最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 ヒットマンの提案のもと、繁華街へと足を運んだ貝の女王は、彼が考えたデートプランに沿って休憩時間を満喫する。
 そんな中、女王は、何かの気配に気がつき・・・・・・?



路地裏にいた王子様

 リボーンと一緒にやって来た繁華街。

 最寄りのバス停でバスを降り、平日でありながらも賑わうそこを見て、相変わらずここは人が多いと肩をすくめる。

 

「ナツ。行くぞ。」

 

「うん。」

 

 そん中、リボーンに名前を呼ばれ、短く返事を返したわたしは、少しだけ辺りを見渡したあと、リボーンの腕に自身の腕を絡める。

 わたしが自ら腕を絡めてくるとは思っていなかったのか、一瞬だけリボーンは目を丸くしたが、すぐに口元に笑みを浮かべてわたしのペースに合わせて歩き始めた。

 

「まさか、そっちから腕を絡めてくるとはな。さっきまであんなに意識して恥ずかしがっていたくせに、どう言った風の吹き回しだ?」

 

 不意に、自分から腕を絡めて来たことに関して疑問を抱いたらしいリボーンから、少しだけ意地悪な質問を告げられる。

 確かに、屋敷付近にいた時は、かなり恥ずかしかったし、正直言って、今も結構、羞恥は感じていたりするのだけど、デートのつもりで誘って来た人に、少しでも応えたいと思っているのも事実なもので・・・・・・。

 

「・・・・・・折角デートに誘ってもらったんだもん。2時間って言う短い時間だけど、その想いに応えようと思っただけ。」

 

 “嫌なら離れるけど”と、目線だけリボーンの顔へと向けてみれば、彼は少しだけキョトンとした表情を見せる。

 だけど、すぐに小さく笑っては、優しく額へとキスを落として来た。

 

「!?」

 

「CHAOSだな。嫌なわけねーだろ。むしろ大歓迎だ。こっちの方が牽制になるしな。」

 

 まさか、人が多くいる場所で平然とキスをしてくるとは思わず、顔を赤くして固まっていると、愛おしいさを示す甘い光が宿る切れ長の瞳とわたしの琥珀色が重なる。

 しっかりと目線を合わして来たリボーンは、色気と甘さが混ざった穏やかな笑みを浮かべたまま、わたしの頭を優しく撫でる。

 緩やかに滑る大きな手から、こっちの髪型を崩さないようにしている気遣いが感じ取れ、少しだけくすぐったいと思ってしまうものだった。

 

「・・・・・・人いっぱいいるんですけど。」

 

「見せつけとけばいいだろ。余計な虫もつかなくなるしな。」

 

 “なんなら口にもしてやろうか?”なんて少しばかり意地悪な笑みを浮かべて少しだけ顔を近づけてくるリボーンに、わたしは恥ずかしさと照れに苛まれながら、無理矢理その顔を片手で押し返した。

 それが面白かったのか、リボーンは笑い声を漏らし、“冗談だ”と笑いながら顔を離す。

 明らかに本気の目だったんですけど、と少しだけムッとする。本当、色気の暴力はやめてほしい。

 なんで、わたしの周り、色気が強めなお兄さんが集まるの。リボーンと言い、骸と言い、Dさんと言い・・・・・・。

 ていうか、昨日リボーンに甘えたせいか、いつもの自身が完全に保てなくなっている気がするし。

 まさか、これを把握した上で、わたしを街に連れ出したとか言わないよねこの人?

