最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 雷鳴の衝突が終わりを迎え、ひとときの休息を女王は得る。
 彼女の携帯に一つの連絡が入ったのは、それとほぼ同時だった。



終幕、VS.雷の守護者

「はぁ〜・・・・・・先生のおかげでなんとか今回も乗り切れた・・・・・・。ったく、5歳の男の子すら平然と戦場に立たせないといけないとか、マジでこの争奪戦、倫理観終わってるだろ。

 いや、マフィア相手に倫理だなんだ言ってられないのはわかってるけどさ・・・・・・」

 

 眠ってしまったランボを父さんに預け、自宅の方へと連れ帰ってもらい、わたしはリボーンと初代ボンゴレファミリー全員を率いて、拠点となっている山の付近の屋敷へと戻っていた。

 本当は、わたし自身も自宅に帰って休みたかったけど、XANXUSさんが本格的に動き始めてしまった以上、ジョットさんから教えてもらった零地点突破を身につけるためにも、訓練がしやすいここに戻っていた方が、何倍も環境としてはいいために。

 まぁ、何日も自宅を空けているせいで、母さんの方が心配になるけど、あっちはとりあえず父さんがいてくれるし、問題はない・・・・・・と思う。

 

「・・・・・・あ〜・・・・・・自分が手出しできない状況が少なくとも4回はあるのめちゃくちゃ気分悪い。

 みんなの力を借りる以上、絶対にみんなを死なせたりするつもりはないけど、ストレスマッハだわ・・・・・・。」

 

 それを少しでも防げる様にと様々なサポートをしてくれるDさん達には本当に感謝しか出てこないものだ。

 特に、Dさんが施してくれる精神の保護にはかなり助けられている。いつかはこれに依存することなく振る舞える様にならないといけないのはわかっているけど。

 

「・・・・・・せめて、このリングの争奪戦が終幕するまでに、依存状態から離れるようにしたいところだけど・・・・・・さて・・・・・・どうやってこの守られている状態から離れるべきか・・・・・・」

 

 そこまで考えて、わたしは深く溜め息を吐く。なんと言うか、どうしても周りの能力を分析する癖があるせいで、自身の陣営と相手の陣営の能力の差が明確にわかってしまうから、隼人と武が戦場に立つ際は、Dさんに精神を保護してもらわないとどうにもできない様な気がしてきた。

 

「こんな甘えたこと言ってる場合じゃないのに、どうしても頼ってしまう自分の弱さを殴りたい・・・・・・。

 切り替えることが大事だとわかっているのに、それができないとか・・・・・・。」

 

 どうしたらいいかわからず、わたしは再び深く溜め息を吐く。

 こんなんじゃ、ボスを継いでも甘さがどうも出てしまいそうだ。なんとかしてそれを抑制しないと・・・・・・。

 

「ん?」

 

 ぐるぐるとどうすれば甘さを抑制することができる様になるか思案していると、不意に自身の携帯から着信を知らせる音が聞こえてきた。

 すぐに携帯電話に視線を向ければ、そこにはベルフェゴールの文字。

 

「え?何で電話して来てんのあの王子。」

 

 まさかの着信元が見えてしまい、思わず表情を歪めてしまう。

 明日、隼人とぶつかる相手が電話してくるとか余裕綽々ってこと?

 そりゃまぁ、隼人とベルフェゴールの実力は、かなりあるわけだけど、こっちの右腕候補だって日々成長してるんだぞ。

 

「・・・・・・ちょっと、なんで電話して来てんのベル?」

 

【お?やーっと出た。シカトされたかと思ったぜ?】

 

「こっちの質問に答えてもらえる?わたし、すっごく眠たいんだけど?」

 

 めんどくせー・・・・・・と思いながらも、渋々わたしは電話に出る。

 自分の実力自慢だとか、隼人に対する侮辱とかだったら即行で切ってやる・・・・・・。

 

【そう怒んなって。別に変なこと言おうと思ったわけじゃねーから。ほら、今日、姫ってば学校からすぐ消えたじゃん?

