最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 ついに切られた嵐同士の戦いの火蓋。
 怒涛の攻めを物にするのは・・・・・・



VS. 嵐の守護者 Ⅱ

 チェルベッロから争奪戦の開始の合図を告げられた隼人とベルは、互いに睨み合う。

 ベルはいつもの雰囲気のままで。隼人は少しの緊張をしているようだった。

 

「・・・・・・ふぅん?お前ってダイナマイト使うんだ?」

 

「だったらなんだよ。」

 

「べっつに〜?どんな攻撃を仕掛けて来るか、お手並み拝見と思っただけだけど。」

 

 互いに少しの言葉を交わし、相手の様子を見極める。

 最初に動いたのは、隼人だった。

 

 隼人は様子見をするためか、自身の腰にぶら下げている特殊な仕組みがあるベルトからダイナマイトを引き抜き、それをベルへと投げつける。

 隼人の手元から離れたダイナマイトは真っ直ぐとベルの方へと飛んでいき、大きな爆発音を轟かせた。

 隼人の前方に、爆発により発生した煙が立ち込め、ベルの姿が見えなくなる。

 すると、まるで煙を引き裂くかのように、光るものが宙を駆ける。

 隼人はすぐにそれを見るなりその場で身を翻すが、そんな彼を覆うようにして、複数のナイフが宙に現れた。

 

「な!?」

 

 突如現れた大量のナイフを見て、隼人は咄嗟に前の方へと回避する。

 それを狙ったかのように、彼の前にはベルが現れ、そのままナイフをその場で振るった。

 ある意味で着地狩りにも似たような攻撃きを放たれ、隼人は再び回避を余儀なくされるが、流石は暗殺部隊の精鋭か、一発の攻撃だけに止めることなく数回の繋げた連撃を放ち、隼人に確実なダメージを与えている。

 対する隼人もダイナマイトを使って応戦を試みているようではあるが、ベルはダイナマイトの軌道を全て把握した上で、隼人に距離を詰め、強蹴をその体に叩き込んだ。

 ベルに蹴られた隼人が、少しだけ廊下を滑るように飛ばされる・・・・・・が、すぐに体勢を立て直し、ベルとしっかり向き合った。

 

「小手調べのつもり?そんなもんする暇があったら、とっとと真っ向からリング奪いに来いっての。誰を相手にしてんのかわかってんの?」

 

 爆発により立ち込める煙が晴れると同時に見えるようになったベルの姿。

 彼は、全くと言っていい程にダメージを受けていなかった。

 

「姫んとこの守護者、めっちゃダイナマイト使ってっけど、爆風で吹っ飛んだもんとか当たってない?とりあえず、そっちに飛びそうになってた奴は一応そこら辺に散らかしといたけど。」

 

「・・・・・・ご心配なく。仮に何か飛んできたとしても、リボーンが防ぐと思いますし、私も自分で防げますから。」

 

「ふぅん?まぁ、それならいいけど、姫は無茶すんなよ。さっきフラついたんだから。」

 

「・・・・・・気をつけましょう。」

 

 それどころかこっちの体調や状態を気にして言葉をかけてくる程の余裕っぷりだ。

 気に入ったから・・・・・・好きになったから・・・・・・そんな言葉を紡いできていた時は正気を疑ってしまったが、どうやら、これらは全て本物だったらしい。

 

「ヴァリアークオリティとはよく言ったもんだ。隙のない体運びに、鋭いナイフ捌き・・・・・・それどころか、あの攻撃をものともしないまま、飛んできた瓦礫すら排除してるとはな・・・・・・。」

 

「まぁ、余裕ぶっこいていい相手じゃねーのは確かだな。」

 

「っ・・・・・・」

 

 シャマル先生とリボーンの言葉に、隼人は少しの焦りを表情に浮かべる。

 同時に自身の服に仕込んでいる複数のダイナマイトを手に取り、そのまま構える。

 

「3倍ボム!!」

 

