですが、オレはアネキに近づけません。ですので、可能であれば、アネキをこの町から追い出してもらえないでしょうか?」
「ええ……?まさかの依頼にビックリなんだけど。」
どうしたものかと考える。ここまでひどい隼人の様子を見ていたら、なんとかしてあげたい気持ちは山々だ。
でも、ビアンキさんは私が自ら自宅に招き入れたお客様でもある。
だから、家から出て行ってもらえないかなんて言えるはずもなく、お手上げ状態だ。
「作戦ならあります!」
「いや、うん、作戦の有無で躊躇ってるわけじゃなくてね?」
「実は、アネキにはリボーンさんに惚れるまえにメロメロだった男がいたんです。そいつは事故で死んじまったんですが、未だにアネキはそいつのことが忘れられないみたいなんです。」
「話聞いて?」
こっちのお願いに耳を傾けることなく、隼人は話を進める。今でも忘れられないその元恋人とそっくりな男性を探し出し、ビアンキさんに引き合わせることができれば、きっとビアンキさんは地の果てまでその相手を追いかけて町を出ていくはずだと言う、かなりぶっ飛んだ作戦を実行したいようだ。
確かに世界には似たような存在が3人はいるはずだと言われているけどさ。そう言う問題じゃないんだわ。
ていうか、なんで隼人って頭いいのに、たまにポンコツになっちゃうの?
「これが元彼の写真です。」
「ちょっと〜?隼人く〜ん?少しくらいは私の話を聞いてもらえないか……な……マジか……。」
こっちの話など全く聞かず、懐から一枚の写真を見せてくる隼人。これは、失敗してでもやらなきゃ止まらないやつだと半ば諦めながら写真に目を向けてみると、そこにはビアンキさんともう1人……何やら見覚えのある容姿をしている男性が写っていた。
その男性は、大きなランボにめちゃくちゃそっくりで、ここまで過去の人と未来の人の容姿が似るのかと唖然とする。
「例えそっくりな奴が現れるのが一瞬でもいいんです。アネキはそいつを探して出ていくでしょうから。」
「うーん……そう簡単に行かないと思うんだけどなぁ……」
多分、リボーンがいる限り彼女はこっちに戻ってくるよ?と言う言葉は口にすることができず、隼人が見せてきた写真を受け取る。
もう、やるしかないのかなぁ……これ……。
沢田 奈月
あまりにも必死な獄寺を見て、彼が提案してきた突拍子もない作戦を決行することになってしまった転生者な10代目。
自分が彼女を招き入れた……と何度か言おうと思ったが、獄寺の容態を気遣って口にすることができなかった。
獄寺 隼人
奈月の心遣いに感激した最初のファミリー。
自身が近づけないという情けない姿を見せてしまったが、これだけは克服することができないという理由から、奈月の手を煩わせてしまうことに申し訳なさを抱きながらも、ビアンキを町から追い出してほしいとお願いした。