 だから姫と少し話たかっただけ。だって今日、全然話せなかったからさ。】

 

 ・・・・・・内心で悪態つきまくっていたけど、どうやらベルはわたしと話すためだけに連絡を入れて来たらしい。

 何度も言っているが、わたしと彼は敵対者同士なわけで、さらに言うと明日衝突する張本人というのが現実だ。

 そんな相手に、ただ話したかったからと言うだけで連絡を入れてくるとは・・・・・・本当にこの王子様は変わり者だ。

 

【今日、なんで姫はすぐ帰ったわけ?明日、姫が作った菓子食わせてって言ったじゃんオレ。】

 

 そんなことを思っていると、少しだけ拗ねたような声音でベルから質問が飛んできた。

 それに関して、そう言えばそんな話してたな・・・・・・と少しだけ思ってしまったわたしは、軽く思案する。

 

「・・・・・・そんなことする義理はないだろって師匠(せんせー)に強制帰宅させられた。」

 

【せんせーって誰だよ。】

 

「ベルに見せつけ・・・・・・いや、聞かせつけ?キスをして来た人。」

 

【アイツかよ・・・・・・何?姫ってそのせんせーってヤツと付き合ってんの?】

 

「は?んなわけないでしょーが。向こう側から一方的に想われるだけだよ。こう見えて結構モテるもので。」

 

【姫がモテるのはわかりきってるっつーの。つか、付き合ってないヤツからキスされるとか嫌じゃねーの?王子だったら嫌だけど。】

 

「もう慣れた。わたしの周り、キス魔が多くてね。」

 

【キス魔が多いって、それはそれでどうなんだよ。】

 

「それはそう。」

 

 呆れたような声音でこちらの環境に当然の疑問を口にしてくるベルに同意の言葉を返せば、姫だって疑問持ってんじゃん、とさらに呆れたような声が返って来た。

 いやまぁ、確かにそうなんだけどさ。骸と言い、Dさんと言い、リボーンと言い・・・・・・さらに言うと未遂だったけど度々狙ってくる恭弥さんとか、ディーノさんとか・・・・・・もはやそう言った連中が周りに生息し過ぎているせいで、キスをされてもまたかと言う感情の方が強くなり始めているのがわたしの現状だったりする。

 

【まぁ、姫が今日いなかった理由はよくわかったし、これ以上の言及はやめとくか。

 にっしても、姫ってば相変わらずボスに対して怯まねーよな?割とボスと関わってる期間はなげーけど、あそこまで平然とボスに対して堂々と発言してるヤツって今まで王子も見たことねーよ。】

 

 キス魔ってどうやったら大人しくなるんだろ・・・・・・なんて思考を斜め上に吹っ飛ばしていると、電話越しにベルの笑い声が聞こえてきた。

 どうやら彼は、XANXUSさんに対して怯まずに対応していたわたしの姿が面白かったようだ。

 

「・・・・・・ここだけの話、割とあれでもビビっていたりはするよ。でも、師匠(せんせー)からボンゴレファミリーのボスになるのであれば、例え相手が年上だったり、ガタイのいい男性であったりしても、怯むことも媚びることもしないで、気高く咲き誇る一輪の花のように堂々たる淑女たれと教えられたものだから、それをなんとか実行してるだけに過ぎない。

 君も知っての通り、もともとわたしは一般人だからね。実際は怖いと思ったり、さっさとこっから離れたいと思ったりすることも度々ある。」

 

【へぇ〜・・・・・・意外。姫って割とボスにビビってたんだ?それを悟らせないようにするとか、本当姫ってつくづく一般人からかけ離れた精神をしてるよな。】

 

「褒めてるのか貶してるのかわからない言葉だな・・・・・・。」

 

【感心してるんだよ。普通は取り繕えなくなるくらいビビって腰抜かしてもおかしくねーもん、うちのボスって。

 だって王子ですらたまにビビるんだぜ?なのに一般人の姫がビビらないとかどうなってんだよこいつ案件じゃん?

 まぁ、実際はビビってたみたいだし、それをうまく誤魔化す技術を持ち合わせてるってだけの話だったみたいだけど、本来ならばそれすらできなくなると思うぜ?】

 

「まぁ、暗殺部隊の頂点の人なんだから、そっちが普通だろうね。」

 

【そう思ってんなら姫だって普通じゃねーってことじゃん。無自覚でそれとか、ホント姫って面白いよな。】

 

 某お伽話のチェシャ猫のように、しししっと楽しげに笑うベル。

 正直言って、わたしがあんな風に振る舞えるようになってるのはDさんからの支援があってこそなんだけど、これに関しては黙っておこう。

 

「言っとくけど、それなりに親交があるからベルにこのことを話しただけだからね?絶対にXANXUSさんにこのことバラさないでよ?

