最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 雨は静かに止み始める。
 1人の剣士の敗北と共に。



VS. 雨の守護者 Ⅳ

 モニター越しに見える武とスクアーロさんの戦いを、無言で見つめていると、一際大きな舌打ちが聞こえて来る。

 舌打ちをしたのはスクアーロさんで、彼は軽い苛立ちを見せながらも静かに口を開いた。

 

「う゛お゛ぉい!!!クソガキが・・・・・・!!いつまで逃げ続ける気だぁ!!?」

 

 一向に好戦に入らない武に、彼は相当腹立たしいと思ったようだ。

 素人とは言え、自身が得意としている技を悉く回避し、冷静さも失わない程にキモが座っている武は、彼にとって楽しめる相手だと思っているのかもしれない。

 しかし、それなりに評価していると言うのに、武は攻撃をしてこない。

 スクアーロさんが使う技は、かなり洗練されているものばかりのため、武は攻略の糸口を見つけるために観察をしているだけなのだが、戦うことをそれなりに好むスクアーロさんにとって、防戦ばかりに徹する武の姿は、弱虫の行動にしか見えないのだろう。

 

「さっきも言ったが、テメェのボスである沢田奈月は力の差があろうが挑んできた!!だからこそオレも楽しめた!!

 だが、テメェはなんだ!?避けるか防ぐかしねぇ弱虫だってのか!?そんなのでよく、沢田奈月と同じ道を歩もうと考えていやがるなぁ!!?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

 スクアーロさんの言葉に、武は無言を返す。彼が言いたいことも、武にはわかるのだろう。

 だが、少しでも自身の勝利に持っていくために、スクアーロさんの行動を一つ一つ観察しているため、すぐに行動に出ることはしない。

 彼は、わたしと同じことをしているとも言える。模倣するなどと言う大層なことまでは考えていないと思うが、それはそれとして、相手の動きをよく観察し、自身の最善を掴もうとしている。

 なんとなくだがそれがわかった。わたしも同じだからか、それとも、直感による把握なのかまではわからない。

 

「オレが殺した継承者どもは、オレに攻撃しながら八つ全ての型を見せてくれたぜぇ?最後に八の型、秋雨を放ったと同時に無惨に散ったがなぁ!!!」

 

「!」

 

 不意に、スクアーロさんから告げられた言葉に、武は目を見開く。

 表情からして、彼の言葉に何かしらの引っ掛かりを覚えているのだと把握することができる。

 そんな武に対し、お構いなくスクアーロさんは攻撃を仕掛けようと再び動き出す。

 

「・・・・・・そーいうことかよ・・・・・・オヤジ・・・・・・!」

 

 武はスクアーロさんの動きをしっかり見ながらも、何かに合点が言ったかのような表情をしており、自身の口元に笑みを浮かべる。

 

「確かに、時雨蒼燕流はアンタに完全に見抜かれてっけど、やっぱ時雨蒼燕流は完全無欠、最強無敵の剣だと思うぜ?」

 

 そして、時雨蒼燕流と呼ばれる剣術が、どのようなものであるかを口にしたのち、その場で静かに構えを取る。

 武の構えを見るなり、スクアーロさんは口元に笑みを浮かべた。

 

「その構えは知っているぞ!!さぁ、打てぇ!!秋雨を!!!」

 

 勝利を確信したかのような表情を見せながらも、武に攻撃を放つスクアーロさん。

 しかし、彼の攻撃が武に当たる前に、スクアーロさんが宙を舞う。

 

「な・・・・・・にぃ・・・・・・!?」

 

 何が起こったのかわからない・・・・・・混乱したかのような彼の声が、モニター越しに届く。

 程なくして宙を舞うスクアーロさんは、真っ逆さまに水が広がる地面に倒れ込み、武の攻撃により出血したらしい赤を水に広げる。

 

「・・・・・・やっぱりな。」

 

 スクアーロさんに攻撃を届かせた武が、小さく笑いながら呟く。

 しかし、背後で出血しながらもスクアーロせんが立ち上がる気配を感じ取ったのか、すぐにその方向へと視線を向けた。

 

「ぐっ・・・・・・貴様!!時雨蒼燕流以外の流派を使えるのかぁ!!?」

 

 先程の斬撃により切り裂かれたらしい肩から血を流しながらも、武に怒鳴りつけるスクアーロさん。

 あの傷でよく怒鳴りつけることができるものだと少しだけ困惑しながらも、武に視線を向けてみると、彼はスクアーロさんに視線を向けながらも、口元に小さく笑みを浮かべていた。