 構えた瞬間放たれたのは、無数の数のダイナマイト。

 ほとんど隙間なく投げ飛ばされたそれは、一度だけ見たことがあるものだった。

 ・・・・・・隼人がイタリアから日本に来た当日、わたしの実力を確かめたいと言って挑んできたあの日、使おうとしてあわや命の危機となってしまった技。

 あれを完成させたのは成長の一つと言えるだろう。でも・・・・・・

 

「そう簡単に食らわせることができる程、ベルフェゴールは弱くありませんし、このフィールドでは、()()()()()()()()()()()・・・・・・ですよね。」

 

 小さく呟くように言葉を紡いだ瞬間、隼人が放ったダイナマイトが強風により飛ばされてきた家具と共に、窓の方へと吹き飛ばされる。

 風と共に飛ばされたダイナマイトはそのまま窓の外へと追い出されると同時に、無数の爆発を轟かせた。

 

「この風・・・・・・!!あの機械か!?」

 

「ひゅ〜。さっすが姫。風の動きしっかり読んでるじゃん。」

 

 わたしの呟きが聞こえていたのか、ベルが笑いながら言葉を紡ぎ視線を向けてくる。

 わずかに前髪の隙間から見えた涼やかで優美な目には、楽しげな光が揺れていた。

 

「王子、風には敏感なんだよね。嵐の守護者だから。姫の場合は、感覚的なもん?もしかして、銃弾とか避けちゃったりする?」

 

「・・・・・・躱せるか否かは別として、攻撃の拍子に発生する風の動きや空気の動きは読めなくもないですね。」

 

「へぇ。やっぱ姫、こっちの世界でも十分やってけそうじゃん。」

 

「・・・・・・全く嬉しくない褒め言葉です。」

 

「ししし!言うと思った。」

 

 わたしの方に話しかけてくるベルを適当にあしらっていると、複数の音が聞こえて来ることに気づく。

 それが全て風により吹き飛ばされているものの音であることはすぐに把握できた。

 すかさずフィールドに視線を向けてみれば、複数のタービンによる風が廊下全体に発生する。

 

「ランダムに突風が!?」

 

「これでは獄寺が攻撃できんぞ!?」

 

 次々と物を吹き飛ばしては戦場を荒らすハリケーンタービンの風に、武と了平さんが声を上げる。

 

「攻撃し難いのは獄寺だけじゃねー・・・・・・と思いたいが、相手は“プリンス・ザ・リッパー”だからな・・・・・・。」

 

 それを見たリボーンが、ベルも攻撃をし難いことを指摘するが、少しだけ考え込むような様子を見せては、表情に警戒の色を強く出す。

 彼にはわかっているのだろう。ベルフェゴールと言う暗殺者が、どれだけ警戒すべき存在であるのかを。

 そして、ベルはそんなリボーンの警戒の答えを教えるかのように、風に添えるようにしてナイフを手放した。

 ベルの手元から離れたナイフは、まるで導かれるように、隼人の元へと飛んでいく。

 すかさず隼人は回避行動に出ていたが、風にナイフが邪魔されると思っていたことがわずかな遅延となり、その刃を足に掠れさせ、近くにあった部屋の窓ガラスを突き破る形で場所を移動した。

 

「っ・・・・・・!!どうなってやがんだ!?まぐれか!?」

 

 部屋に設置されたカメラのおかげで、隼人の姿がモニターに映し出される。

 その表情は明らかに焦燥に塗り潰されており、何が起こったのか分からず混乱しているようだった。

 

「王子にまぐれとかあると思ってんの?あるわけないじゃん。」

 

 そんな中、隼人が転がり込んだ部屋の入口にベルが佇み言葉を紡ぐ。

 カメラに映る隼人は、すぐに声の方へと視線を向けた。

 

「攻撃に含まれる空気の動きとか読めるなら、軽く勉強すりゃ姫でもカンタンにできると思うぜ?

