最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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 蒼穹の女王たる少女が力を振るう中、施設内を走り抜ける女王の霧と浮雲は、雨の少年と嵐の少年へとリングを手渡した。

 side Another.


霧と雲は、守護者を動かす

「あれは・・・・・・」

 

 女王の浮雲たる少年、雲雀恭弥の手を借りて、動けるようになった霧の少年、六道骸は、施設の窓から見える女王・・・・・・最愛の少女である奈月の姿を見て小さく呟く。

 

 まるで、輝く王冠のように、存在感を放つオレンジの炎・・・・・・鮮やかに揺らぎ、燃え盛っているにも関わらず、どこか寒気を感じるような鋭さを持つ死ぬ気の炎と、彼女の手元に美しく咲き誇った八重の氷桜に、確かな圧力を感じ取りながら、何度か瞬きを繰り返す。

 

「・・・・・・ボンゴレプリーモの零地点突破は、訓練中に見せてもらいましが、彼女が使っているあれは、それだけの力ではありませんね。

 憤怒の炎によるダメージを、零地点突破により発生した氷で防ぎながら、半分は吸収することにより、自身の炎のエネルギーへと焚べた感じでしょうか。」

 

 日本に一時的に戻り、奈月と共に過ごしていたからこそ把握することができた彼女の能力を冷静に分析し、その表情を少しだけ歪ませる。

 能力の開花とはすなわち、それだけ彼女が後戻りできなくなると言うこと。

 マフィアの世界に戻ると言った以上、そうなることは必然ではあったが、やはり、彼女の自由を望んでいた骸にとっては、とても悲しいものだった。

 

 ─────・・・・・・あなたには、マフィアなどに関わることなく、穏やかで暖かい生活を最期まで暮らしてほしかったのに・・・・・・。

 

 マフィアの世界がどれだけ醜く、愚かな連中の集まりであるかを知っているからこそ、骸はそんな世界に浸ることなく、ただの沢田奈月として、小鳥遊桜奈として、温もりに溢れた生活を送ってほしかった。

 しかし、彼女が選んだのは女王へと向かうための道・・・・・・彼女に付きまとう血縁により敷かれた道だった。

 

 そのことに悔しく思いながら、骸は少しだけ歯を食いしばる。

 同時に、彼女の側にいたからこそ、顔を合わせることになったヒットマンと、彼女の血縁たる先祖、そして、そのファミリーの姿を思い浮かべる。

 

 ─────・・・・・・お前達さえ関わらなければ・・・っ

 

 “彼女が、余計な道のりを歩くことはなかったのに”・・・・・・最愛の少女が、マフィアとしての道を歩むことになった原因に対する明確な苛立ちを抑えるように、骸は拳を握りしめる。

 しかし、すぐにその意識は彼女の手元へと向かい、その手に握りしめられているリングの片割れを視界に入れる。

 

「・・・・・・急いだ方が良さそうですね。」

 

 XANXUSの体がボロボロであることは明白で、その表情には焦りと怒りが刻まれている。

 ボスと言う立場になんとしても腰を据えようとし、兵器すらも暴走させ、9代目と言うボスを、10代目候補として挙げられた奈月の手で引導を渡させることにより、邪魔な親代わりを消した上で、親を殺した人間を断罪すると言う大義名分を得ることにより、自分を差し置いてボスの座を与えられようとしていた正式な血縁を滅ぼそうとする。

 

 行動が全て合理的であり、邪魔な存在は容赦無くこの世から消し去る様子が目立つマフィアを体現したような男が、このまま引き下がるはずもないと考えた骸は、すぐに頭を切り替えた。

 こうなってしまった以上、責任感が強い少女が手を引くことはあり得ない・・・・・・ならば、万全な状態で盤面に置く手札を揃えておかなくてはならないと。

 