 

 ─────・・・・・・いや、リボーンなら普通にそれを把握した上でちょっかい出して来てるか・・・・・・。

 

 この人ならやりかねないと思いながらも、デートと言われている以上はこの時間帯だけでもこの人のものであろうとくっつけば、小さな笑い声が聞こえる。

 それに反応して視線を彼に向けてみれば、愛しさに溢れた甘やかな瞳と視線が重なった。

 合わせるんじゃなかった・・・・・・と少しだけ反省しながら視線を前に戻す。

 “もう少し見つめ合わせてくれてもいいだろ”なんて言葉は聞き流して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからリボーンが考えたプランの元、わたしは繁華街を歩き回っていた。

 最初は昼食を食べるために、この時間帯は少ないからと案内されたハンバーガーショップでランチを済ませ、そのあとは近場にある色んなショップを見て回る。

 気になる店があれば言えと言われたため、少しだけブティックの方に寄ったけど、正直、リボーンとそう言うお店に入らない方がいいと反省したくなる出来事となってしまった。

 彼の観察眼は侮るなかれ。いいな・・・・・・と少しでも思うような服に視線を向けてしまったが最後、きっちりとお買い上げされてしまうと言うハメになってしまった。

 いいものや気に入ったものがあると、人は本能的にそれに視線を向けてしまう。

 リボーンはその本能的な視線のあれそれを目敏く見つけているようで、気がついたら両手に服や靴が入った袋が増えてしまっていた。

 

「買い過ぎじゃない!?貢ぎ癖でもあるのキミ!?」

 

「あるわけねーだろ。」

 

「だったらこんなに買わないでよ!!お金が勿体無い!!」

 

「これくらい大した出費にはならねーぞ。武器のメンテナンスや補充に比べたらな。」

 

「比較対象がおかしいからね!?」

 

 ダメだこれ。いいものや気に入ったものがあっても視線を向けないようにしなければ、さらにお買い上げ商品が増えまくる・・・・・・!!

 

「時間はまだそれなりにあるが、そろそろ屋敷に戻る準備でもするか。」

 

 そんなことを思っていると、リボーンが自身の携帯電話を開き、今の時間を確認し始める。

 その言葉にわたしは安堵の息を吐いた。よかった、これ以上荷物が増えることはない・・・・・・。

 ちょっと疲れたし、甘いものだけ最後におねだりさせて・・・・・・

 

「最後にあそこにあるクレープ屋にでも寄るか。甘いもんが欲しくなってる頃だろ。」

 

「・・・・・・なんで甘いものが欲しいってこと気づくのリボーン。」

 

「日常生活を観察していればわかるぞ。基本的にナツはこの時間帯になると何かしら甘味を口にしてるからな。」

 

「習慣になってるのバレてる〜・・・・・・。」

 

「どれだけ一緒にいると思ってんだ。把握するには十分過ぎるくらいの時間を過ごしてるのを忘れたか?」

 

「そうだけどさぁ・・・・・・」

 

 それって日常生活の中にあるあれそれを全て把握してるようなもんじゃん・・・・・・と少しだけ拗ねた気持ちを抱く。

 わたしはリボーンのこと詳しくないのに、リボーンはわたしに詳しいってなんかなぁ・・・・・・。

 

 ─────・・・・・・ちょっと複雑な気分。

 

 わたしのことはかなり知ってるくせに、わたしはリボーンのことをほとんどと言っていい程に知らない。

 それを改めて痛感すると同時に、ちょっとだけ寂しいような気もした。

 わたしもリボーンのことを知りたい・・・・・・そう思ってしまうのである。

 

 ─────・・・・・・わたしが知ってるのは、リボーンが何を好んで口にすることがあって、どんな味が彼にとってベストなのかってことくらいなんだよなぁ・・・・・・。

 

 人の味の好みを把握していると言うのもどうかとは思うけど、それでも、他の人に比べたらよくわかってると胸を張って言えるのはこのくらい。

 

 ─────・・・・・・それ以外のリボーンの好みとか、全く知らないな。

 

 こうして一緒に歩いているのに、知ってることの差が大き過ぎて、子供っぽく頬を膨らませそうになる。

 わたしだけ色々されっぱなし。わたしもサッと何かできるくらいには、リボーンのことを知れたらいいのに・・・・・・。

 

 ─────・・・・・・でも、知るったってどうやって?わたしはリボーン程観察眼に長けてるわけじゃないし、リボーンはそういったことを把握させてくれるような隙を見せてくれないのに・・・・・・。