 吹き荒れる気流を読んで、目標ライン上にそっとナイフを添えるだけだもん。」

 

 そう言ってベルは、辺りを埋め尽くす風を少しだけ見回したあと、一つの風に巻き込ませるようにナイフを手放した。

 その瞬間、手放されたナイフは次々と吹き荒れる風に乗っていき、最後は隼人の頬にその刃を届かせた。

 自身の頬に発生したナイフによる一筋の傷。彼の技術を知るヴァリアーや、これまでの戦闘経験から何かを感じ取っている様子のリボーンとシャマル先生が冷静に見守る中、武と了平さんが何が起こったと言わんばかりの表情を見せている。

 

「気流を読む・・・・・・まぁ、やりようによっては可能な技術でしょうが、余程の分析能力と知識がなくてはほぼ不可能ですね。」

 

「だな。こんなことができるベルフェゴールは、間違いなく本物の天才って奴だ。」

 

 わたしに教えるように告げてきた、ベルからの技術講座に対して素直な感想を口にしていると、シャマル先生がこっちの言葉に同意する。

 気流を読み、不利な状況を逆手に取ることができる彼は、間違いなく天才であると。

 ただ、わたしは彼の技のギミックには別の技術も使われているのではと思っていた。

 このフィールドに吹き荒れる風は、大きなものすら吹き飛ばす程の威力・・・・・・そんな風を的確に読んで、風に任せてナイフを運ぶことはできるのかと言う疑問があったのだ。

 机やソファーと言った重いものすらも吹き飛ばすのだから、ナイフの素材によっては逆に風に乗せるのが難しいはずだから。

 

 しかし、だからと言って答えが完全に出てきたわけじゃない。仕掛けがあったとして、それを完全に確認していない状況の今は、それを隼人に伝えることができない。

 仕掛けるとしたらどこに?思考をぐるぐると巡らせながら、モニターをじっと見つめる。

 

「嵐の守護者の使命って知ってる?」

 

 不意に、ベルが隼人に問いかけた。嵐の守護者とはファミリーの中でどのような役割を持っているかわかっているかと。

 手元には、複数のナイフを持ちながら。

 

「常に攻撃の核となり、休むことのない怒涛の嵐。オレにはできるけど、お前にはできないね。」

 

「!!」

 

 ベルが最後まで言葉を紡ぐと同時に、その手元からナイフが放たれる。

 

「突っ立ってる場合じゃねーぞ隼人!!立ち止まるな!!」

 

 ベルの言葉に反応して、一瞬だけ行動が鈍くなった隼人にシャマル先生が喝を入れる。

 それにより意識を現実に戻した隼人は、すぐに横に飛び退くが、追撃の形でナイフが飛んでくるせいで、回避をすることしかできなくなっていた。

 攻撃に移れないと、確かな苛立ちと焦りを見せながら。

 

「ちくしょう!!撃てねぇ!!」

 

 ダイナマイトを使用しようとする度に飛んでくるナイフを躱しながら、隼人はその場から走り出す。

 彼が向かう方向は、ベルがいる方向とは反対の方角。一旦は距離を取ること、それを最優先にしたらしい。

 廊下を走り抜ける隼人に追い打ちをかけるように、ベルのナイフは飛んでいく。

 それを時折体に掠らせながらも走る隼人は、廊下を曲がった先の壁にダイナマイトを貼り付けて、すぐ近くの部屋に足を運ぶ。

 同時に壁に張り付けられたダイナマイトは、大きな音を立てて爆発した。

 

「爆発に乗じて隠れたつもりかよ。まぁ、別にいいけどね。隠れんぼは大好きだし。」

 

 楽しげに笑いながら、ベルは再びナイフを手に持つ。

 彼は自身のナイフをしばらく見つめたのち、口元に笑みを浮かべてそれを投げ飛ばした。

 投げられたナイフは再び導かれるように宙を駆け、部屋に隠れているはずの隼人の手元にあるダイナマイトの上を斬り飛ばす。

 

「な!?何が起こってんだ!?」

 

「相手はまだ廊下におるではないか!!なぜ獄寺の元に真っ直ぐと!?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 まさかの事態に、武と了平さんが驚愕する。