 

「いんや。今の()時雨蒼燕流だぜ。」

 

「!!?」

 

「ただ、この型は、アンタが倒したって言う剣士が使っていたものじゃない。オレが知ってる八の型、“篠突く雨”は、オレのオヤジが友人を守るために作り上げた型だ。

 道理でしっくり来るわけだよな。・・・・・・オレも、オヤジと同じで、大切な人を守るために刀を振るっているんだからさ。」

 

 頼もしい笑みを浮かべながら、先程の型が何だったのかを武は告げる。

 彼の言葉に、その笑みに、周りが驚き、息を呑む中、静かに聞こえてきたのはリボーンの声だった。

 

「そう言うことか。時雨蒼燕流が、なぜ、八代八つの型と言われていたのか、これで疑問が解決できた。」

 

「八代八つの型?」

 

「ああ。」

 

 リボーンの呟きを繰り返すように口にすれば、彼は、時雨蒼燕流とはどのような流派なのかを説明する。

 

「本来、継承は教えられたことを受け継ぐことを意味するが、時雨蒼燕流の場合、それは変化を意味する言葉なんだ。

 おそらくだが、山本の父親とスクアーロが倒した継承者は、同じ師匠から一から七までの型を継承され、その後、それぞれが違う八の型を作ったんだろう。」

 

 リボーンの言葉に、わたし達は一瞬だけ目を見を見開く。

 それを知ってか知らずか、リボーンはモニターを真っ直ぐと見据える。

 

「同じ流派を名乗りながら、違う型を身につけるのですか?」

 

 そんなリボーンに対して、バジル君が戸惑いがちに声をかける。

 確かに、本来ならば、同じ流派でありながら、別々の型を派生させると言うのは、少しばかり不思議な継承方法だ。

 ・・・・・・いや、決してあり得ないわけじゃないかと、わたしは少しだけ思考を巡らせる。

 いつだったか、わたしにすごく懐いていた後輩の子が、家族を殺された挙句、妹を鬼にされてしまった1人の男の子が鬼と戦い、妹を人間に戻すための方法を探す物語を布教しようとしていた時、ベースになる剣術から、自身の体に合うように別の剣術へと派生させていくことがあるのだと言っていた。

 まぁ、正直、炎が恋になったり、雷が音になったり、水が蛇や花になったり、花が蟲になったりとなかなか複雑な話だったた上、その技を使うキャラがあれこれと言う説明も大量に含んだ熱弁にドン引きしてしまったため、話をしっかりと聞いたわけではないが、何かしらの流派が別の流派になると言うのは度々ある事象であることを考えれば、変化もまた継承と言えるだろう。

 でも・・・・・・

 

「幾つも型が派生する可能性はありますが、それ以上に諸刃の剣とも言えそうですね・・・・・・」

 

 複数の派生により、幾重も長い時を生き、残っていく可能性と同時に、変化したことにより弱体化してしまう可能性も存在する技術。

 型が派生するのはいいことかもしれないが、自身の打ちやすさを維持するために退化する可能性も含まれているとなると、なかなかに複雑な流派だと言える。

 だと言うのに、時雨蒼燕流は完全無欠、最強無敵を謳っているとなると、スクアーロさんのような強者を求める戦闘狂に目をつけられるリスクが高くなる。

 

「完全無欠、最強無敵を謳っている状況からして、スクアーロのような大物が餌に食らいついてきます。

 もし、そのような状況になり、同時に、変化させたことにより弱体化してしまった時雨蒼燕流を使用した場合、彼が狙った他の時雨蒼燕流の継承者同様、大き過ぎた獲物に食い殺されるのは目に見えている。」

 

「フッ・・・・・・流石はナツだな。ああ、その通りだ。確かに、複数の継承者がそれぞれ新たな型を派生させた場合、さらに型は分岐し、その能力は多岐に渡るだろう。

 だが、ナツの言う通り、変化すると言うことは、進化して強くなることもあれば、退化により急激な弱体化に見舞われることもある。

 変化による継承により派生した新たな型を生み出したところで、新たな型を生み出せる可能性は、人生で一度きり。

 気と才に溢れる継承者だとしても、複数の型を短期間で作り上げることができる可能性や、その後、しっかりと身につけるための過程を踏んだところで、一つの型しか編み出せない可能性は十分ある。」

 

「そして、その変化による継承が退化と言うカタチの変化だとしたら・・・・・・」

 