 わたしだって消されたくないし、ゴミ以下の扱いされたくないんだから。」

 

【りょーかい。まぁ、姫の秘密を知ってるのは王子だけって奴の方が優越感あるし?特別にボス達には黙っててやるよ。】

 

「それはどうも。ベルに特別視されてることに関して、疑問は尽きないけど。」

 

【王子が気に入ったから特別扱いしてやってんの。姫じゃなかったら絶対に言いふらして姫達を消してもらうっつーの。】

 

 “王子以上に生意気な奴とか大っ嫌いだし”、と本音としか言いようのない声音で言葉を紡ぐベルに、少しだけ背筋が寒くなる。

 ・・・・・・うん。こればかりは気に入られたわたしグッジョブ。向こう側にある程度こっちの意見に対して融通を利かせてくれる人がいてくれて助かったな。

 

【あ、そーそー。姫のヴァリアー入りの話なんだけどさ。】

 

「ちょっと待て。まさかとは思うけど、本気でXANXUSさんにそのこと話したの?」

 

【は?何当たり前なこと言ってんの?姫のことこっちに入れたいって考え、本気なんだけど?】

 

 サラッと告げられた言葉に思わず頭を抱える。

 まさか、本気でベルがXANXUSさんに話を持って行くとは思わなかったんだけど?

 

「・・・・・・あの人は、こっちが負けたら全て奪うって宣言したばかりだよね?ベルだって話を聞いていたはずなんだけど?」

 

【そりゃ聞いてたぜ?まぁ、ボスならそれくらい普通にするだろうし、王子も反対はしねーけど、姫に関しては別。

 負けた奴らはどうせ始末するわけだし、その分空席ができるじゃん?だからその空席に姫座らせれね?ってボスに聞いてみたんだよ。】

 

「なんであえて聞いたんだ。命知らずか?」

 

【ボスが姫のこと気に入ってることに王子が気づかねーはずがねーじゃん。こう見えてこっちの世界では天才って言われてんだからさ。

 で、まぁ、話を聞いてみたらさ?王子が明日の争奪戦で姫の守護者に勝ったら聞いてくれるって話になった。】

 

「そんでもってなんでXANXUSさんは拒絶しないんだ。弱いやつは消すが心情でしょうがそっちの王様は。」

 

【そりゃあ、ボスは姫を再評価するって言ってたし?姫の能力が高いのは十分過ぎるくらいわかってるもん。

 で、この再評価でボスも姫の能力や考えを高く評価したってこと。だからボスはボンゴレを継いだら姫の周りはカッ消すけど、姫のことだけは生かしておいてやるってさ。

 だから楽しみにしてなよ。そっちの守護者、絶対王子がぶっ殺してやるから。】

 

「殺意マックスの宣戦布告などいりません。もう切りますよ。そろそろ眠気が限界なので。」

 

【いや、なんで急にそっちの話し方したし。それやめろって王子言った・・・】

 

 何か言っていたような気がするが、強制的にわたしは自身の携帯電話の通話を終了させる。

 このあとまた電話をされたらめんどくさいため、電源もしっかりと切りながら。

 それを確認した後、わたしはその場で深々と溜め息を吐く。

 

「随分とでけー溜め息だな。」

 

「・・・・・・リボーン。」

 

 すると、いつからいたのか、ベッドの上に大の字で寝転がっているわたしのことを、リボーンが上から見下ろしてきていた。

 まさか、リボーンが入ってきてることに気づかなかったとは・・・・・・と少しだけベルとの電話に集中し過ぎたことを反省していると、彼はすぐにベッドに腰掛けた。

 

「ベルフェゴールの奴とまさか電話で繋がっていたとはな。」

 

「向こうが勝手に連絡先を渡してきたんだよ。最初は無視したかったけど、あの人、割と自己中心的に動くタイプの人だったみたいだから、連絡しない方がめんどくさいことになると思って仕方なく連絡した。」

 

「なるほどな。随分と気に入られたもんだな、お前は。」

 

「本当にね。一体何が彼の琴線に触れたのか全くわからない。」

 