 よく見るとモニターに映り込んでいる隼人もかなり混乱しているようで、ベルのいる場所を探し始める。

 モニターで観ているからこそ、ベルが廊下にいることをわたし達は把握することができるが、隼人には観測するための術がない。

 かなり精神的にくることは間違いないだろう。

 

「隠れんぼ好きだって言ったじゃん。オレ、王子だからさ。お前らみてーなパチもんとは出来が違うんだよね。

 あ、言っとくけど、このパチもんって言葉に姫は含まれてねーから。姫の能力は明らかにお前ら以上に高いし?文句なしってね。」

 

 ベルが再びナイフを投擲する。その瞬間、投擲されたナイフは次々と曲がっていき、床に座り込んでいた隼人の脇腹と腕から赤い飛沫を吹き出させた。

 

「「獄寺!!」」

 

 武と了平さんの悲痛な声が響く。

 モニターに映り込んだ隼人はその表情を苦悶に歪め、八つ当たりするように怒鳴っている。

 

「あれ?もう大当たり?あーあ、嵐の守護者がこれとか、マジで姫が可哀想。そんなんで姫のこと守れんの?逆に姫に守られて、姫の負担が増えるだけじゃね?」

 

「「!!?」」

 

 ベルの言葉に、モニターに映る隼人と、側にいる武、了平さんの3人が表情を歪める。

 自分達の能力とわたしの能力・・・・・・あまりにも差があり過ぎるがゆえに発生してしまうであろう出来事・・・・・・。

 それを指摘され、彼らは言葉を失う。

 

『・・・・・・ベルフェゴールが口にしている言葉は、正論としか言いようがありませんね。私達がナツキに手を出したから・・・・・・と言うのもありますが、そもそもの話、ナツキとナツキの守護者達では、元から備わっている基礎能力があまりにも違い過ぎる。』

 

「・・・・・・ナツ以外の奴らの能力の強化は、これから先の課題になりそうだな。今のナツなら、ある程度は自分でこなせる能力が備わっている。

 まぁ、まだ、完成してねー技があるせいで、そこだけが不安ではあるが、どこかのタイミングで、ナツ以外・・・・・・特に、この場にいる獄寺、山本、了平の3人の能力は引き上げていく必要がありそうだ。」

 

「リボーンがそこまで言うって・・・・・・奈月ちゃん、どんだけ能力が高けーんだ?」

 

「・・・・・・お前と同じで、ヴァリアーにスカウトされるレベルだ。向こう側はどうやら、今回の争奪戦でこっち側を下すことができたら、ナツ以外は始末して、ナツだけはヴァリアー側に連れ帰ると言ってる。」

 

「うっわ・・・・・・マジかよ・・・・・・。奈月ちゃん。ヴァリアーだけはやめといた方がいいぜ?

 奈月ちゃんみてーな優しい子にゃ、あまりにも精神的にくるような場所だからな。」

 

「・・・・・・私の力は、確かにかなり高いものとなってしまっています。

 マフィアのことを含めて技術や知識を教えてくれている人が、あまりにも規格外な上、私自身、それを身につけることが可能な程の能力を持ち合わせているようですから。

 ですが、だからと言ってヴァリアーに入るつもりなど毛頭もありません。自分自身、人を殺めることに対して抵抗がありますし、何より、精神的負担が大き過ぎるので。」

 

 “負けるつもりも毛頭もないが、もし、万が一負けるようなことがあったら、その時は自ら命を絶つことも辞さない”・・・・・・その言葉だけは飲み込んで、わたしはモニターを見つめ続ける。

 ・・・・・・きっと、リボーンとDさん、プリーモファミリーのみんなには、この考えが伝わっていると思うけど、武達にだけは悟らせたりはしない。

 

「・・・・・・ん?」

 

 何か、ベルの攻撃を攻略するヒントはないか・・・・・・そんなことを思いながら、モニターを見つめていると、一瞬だけ、隼人の体に何かキラリと光るものが見えた気がした。

 

「・・・・・・隼人!!少しだけ動いてみてください!!可能であれば、机の下に隠れるように!!」

 

 すかさずわたしは隼人に声を届かせるように声を張り上げる。

 すると、彼はわたしの言葉をしっかりと聞いていたようで、すぐに指示通りに動いてくれた。

 同時に見えるベルのナイフ。だが、そのナイフは隼人に掠ることなく、そのまま地面に突き刺さる。

 

 ─────・・・・・・見えた・・・・・・・・・!!