 

「ん?」

 

 リボーンに何かお返しをするにはどうしたらいいんだろう・・・・・・そんなことをぐるぐると考えながら、思案しながらも買ってもらったストロベリーショコラクレープを頬張っていると、不意に感じ慣れた気配が2つ程ある路地裏に続く道を見つける。

 確かここ、よく不良グループがたむろってたりすることがある場所だったはずだけど、明らかにこれ、不良あれそれの気配じゃないな。

 

「この気配は・・・・・・」

 

「・・・・・・まぁ、わたしがわかるんだから、リボーンもわかるよね。」

 

「ああ。・・・・・・めんどくせーことになりそうだが、向こうの方も気づいてるみてーだな。仕方ねー・・・・・・どうせ合流することになるなら足を運んでやるか。

 ・・・・・・ここで待っとくか?高確率で向こうはスプラッタ映画になってるが。」

 

「今更、血塗れの他人なんて見てもなんともないよ。身内のだけがダメなだけだもん。

 他人のは、骸の記憶を見たことがあるからどうでもいいんだよね。」

 

「・・・・・・なるほどな。それなら別に構わねーが、オレから離れるなよ。」

 

「ん。」

 

 “ったく・・・・・・折角のいい気分が台無しだな”・・・・・・なんて文句を言いながらも、リボーンは路地裏へと続く道へと足を運ぶ。

 そんな彼にくっついたまま、わたしも続けて足を動かした。

 

「あり?姫じゃん。」

 

「うっわ、なんでお前日中でもそっちの姿で過ごせてるんだ。」

 

 2人で向かった先には、やはりと言うかベルとマーモンの2人が立っており、その足元には血溜まりに倒れて息絶えている2人の男性の姿があった。

 

「Oh・・・・・・」

 

「見事にザックリいってんな・・・・・・。話には聞いていたが、これ程までとはな。」

 

 確かにスプラッタな映画シーンとも言える景色が広がっていらっしゃる・・・・・・と少しだけ思いながらクレープを口にすれば、リボーンが片手に持っていたグランデサイズのホットコーヒーを差し出してくる。

 クレープを持ってもらい、そのコーヒーを受け取ったわたしは、中に入ってるコーヒーを少し飲み、サラッとこっちのクレープを口にするリボーンを確認したあと、手にしていたものを取り替える。

 

「目の前血の海になってんのにサラッとクレープとコーヒー口にしてんのウケるんだけど。」

 

「奈月って本当に一般人からかけ離れてるね。」

 

 堂々と手にしていたものを互いに交換して口にしているわたしとリボーンを見て、ベルが楽しげに笑い、マーモンが呆れたように言葉を紡ぐ。

 

「ん?だってどうでもいい人の状態なんて本当にどうでもいいから。少々私は特殊でね。こう言う現場は、私の身内の1人のせいで気にならないんだよ。

 そんなことより甘いものが欲しかったし。まぁ、クレープ食べてると喉渇くから、リボーンのコーヒーもらってるけど。」

 

 平然と死体の前でクレープを頬張っていた理由を口にすると、ベルとマーモンがリボーンに目を向けた。

 わたしの慣れを生じさせた理由は彼にあるのではと思ったらしい。でも、リボーンは本当の原因を知ってるため、肯定も否定もすることなく肩をすくめるだけで2人の視線に答えていた。

 

「て言うか誰、この2人組?勝手にこっちの方でスプラッタ映画開催してほしくないんだけど。誰が後始末すると思ってんの?」

 

「ああこれ?日本で活躍してるっつー殺し屋兄弟。結構話に聞いたから多少は暇つぶしになるかなって思って相手してやったんだよね。まぁ、期待値を遥かに下回るハズレ連中だったけど。」

 

「そんなことより、彼女の発言にツッコミなよ。誰が始末すると思ってるんだって質問、確実に隠蔽関係の話だろ。」

 