 ぐでーっとだらしなくベッドに寝転びながら文句を言っていると、リボーンが小さく肩をすくめる。

 また無自覚にたらし込んだかとか言ってきたけど、わたしはたらし込んだ記憶は全くと言っていい程にない。

 ただ、Dさんに教えてもらったことをうまく利用して、一般育ちにありがちな弱さを巧みに隠して誤魔化していただけだ。

 なのに、何が原因で彼の琴線に触れてしまったのか・・・・・・

 

「・・・・・・あんのメカクレワガママ王子・・・・・・XANXUSさんにわたしのヴァリアー入りを打診しやがって・・・・・・。」

 

「ああ・・・・・・ルッスーリアが言っていたお前をヴァリアーに入れるって話か。なんだ?ベルフェゴールも乗り気だったのか?」

 

「正確にはベルが言い出しっぺで、芋蔓式に他のヴァリアーも賛成し始めた。

 わたしの能力を評価してくれるのはありがたいけど、その能力を活かせるようにヴァリアーに入れる話に関しては迷惑以外の何物でもないっての。」

 

「確かにな。だが、相手はあのXANXUSだ。いくら能力が高くても、自身に敵対したような女を引き入れるなんてことしねーだろ。」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・おい、そこでなんで黙った?まさかとは思うがXANXUSまで乗り気だとか言わねーだろうな?」

 

「・・・・・・・・・・・・乗り気かどうかはわからないけど、ベル曰く、わたしの陣営が負けた場合、わたし以外は容赦なくカッ消すけど、わたしのことはベルの好きにしていいらしいよ。」

 

「CHAOSだな・・・・・・。」

 

「CHAOSだよ。そこは拒絶しろよ。暗殺部隊に入りたいなんて思ってないっての・・・・・・」

 

 うつ伏せになって文句垂れていると、リボーンがわたしの頭を優しく撫で始める。

 緩やかに頭の上を滑り降りるその手はとても心地良くて、もっとと強請ってしまいたくなる。

 ・・・・・・今くらいは別におねだりしてもいいかな・・・・・・?

 

「ん?どうした?」

 

 そこまで考えたわたしは、チラリとリボーンの顔を見上げる。

 すると、わたしの視線に気づいたらしいリボーンが、小さく首を傾げながら、どうかしたのかと聞いてきた。

 

「・・・・・・ねぇ、リボーン。甘えたいって言ったら、甘えさせてくれる?」

 

「!」

 

 少しだけ無言を返した後、わたしは静かに自身の考えを口にする。

 まさか、わたしが自ら甘えたいと言ってくるとは思わなかったのか、リボーンは一瞬、切れ長の涼しげな目を丸くした。

 だけど、すぐにその表情には穏やかな笑みが浮かび、丸くされていた切れ長の目には、優しい温もりと、愛おしい者を見つめる甘い光が揺らめき始めた。

 

「・・・・・・お前が自らそんなことを言ってくるとは思わなかったぞ。」

 

「ダメ?」

 

「CHAOSだな。誰もダメだなんて言ってねーだろ。甘えたい時に甘えたいって意思を見せてくれたってことは、それだけオレに、お前が心を許してくれた証拠だしな。」

 

「・・・・・・うん。この人になら甘えたい、甘やかされたいって思ったら、それだけわたしは、その人に対して好意を持ってる証拠。

 骸とかがいい例。彼の前では、どうしても甘えたい自分が真っ先に表に出てきてしまう。」

 

「・・・・・・今、桜奈の前にいるのはオレだ。他の男の名前なんか呼ぶな。」

 

「・・・・・・ん。」

 

 少しだけ不満そうな表情を見せたリボーンに、短い返事を返し、わたしはリボーン側に近寄るように、コロンとベッドの上を転がる。

 そして、甘やかしてほしいことを教えるように、自身の両腕をリボーンに伸ばし、抵抗の意思は持ち合わせてないこと見せれば、何度か小刻みに瞬きをされた。

 でも、これがわたしの甘えたいモードであることを、リボーンはすぐに理解してくれたのか、不満でへの字に噤まれていた口元に再び笑みを浮かべ、両腕を伸ばしたわたしが抱きつきやすいようにと体を傾けてくれた。

 すぐにその体に腕を回し、リボーンにギュッと抱きつくと、リボーンの逞しい手が背中に回され、そのまま軽々と抱き上げられる。

 程なくしてベッドに座っているリボーンの膝の上に座らされた。

 

「どんな甘やかしがご所望だ?」

 

「言わないとダメ?」

 

「オーダーしてくれた方が、オレとしては楽なんだがな。」

 

 やっぱリボーンの腕の中は落ち着くと思いながら、彼に寄りかかりながら脱力していると、リボーンからどんな甘やかしを望んでいるのか問われる。

 正直、今は全力で誰かに甘えたい気分だから、オーダーしたい甘やかしというのはほとんどないため、リボーンなりの甘やかしでいいのだが、こうだと線引きしておく方が、彼はやりやすいのだろうか?

