最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
変わった女の子の三浦さんと出会った日の翌日。
太陽が照りつけ、相変わらずの暑さに見舞われている並盛町を、スポドリを飲みながら歩いていると、背後の方から重々しく無機質な音が聞こえてくる。
なんだ?と思いながら背後へと目を向けてみると、昨日出会った三浦さんが、甲冑とフルフェイスメットと、アイスホッケーなんかに使われているバトン?のようなものを装備した状態でそこにはいた。
「何ともまぁ個性的なかっこうをしていることで。その様子だと、ちゃんと眠れてないのかな?」
「おはよ───ございます……あなたの言う通り、昨夜は頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ……。」
「寝不足だとそんなかっこうしちゃうのか。」
「ちがいますーっそれじゃ私おバカですよ。」
拗ねたような表情をしながらも、三浦さんは私を見据える。
昨日の批判的な表情とは違い、どこか確かめるような、そんな表情をしているようだった。
「……その様子だと、どうやら話は聞けたみたいだね。」
三浦さんの様子から、ビアンキさんと接触することができたことを悟る。
となると、ちゃんと私が教えた通りに言葉を紡ぎ、そこからここに来る前のリボーンの話を聞けたのだろう。
「はい。あなたの言った通り、ベリー美人なお姉さんと出会って、リボーンちゃんの話を聞いてきました。
そして、あなたがリボーンちゃんとお姉さんにいろいろ教えてもらってるマフィアの10代目ボス候補である、沢田 奈月さんであると言う話も聞きました。」
「……あの人、余計なことまで教えやがったな。」
三浦さんの言葉から、彼女に自身の本来の立場を明かされたことがわかり、少しだけ表情を曇らせる。
まぁ、ビアンキさんやリボーンからしたら、私の言いつけ通り、一般人を攻撃していないからセーフと言った認識なんだろうけど、私としては、マフィアのボス候補って話までしてほしくないわけで……って、こんなところでブツブツ言っても意味はないか。
「まぁ、いいや。それで?その個性的なかっこうの意味を教えてもらっても?」
「リボーンちゃんが本当にマフィアで殺し屋なら、そんなリボーンちゃんからマフィアや殺し屋のことを教えてもらってるナツさんはとーってもストロングだと思うんです。
だから、ナツさんが私に勝てたら、お姉さんの話も、リボーンちゃんの話も信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句も口出しもしません!」
「なるほど、そう来たか。」
寝不足と大混乱のせいか、随分とまぁ斜め上の方へと思考回路なぶっ飛んでいる。
これは、指摘するべきなのか否か……まぁ、何であれ、決定事項は一つある。
「三浦さんの気持ちはよくわかった。その気概は認めるよ。でも、悪いね。
私は一般人相手に手を出すような奴じゃないんだ。挑まれたからと言って、一般人の……さらに言うと、女の子に攻撃するつもりないんだよね。」
「だったら戦う気持ちにするまでです!お覚悟!」
こっちの言葉を無視して、手にしていたものを振り上げる三浦さん。あくびが出そうなほどに遅い攻撃に、私はやれやれと小さく溜息を吐き、すぐにそれを回避する。
言葉の勢いだけはすごいけど、どの攻撃にもキレがなく、もし、これが不良だったら、この間に何発も打撃を叩き込むことができるし、カウンターで顎を一撃殴り飛ばして戦闘不能にすることもできるぞ。
まぁ、不良は喧嘩慣れしてるのも多いから、こんなヘナチョコ攻撃なんてしてこないけどね。
「何で躱すんですか!?」
「そりゃ躱すよ当たったら痛いじゃん。……何かこれ、昨日も言った気がするな。」
ひょい、ひょい、ひょい、ひょいと全ての攻撃を躱すだけで済ませる。
三浦さんは、マフィアのボスであり私の強さを確かめたいから戦えって言ってるけど、その強さを自覚している分、こっちからしたら攻撃するわけにもいかないんだよね。