 わたしの気にしているところがあまりにもズレているためか、マーモンから軽く引いたようなツッコミをされた。

 その言葉にわたしは肩をすくめ、静かに口を開く。

 

「私が入ってる委員会のリーダーさん。前に殺され屋?とか言われてるお兄さんと最悪な邂逅をした時、普通に死体を片付けようとしてたよ。

 まぁ、基本的に手を出してるのは役員のリーゼントさん達だけど。毒サソリから殺意向けられた時も毒物投げられたんだけどどうしよかな・・・・・・と考えていたら並中の風紀委員会の役員に始末させに行くから場所教えてって言われたし。」

 

「殺され屋?ああ、モレッティだっけ?」

 

「確かそんな名前だったね・・・・・・そんな奴とも知り合いだったんだね、奈月は。」

 

「リボーンが会わせて来たからね。」

 

「まぁ、そのあと、後始末をモレッティと一緒になってさせられたけどな・・・・・・」

 

 罰が悪そうに言葉を紡ぐリボーンに、わたしはすかさずジト目で睨みつける。

 後始末をさせられた?後始末させるのは当然なんですけど?

 

「リボーンが呼んだ結果、私の部屋を血糊だらけにされたんだから、実行者と元凶に後始末させるのは当たり前だよね?

 寝起き早々、なんで血糊まみれの部屋を見せられた挙句私が始末しなきゃいけないわけ?」

 

「・・・・・・だからもうやってねーだろ。度が過ぎたドッキリを仕掛けたらナツに相手してもらえなくなるしな。」

 

「最悪な気分にしてくるような人を相手にしたくないのは当たり前だっての。まぁ、ちゃんと反省してくれてるし、私ももう許してるけどね。」

 

 テンポよく過去の話を繰り返すわたしとリボーン。この会話を聞いていたベルとマーモンは、何度もわたしとリボーンを見比べるように視線を巡らし、片方は拗ねたような眼差しを向け、もう片方は感心したような様子を見せた。

 

「な〜んか王子達、無視されてね?オレ王子なんだけど?」

 

「珍しいこともあるんだね。まさか、あのリボーンが女にリードされるどころか、軽く尻に引かれてるような状況に陥ってるなんて。

 レアどころか激レア中の激レアだ。カメラを持ってくればよかったよ。こんなキミの姿は滅多に見られないから、かなりの値で売り飛ばせそうだからね。」

 

「オレを商売道具にすんじゃねーよバイパー。」

 

 マーモンの発言に対して嫌悪感を隠そうとすることなく表情に出したリボーンは、やめろと彼に声をかける。

 そんな彼も珍しいのか、マーモンは面白いものを見たと言わんばかりに小さく笑っていた。

 

「つか、姫とリボーン、何やってんだよ?」

 

 リボーンがからかわれてる・・・・・・と少しだけ無言で眺めていると、ベルからわたし達に対する質問をされる。

 それを聞いたわたしとリボーンは、一度顔を見合わせたあと、2人揃って口を開ける。

 

「「デート。」」

 

「あ゛?」

 

「ベル。突っかかるのはやめときなよ。いくらキミでもリボーンには勝てない。

 アルコバレーノの状態の彼も戦闘能力に関しては最上位と言っても過言ではないからね。」

 

「そういうことだ。能力においても、魅力においても、オレの方がお前なんかより何倍も上だぞ。」

 

「そっちはベルを煽らないでもらえるかい?ベルは彼女を気に入ってるんだから。」

 

 当たり前のようにマウントを取るリボーンに対して、ベルが軽く苛立ちを見せる中、マーモンが彼らを抑えるように声をかける。

 一通りの会話を聞いたわたしは、何を言ったらいいのかわからなかったため、とりあえずクレープを頬張った。

 

「・・・・・・クリームついてんぞ、ナツ。」

 

「ん?どこ?」

 

「こっちだ。動くなよ。」

 

 リボーンの手がわたしの唇の端に伸ばされ、そこを優しく親指で拭われる。

 わたしの口元から離された手の親指には、ストロベリーソースが混ざったクリームが付いており、当然のようにその手はリボーンの口元に持って行かれる。

 

