最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 全ての権限は9代目にある・・・・・・貝の女王より流れを引き継いだ現在の王たる男性は、現状を冷静に分析し、その決定権を行使する。
 継承の証たる指輪を賭けた争いは、決着へと向けて動き始めるのだった。



いざ、反撃の狼煙を

 現れた9代目ファミリーに、辺りの空気が一気に凍りつく。

 その中でわたしだけは9代目の前に跪いたまま、無言を貫いていた。

 

「奈月ちゃん。体勢を楽にしてくれていい。立って顔を上げてはくれないだろうか?」

 

 無言を切り裂くようにして告げられた言葉はとても穏やかなものだった。

 わたしは、その言葉を合図にすると同時に静かに立ち上がり、9代目へと視線を向ける。

 

「奈月ちゃんは・・・・・・どうやら、私のことを覚えてくれているようだね。」

 

 静かに問いかけられた言葉に、わたしは何度か瞬きをした後、その場で小さく頷き返した。

 

「9代目の声を電話を通じて聞いたあの日から、私はあなたのことを思い出していました。

 父である家光が、まだ頻繁に帰国する時があった頃、父の仕事の上司として足を運ばれていましたね。

 その頃の私は、知っての通りかなり幼い子供でしたが、まさか、あの時にこちらへと足を運んでいた父の上司が、私と父の遠い親戚に当たる方だったとは思いもよりませんでした。」

 

 9代目の問いかけに静かに答えれば、彼は穏やかな笑みを浮かべてわたしを見据える。

 

「大きくなったね、奈月ちゃん。君が、こちらの世界に向き合う選択を選んでくれたことをとても嬉しく思っている。

 家光から話は聞いている。あの一件以来、自分のやりたいことを見つけたようだね。」

 

「ええ。まぁ、どれだけやっていけることかはわかりませんが、先達の皆様の考え方も取り入れながら、私なりのボンゴレファミリーを思い描いています。」

 

 やりたいことを見つけたと言う言葉に、自分なりのボンゴレファミリーはすでに思い描けていることを告げれば、9代目は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。

 同時に、少しの間、私のことを見つめてくる。

 

「・・・・・・君が描いているものや、家光から聞いた話からすると、君は2人の人間の思想に強い影響を受けているようだね。

 その思想に関して、私は否定しない。君が、正しくその思想を併用すると言うのであれば、それはそれで、また新たな道が切り開かれるだろう。」

 

 9代目が言う2人の人間の思想とは、おそらく、ジョットさんとDさんの2人の思想のことだろう。

 強きファミリーを維持するために必要な力は手札として持ち、必要に応じて使っていくと言うDさんの思想と、弱きを守るために人々に寄り添った始まりの思想・・・・・・その両方をわたしは持ち合わせている。

 

 Dさんの手札は多く保有すると言う考えは、桜奈としてのわたしがかつてやってきたこと。

 複数の手札を活用することにより、わたしを長く維持し続けてきたことが原因で、知識を取り入れると言う習慣は、すでにこの身に刻まれて、止めることができなくなっている。

 それならばとわたしは、その習慣を逆に利用することにより、集めた手札で敵対者や外的要因を徹底的に叩き伏せて排除する選択を取り入れた。

 ああ、まさしくこれは、Dさんのやり方だ。警戒するように忠告されていた存在と同じ思想になりつつあると言うのは、なかなかに複雑な気分である。

 

 でも、わたしの考えはそれが全てではない。なぜならジョットさんが持ち合わせていた思想・・・・・・周りを威圧し、力で押さえつける方法は、守るべき者すらも萎縮させてしまう。

 だからこそ必要最低限の牽制を維持し、人々に寄り添い、萎縮しない穏やかな生活を提供するべきであると言う考えも持ち合わせている。

 

 だからこそわたしは、手札を集め、必要な時以外は開示しない。今回のもそう。

 複数の手札を持ち合わせていたため、必要最低限の手札だけを組み合わせて切ることにより、自身の領域を侵そうとする敵意を排除するための力として扱っている。

 

「・・・・・・精進いたします。」

 