 

 それにより、再び光の反射で一瞬だけ見ることができた物があった。それは、一本の糸のような物。

 それが、ナイフと隼人の体に存在していた。

 

「隼人!!体とナイフをよく見てください!!ベルフェゴールの攻撃のギミックがわかりました!!」

 

「「!?」」

 

「・・・・・・は〜・・・・・・やっぱ奈月ちゃんすげーわ。あの一瞬で何かあることに気付いたのか。おじさんには見えなかったぜ。」

 

「気流諸々の説明の時点で、別の仕掛けがある可能性は疑ってましたがね。

 と言うか、シャマル先生がアレを見ることができなかったとは思いませんでしたね。もしや老眼が入っているのでは?」

 

「ちょっとちょっと奈月ちゃん!?おじさんまだ35歳よ!?」

 

「人によったら30過ぎたくらいから目が悪くなるらしいぞ。」

 

「うっせぇぞリボーン!!」

 

 わたしの言葉に、武と了平さんが驚いたような表情を見せ、シャマル先生がいつもの調子で絡んでくる。

 それを適当にあしらっていれば、リボーンからも辛辣な言葉を浴びせられ、絡む対象をわたしから彼に移す。

 対するリボーンは、自身に絡んでくるシャマル先生を無視してわたしの頭を優しく撫でてきた。まるで、よく見抜いたと褒めるかのように。

 その手に少しだけ擦り寄れば、リボーンは一瞬驚いたような様子を見せては、小さく笑った。

 穏やかな笑みを見つめ、少しだけ目元を細めて笑う。しかし、すぐに意識をモニターに戻し、隼人の様子を伺った。

 モニターに映る隼人は、自身の体と、地面に突き刺さるナイフに視線を向け、時には確かめるように触れては、室内でゴソゴソと行動する。

 どうやら、彼も何が攻撃のギミックになっているのか気がついたようだ。

 

「怒涛の攻めのシメに、針千本のサボテンで終わらせてやるよ。ああ、安心していいぜ?姫のことはお前の代わりにオレがちゃんと側にいてやるから。」

 

 そう言ってベルは、これまで以上の量のナイフを扇状に広げて見せ、「バイバイ」の一言と共にナイフを投げつける。

 彼の手元から放たれたナイフは、急激に曲がったのち、室内を確かめることができる窓の近くにあった影に突き刺さる。

 まるで、人影に無数のナイフが突き刺さったかのように見え、武と了平さんの二人に焦りが浮かんだが、わたしとリボーン、そしてDさんとシャマル先生には、アレが人ではないことを把握していたため、冷静にその状況を見守ることができた。

 

 窓ガラス付近にあった影がぐらりと揺れ、窓ガラスを突き破るようにして廊下に転がり込む。

 だが、それは、わたしやリボーンが訓練用に使おうとしていた人型のマネキンだった。

 

「マ、マネキン!?」

 

「リボーンと一緒に用意していた人型の的ですね。」

 

「ナツと話し合って、どんな状況下にあってもファミリーとして戦えるように、いずれは実戦形式の訓練をつけようとしてたからな。

 この施設はそのうちの一つで、人型の的は遠慮なく攻撃できるようにするための道具だ。

 まぁ、最初のうちは人形を使っての訓練だが、いずれはディーノのところの下っ端から中堅あたりの部下に立ち回らせる予定だった。」

 

「じ・・・・・・実戦形式の訓練って・・・・・・。」

 

「しかも、本格的なマフィアの人間相手に立ち回らせようとしていたのか・・・・・・?」

 

「それくらいしねーとお前らじゃナツや、ナツの周りの一般人を守れねーだろうが。」

 

「ゔ・・・・・・」

 

「き、極限に耳が痛い話だな・・・・・・」

 