「おい。王子の前でイチャついてんじゃねーよ。」

 

「「ん?」」

 

「どうやら無意識のようだね。全く・・・・・・なんで急にカップルのイチャつきを見せられなきゃならないんだ。慰謝料と迷惑料をふんだくるよ。」

 

 一部始終を見ていたベルから嫉妬と思わしき感情を感じ取り、マーモンからはデフォルトになりつつある様子の呆れを感じ取る。

 わたしとリボーンはと言うと、そんなこと気にすることなくクレープとコーヒーを口にしていた。

 

「ところでそれ、そこの死体、できればそっちが始末してくれると助かるんだけど。あまりうちの人脈動かしたくないんだよね。」

 

 慰謝料諸々はスルーすることにして、わたしは足元に転がってる2人分の死体を指差して言葉を紡ぐ。

 わたしの言葉を聞いたベルは、一瞬だけキョトンとしたような様子を見せては、自身の足元に視線を向けた。

 

「ああ、これの後始末はちゃんとしておくよ。暗殺部隊である以上、警察に目をつけられるわけにもいかないからね。」

 

 わたしの言葉に答えたのはマーモンだった。同時に感じ取るのは幻術の発動。

 どうやらマーモンは、一旦は幻術を使うことで死体を隠し、そこを始末するつもりのようだ。

 

「ふぅん・・・・・・やっぱりアルコバレーノの幻術はかなりのものだね。感じ取れた力の量はそんなにないのに、強い幻術が使われてるのがよくわかる。」

 

「・・・・・・やっぱりキミ、幻術に関してかなり知識があるね。」

 

「まぁね。だって知り合いに強力な術士が複数人いるし、その人らの力も何度か見て来てるから。」

 

「人ら・・・・・・と言うことは、その誰かがキミの霧の守護者で、僕の相手になると言うわけか。」

 

「うん。詳しく教えるつもりはないけど。」

 

「僕はそれが聞きたいところだけど、キミは話してくれなさそうだね。リボーンと同じで。」

 

 そう言ってマーモンはリボーンの方へと視線を向ける。

 

「キミのその体も、どうやら幻術によるもののようだね。しかも、かなり高度な有幻覚だ。

 幻術は、術士の能力値に比例して、影響の範囲も決まってくるものだし、これだけ強力な有幻覚が維持されているとなると、必ずどこかに術士が隠れているはずだけど・・・・・・」

 

「探せるもんなら探してみろ。まぁ、わからねーと思うがな。」

 

 口元に笑みを浮かべながら、リボーンは自身の有幻覚による強化を否定することなくマーモンに告げる。

 そんな彼の言葉に内心で同意しながら、わたしはリボーンに自身の腕を絡めていた。

 その流れでわたしが触れているのは、神谷さんから渡されたリボーン用の“灯火宿しの器”(フランム・リュミエール)

 Dさんとわたし、両方の霧の炎が灯されているそれである。

 

「・・・・・・それがわかったら苦労しないよ。どうもこっちに来てから能力の調子がいい時と悪い時が発生するようになってね。

 それに、時折嫌悪感を感じ取ることがあるんだ。その時は決まって、キミの霧の守護者を探す時。」

 

 間違いなくDさんの魔レンズの影響が出てるな・・・・・・と少しだけ苦笑いをこぼしそうになる。

 あの魔レンズで観察されたあとってしばらくの間どこからか見られているような錯覚を覚えるからね。

 多分、そのせいだろうと思うけど、まぁ、骸も凪もDさんも見つからないのであれば、気にする必要はないかな。

 

「キミ、何か知ってるんじゃないかい?」

 

「知ってても教えないよ。」

 

「手札は隠してこそだしな。」

 

 そんなことを思いながら、わたしとリボーンは、マーモンからの質問を一蹴する。

 わたしとリボーンの反応は、マーモンにとって納得いかなかったようで、ムッと口元をへの字に噤む。

 とは言え、わたしとリボーンがこう答えるのは予想もできたのか、これ以上の言及はされなかった。

 