 そんなことを考えながら、わたしは9代目に一言言葉を返し、静かにXANXUSさんへと視線を向けた。

 9代目の影すらも使って、本来の9代目を陥れ、モスカの動力源として使用することにより弱体化した9代目を、最後に10代目候補の手により引導を渡させることで叛逆者と言う立場を押し付けようとしていたと言うのに、本来の9代目は実はすでに幻覚人形と入れ替わっており、幻覚人形を本物として掴まされた挙句、XANXUSさん側、もしくはわたしや9代目に対して不満を抱いていた老人連中側が襲撃した証拠を、襲撃された側へと手渡してしまう状況に堕とされてしまったせいか、彼の表情には焦りが浮かんでいるようだった。

 

「まさに形勢逆転・・・・・・叛逆者として私を陥れようとしていたと言うのに、自らの策略によって、逆に叛逆者=自分自身と言う答えを提示してしまうだなんて、なかなかユニークな結果となりましたね、XANXUS。

 あなたは私をたかが小娘と舐め過ぎですよ。まぁ、確かに、私は去年の夏までは平穏に過ごすだけの一般人でしたし、それは否定しません。

 ですが、マフィアのボスの候補者として挙げられたことを知り、何もしないようなノーテンキ馬鹿でもありません。

 候補者として挙げられたのであれば、その責任に準じて知識を身につけるのは当然でしょう?

 手札だって集まっていましたし、場合によってはその手札を切れるようにしておくと言うのも、上に立つ者の基本中の基本ですよね?」

 

「っ・・・・・・・・・!!」

 

 吐き捨てるように言葉を紡げば、XANXUSさんはわたしに殺気を向ける。

 しかし、状況が状況だからか、強く出ることができなくなっているようだった。

 まぁ、この場で怒りに任せて何かをしようとしたところで、それを9代目本人に見られるのが確定している以上、自身の首を逆に絞めることにしかならないため、何もできないが正しいのだろう。

 

「ここからは9代目の判断に従いましょう。私達はあくまでただの候補者であり、チェルベッロ機関は9代目の代弁者。9代目がこの場にいる以上、誰の意見が優先されるのかわかっているでしょう?

 私とXANXUSは10代目候補と言うだけであり、継承を果たしたわけではない。9代目本人がこの場にいるのであれば、9代目の代理人であるチェルベッロは無意味な機関へと成り下がる。

 これらの現状から、この中で誰が決定する権利を持ち合わせているのか、一目瞭然ですからね。」

 

 そんなことを思いながら、わたしは今の状況からして誰が優先されるべきかを静かに告げる。

 チェルベッロ機関はすぐに小さく頷き、9代目の元へと足を運んでは、わたしやXANXUSさんに渡していた勅命を彼に手渡した。

 XANXUSさんは、この状況に悔しげな様子を見せながら、その場で静かにうつむく。

 その片手は強く握りしめらており、ポタポタと赤い雫を垂らし始めていた。

 

「・・・・・・ふむ・・・・・・そうだな・・・・・・。今回のことは、状況が状況であるが故に、本来ならば無効にするべきものだろう。

 この場で最も罪が重いのは誰であるのかは、皆もわかっているだろうからな。」

 

 9代目の言葉に、わたし側のメンバーの視線が一斉にXANXUSさんへと向けられる。

 ボンゴレファミリーのボスである存在を襲撃し、非人道的としか言いようのない兵器の中へと監禁した挙句、そのまま命を搾り取る・・・・・・もしくは、別の候補者の手を汚させることにより、古い体勢と、現れた候補者の両方を消すことを企んでいたのだから、当然、罪が重いのは向こう側となる。

 

「私は、この場ですぐに奈月ちゃんを選択することも厭わない。彼女は確かな知略を尽くし、罪人の手に間違った継承を行わないよう手を回し、なおかつ、大切なファミリーを守り抜くために、正しく策略を張り巡らせた。

 ここまでの手を尽くせるならば、ボスとしてボンゴレファミリーを継承し、その頂点に君臨しても問題はないだろう。」

 

 9代目の言葉は、間違いなくボスとしての決断だった。

 わたしと言う存在がボンゴレファミリーを継承することに賛同する言葉だった。

 その言葉を聞き、隼人達が騒めく。わたしと言う存在が、ボンゴレファミリーを継承することが確定たことに対する喜びとも言えるだろう。

 しかし、そのざわめきは9代目の次の言葉により霧散することとなった。

 