絶対一般人の女の子相手に攻撃を当てたら、女の子の方が無事じゃ済まない。
マフィアや殺し屋なら戦闘技術があるし、かなり丈夫であることも理解してるから、それなりに反撃することができるけど、一般人相手に反撃は論外である。
骨折は免れないはずだし、最悪、複雑骨折を数か所に与えてしまいそうだ。
そんなことしたら間違いなく過剰防衛になるし、こっちが加害者側になる。
さて、どうしたもんかと思案する。このまま回避し続けて、相手がバテるのを狙うべきか、それとも手にしている武器だけをトンファーで叩き折って戦意を喪失させるべきか。
どちらも三浦さんを傷つけないで済むだろうし、どっちをやってもいかな……。
「とりゃ────ッ!!」
「一番手っ取り早いのこっちか。」
勢いよく武器を振りかぶる三浦さんの動きを見つめながら、いつも制服に下げているトンファーを外し、伸ばしたトンファーで、その側面を強く叩こうと振りかぶる。
「10代目!!さがってください!!」
「おわ!?隼人!!?」
……が、どうやらこの道を通りがかっていたらしい隼人が乱入したことにより、トンファーを使って戦意を喪失させようとしていた動きを出すことができなかった。
「果てろ!!」
その間に隼人は、制服からダイナマイトを取り出したのち、そのまま三浦さんの方に放り投げた。
あれ?タバコで火をつけていない……?と一瞬固まる。だが、ある程度空中を舞ったそれが、急に導火線に火を点し、その長さを刻一刻と短くし始めるのが見えた。
私は、慌ててその場でカバンを放り投げる。
「あれ?ドカーンっつやつですねー。……ん?どかーん?」
「ぼーっとしてる場合じゃないっての!!」
「はひ!?」
「な!?10代目!?」
固まっている三浦さんの体を抱きしめ、今いる橋の上から下の川の方へと飛び込むと、同時に背後で爆発音が響き渡る。
その際に発生した爆風により、体が宙を舞う中、私は彼女の頭を守るように抱きかかえたのち、近づく水面に目を閉じた。
大きな水飛沫を上げる音に、冷たい水に体が包まれる感覚。でも、抱きしめた三浦さんのものと思われる感触はそのまま体を伝ってくる。
「ゲホッ!!なんつータイミングで来てくれてんの隼人は!!」
「ブハッ!!なんであんなもん持ってる人がいるんですかーっ!!」
「彼も殺し屋だからだよ!!」
「ナツさんの周り殺し屋多すぎませんか!?」
「マフィアのボスになれって言ってきた人に言って!?普通はこんな生活あり得ないから!!」
流れる川の中で三浦さんと話しながら、一旦岸辺の方へと移動するため、なんとか川を泳ごうとする。
しかし、すぐ側でバシャバシャと泳ぐ時の音とは全く違う音が聞こえてくることに気づき、慌てて三浦さんの方へと目を向けた。
「たすけ……ゴボッ!!たすけてぇーっ!!!!」
「三浦さん!?」
それは、明らかに溺れている状況に陥っている三浦さんから聞こえてくるものだった。
彼女が着ている鎧の重量で、まともに泳ぐことができないのだとすぐに理解できた。
「っ……!!三浦さん!!掴まって!!」
「だ、だめです!!私が掴まったりしたらナツさんまで……!!」
「だからって放って置けるわけないだろ!!?」
「!!?」
三浦さんが沈まないように、なんとか泳いで連れて行けないかと画策する。
でも、彼女が着ている鎧はかなり重いようで、私がなんとか泳いでも、ほんの少しぐらいしか進まない。
川の流れもかなり早く、確実に体力が岸まで保たず、そのまま溺れてしまう可能性が高そうだった。
「ちっ………!!」
自身の非力さに思わず舌打ちが漏れる。せめて浅瀬まで……せめて彼女が立てる場所まで。
そう思いながら泳ごうとするが、状況は変わらない。
どうすればいい?私は、こっちの事情のせいで一般の人が巻き込まれて、危ない目にあってほしくないのに。
一般の人には、こっちの事情を知らないまま、穏やかに暮らしてほしいのに。
『大丈夫。その想いと意志を強く抱いたまま、意識を集中させてみろ。穏やかな熱が身体中を巡り、一点に集まる感覚を覚えるはずだ。