「・・・・・・ナツ。帰るぞ。そろそろバスが来る頃だからな。」

 

「はーい。」

 

「は?帰る?どこに?姫の家?」

 

 まぁ、後始末をちゃんとしてくれるならいいけど、と思いながら、リボーンの帰宅すると言う言葉に返事をしていると、ベルが真っ先に反応を示した。

 纏う雰囲気からして、こちらの自宅に興味を示しているようだ。もしかしたら、わたしの家を突き止めることができると思っているのかもしれない。

 

「争奪戦の間だけ拠点にしてる場所。」

 

「家光のヤツは自身の本来の職を家族に話してなくてな。一般人を巻き込まねーようにするために争奪戦の間、ナツも実家を離れてるんだ。

 ナツも家光も、何も知らねー一般人である身内や近所を巻き込まねーようにすることを絶対条件として持ち合わせているみてーだからな。」

 

 興味持たれても困るんだけど・・・・・・なんて思いながら、争奪戦の間だけ拠点にしている場所があることを教えれば、短い相槌が聞こえてくる。

 下手したらついて来そうだなこの人・・・・・・勘弁してほしいんだけど。

 

「言っとくけど、拠点は教えたりしないから。」

 

「突撃されても迷惑だからな。お前らはさっさと自分の拠点に戻れ。」

 

「そこら辺は安心しなよ。ベルはちゃんと僕が連れて帰るから。ただでさえリボーンは本来の身体能力を何らかの条件のもと取り戻すことができるような状況下にあるんだ。

 乗り込んだら最後、こっちも無事では済まないことがわかってる。」

 

「ええ〜・・・・・・でも姫の拠点気にならね?もしかしたら、そこに霧の守護者いるかもしれねーよ?」

 

「リボーンがいる状態で探れるわけがないだろ。何を仕掛けられるかわかったもんじゃない。それに、今日はベルの出番だろ。

 彼女が組織の中心として組み込まれ、彼女のためにと言う意思のもと戦闘に参加している連中はどうも強化されやすい傾向にある。

 ベルが負けるとは思ってないけど、万が一だってある。万全の状態で挑むのであれば、彼らの拠点を突き止めようとしない方がいい。」

 

「ちぇ〜・・・・・・じゃあ、帰るか。」

 

 かなり渋々と言ったような反応ではあるが、どうやらベルに突撃!お前の拠点!をされないで済みそうだ。

 そのことに軽く安堵しながらも、わたしはリボーンに視線を向ける。わたしの視線に気づいたリボーンはすぐにこっちに目を合わせては、絡めていた腕を解き、そのまま肩を優しく抱いて来た。

 

「理解してくれたようで何よりだ。行くぞ、ナツ。」

 

「うん。」

 

 リボーンの言葉に返事をしながら、抱きやすいように体を寄せれば、隣から小さな笑い声が聞こえてくる。

 それを聞いてリボーンの顔を見上げれば、彼はわたしにいつも見せてくれる愛しさが溢れた甘やかな笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。

 

「「うっわ・・・・・・」」

 

「そこ、やかましいぞ。」

 

 それを見たベルとマーモンが軽く引いたような声を漏らしたが、すかさずリボーンはうるさいと一蹴してわたしの肩を抱いたまま歩き始める。

 度々見える人らしい彼の表情は、彼のことを何も知らないと少しだけ拗ねていたわたしの気持ちを上向きにする。

 骸やDさんのおかげで、人の感情はある程度把握しやすくなっている分、それが作り物か否かを見抜けるようになったため、先程の愛しさを帯びた表情が本心からのものであることがわかったのだ。

 

「・・・・・・何嬉しげにしてるんだナツ。」

 

 わたしが隣でニコニコしていたからか、リボーンから自身の感情を指摘される。

 その言葉に一瞬だけ目を丸くしたわたしは、何度か瞬きをしたのち小さく笑う。

 

