最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 気分転換のお出かけを済ませ、時間が経った貝の女王は、夜の舞台へ舞い戻る。
 女王の霧とその代理人たる少女を連れて。



暗闇に霧は立ちこめて

 黒曜カルテット with 凪と言うなかなか変わった組み合わせで過ごしたお出かけの時間。

 いい息抜きになったと思いながら、一旦凪達と別れて骸と屋敷に戻ったわたしは、彼とリボーン、それと、プリーモファミリーで集まり夕飯を済ませた。

 ちなみに、今日の夕飯はジョットさんとGさんの幼馴染みコンビとリボーンによる本格的なイタリアン。

 いつのまにこんなもの作れるようになったんだと思ったが、どうやら、食事当番になった場合、このメンツの中で明らかに料理が得意なわたしが少しでも休める時間を多く取れるようにするために、こつこつとリボーンがレシピ本を買いためていたらしい。

 それを見て、プリーモファミリーとリボーンは料理の腕を磨き、今の状態になっているんだと教えてくれた。

 

 まさか、リボーン達がここまでわたしが少しでも楽に過ごせるようにと考えて行動を取っていたとは思わなかったのか、骸が軽くポカンとしていた。

 しかし、「それならもっと早くその行動が取れたら良かったのではありませんか?遅過ぎますよね?」と刺々しいお小言を口にしていたので、やはり過去の彼らは気に入らない上、今も根に持っているらしい。

 リボーン達はかなり気まずそうに視線を逸らしていた。

 

 ちょっと重たい空気になりながらも、済ませた夕食。レシピを見ながら作られたものだったため、美味しく食べることができたし、骸も文句は言ってなかったので、とりあえずは問題はなかった・・・・・・でいいと思う。

 

 ・・・・・・それから時間が経ち、争奪戦が始まるまで30分を切った頃。

 わたし達は今回の争奪戦の舞台へと足を運んでいた。

 向かった先は敷地内にある倉庫。業務用の巨大倉庫を基に作り、中は空箱やワゴンの台車などの障害物がちらほらある程度だが、霧の守護者同士の戦いとなると、必然的に幻術のぶつかり合いになるため、多少の障害物があればあとはどうにでもなるのだろう。

 まぁ、無から生み出したものを使用すればどうにでもなるのが術士だし、理解できないわけじゃないかな。

 

「奈月さん!」

 

「骸しゃーん!こっちびょん!」

 

「極限に待っていたぞ!」

 

 そんなことを思いながら、骸とリボーン、特定の人物にしか見えない状態のプリーモファミリーを引き連れて歩いていると、進行方向から隼人達の声が聞こえてきた。

 すぐに視線をその方角へ向けてみれば、恭弥さん以外の昨日集まっていたメンバーと、今日から参加することになった凪の姿がそこにあった。

 

「・・・・・・恭弥さんは?」

 

「恭弥なら多分そろそろ来るんじゃねーか?ナツがいねー状態の大人数の中に、あいつは入りたがらねーしさ。」

 

 恭弥さんだけいない・・・・・・と思い、疑問を口にしていると、ディーノさんが彼が合流するタイミングを口にする。

 それもそうか・・・・・・と思っていれば、背後から恭弥さんの気配が近づいてくることに気がついた。

 

「あ、恭弥さん。」

 

「やぁ、奈月。今日は、六道骸と一緒だったんだ?」

 

「はい。わたしが拠点にしてる場所に、骸が足を運んできたもので。どうやらリボーンに教えられたらしいんですよ。」

 

「ふぅん?僕には場所を教えてくれないのに、そいつには教えるんだ?」

 

「ナツの事情的に、それを知ってる連中のみにしか教えられねーんだ、我慢しろ。」

 

 リボーンと恭弥さんのやり取りから、恭弥さんが何度かリボーンにわたしの居場所を聞いていたことを把握する。

 まぁ、確かに、わたしに憑いて回っているプリーモファミリーの存在を、恭弥さんは知らないし、骸は逆に知ってるしで納得できる理由ではある。

 リボーンみたいに、後天的にプリーモファミリーが視えるようになったら恭弥さんに居場所を教えることもできるけど、後天的に視えるようになる条件がわからない以上、今は教えられないな。

 