あとは、その感覚を助けたいと言う強い想いで力に昇華し、解放してみろ。
そうすれば、必ずお前が助けようとしている人を助けることができるようになる。』
もっと自分に力があれば……そんなことを思いながら、体力が続く限りは泳ごうとしていると、不意にどこか芯があり、だけど、とても優しくて穏やかな声音が聞こえてきた。
その際、一瞬だけ視界にチラついたオレンジ色の炎と、琥珀色の光に目を丸くするが、すぐに私はその声に従うようにして、一度静かに目を閉じる。
その瞬間、私の額には何か穏やかな温もりが灯り、次第に強い熱を持つようになった。
だけど、その強い熱は暑くもなければ熱くもなく、ただ、寄り添うような穏やかな温もりを感じ取ることができた。
side.R
「10代目ぇ〜〜!!ご無事ですかぁ!?」
隣で獄寺が慌てて叫ぶ中、リボーンは自身の視界に映るものを夢かと言うように真っ直ぐ見据える。
黒くつぶらなその瞳には、先程まで溺れかけていた少女、三浦ハルの体を支えながら、川を泳ぐ自身の教え子……沢田 奈月の額にともる、オレンジ色の炎と、まるでその揺らぎに連動するかのように穏やかだが力強い光をともす、普段とは違った琥珀の瞳が映り込んでいた。
「……ナツの奴……死ぬ気弾も死ぬ気丸も使うことなく、死ぬ気モードになりやがった。しかも、しっかりとコントロールもしてやがる。」
ダイナマイトによる爆風で岸辺から離れた川の沖にまで飛ばされてしまった奈月とハル。
しかも、ハルは鎧のせいで泳ぐことができず、誰より強くとも、根本的な力は男に及ばない奈月では、少しずつしかハルを運ぶことができない状況。
このままでは間違いなく2人が助かる可能性が低くなると思い、リボーンは、これまで必要なかった死ぬ気弾を奈月に撃とうとしていた。
しかし、彼が銃の引き金を引く前に、奈月の額には炎が揺らぎ始め、先程まで、わずかずつにしか移動していなかった奈月が、鎧を着たハルの手を引いて、真っ直ぐと川の浅瀬まで移動し始めたのである。
リボーンは驚愕した。このようなことがあり得るのかと。
確かに、マフィア界では修行の果てに、自在に死ぬ気の炎をともし、死ぬ気モードへと移行することができる者は確認されている。
だが、それは本当に厳しい修行の末に身につけることができるようになる技術であり、修行など一つもしていない者ができるようになるかと言うと、1%あるかないかの確率だろう。
だと言うのに、彼の教え子である奈月は、あらゆる才覚に恵まれていた奈月は、それすらもやり遂げてしまったのである。
「……常々思っていたが、今回ばかりはハッキリ言える。どうやらオレは、とんでもない才能を持ち合わせてる蛹をあてがわれちまったらしい。」
小さな呟きは、誰にも届かず、ただ静かに空へと溶けていく。
そんな中、走り出していく獄寺を視界の端で捉えたリボーンは、彼を追うようにして、教え子の元へと向かうのだった。
沢田 奈月
まさかの自力で死ぬ気モードになれた上、コントロールできてしまった最強転生者な10代目。
謎の声に導かれる流れで自力で死ぬ気になる方法を身に付けたが、声の正体はわかっていない。
リボーン
流石に死ぬ気弾を撃つ必要があると銃を構えたら、一度目を閉じたのち、自力で死ぬ気の炎を額にともした奈月を見て驚愕していた家庭教師なヒットマン。
改めて奈月の能力に、期待と寒気のようなものを抱いた。
獄寺 隼人
帰宅していたら奈月がよくわからないかっこうの奴に襲われていたので即助けに入った最初のファミリー。
しかし、まさかの奈月の乱入と、そのまま爆風に巻き込まれて彼女が川に落ちてしまい、顔面蒼白で慌てていた。
三浦 ハル
リボーンの話を、奈月に紹介された女性、ビアンキから聞き、大混乱の末、とんでもない思考に至ってしまった女の子。
しかし、まさかの本物の殺し屋な獄寺の襲撃にあい、奈月とともに川に落ちてしまった。
自身が溺れてしまうリスクがあろうとも、自身を助けた奈月に、思わず見惚れてしまう。