 でも、あんまりこうしたいと言うのは思いつかなくて、とにかく甘えさせてほしいと言う気持ちばかりが募ってしまうため、なんとも答えにくい質問だ。

 

「どうした?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 答えを探すために少しだけ黙り込むと、リボーンから声をかけられる。

 よく見るとその表情はどこか意地悪な笑みが浮かんでおり、リボーンはこっちの反応を見て楽しんでいると言うのが丸わかりだった。

 あ、多分この人、わたしの気持ちをある程度読んだ上でこんな質問をしてきたんだ・・・・・・彼の感情を把握するのは、なかなか簡単だった。

 最強のヒットマンが把握しやすくしてどうする・・・・・・と思わなくもないけれど、きっと彼はわざとそうしている。

 彼なりのレッスン・・・・・・甘えたがり屋なわたしが、気を遣って我慢しないようにするための、おねだり講座といったところだろう。

 そんな意地悪をしてくるなと正直に言いたい。でも、多分こうしてほしいとわたしが言うまで、リボーンはわたしを甘やかしたりはしないだろう。

 

「・・・・・・こうしてほしいなんてオーダーはないよ。ただ、とにかく甘やかされたいだけだもん。

 どれだけ甘やかされたいかなんて答えもない。とにかくリボーンに甘えたい。」

 

 それならと、わたしは自分の思いを静かに吐露する。

 どこか疲れたこの精神を、一刻も早く癒したかった。

 

「ねぇ、リボーン。どんな風に甘やかされたいなんて考えつかないよ。だから、リボーンが思う甘やかしをちょうだい。」

 

 リボーンの胸元に軽く擦り寄りながら、どんな風に甘やかされたいのかを静かに伝えると、小さな笑い声が聞こえる。

 視線を静かに上げてみると、彼は穏やかな笑みを浮かべたまま、わたしのことを見つめ返していた。

 

「オレが思う甘やかしでいいんだな?後悔するんじゃねーぞ。」

 

「?甘えたいって言ったのはわたしなのに、なんで後悔の話になるの?」

 

「オレのオーダーメイドでと依頼したんだ。それならオレは、存分に桜奈を甘やかしてやるさ。

 だが、そのせいでこっちにハマって抜け出せなくなっても知らねーぞ。前にも言っただろ?甘えたい時や、かまって欲しい時は遠慮なくそれを訴えてこいと。

 その時は、オレから最上級の甘やかしをお前に与えてやるとな。つまりはそう言うことだ。

 オレに全てお任せなんてしたら、オレは加減なく桜奈を甘やかすし、そのままハマらせて抜け出せなくするぞ。それでもいいのか?」

 

 リボーンの目が優しさと愛おしさを宿すと同時に、目をつけた獲物が目の前で無防備になったのを確認したヒットマンの輝きをチラつかせる。

 そのことに思わずわたしは固まってしまった。これに頷いたら、厄介な方向に転がされていくと気づいてしまったがために。

 

「・・・・・・なんかすごく怖いんだけど。」

 

 しばらくの間、思考を停止させてしまったわたしは、少しして思考をなんとか動かし、リボーンの加減なし程怖いものはないと苦笑いをこぼす。

 わたしがこんな返答をすることは、彼の予測の範疇だったようで、くつくつと喉を鳴らすように笑い声を漏らした。

 冗談だとでも言いたげだけど、わたしが見たあの目は間違いなく本気以外の何物でもなくて、頷かなくてよかったと軽く安堵する。

 

「で?どうする?オレは、さっきのオーダーでも全然構わねーが・・・・・・」

 

「流石にダメにされそうだから、最上級の甘やかしは遠慮させてもらうよ。」

 

「そうか。それは残念だな。」

 

 一つもそう思ってないくせに、と言う言葉はなんとか飲み込み、わたしはリボーンに寄りかかる。

 最上級はいらないけど、甘えたい気持ちは本当だから。

 