「奈月の事情って何?」

 

「それに関しては彼女の口から話そうとしない限り、僕もアルコバレーノも教えるつもりはありません。

 彼女から話してもらえるまで待つ方が得策ですよ、雲雀恭弥。」

 

 暗に“奈月から嫌われたくないでしょう?”と言わんばかりの声音で口にする骸を、恭弥さんは無言で見つめ返す。

 しかし、納得している様子はあるのか、それ以上恭弥さんは何も言わなかった。

 

「ヴァリアーはすでに集まってると思いますし、行きましょうか、倉庫の方に。

 今回いるのは、XANXUSさん、ベル、モスカ、それと、骸の対戦相手のマーモンのようですね。

 ・・・・・・ルッスーリアとレヴィ・ア・タンの2人、謹慎でもくらってるのでしょうか?争奪戦も佳境に入ったと言うのに姿がありませんけど。

 まぁ、正直言ってちょっと強烈な人がいる場所に凪を連れて行きたくありませんし、いないに越したことはないのですが。」

 

 それを確認したわたしは、今からやるべきことを口にする。

 なんとなく気になった疑問はなきにしもあらずだが、今は骸の戦闘に集中しよう。

 

『あ、レヴィ・ア・タンでしたら、意識は取り戻したらしいですよ?一時危篤状態に陥っていたようですが、生きてるそうです。

 ただ、敗北した連中は基本的に観戦することはしないようですね。特にレヴィ・ア・タンに関しては、自身が敗北したことによるXANXUSへの負い目で自ら命を絶とうとしたらしいですが、チェルベッロに止められ、縛り付けられたのち、XANXUSからも待機命令を出されたとか。

 争奪戦に対する二転三転するかもしれないから切り捨てるのは少し待つことを推奨したナツキの言葉を一応は聞いてるようですね。

 ルッスーリアに関しても一命は取り留めているそうですよ?彼の場合、怪我が怪我だったのでベッド暮らしらしいですが。』

 

 そんなことを思っていると、Dさんがこっそりと負けた側の2人の情報を教えてくれた。

 何やら一悶着あったそうだが、XANXUSさんがこっちの意見を熟考し、一応は聞き入れてくれていたようだ。

 ・・・・・・やけにレヴィって人はXANXUSさんに陶酔していたし、予想通りのトラブルを引き起こしていたんだなぁ。

 まぁ、どうでもいいけど・・・・・・なんて考えながら、わたしは武に視線を向ける。

 スクアーロさんとの戦闘の後、怪我を治してもらった時に、彼に向かわせた場所と、そこでの出来事を問うために。

 

「・・・・・・そうそう・・・武。サメさんには会えましたか?」

 

「!ああ!ナツの親戚の部下って人に治療してもらった後、少しだけ様子を見に行かせてもらったぜ。

 ナツがディーノさんに頼んだんだってな。命には別状はねーって聞いて、安心したぜ!まぁ、意識を失ってるから話せなかったけどさ。」

 

「意識があっても、会話はできなかったと思いますよ。きっと、彼には彼のプライドがありますから。

 だから、彼が目を覚ました際は、ディーノさんの考えの元、武が負けた時のために控えていたと言う話を彼にするでしょうね。」

 

「それに関しては、まぁ、仕方ねーよな・・・・・・。でも、スクアーロが生きててよかったぜ。」

 

 スクアーロさんには会えたかと言うわたしの質問に対して、自身の回復ついでに見てきたことを嬉しげな様子で言葉を紡ぐ武に、小さく微笑み返す。

 彼が生きていることがわかるだけでも、武にはプラスになるだろうと思い、遠巻きではあるが、面会させたことは正解だったようだ。

 昨夜に比べて顔色もよく、いつもの明るさを取り戻していることがわかり安堵する。

 

「やっぱり、武には明るい笑顔がよく似合いますね。少しでも元気になれたようで安心しました。」

 

「!お、おう。ありがとな、ナツ。」

 

 素直な気持ちを口にしたところ、武が顔を赤くしてわたしから目を逸らした。

 はて?と首を傾げたくなる中、複数箇所からジトりとした眼差しを感じ取る。

 

『相変わらず奈月はプリーモ譲りの人を惹きつける力がありますなぁ。』

 