「ん〜・・・・・・リボーンにすごく愛されてるなぁ・・・・・・って思っただけ。さっきの笑い方や目元から、本心から愛しさを向けてくれてるってわかったから。」

 

「!・・・・・・勝手に人の感情を分析すんじゃねーよバカナツ。」

 

「だってわかりやすかったんだもん。精神やある程度の感情分析に関しては、術士であるDさんからのお墨付きだしね。」

 

「たまに見透かされてるような気分になるからやめろ。」

 

「わたしのこと把握しまくってるリボーンには言われたくない。」

 

「何で拗ねてんだよ。」

 

「別にぃ〜?」

 

 リボーンばっかりわたしのこと知ってるのずるいもん・・・・・・と言う言葉は飲み込みながらはぐらかすように言葉を返せば、リボーンは軽く肩をすくめた。

 そのことに小さく笑ったわたしは、手にしている残りのクレープに口をつける。

 何口か頬張れば、スッとグランデサイズのコーヒーを差し出されるためそれを受け取れば、リボーンは器用に片手だけでコーヒーのカップとクレープを入れ替える。

 クレープを手放すと同時に入れ替わりで手元に来たコーヒーを口にすれば、リボーンは隣でクレープを頬張る。

 ちらっとその顔を見上げれば、彼の口の端には若干クリームがくっついていた。

 

「口の端にクリームついてるよ。」

 

「ん。」

 

 それを見て少し笑いそうになりながら、クリームがついてることを伝えれば、リボーンは目を閉じてわたしに顔を寄せて来た。

 わたしに取れってか・・・・・・と小さく苦笑いをこぼしたわたしは、すぐにリボーンの口の端を親指で優しく拭う。

 すると、彼はわたしの手を掴んでは、それを自身の口元に持っていき、親指についていたクリームを舐めとった。

 

「ひゃ!?ちょっと!?人の指舐めないでよ!!」

 

「ああ、わりー。ついな。」

 

「絶対わざとじゃん!!リボーンのバカ!!」

 

 まさかの行動を取られ、顔を赤くしながらリボーンを怒鳴れば、彼はイタズラが成功した子供のように意地悪に笑い、わたしが手にしていたコーヒーとクレープを入れ替える。

 ムスッと拗ねながらクレープを頬張れば、隣から喉を鳴らすような笑い声が聞こえてきた。

 その笑い声にさらに恥ずかしさを覚えたわたしは、自身の肘で晒されているリボーンの腰を軽く小突く。

 肘による攻撃がくるとは思わなかったのか、コーヒーを口にしていたリボーンが若干咽せた。

 その様子に、フンッと顔を背けたわたしは、残っていたクレープを全て食べ切る。

 全く・・・・・・不意打ちは心臓に悪いっての・・・・・・!!

 

「遠慮がほとんどなくなって来た分、段々揶揄いやすくなったなナツは。前までは本当に何をするにも距離があったからな。」

 

「・・・・・・甘えるようになった分、こっちも距離を置くのがバカらしくなっただけだよ。」

 

「・・・・・・そうか。」

 

 短い返事の中に、強く含まれている喜びの感情。それに気づき、リボーンの方に視線を向けてみると、彼はとても嬉しそうに笑っていた。

 

「・・・・・・オレとのデートはお気に召してくれたか?」

 

 じっとリボーンのことを見つめていると、彼は小さく笑いながら、今回のデートは気に入ってくれたかと聞いて来た。

 その言葉を聞いたわたしは、何度か瞬きを繰り返す。

 

「・・・・・・うん。すごく楽しかった。デートって基本的に半日から一日やるものだと思っていたから、短いのって楽しいのかと最初は思ったけど、効率よく回るためのプランで歩いたはずなのに、楽しさも満足度も通常のデートとほとんど変わらなかったよ。」

 

 “ちょっとそれは買い過ぎだけど”と、リボーンが手にしているわたしへのお買い上げ商品に関してツッコミを忘れることなく今回のデートに関しての感想を口にすれば、リボーンは軽く笑い声を漏らした。