 サラッと告げられたリボーンからの指摘に、武と了平さんが言葉を詰まらせる。

 自分達の実力不足・・・・・・彼らはそれを、今回の争奪戦で痛感していたようだ。

 横目で2人の様子を確認しながら、モニターに視線を戻すと、廊下に転がった人型の的が軽く動く。

 

「「!?」」

 

 わずかに動いた人型の的にびっくりして目を向ける武と了平さん。

 だが、その的を引き寄せ、自身の足元まで移動させたらしい隼人が姿を現したことにより、意識は彼に向けられる。

 

「・・・・・・まさか、オレの体にワイヤーが取り付けられているとは思わなかったぜ。」

 

 静かに言葉を紡いだ隼人に、ベルは無言を返す。

 彼が見つけた答えを聞くために。

 

「最初の戦闘時、オレに蹴りを入れた際に視認しにくいワイヤーをこっちの体に取り付けた。

 その際、重量や違和感を感じねーように、局部麻酔まで打ってな。そして、ワイヤーを手繰り寄せ、そこにナイフの突起を引っ掛けて投げる。

 ナイフは目標に当たる寸前までレールの上を滑走するようにワイヤーに沿って飛んでくるようになる。今回は、この的を身代りをしてもらったがな。」

 

 隼人の言葉を聞き、ベルは軽く肩をすくめた。

 そして、静かに口を開く。

 

「まぁ、大体50点?いや、姫に言われねーと気づけなかったところからマイナスで40点くらい?

 なんにせよ、タネが少しわかったくらいで得意げになるのもいいけどさ。」

 

 そこまでベルが言葉を口にすると、再び大きな物音が辺りに響き、タービンによる強風を廊下に吐き出す。

 飛んでくるものを避けるようにして、隼人はその場から少しだけ後退した。

 

「この風じゃ、そっち何もできないじゃん。どうするわけ?」

 

 試すような言葉を紡ぎ、ベルは隼人を見据える。

 強風が吹き荒れる中、隼人は一瞬だけ黙り込み、いつも彼が持ち合わせているベルトとは違う、見覚えのないベルトから複数のダイナマイトを取り出した。

 

「それ当たってないじゃん。まだ使うわけ?」

 

 呆れたような声音でダイナマイトに言及するベル。

 武と了平さんも、彼のダイナマイトがベルに当たってないことをずっと見ていたこともあり、その表情に焦りを滲ませる。

 

「・・・・・・当たんねーボムを当たるようにするためにナンパ返上で付き合ってやったんだぜ?

 かつて、天才の名をほしいままにした、このオレがな。」

 

 緊迫した雰囲気を破るように、シャマル先生が呟くように言葉を紡ぐ。

 静かに彼の方に視線を向けてみれば、そこには普段の飄々としたおじさんと言った雰囲気がなりをひそめ、不敵な笑みを浮かべたシャマル先生の姿があった。

 きっと、これがトライデント・モスキートと言う名を冠する、暗殺者としての彼なのだろう。

 そっちの方がまだかっこいいし、好感を持てるんだけど・・・・・・普段のセクハラ親父の彼を思い浮かべながら考える。

 

「・・・・・・当たるんですね。あれ。」

 

「まぁ、見ていればわかるって。」

 

 静かに紡いだ言葉に、自身に溢れた声音で告げてきたシャマル先生を少しだけ見つめたあと、わたしはモニターに視線を向ける。

 同時に、隼人は、お決まりのセリフを口にしながら自身の手元にあったダイナマイトを投擲する。

 廊下を吹き抜ける強風の風。単純に考えれば、このままダイナマイトは風にぶつかり、そのままベルに当たることなく吹き飛ばされてしまう。

 しかし、隼人が投げたそのダイナマイトは、その単純な答えを真っ向から否定してきた。

 

 風の障壁に当たる寸前、投擲されたダイナマイトの下方が一瞬の爆発を発生させる。

 その瞬間、次々とダイナマイトは向きを変え、勢いよくベルの方へと向かっていった。

 風にぶつかると思っていたのか、ベルの反応は遅れている。結果、勢いよく向きを変え、促進力を強くしたダイナマイトを躱すことができず、そのまま直撃を受けてしまう。

 