『ん?ナツキのこれはオレ譲りなのか?』

 

『まさかの気付いてないパターンだし・・・・・・。プリーモももう少し自覚を持った方がいいと思うものね・・・・・・』

 

「『????』」

 

『ダメですね。このオレンジの天然ふわふわたらしコンビ、全くと言っていい程に理解していません。』

 

『いつものことじゃない?』

 

『確かに、究極にいつも通りのプリーモとナツキだな!』

 

『超直感あっても、なぜか変なところで鈍感発揮するからなぁ、こいつら・・・・・・』

 

 何やらプリーモファミリー側から呆れやら苦笑いやら微笑ましいやらの眼差しを向けられ、わたしとジョットさんは2人揃って首を傾げる。

 そこまで言われる程かな?ただ、わたしは素直な感想を口にしているだけなんだけど・・・・・・。

 

「・・・・・・CHAOSだな。まぁ、お前ららしいと言えばらしいが、程々にしとけよ。

 特にナツ。お前は毎回オレの邪魔になりそうな連中を誑かすんじゃねーぞ。」

 

「誑かすだなんて人聞きが悪いですね・・・・・・。思ってることの中で、プラスなりそうなことを口にしてるだけですよ。

 笑顔が素敵だとか、寄り添ってくれて嬉しいとか、頼りになるとか、そう言った言葉を心からの思いを込めて告げてるだけですし。」

 

『オレもそこまで誑かしている記憶はないんだが・・・・・・。ナツキと同じで、思ったことを口にしているだけで・・・・・・。

 だって、悪いところの粗探しをされて、チクチク言われるより、良いところを見つけられて、褒められる方が気分もいいし、自分自身もマイナスの感情による表情を見るより、プラスの感情による表情が見られるから嬉しいだろう?』

 

「まぁ、流石に明確に悪いことやマイナスなことをやらかされたら警戒しますし、注意もしますけどね。」

 

『それに関してはオレも同じだな。あまりにも悪意が悪目立ちするようなことをされるようであれば、流石にオレも黙っていられないし、怒るに決まってるだろう?』

 

 わたしとジョットさんの話を聞いて、雨月さんとナックルさんを除くプリーモファミリーと、プリーモファミリーを視ることも、言葉を交わすこともできるリボーンと骸が深い溜め息を吐く。

 思いっきり溜め息を吐かれたわたしとジョットさんは、互いに顔を見合わせた後、再びそのまま首を傾げた。

 

「・・・・・・なんかよくわかんねーけど、とりあえず倉庫に行こうぜ?」

 

「そうだな。立ち話を続ければ続ける程、向こうを待たせることになるし、程々に切り上げような、お嬢。」

 

 一部始終を黙って見ていたディーノさんが、よくわからないと言わんばかりに困惑しながらも、倉庫に向かおうと口にすると、ラウルさんがその言葉に賛同する。

 わたし達は2人の言葉に素直に頷いた後、倉庫がある方角へと歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

           ❀

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・しばらく敷地内を歩き、たどり着いた第一倉庫。

 中に入るための扉に手をかけ、静かに開ければ、予想通りヴァリアー陣営がすでに姿を現していた。

 わたし達がいる場所とは反対の位置。どこからか玉座を持ち込んできたのか、座り込んでいるXANXUSさんを真ん中にするようなカタチで、ベル、モスカの2人が控えており、マーモンだけフィールドの中に足を踏み入れていた。

 

「・・・・・・なんと言うか、随分と人数が減りましたね、そちら側は。」

 

「そうだな。全部テメェの守護者が悉くこっちの人間を敗退させたことによるもんだぜ、女王蜂さんよ。」

 

「誰が女王蜂ですか。人間の枠組みから外さないでもらえます?失礼な方ですね。」

 

 わたしの直感が言っている。これくらいは言い返しても向こうの不興を買うことはないと。

 いや、何言ってんのかわかんないけど、とにかく軽く言い返すことはある程度はできるくらいにはXANXUSさんの圧迫感に慣れたらしい。

 と言うか、完全にDさんに対応の仕方や態度をこの数日間で刷り込まれてしまっているような気がしてならない。

 わたし、こんなにXANXUSさんに対して遠慮なく言い返せるような性格していたっけ?