「退化した技術は強者により捻り潰される。そんな中で、完全無欠、最強無敵を謳っているとしたら、ナツの言う通り、食らいついてきた強者により淘汰される。

 だからこそ時雨蒼燕流は、気と才ある者が途絶えた時、世から消えることもしかたなしと言われ、滅びの剣と呼ばれてるんだ。」

 

 リボーンの話を聞き、感じたことを口にすれば、時雨蒼燕流がどのような流派であることを教えられる。

 その話を聞いたわたし達は、リボーンの話を静かに聞き、モニターへと視線を戻した。

 

「一応は、あんたに仕返しできたみてーだな。」

 

「生意気なこと言いやがって・・・・・・!!まぁ、いい。オレに一太刀浴びせることができたことは褒めてやる。だが、二度とオレは“篠突く雨”はくらわねぇぞぉ!!

 それともなんだあ?テメェはオレが知らねぇ型があるのかぁ?」

 

 自身に一太刀浴びせた武に、スクアーロさんが問いかける。彼からの問いを聞いた武は、スクアーロさんを真っ直ぐ見据えながらも、静かに口元に笑みを浮かべた。

 

「そうだなぁ・・・・・・。あんたが知らない型は“篠突く雨”だけで、それ以外は知ってる型であってるぜ。」

 

 まさかの暴露にその場の空気が凍りつく。

 素直な武らしいと言えば武らしいが、あまりにもアレだったためか、呆れや困惑などが周囲に広がる。

 ただ、わたしとリボーンだけは、武が何かをしようとしていることを感じ取っていた。

 

「やはり死ぬしかねぇようだな!!一度喰らった篠突く雨はすでに見切った!!」

 

 一撃を食らうだけで見切るのは流石だと考える。お前も似たようなことしてるんだがな、と言わんばかりのリボーンからの眼差しが少しだけ突き刺さるが、気にせずモニターへと目を向けた。

 

「流石だぜ。そうこなくっちゃな。」

 

 自身を真っ直ぐと見据えてくるスクアーロさんを見据え返しながら、武は小さく笑みを浮かべ、手にしている竹刀を静かに構える。

 

「んじゃ、やってみっか。オヤジも友達(ダチ)を守るために篠突く雨を作ったんだって言ってたし、それならオレも、オレが1番大切に想ってる好きな奴(ダチ)のために、かっ飛ばさねーとな。」

 

 その構えは野球のバットの構えで、武はしっかりと竹刀の柄を握りしめながら、力強い光を瞳に宿す。

 

「時雨蒼燕流、九の型・・・・・・」

 

 小さく紡がれた言葉に、わたし達の意識は一気に武へと向けられる。

 時雨蒼燕流は八の型まであることがわかっているが、そこに、武は新たな型を追加しようとしているのだとすぐに把握する。

 

「今、アイツ九って言ったびょん?」

 

「言ったね。」

 

「ということは・・・・・・」

 

 紡がれた言葉に、犬、千種、バジル君の3人が話し合う中、リボーンは小さく頷いた。

 

「・・・・・・どうやら山本は、新たな自分の型を放つつもりみてーだな。」

 

 リボーンの呟きに、ディーノさんがハッとしたような表情を見せる。

 そして、リボーンの呟きを聞く際に動かしていた視線を、再びモニターへと戻した。

 

「時雨蒼燕流は常に流派を変化させ、超えようとする流派。もしそれができるなら、時雨蒼燕流が謳う、完全無欠、最強無敵の流派になる・・・・・・!!」

 

 時雨蒼燕流と呼ばれる変化していく流派がどのようなものであるかを理解したディーノさん。

 しかし、その表情はかなり不安そうで、武の身を案じる表情へと変わる。

 

「何だぁ、そのふざけた構えは。野球でもするつもりか!!?」

 

 そんな中、スクアーロさんが武に話しかけた。

 構えが明らかにバッティングのもののため、どことなくバカにするかのような笑みを浮かべている。

 

「ナツに言われてんだ。自分らしくやれってな。オレにとっての自分らしさは、野球(これ)なんだ。」

 

 スクアーロさんの問いかけに、武は小さく笑いながら、武とっての自分らしさを口にして、スクアーロさんをまっすぐと見据える。

 その瞳には絶対に勝つという強い意思が宿っており、その姿を見たわたしの直感と、聞こえてきたプリーモの声は、「大丈夫。必ず勝てる。」という勝利を確信する言葉だった。

 

「図に乗るなよガキ!!オレの剣の真の力を思い知れ!!!」

 

 スクアーロさんはと言うと、武が自分という剣士を超えることはできないと思っているのか、その場で一つの斬撃を放つ。

 