「今日はなんだか少し疲れたし、人の温もりが恋しいから、とりあえずリボーンに添い寝してもらいたい。

 この逞しい腕の中に収まったまま、リボーンの温もりを感じながら眠らせて。」

 

「・・・・・・意外にも大胆なオーダーで少し驚いたな。」

 

「ダメ?」

 

「いいや?さっきも言ったように、オレは桜奈が甘えたいと思っているなら、いくらでも甘やかしてやることしか考えてねーからな。

 最初のお願いが、添い寝だったことに驚いただけだぞ。遠慮しがちな桜奈のことだから、そこまで大胆に甘えてこないと思っていたからな。

 

「・・・・・・わたしだって大胆に甘える時は甘えますよーだ。」

 

「そう不貞腐れんな。桜奈のことは、まだまだオレも知ってる途中だからな。知らねーことだらけでよく驚かされるってだけの話だ。」

 

 ムスッと軽く拗ねていると、リボーンはわたしの反応に笑い声を漏らしては、下を向いていたわたしの顎にそっと手を添えて上を向かせる。

 同時に唇へと落とされたのは触れるだけの優しい口付けで、思わず目を丸くした。

 

「これからもそうやってオレに桜奈のことを教えてくれると助かる。お前のことを知ることで、オレも対応をアップデートできる。

 確かにオレは、お前よりも長く生きている分、蓄えてきた知識や経験がかなりあると自負しているが、お前に関しては深く知識を持ち合わせているわけじゃねーからな。

 お前のことをより多く知ることで、何を望んで、何を拒んで、何を求めているのかを把握することができるようになる。

 そうすればお前が持ち合わせている渇望の全てを潤してやることも可能になるだろ?

 だから、そうやって時折でいい。少しずつでいいから、オレにお前のことを深く教えてくれ。」

 

 “いいだろ?”と、甘くて優しい笑みを浮かべながら問いかけてくるリボーン。

 隠しきれていない大人の男性としての色気に、少しだけ顔を赤くしそうになりながらも小さく頷けば、リボーンは嬉しそうな笑い声を漏らし、くっついているわたしを抱き上げる。

 そして、そっとわたしをベッドの上に寝転がせては、そのまま体を抱きしめてきた。

 同時にふわりと鼻腔をくすぐったのは、ボディーソープやシャンプーなんかの石鹸のものではない匂い。

 でも、全く知らない匂いと言うわけでもなく、わたしがよく知ってる優しい匂いだ。

 

「・・・・・・リボーンの香水?」

 

「ん?ああ・・・・・・こっちの姿だとどうもつけるのが癖になっててな・・・・・・キツかったか?」

 

「ううん・・・・・・全然キツくないよ。むしろ、すごく落ち着けてリラックスできるくらい、ふんわりと優しく香ってる。」

 

「そうか。まぁ、オレは一流のヒットマンだからな。香水の付け方も一流ってわけだ。強過ぎず弱過ぎず、程よくつけるための匙加減は、長らくこっちの姿をしてなくても、しっかりと頭に入ってる。」

 

「そうなんだ。わたしはたまにつけ過ぎたかな?ってなる時あるから、少しだけ羨ましいな。」

 

「今度教えてやろうか?」

 

「ん〜・・・・・・そうだね。ちょっと知りたいかも。いつかわたしも香水をつけなきゃいけない時とか度々出てくると思うし。教えてくれる?先生。」

 

「ああ。それくらいお安い御用さ。」

 

 穏やかな時間が流れる中、リボーンとのんびりと言葉を交わす。

 特にこれといった話題を作っているわけじゃないけど、自然と漏れ出す静かな会話は、連日の争奪戦で疲労していた精神を緩やかに癒してくれる。

 

「そろそろ時間も遅くなる。良い子は夢を見る時間だぞ。」

 

「何それ。わたしはそこまで子供じゃないよ。」

 

「オレからしたらまだまだ子供だが?」

 

「いつもはそっちが子供ぶる癖に。」

 

「普段はどう見てもこっちがガキだからな。まぁ、正直言って割と演じてる部分もあるから微妙に疲れるが。」

 

「それはなんとなくわかるかも。」

 

「だろうな。桜奈も演じる側だしな。」

 

「うん。」

 

 しっかりと体を抱き寄せながら、緩やかにわたしの背中を撫でるリボーンの手。

 男性の方が女性より体温が高いけど、こうして改めてくっついてみると、確かにリボーンはあったかい。

 対するわたしはちょっと低め。冷え性というわけじゃないけど、こんなにリボーンの体温を高く感じるんだから、きっとリボーンよりわたしの体温は低いのだろう。

 