 

【ねぇ、骸。いい加減、わたしいろいろとヤバいかもしれない。】

 

【奇遇ですね。僕も同じことをツッコミたいと思っていたところでした。何D・スペードに良いように刷り込まれているのですか桜奈?】

 

【わたしが1番聞きたい!!いつのまにこんな状態刷り込んだのあの人!!】

 

 繋がりを通した念話を使い、いい加減危機感が出てきたことを骸に伝えると、骸から呆れたような声音でツッコまれた。

 間接的に繋がっている凪も、わたしと骸のやり取りと、わたしの感情から何の話をしているのか把握できているのか、かなりオロオロしながらわたしを心配そうに見つめてくる。

 骸といることにより、繋がりが殆どない状態になっているDさんは、こちらが何かしらのやり取りを念話でしていることを把握しているようで、静かに視線を向けてきていた。

 

「・・・・・・何か姫のところ人増えてね?」

 

 そんな中、離れた位置にいるベルがこちらの人数に関して口を開く。

 まぁ、確かに、新しくこの場に凪が姿を現したため、人数は地味に増えている。

 

「ああ、今回の術士同士の戦闘を勉強したいと言っていたので、新しく1人増えていますね。

 私の妹です。まぁ、見ての通り血は繋がっておりませんが、彼女と私は家族なのですよ。」

 

「ふぅん?そいつ、よく見たら姫の学校に通ってるヤツじゃん。姫の妹だったんだ。」

 

「・・・そうだけど・・・・・・」

 

「声ちっさ。まぁ、王子からしたらどうでもいいんだけどさ。つか、姫って霧のヤツ以外にも術士が側にいたんだな?」

 

「ええ。まぁ、彼女には彼女の事情がありまして。何にせよ、私の妹兼術士見習いとだけ覚えておいてください。」

 

「姫が言うならそれだけ覚えといてやるよ。」

 

 “しししっ”と笑い声を漏らしながらも、わたしの言葉により、ある程度は理解したらしいベル。

 この人、本当にヴァリアー陣営の中で1番わたしの話を聞いてくれるな・・・・・・なんて思いながらも、マーモンに視線を向ける。

 そこには、何やら骸と凪に反応しているらしいマーモンのペットが、フードの上てジタバタしている姿があった。

 

「・・・・・・そのトカゲ・・・・・・カエル・・・・・・?爬虫類とも両生類とも取れそうな謎の子は何がしたいのでしょうか?」

 

「ム?ああ、僕のファンタズマのことだね。君のところの霧と、そこの君の妹がかなり特殊なものだから、激しく反応しているんだよ。

 そちら側の術士の2人は、かなり特殊な人間だってね。ちなみに、君にも度々ファンタズマは興味を示しているようだよ。

 術士だから・・・・・・と言うよりは、そこの2人のように、かなり特殊な境遇を持ち、特異な状態に陥ってることに気づいているみたいだからね。」

 

【・・・・・・これ、Dさんのことバレてたりする?】

 

『ふむ・・・・・・バレてるか否かはわかりませんが、何かが度々ナツキの精神に干渉していることには気づいているかもしれませんね。

 まぁ、だからと言って私がバレるはずもないのですが。なんせ、アルコバレーノと六道骸、それと、メテオライトとお前の妹である凪、この場にいるプリーモファミリーと言った特定のメンバー以外には私がついていることは知られていませんし、何より、私の情報を探ろうとしたところで、把握することはできない存在ですから。死人ですし?』

 

 マーモンの言葉に、冷や汗をかきそうになりながらも、Dさんに繋がりのシフトを変えて問いかければ、彼はサラッと死人だからバレないと告げてくる。

 ・・・・・・死んでるから調べようと思っても情報は出てこないって、よくよく考えたらかなりのパワーワードだな。

 あまりにも存在感あり過ぎて、この人がすでにお亡くなりになってるの忘れることあるよ。まぁ、肉体は・・・・・・なんだけど。

 

「そうですか。生き物の勘・・・・・・獣と言うにはツルツルですけど、獣の勘でもあるのですかね。」

 