「水が抉られていく!?」

 

「おやおや、これはなかなかに凄まじい。」

 

「余裕そうな表情で言う言葉じゃないと思うけど?」

 

 その剣撃の威力を見て、バジル君は戸惑い、骸と恭弥さんは冷静な雑談を躱す。

 ここまで反応に差があるのは何が原因なんだろうか?少しだけ脳裏を過った疑問。しかし、すぐにその疑問は追い出して、武の勝負の行末を見守る。

 

「死ねぇ!!」

 

「・・・・・・オレは死なねーよ。ナツのためにもな。」

 

 スクアーロさんの斬撃が武に届かんとする。だが、その斬撃が届く直前、武の姿が消えた。

 よく見ると彼はスクアーロさんの斬撃を躱し、その場でしゃがみ込んでいた。

 

「で、どーした!?」

 

 しかし、スクアーロさんは持ち前の反応速度を利用したのか、血の臭いに反応した獰猛なサメのように斬撃の方向の軌道修正を行い、再度、武に攻撃を放つ。

 武は持ち前の反射神経を使い、その斬撃を咄嗟に防ぐが、斬撃の余韻が凄まじいのか、その身に幾つもの裂傷を作り上げた。

 だけど、武の瞳に絶望はなく、ただ、勝つための光を見据える力強さだけが存在している。

 

「とどめだぁ!!!!」

 

 スクアーロさんはそれに気づいていないのか、それとも自身が勝利すると言う確信しか抱いていないのか、武に猛攻を繰り出す。

 しかし、その攻撃は一瞬の動揺に塗りつぶされた。

 

 モニター越しでもわかる。スクアーロさんの背後に、武の姿があることを。

 しかし、それが実態を持たない影であり、本来の武がどこにいるのかを。

 スクアーロさんは、鏡像の武に気づいたように視線を背後に向ける。しかし、すぐに自身の手元の剣を無機質な音と共に背後へと傾けることでその体を貫いた。

 しかし、スクアーロさんが貫いたのは、武の影。多量の水だけがそこにある。

 

「時雨蒼燕流 攻式 九の型。うつし雨。」

 

 いつもの武とは一転変わり、静かな声音で紡がれた言葉。

 水面の影に一瞬惑わされてしまったことにより、隙を晒してしまったスクアーロさんは、武に対処することができないままに、首の後ろへと峰打ちを叩き込まれる。

 

 水に溢れた床に、スクアーロさんが倒れ込む中、武はその首にかかっていたボンゴレリングの片割れをさげる鎖を切り、宙へと一度打ち上げたのち、その指輪を自身の手の中へと収める。

 

「ナツ。勝ったぜ。」

 

 そして、疲労が見えるその表情にいつもの明るい笑みを浮かべながら、手元に収まった一つの指輪を見せてくれたのだった。

 

 

 




 沢田 奈月
 山本が九の型を放とうとした瞬間、持ち前の超直感により、彼の勝利を直感した貝の女王。
 この時はDの精神保護による彼との精神リンクの影響で戦闘時の感情の抑揚がほとんどなかったが、リンクが切れたあと、そう言えばかなり恥ずかしいこと言われまくらなかった!?と顔を赤くする未来が待っている。

 山本 武
 貝の女王である奈月のため・・・・・・と言うよりは、自身が恋焦がれるナツのために、勝利を掴み取った女王の雨。
 大切な人を守るために型を編み出した父親と同じく、大切な少女の笑顔のために、新たな型を生み出した。

 貝の女王陣営
 度々山本のど天然さや素直さにツッコミや呆れを抱きながらも、彼の戦いを見守った女王の陣営。
 それはそれとして一部のメンバーは、サラッと奈月にアピールしてんじゃねーよと僅かな嫉妬を抱く。

 S・スクアーロ
 とうとう山本に敗れることとなった憤怒の雨。
 途中までは自身の勝利を確信していたが、山本が生み出した新たな型により指輪を奪われた。

 ヴァリアー陣営
 スクアーロが敗れたことにそれなりに驚いた暗殺部隊。
 やっぱ女王・・・・・・奈月のためにが向こうの強化ワードになっているような気がしてならない。

ハルのハルハルインタビューや、犬のケンケンぱぁ〜、ルッスーリア3丁目、怪物使いツナのネタは・・・・・・

  • 骸「奈月ありで番外に書きましょうよ。」
  • リ「別にいらねーんじゃねーか?」
  • 雲「どっちでもいい。」
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