 

「ナツは必ずと言っていい程に遠慮してあまりワガママを口にしてくれねーからな。

 視線の動きや反応から割り出して先に甘やかした方がいいと思ったまでだ。」

 

 “現に、こっちに文句を言いつつ本心では喜んでることを隠しきれてなかったしな”と、告げられ、わたしは目を丸くする。

 わたしのこの反応は、リボーンの読み通りだったようで、彼はしてやったりと言わんばかりの笑みを浮かべた。

 

「・・・・・・あまり甘やかし過ぎないでよ。我慢できなくなるから。」

 

「CHAOSだな。オレはナツに我慢させるつもりなんて全くと言っていい程にねーって言ったはずだぞ。

 甘やかし過ぎるな?我慢できなくなる?できなくて結構。お前はこれまでずっと、色んな我慢を積み重ねて頑張ってきたんだ。

 だから、そろそろ許してやれよ。甘えたいって思ってる自分自身を。甘えたい時に甘えて、しっかりする時はしっかりする・・・・・・今のお前には、それができる環境が揃ってるだろ?

 オレも状況に応じてどこでナツを甘やかして、どこでしっかりさせればいいかを少しずつ把握できるようになってるからな。

 もう、甘えたがり屋な自分を誤魔化すことなく表に出していい。オレがそれに全部応えてやる。切り替えのタイミングに関しても、オレがしっかりと教えてやるから、自分自身を時には甘やかしてやれ。」

 

 穏やかな声音でそう言ったリボーンが、優しくわたしの頬に手を添える。

 親指の腹で頬を撫でられ、少しだけくすぐったさを感じた。

 

「・・・・・・桜奈のワガママを聞かせてくれ。持ち合わせている能力の全てを以って、オレが全て叶えてやるから。」

 

 真っ直ぐとわたしの琥珀色を射抜くように見つめ、わたしのワガママを聞かせて欲しいと告げてくるリボーン。

 愛しさと優しさ、そして少しの懇願が宿る彼の瞳を見つめながら、わたしは何度か瞬きをする。

 

「・・・・・・うん。」

 

 しばらくリボーンの目を見つめたわたしは、小さく微笑みを返しながら、その言葉に静かに頷いた。

 頷いたわたしを見て、リボーンは穏やかな笑みを浮かべたのち、わたしの肩を抱き直して歩き始めた。

 

 

 




 沢田 奈月(小鳥遊 桜奈)
 リボーンからワガママを言ってくれと告げられ、その言葉を承諾した貝の女王。
 最近、リボーンのことをかなり意識するようになっている節があり、拗ねたり嫉妬したりと様々な表情が表に出始める。
 リボーンにかなり心を開けるようになったようで、子供のまま大人にならざるを得なかった桜奈としての幼さが顔を覗かせるようになった。

 リボーン
 奈月が自身を意識してることに気づいているため、かなり遠慮がなくなっている最強ヒットマン。
 彼女のことを把握しているのは、彼自身が無意識のうちに彼女のことを常に目で追っていたせいである。
 本格的に奈月を振り向かせるため行動が大胆になっており、完全に心を開くようになったことで距離が縮んだ彼女を度々揶揄っては照れ隠しの攻撃を(わざと)喰らっている。

 ベルフェゴール
 趣味のご当地殺し屋殺しをしていたところ、リボーンとデート中の奈月とエンカウントしたヴァリアーの嵐の守護者。
 目の前で平然と奈月とイチャつき、見せつけてくるリボーンに苛立ちを見せるが、実力の差は歴然のため、文句は言えど、手出しはしない。

 マーモン
 日中でも有幻覚による強化を利用することにより呪解状態を維持しているリボーンに対して羨望の眼差しを向けるヴァリアーの霧の守護者。
 D・スペードのせいで何かしようにもどこからか悪寒が走る視線を度々感じてしまうようで、奈月側の霧の守護者を探すことができていない。


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