「それもあると思うけど、君は僕がアルコバレーノであることに気づいてるんだ。アルコバレーノが連れ歩くペットがかなり特殊な力を持ち合わせている生き物であることはよく知っているだろう?だからこそ、鼻がいいんだよ。」

 

 そう言ってマーモンはフィールドの方に足を踏み入れる。

 それを見届けたわたしは、すぐに骸に目を向けた。骸は、わたしの視線に気づくや否や、口元に余裕以外感じ取れない笑みを浮かべる。

 

「どうぞ、奈月。ご命令を。マフィアに加担するのは心底嫌で拒絶反応しか出てきませんが、あなたの命令であれば、僕はいくらでも果たして見せますよ。」

 

 穏やかな声音で言葉を紡ぎ、わたしに指示を仰ぐ骸。

 その姿を見て、わたしは笑みを返した後、彼の側に静かに近寄る。

 

「もちろん、骸なら必ず応えてくれると信じています。私から言えることはただ一つ。相手がアルコバレーノであろうと関係ありません。

 容赦なく打ちのめし、リングを必ず持って帰ってください。キミなら十分できますよね?」

 

 告げた言葉はこれまでのわたしとは違う、強気の命令。晴や雷、嵐に雨・・・・・・申し訳ないが、この四つの属性は、あまりにも相手との能力の差があり過ぎて、命を守ることを優先しなくてはならない戦いだった。

 でも、骸は違う。わたしの守護者として名を挙げられていたメンバーの中では、恭弥さんと同等の強さを持ち合わせている人だ。

 命を優先にすること・・・・・・もちろん、骸にもそれは言えることだが、彼がマーモンに敗北すると言う未来はないと言い切れる力がある。

 

「無理だけはしないように。まぁ、わたしの守護者であるならば、それくらいはわかっていると思いますがね。」

 

「クフフフ・・・・・・ええ。もちろんですとも。奈月が悲しまないことを優先しますから、無理だけはしませんよ。

 まぁ、無理をしなくても十分過ぎると思いますが、容赦なくと言うオーダーですから、しっかりとリングを持って帰りましょう。」

 

 穏やかな声音で言葉を紡ぎながら、骸はわたしの手を取り、そっと手の甲へと口付けを落とした。

 手を離されると同時に、わたしはそのまま彼の首の後ろへと腕を回し、自身の方へと端正な顔を近づけ、唇の端へとキスを返す。

 

「「「んな!!?」」」

 

「「は?」」

 

「・・・・・・何か、骸に対するキスの位置、他のメンバーと違くね?」

 

 頬でもなければ、額でもなく、唇の端と言う際どい位置への口付けに、隼人、武、了平さんの3人は顔を赤くし、恭弥さんとリボーンは明確な苛立ちを見せる。

 ディーノさんだけは平然としているようだが、ほんのりと顔の赤みが増していた。

 

「いつものことびょん。」

 

「確かに。いつものことだね。」

 

「骸様・・・ずるい・・・」

 

 対して犬と千種の2人は、わたしと骸がいつもどのようなやりとりをしているのか知っているためか、平然としている。

 ・・・・・・凪だけ何やら嫉妬している様子があったが、まぁ、これはほとんど予定調和かな。

 

「ん?」

 

「おや?」

 

 なんてことを考えていると、何やら倉庫の外から障害物にぶつかりながらもこちらに近づいてくる気配に気づく。

 骸と一緒に視線をその方角に向けてみれば、倉庫の扉が勢いよく開き、わたしがよく知る人物の1人が姿を現した。

 

「・・・・・・コロネロ。ものすごくファルコがフラフラですが?」

 

「普段は京子に寝かしつけられている後だからな・・・だから、おねむだぜ、コラ。」

 

「・・・・・・不便ですね。赤ん坊の姿って。」

 

「本当だぜ、コラ。何でリボーンはそっちになれるんだ、コラ。方法を教えろコラ。」

 

「教えられるわけねーだろ。これは機密事項だぞ。まぁ、強いて言うなら、ナツの人脈に変なヤツが混ざってるって話だな。」

 

「人脈に変なヤツ。」

 

「人脈に変なヤツって言いましたね。」

 

 リボーンの変なヤツと言う発言に、骸と一緒になってDさんの方へと視線を向ける。

 骸とわたしの影響により、彼らを視ることができる凪や、プリーモファミリーの視線も全体的にDさんに向けられており、リボーンもまた、彼に視線を向けていた。

 