「だが、この意見は我々の意見であり、XANXUSをボスにしようとしている者達がそのことを良しとしないだろう。

 場合によっては、今以上の争いが発生し、多くの血を流す可能性もあり得る。

 私としては、それだけはなんとしても避けたい道だ。私や、奈月ちゃんに対する不満を抱いている者達の激化を誘発し、奈月ちゃんだけでなく、奈月ちゃんと共に過ごしている子供達すらも危険に晒しかねないのでな。」

 

 しん・・・・・・と辺りが再び静まり返る。

 隼人達も、今回の状況を作り上げた者達のきっかけとなったものを思い出したのか、その表情を緊張で強張らせた。

 

「・・・・・・奈月ちゃんは、今回の原因となってた理由を知っているのではないかな?」

 

「・・・・・・ええ。独自に調べ上げることができる方法を持ち合わせているので、個人的に調べさせていただきました。」

 

 独自の調査方法とは、言わずもがな、Dさんを通じた探りによるものである。

 わたしの味方を豪語するあの人がいたからこそ、わたしは全ての概要を知ることができた。

 XANXUSと言う人物について回る、ボスになれない呪縛についても。

 

「9代目はボンゴレファミリーの中で、典型的な穏健派として有名でした。その人柄や思想、様々な要因により、9代目に惹かれて、その道のりについて行こうと決断した人々は、かなり多いと聞きます。

 しかし、人は誰しも全ての人間を惹きつけ、自身の思想に同調させることはできません。

 人は、2人いれば意見が二分化し、必ずどこかで衝突する。反対勢力と呼ばれるものは、必ずどこかで発生します。」

 

 そんなことを思いながら、わたしは静かに言葉を紡ぐ。

 9代目から問われた、今回の争いの原因となった要因を解き明かすために。

 

「今回のそれは、過激派思想を持ち合わせている人間です。マフィアであるならばこうでなくてはと言う固定観念を持ち合わせている人々ですね。

 穏健な思想が性に合わない闘争心や野心が強い人間が、向こう側の中核となり、ことを引き起こしていたと、調査の結果把握することができています。」

 

 淡々と言葉を口にしながら、わたしはXANXUSさんを真っ直ぐと見据える。

 彼はその表情を苛立ちに歪めながらも、こちらの話を聞いている。

 

「穏健思想を変えたい過激派は、9代目のやり方に疑問を持ち合わせている状態であり、不満もかなり持ち合わせている状態であったそうですね。

 そのため、穏健派である9代目が、3人の候補者を失った後、日本に暮らすもう1人のボンゴレの血縁・・・・・・沢田家光の娘である私を、ボス候補に挙げたため、今回の暴走の引き金になってしまいました。

 ただでさえ穏健な思想を持ち合わせている9代目が、マフィアにこれまで触れてきたことすらない一般人の小娘を、最終的な候補者としたことが気に食わなかったのでしょう。

 ただでさえ一般人だと言うのに、中学生などと言う子供・・・・・・さらに言うと、女と言う性別の子供を選ぶなど許されないと思ったのでしょうね。

 そこで、マフィアとしての教育を受けたXANXUSをボスにするべく、ヴァリアー側と手を組んでいた・・・・・・。

 9代目の影も過激派だったのか、その話に賛同し、ヴァリアーに協力したのでしょう。

 9代目が亡き人となれば、自分自身も動きやすいと判断して。」

 

 そこまで口にすると、隼人達が苛立ちと殺気をわずかながらに滲ませる。

 普段は温和なディーノさんですらそのような状態になるとは、本当に9代目は人望をお持ちだ。

 

「ボンゴレファミリーの玉座に腰を据えたいXANXUSと、9代目の穏健思想を崩したい過激派。

 両者にとって邪魔になるのは、間違いなく9代目と私になります。結果、向こうは利害の一致が発生し、そのまま強く癒着することになった・・・・・・私が聞いた話はこれで全てです。」

 

 “本当は、XANXUSさんの真実も知っているけど”・・・・・・と、あえて隠した情報を内心で呟きながらも、過激派とXANXUSさんの利害が一致したことにより、邪魔な存在を排除しようとしていることを口にすれば、9代目は口元に笑みを浮かべる。

 まるで、その通りだと、出した答えを肯定するように。

 