「・・・・・・しっかりとくっつけ。寒いだろ?体温が低いぞ、桜奈。」

 

「ん・・・・・・やっぱ冷たかったか。」

 

「そうだな。感じる温もりから計算して、大体35.6あたりか。桜奈は平熱が低いのかもな。」

 

「・・・・・・なんで感じ取れる温度からこっちの平熱を当てるかな。」

 

「経験則に基づいた勘。」

 

「勘かぁ・・・・・・。経験ってスゴイナー・・・・・・」

 

 ・・・・・・一体この人は、何人の女性にハニトラならぬロミトラを仕掛けてきたのやら。

 なんかちょっと複雑な気持ちになりながら、わたしはリボーンの背中に手を回し、そのまま体を密着させる。

 急にわたしが密着してきたからか、背中を撫でていたリボーンの手が一時的に止まったが、すぐにまた背中を優しく撫で始めた。

 ・・・・・・わたしの足にリボーンの足がしっかりと絡まっているような気がするけど、気のせい・・・・・・だと思いたかったが、気のせいじゃないなこれ。

 しっかりと絡まってて抜け出せなくなっている。

 

「・・・・・・足絡まってる。」

 

「CHAOSだな。わざと絡めてるに決まってるだろ。」

 

「あ、ちょっと、そう言ってさらに足絡めてこないでよ・・・・・・!!動けないんだけど・・・・・・!?」

 

「寝るんだから動かす必要ねーだろ。」

 

「地味に恥ずかしいんだってば・・・・・・!!」

 

「慣れろ。」

 

「慣れろって・・・・・・ひゃあ!?ちょっと・・・・・・っ・・・・・・足の甲を撫でてくるんじゃな・・・・・・くすぐったい・・・・・・!!」

 

「ひゃあってお前な・・・・・・っ」

 

「笑うな!」

 

「イテッ!?・・・・・・だいぶ遠慮なくなってきたな桜奈?」

 

「ええ・・・・・・?なんでわざと喰らってんのこの人・・・・・・あた!?」

 

 こっちの反応を見て、面白いおもちゃを見つけた子供のように笑うリボーンの頭を平手で殴る。

 明らかにわざと喰らっていた様子のリボーンに軽く引いていると、軽いデコピンを返された。

 

「こう言うのもある種の戯れ合いの一つだ。まぁ、余程仲が良くねーと、こんなことは誰もしねーがな。

 ある意味、相手の感情や意識レベルがどれ程こっちに向けられているかわかる秤のようなもんだ。

 無意識に手を出してくるようになれば、それだけこっちに遠慮がなくなってきた証拠にもなる。

 嫌悪感からくるものか、照れ隠しからくるものか・・・・・・それも割と力加減からもわかるからな。

 今の桜奈からの平手は、力の加わり方から100%照れ隠しだと把握できる。少しくらいは、強くこっちを意識するようになったか?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら、そんなことを聞いてくるリボーンにわたしは再びムッとする。

 くっそ・・・・・・!!めちゃくちゃ余裕かましてくるなこのヒットマン・・・・・・!!

 しかも全部言い当てられてるしめちゃくちゃ恥ずかしい・・・・・・!!

 

「・・・・・・答えを聞くまでもねーみてーだな。そのままオレを意識してろ。その方がこっちもハマらせやすくなるし、落としやすくなる。」

 

「サラッとハマらせやすくなるとか言ってきた・・・・・・悪い大人がいる・・・・・・」

 

「その悪い大人を本気にさせたのは桜奈の方だがな。本気にさせられた以上、オレはお前を逃したりはしない。

 さて、桜奈は一体、どれだけの期間オレから逃げられるだろうな?」

 

「・・・・・・目がガチ過ぎる・・・・・・。完全に悪い大人にロックオンされたぁ・・・・・・。」

 

「そっちも割と余裕だな?まぁ、すぐに落とすにせよ、じっくり時間をかけて落とすにせよ、どっちみち桜奈はオレの射程範囲から逃げることはできねーぞ。その余裕すらも全部崩して・・・・・・」

 

 そこまで口にしたリボーンは、片手でピストルのような形を作り、わたしの胸元付近に指先を向ける。

 