『・・・・・・・・・って、何視える人間全員で私のことを見ているのですか!?まさか私がそうだと!?はっ倒しますよ!?』

 

 “強ち間違いじゃなくね?”“間違いないよね・・・”と言わんばかりの空気が流れるが、Dさんが軽くキレたので、視線をそっと今回のフィールドに戻す。

 後ろでDさんが何やら言ってる気がするが、とりあえずスルーして、わたしはコロネロに視線を戻した。

 

「睡眠欲を削ってまでこちらにくるとは、何か気掛かりなことでもありましたか?」

 

「ああ。了平の訓練をつけていた時に、リボーンからヴァリアーにカエルを乗せたチビがいると聞いてな。アルコバレーノが7人いることはお前もよく知ってるだろ、コラ。」

 

「ええ。リボーンから全て聞いています。アルコバレーノがどのような存在で、どれだけの人数がいて、何が原因でアルコバレーノと言う特殊な存在になってしまっているのかなど、しっかりと。」

 

「「!?」」

 

 わたしがリボーンが知る限りのアルコバレーノの話を全て知っていることを聞き、コロネロが思い切り目を見開き、マーモンも弾かれたようにこちらへと意識を向けて来た。

 

「・・・・・・お前、ナツに全部話したのか?」

 

「ん?ああ。どうしてもナツの口から聞きてー話があったんでな。ナツが話してくれるのを待つより、オレから自分が何者であるかを明かし、歩み寄った方がいいと判断したんだぞ。

 おかげで、オレもナツが持ち合わせていた真実を知ることができた。ナツの真実に触れることが出来るなら、安い話だからな。」

 

 サラッと自分が話した理由をコロネロに教えるリボーン。

 コロネロは、しばらく彼を見つめた後、やれやれと言わんばかりの溜め息を吐く。

 

「・・・・・・ったく、本当にお前は本気でナツに惚れてんだな。特定を作らなかった腐れ縁が、まさかここまで1人の女に入れ込むようになるなんて思わなかったぞ、コラ!」

 

「うるせーぞコロネロ。つかお前はちゃんとラルに振り向いてもらえるように頑張ってんのか?」

 

「ぶほ!?いきなり何言い出すんだコラ!!!!」

 

「なんだ、結局奥手のままか。お前ら相変わらずじれってーな。」

 

「やかましいぞコラ!!そっちだって本命に振り向いてもらえてねーだろコラ!!」

 

「うるせーぞコロネロ。こっちは絶賛口説き中なだけだ。そっちも積極的に口説いてきたらどうだ?」

 

 ・・・・・・何やら2人の話がかなり脱線してきており、わたしはその場で苦笑いをこぼした。

 流石は幼馴染みと言うべきか、軽口の応酬に遠慮がない。

 

「無駄話はそこまでですよ、リボーン。コロネロ。さて・・・・・・つまり、コロネロは、マーモンがアルコバレーノかどうかを確かめにきたと言うことでしょうか?」

 

「ああ、そうだぜ、コラ。まぁ、リボーンの様子から、確かめるまでもなさそうではあるがな・・・・・・」

 

 警戒するようにマーモンへと視線を向けるコロネロ。

 どうやら彼は、リボーンがすでにマーモンがアルコバレーノであることに気づいていることを把握しているようだ。

 わたしにはよくわからないが、きっと、幼馴染みであるからこそわかる何かがあるのかもしれない。

 

「そう言やディーノ。アイツのことは良かったのか?」

 

 そんなことを思っていると、リボーンがディーノさんに声をかけた。

 どうやら、スクアーロさんのことに関して聞いておきたいらしい。

 

「ん〜・・・・・・まぁ、命に別状がねーってことは把握しているし、あの人らもアイツの治療に当たってくれてるからな。

 今日の争奪戦を見届けてから会うことにしたんだ。今のアイツは、意識も失ってる状態だしな。」

 

 リボーンの質問の意図に気付いたのか、ディーノさんは小さく笑みを浮かべながら、問題はないことを口にした。

 それを聞いたリボーンは、「そうか」と短く呟き、静かに視線をフィールドへと向ける。

 