「これらの要因から、双方が納得し、のちに起こり得る争いの可能性をなくすためにも、この場で私は宣言する。」

 

 9代目はゆっくりとわたしとXANXUSさんが向き合っている場所の中央の方へと歩みを進める。

 程なくしてわたし達の中間の位置にまで辿り着いた彼は、わたしとXANXUSさんを一度だけ交互に見やり、静かに口を開いた。

 

「継承が行われていない今、ボンゴレに伝わる7つのリングの保持者は未だに我々9代目ファミリーのものとなっている。

 ゆえに、現在のリングの保持者である我々の監視の元、明日の夜に大空のリングと、全てのリングを賭けた決戦、大空のリングの争奪戦を執り行う。

 明日の争いの先、ボンゴレリングを全て保有した10代目候補者を正当なる後継者として我々は歓迎しよう。」

 

 穏やかな老人から一転、ボスとしての確かな威圧感をその身にまといながら告げられた有無を言わせぬ王の決断。

 辺りの空気が張り詰め、凍りつくような緊張感が広がる中、9代目はわたしに視線を向けてきた。

 

「それで構わないかな?奈月ちゃん。」

 

 穏やかな声音により名を呼ばれ、真っ直ぐと9代目へと視線を向ければ、力強い光を宿す瞳と自身の視線が重なり合う。

 鋭く射抜くその瞳は、ジョットさんのそれを彷彿とさせるものだった。

 

「ええ。構いませんよ、9代目。私としても、大きな内部抗争を引き起こしてしまう可能性があるものはできるだけ取り除いておきたいので、白黒つけることができるのであれば。」

 

 しばらくの間、9代目の視線を見つめ返したわたしは、大空のリングを賭けた争奪戦に応じることを彼に告げる。

 わたしの返答を聞いた9代目は、静かに頷いた後、XANXUSさんへと視線を向けた。

 

「XANXUSもそれで構わないな?」

 

「・・・・・・・・・異論はない。」

 

 9代目から真っ直ぐと見つめられ、問いかけられたXANXUSさんは、少しだけ表情を歪めながらも、ボンゴレリングを賭けた最終決戦を承諾する。

 

「両者共に異論はないとのこと。ならば、やることは決まったな。明日の夜、23時より、最後の争奪戦を執り行う。

 同時に、ここからは全て、現在のリングの保持者としての権限を持ち合わせている我々が仕切らせてもらう。わかったな?」

 

 9代目の問いかけに、わたし達は静かに頷き返した。

 それを確認した9代目は、同じく小さく頷き、まとっていた空気を軽くする。

 

「では、話は終わりだ。両者共に体を休め、明日に備えるように。」

 

 9代目の話が終わると同時に、XANXUSさんはベルを連れてこの場からさっさと立ち去る。

 遠くなっていくその背中には、強い怒りと確かな悔しさが重くのしかかっているようだった。

 

 

 




 沢田 奈月
 これまで教えられてきた知略を使用し、XANXUS側に言い逃れのできない現実を突きつけた貝の女王。
 9代目が大空同士の最終決戦を行うことを読んだ上で、彼に全ての判断を任せた。
 彼女は許さない。自身の居場所と愛する人々を害する存在を。獅子の居場所を害するものは、容赦なくその知略でねじ伏せる。

 XANXUS
 女王をはめるつもりが、逆に言い逃れのできない罪の証を残すための女王の知略により絡め取られた憤怒の王。
 彼は求める。組織の玉座を。しかし、彼の望みに立ち塞がるは、一般と言う立場から逸脱し、数多の手札を手中に収め、人々より女王へと望まれし少女である。

 9代目
 女王の知略により、自身の息子によるクーデターの証拠を全て手にした状態で降臨した現ボンゴレファミリーの大空。
 奈月に対して申し訳なさを抱きながらも、現状を分析したことにより考えられる懸念を取り除くために、自身の監視下の元、大空のリングを賭けた争いを執り行う決断を下した。


ハルのハルハルインタビューや、犬のケンケンぱぁ〜、ルッスーリア3丁目、怪物使いツナのネタは・・・・・・

  • 骸「奈月ありで番外に書きましょうよ。」
  • リ「別にいらねーんじゃねーか?」
  • 雲「どっちでもいい。」
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