「・・・・・・ダイナマイトに、機動力を追加していたのですね。」

 

「ああ。ロケットボム・・・・・・あれこそが、6日間で隼人が編み出した技だ。」

 

「機動力を上げて方向転換させる・・・・・・か。仕組みとしては、攻撃用のボムの火薬に追加して、推進用の火薬を仕込んだってところだろうな。

 おそらくだが、ボムの側を二重構造にし、二重構造により作られた空間に別の火薬を入れ、あらかじめ決められた方角に2回の起動変化を引き起こすようにしたってところだろうな。」

 

「・・・・・・お前って本当、分析能力高けーよな・・・・・・。」

 

「分析能力が十分じゃねーと、オレの技は使えねーよ。」

 

「そりゃそうだ。」

 

 リボーンの技というと、CHAOS SHOTのことだろう。確かに、あれは分析能力が高くなくては使えない技だ。

 相手の動きから、着弾するまでの時間、夏祭りの時に射的で彼が見せてくれた複数のものを経由させ、標的(ターゲット)となっている本命に届かせる軌道の方向、地面を通り抜けるまでの距離など、沢山のものを計算分析しなくてはならない。

 ・・・・・・いや、どんな技だよこれ。人間業じゃないって。リボーンって本当何者?

 

「隼人に最も足りなかったのは、スピードだったからな。ボムという武器の性格上、着火時間と山なりの軌道でどうしたって敵を捕まえるのが難しくなる。

 そこで、武器そのものに機動力を組み合わせることで、その弱点を補ったわけだ。

 オレが連れてるトライデント・モスキートを見て、その答えを見つけ出した。

 武器を使用するにはどうしても手動(マニュアル)になっちまうため、かなりのテクニックが必要になるが、2度曲がるなら戦略は一気に広がる。」

 

 わたし達に隼人の新たな武器の説明をこなしながら、シャマル先生は隼人が映るモニターへと視線を向ける。

 

「何より、隼人が生き残るために手に入れた新しい力だからな。そういう技ってのは、しぶとく決まるもんなんだぜ。」

 

 爆発の煙が立ち込める中、わたしはベルがいた方を把握するためにモニターへと目を向けた。

 少しだけ、嫌な予感を抱きながら。

 

 

 

 




 沢田 奈月
 ベルフェゴールに気に入られてしまい、何かと気にかけられている貝の女王。
 獄寺の新たな力を目の当たりにしながらも、嫌な予感を抱きながら、ベルフェゴールが映り込んでいたモニターへと視線を向けた。

 リボーン
 ベルフェゴールに気に入られてる最愛にはほとほと呆れているが、度々自身に甘えるような様子を見せてきている姿を見せる彼女には正直癒されている最強ヒットマン。
 ベルフェゴールが映っていたモニターを真剣な眼差しで見つめる彼女から、何かを感じ取り、警戒を抱く。

 獄寺 隼人
 何かと敬愛する女王にちょっかいを出すわ、彼女の負担になるだけだろと指摘してくるわのベルフェゴールに、少しだけメンタルがやられた女王の嵐の守護者。
 自身が手に入れた新たな力でベルフェゴールに攻撃を食らわせることに成功する。

 Dr.シャマル
 度々奈月に絡んではあしらわれるトライデント・モスキート。
 暗殺者としての側面を見せている時、女王からこっちの姿ならかっこいいんだけどなぁ・・・・・・と思われていることに気づいていない。

 山本&了平
 ベルフェゴールと獄寺の力の差に度々焦燥する女王の守護者達。
 自身の攻撃を直撃させた獄寺に、よし!と希望を見出しているが、女王が嫌な予感を抱いていることに気づいていない。

 ベルフェゴール
 奈月に好意的だからこそ彼女を何度も気にするし、絡む様子を見せている憤怒の王の嵐の守護者。
 当たりもしないボムを使ってくるため、呆れを見せていたが、機動力が上がったそれの直撃を受けてしまう。



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