「・・・・・・まさか、ここでもう1人顔見知りに出くわすことになるとはね。まぁ、なんだっていいさ。

 今やることはただ一つ。そっちのハーブボンゴレリングを奪うだけだよ。」

 

 そう言ってマーモンは真っ直ぐと骸を見据える。

 マーモンから視線を向けられた骸は、口元に笑みを浮かべたのち、静かにフィールドへと歩みを進めた。

 その手元に、一本の槍を握りしめて。

 

「今回の戦闘フィールドは、この倉庫全てで、館内のものは何を使っても構いません。」

 

「尚、このフィールドには特殊装置は用意されておりませんのであしからず。」

 

「ん?何もないのか?」

 

 一部始終を黙って見ていたチェルベッロが、話に区切りがついたと判断し、今回のフィールドの説明をする。

 特別仕様にする必要はない・・・・・・その言葉に真っ先に反応したのは了平さんだった。

 

「術士と呼ばれる存在に余計なものはいらないのですよ、笹川了平。理由として、術士が使う幻術と言う技術は、その場で攻撃手段に使えるものを生み出し、相手を翻弄する技術です。

 現実感(リアリティ)を上げればそれは幻覚と言うには質量があり、確かな殺生力を持ち合わせているものへと変化させることもできますから、何か特別な細工をしなくても、相手を苦しめることも可能になります。」

 

「つまり・・・どう言うことだ?」

 

「・・・・・・君、中学3年生ですよね?割とわかりやすく説明したはずですが?」

 

「骸。了平さんは少しばかり小難しい話が苦手な人だからそんな風に言わないの。

 ・・・・・・わかりやすく言えば、見えない刃を持ち合わせているようなものです。こちらを見てください。」

 

「ん?」

 

 了平さんが視線を向けてきたことを確認し、わたしは自身の手元に何もないことを教えるように見せる。

 

「私の手元に、今は何もないでしょう?」

 

「うむ!全くないな!」

 

「幻術と言うのは、この何もない状態から、武器になりうるものを生み出すことが出来るんです。

 この場で鳩を出したり、花を出したり、トランプを出したりしたらただの手品にしかなりませんので、少しばかり物騒なものを出しますから、少し距離を取って。他のみんなも。」

 

 わたしの言葉を聞き、了平さん達が静かにこちらから距離を取る。それを確認すると同時に、わたしは自身の手元に骸が持っている槍と全く同じ槍を有幻覚で作り出し、そのまま横薙ぎに一閃した。

 

「「「「おわ!!?」」」」

 

「・・・・・・なんでよりによってそいつの武器なわけ?」

 

「1番わかりやすいかと思いまして。」

 

「奈月、すごい・・・」

 

「骸さんと同じくらいの早さだったびょん・・・・・・」

 

「流石は奈月だね。」

 

 急にわたしの手元に槍が出てくると思わなかったのか、隼人、武、了平さん、ディーノさんの4人がその場で尻餅をつき、槍のすぐ近くにいなかった恭弥さん、凪、犬、千種の4人は、驚きや感心、軽い苛立ちを見せながら、わたしの手元に視線を向けた。

 

「これが幻術を利用した武器の顕現です。何もないところでも、このように幻術を使用すれば、いつでも武器を手元に用意できるのですよ。

 暗殺にもある意味で向いてる技術でして、何も武器を持たず、ターゲットになりうる存在の居場所に潜入し、幻術により出現させた鋭利な刃物などで大動脈を切り裂いたり、心臓に刃物を貫通させることができれば、あとは幻術を解除し、血溜まりに沈むターゲットのみを残して姿を消すことも可能です。

 他にも、相手の情報を持ち合わせているのであれば、その情報に基づいた弱点になりうる人間・・・・・・いわゆる、相手が大切にしている家族や恋人といった存在を幻術を使って出現させることで情による動揺の硬直を意図的に起こし、隙だらけなところをグサリ・・・・・・なんてこともできますね。」

 

「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」」」」

 

「しししっ!姫ってばえげつねぇ〜。」

 

「まぁ、全部事実だけどね。にしても、本当に彼女は一般人からかけ離れてるね。彼女がたまに口にする、先生って存在から、あらゆる技術や可能性を教えられているらしい。」

 