「オレはお前を完璧に撃ち抜く。それくらいの技量は持ち合わせてるしな。逃げようとするのは止めたりしねーが、少しずつ足元を崩してやるから、そのつもりでいろよ。」

 

 そして、宣戦布告をするように言葉を紡ぎ、ピストルのような形を作っていた指先を上に軽く動かした。

 まるで、拳銃を撃つように、緩やかに動かされたその手を見て、わたしはむぅ・・・・・・と口を噤む。

 一つ一つの動作が無駄にカッコ良過ぎて、ますます意識させられそうだ。

 

「・・・・・・無駄に様になってるし、無駄にカッコよく決まっててムカつく。」

 

「褒めたいのか貶したいのか全くわからねーこと言ってきたな・・・・・・。」

 

 少しだけ苦笑い気味に言葉を紡ぐリボーン。そんな彼から目を逸らすようにして、わたしはベッドの中に潜り込む。

 そのままリボーンに体を密着させ、見た目よりしっかりと鍛えられている胸元に額をくっつけてみれば、彼の少しだけ早くなっている鼓動の音が聞こえてきた。

 

「・・・・・・心臓の音、なんか早くない?」

 

「・・・・・・勝手に人の音を聞くな。」

 

 少しだけ辿々しい言葉が聞こえ、静かにリボーンの顔を見上げてみれば、先程まで余裕しかなかった表情が、ほんのりと赤く染まっていた。

 口元はへの字に噤まれており、瞳にチラつく羞恥の光が、リボーンの感情をしっかりと教えてくれている。

 

「照れてる。」

 

「・・・・・・うるせーぞ、桜奈。見るな。」

 

 わたしの言葉を聞き、拗ねたような様子を見せたリボーンが、両目を片手で覆ってきた。

 リボーンの余裕を崩すことができたとわかり、わたしは少しだけ嬉しくなる。

 わたしばっかが照れたわけじゃない。リボーンだった照れるんだ。優勢に攻めてきたリボーンの調子を崩すことができたと、少しの優越感を抱く。

 

「ほら、さっさと寝ろ。寝れねーなら強制的に疲れさせて眠らせてやろうか?」

 

「いらなーい。」

 

「だったらさっさと目を閉じろ。明日もやることが一杯あるからな。」

 

「はーい・・・・・・」

 

 リボーンの眠れと言う言葉に従い、わたしは静かに瞼を閉じる。

 程なくしてわたしの意識は少しずつ遠くなり、わたしの意識は夢の中へと落ちていく。

 

「・・・・・・たく・・・・・・オレの余裕を崩してくるとは、本当に油断ならねー女だな、お前は。

 ・・・・・・ゆっくり休めよ、桜奈。明日からの争奪戦も、きっと厳しい戦いになる。

 だが、安心していいぞ。どんな結末が訪れようとも、オレが絶対に守ってやるからな。」

 

 意識が途切れる寸前に、口元に触れた柔らかな温もり。

 またこの人、わたしにキスしてる・・・・・・なんてわずかに残っていた最後の意識で考えながら、わたしは深い眠りに落ちた。

 

 

 

 




 沢田 奈月(小鳥遊 桜奈)
 色々あり過ぎて疲れてしまった貝の女王。
 Dのサポートにより、最小限に精神的ダメージを抑えることができるが、やはりすり減るものはあるらしく、少しでも自身の精神を回復するために側にきたリボーンに甘える。
 ベルからの特別視に疑問はあるが、その疑問は最強のヒットマンの手により、意識の対象を変更されてしまったため霧散してしまった。

 リボーン
 呪解維持状態の方が楽だと思いながら、お疲れ気味の最愛の女王を甘やかしていた最高峰のヒットマン。
 基本的に余裕があるが、隠しきれない鼓動の音を女王に指摘されたらすぐにそれが崩れ始める。
 彼にお任せで甘やかしメニューを提案させてはならない。女王をこれでもかと言う程に甘やかしまくり、自身にハマらせることを虎視眈々と狙っているのだから。

 ベルフェゴール
 貝の女王をめちゃくちゃ気に入っている暗殺部隊の嵐の王子。
 彼女のためならば普通におっかないボスを相手にしても、平然と直談判をするくらいには、彼女にハマっている。
 なお、これは彼女が自身のボスに気に入られていることを把握しているがためにできたことのため、普通は気に入ってもここまではしない。


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