 幻術とは何かを了平さんに教えていると、わたしの話を聞いていた隼人、武、了平さん、ディーノさんの4人が顔を少しだけ青くする。

 対する幻術の使い道や、その技術の話を知ってるメンバーは、特に気にしていないのか平然としており、恭弥さんだけは興味がないのか、1人あくびをしていた。

 

「まぁ、なんだ。骸やあっちの霧の守護者に課せられることになる使命ってのは、無いものを存るものとし、存るものをないものとすることで敵を惑わし、ファミリーの実態を掴ませないまやかしの幻影とされていてな。

 霧と言う幻影が存在しているからこそ、長くファミリーを維持することも可能になるってわけだ。

 ナツの場合、どう言うわけか幻術を使用することができちまう特殊な生まれ方をしていてな。

 それを骸や、ナツが口にする1人の師に教えられたことにより幻術を扱えるようになっちまっているようだ。

 まぁ、だからと言ってナツは霧の守護者になったりはしねーがな。骸程幻術が高度ってわけじゃないらしい。」

 

 “実際は、骸とDさんから術士としても十分過ぎるくらいにやっていけるお墨付きをもらってるレベルなんだけど”・・・・・・と言う言葉は飲み込んで、チェルベッロに視線を戻す。

 こちらの話、説明は終わった・・・・・・それを伝えるために。

 

 わたしの視線の意味に気づいたチェルベッロは、静かにその場で頷いたのち、緩やかに唇を動かす。

 

「それでは、霧の対戦。マーモンVS.六道骸、勝負(バトル)開始!!」

 

 鋭く響いたチェルベッロの開始の合図。

 それを聞いた骸は、口元に笑みを浮かべたのち、手元にある槍を数回回す。

 

「それでは、アルコバレーノとなった術士がどのような実力か・・・・・・小手調べと行きましょうか。」

 

 そして、静かに、だけど穏やかな声音で言葉を紡ぐと同時に、槍の柄で軽く床をこづく。

 その瞬間、目の前に広がる景色は一転し、勢いよく倉庫が崩落していく景色が広がるのだった。

 

 

 

 




 沢田 奈月
 リボーンの人脈に紛れた変なヤツ発言で即時Dに視線を向けてしまった貝の女王。
 Dのせいで女王としての振る舞いが徐々に刷り込まれている傾向があり、この度XANXUSに対する恐怖がかなり消え失せてしまった。
 骸はマーモンに負けないと確信しており、これまでの命令とは一転し、強気の命令を下した。

 六道 骸
 リボーンの人脈に紛れた変なヤツ発言に即行でDへと視線を向けた女王の霧。
 最近、僕の奈月が執念深い怨霊からかなりの刷り込みをされてる気がしてるのですが?と本格的に心配している。
 マフィアに加担するのは嫌悪感しかないが、僕の奈月の命令ならば話は別ですと彼女に対して忠実。
 開始早々幻術を真っ先に使ったが、ただの小手調べなので本気じゃない。

 女王陣営
 奈月の思考がかなりヤバい方面にあったので(一部除いて)割とビビったり驚いたりしていた女王陣営。
 奈月?誰にそんなこと教えられたんだ・・・・・・?

 黒曜&凪
 奈月と骸のやりとりには完全に慣れているし、幻術がどのような力を発揮するのか知ってるため驚いていなかった3人組。
 またイチャついてるなこの2人・・・・・・。
 ・・・・・・骸様が羨ましいな・・・by凪

 マーモン
 自身のペットであるファンタズマが奈月、骸、凪の3人にめちゃくちゃ反応してしまうアルコバレーノ兼憤怒の霧。
 ム・・・・・・この3人、一体何を隠してるんだ?

 ヴァリアー陣営
 女王様がもはや一般人から完全に逸脱した思考回路してるのでちょっと面白かった。
 やっぱ姫ってこっちでやってけんじゃね?byベルフェゴール

ハルのハルハルインタビューや、犬のケンケンぱぁ〜、ルッスーリア3丁目、怪物使いツナのネタは・・・・・・

  • 骸「奈月ありで番外に書きましょうよ。」
  • リ「別にいらねーんじゃねーか?」
  • 雲「どっちでもいい。」
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