 XANXUSとの戦闘が佳境へと向かっている状況を確認した骸は、そのまま施設の中を走り抜けた。彼が向かった先は、先日、雨の守護者同士が戦っていた場所。

 完全に内部が崩壊し、瓦礫だらけになっていたそこには、ポツンと台座が一つ置かれており、そのすぐ側では、フラフラになりながらも台座が乗るポールを壊そうとしている少年がいた。

 

 奈月の雨の守護者として選ばれた、山本武だ。

 

「くっそ〜・・・・・・!連日の寝不足と薬のせいで力入らねー・・・・・・!」

 

 その表情には、明らかな疲労が浮かんでおり、何度も台座を落とそうとしていた様子が窺える。

 その姿を見て、確かに、研究により色々と試されていた自分であっても、あの薬は確実に体を蝕み、力が全く入らなかったと、どれだけ強力な薬であるかを身をもって体験したため、一般ならなおさら厳しいだろうと納得する。

 

「退がりなさい、山本武。」

 

「へ?うお!?」

 

 自身が持ち合わせている六道輪廻のスキルを発動させ、手にしていた槍を勢いよく振りかざす。

 その瞬間、彼が振り抜いた槍は目の前にあるポールを勢いよく薙ぎ倒し、台座ごと地面へと落下する。

 まさか、骸が来るとは思っていなかったのか、一瞬、山本は混乱したが、すぐに彼の指示通り避けたため、倒れる柱に巻き込まれることはなかった。

 

 大きな音と共に、地面へと崩れたポールと台座。

 軽い音を響かせて転がった雨の守護者を示すリングを見た骸は、すかさずそれを拾い上げ、そのまま山本に投げつけた。

 

「さっさと薬の効果をなくしてランボ君のところにでも行ってあげてください。

 あの子、恐らくですがリングが取られないように逃げ回っていると思うので。

 僕はとりあえず、まだ、薬の効果で動き難くなってるであろう笹川了平の元へ向かいます。」

 

 それを受け止めた山本を見て、骸は踵を返して移動しようとする。

 しかし、彼がこの場から立ち去る前に、山本が彼を呼び止めた。

 

「リング、取ってくれてサンキュな!」

 

 屈託のない笑顔で感謝の言葉を述べられ、骸は一瞬キョトンとする。

 だが、すぐにその場で肩をすくめるなり、再び踵を返した。

 

「君に礼を言われても嬉しくありませんね。あくまで僕は、奈月のために動いているだけですので。」

 

 そして、いつもの調子で彼の感謝の言葉に言い返したのち、そのまま足を動かした。

 

「早くランボ君を見つけてきなさい。奈月の方も間もなく終わりそうですからね。

 ただ、XANXUSの性格上、何をしでかすかわかりません。雲雀恭弥も動いていますし、恐らくですが別の奈月のファミリーを動けるようにしているところでしょう。」

 

 立ち去る前に、自身が把握している情報を教えた骸は、今度こそその場から走り去る。

 骸からの言葉に、山本は一瞬だけポカンとした。しかし、すぐに苦笑いをこぼしながら、ぽりぽりと自身の頬を掻く。

 “相変わらずだなぁ”・・・・・・なんて思いながらも、奈月のためと言いながら、自身を助けてくれたのは変わらないのにと考えて。

 

「うっし、じゃあ、オレも動くか!」

 

 自身の体に力が入るのを確認し、山本はすぐに走り出す。

 自身が大切にしている少女を支えるために選ばれた、幼い少年を探すために。

 

 

 

 

 

           ܀ꕤ୭*

 

 

 

 

 

 ・・・・・・一方その頃。

 骸が山本を動けるようにしている中、室内を走り回っていた少年、女王の雲の守護者として選ばれた雲雀恭弥は、施設内を走り抜け、ある場所へと向かっていた。

 それは、彼女の嵐の守護者として選ばれた少年、獄寺隼人と、彼女にやたらちょっかいを出していた青年、ベルフェゴールがいる方角だ。

 

 雲雀は、自身の記憶を頼りに、向こう側の状況を整理する。

 まず、サル山の大将と自身が称した存在、敵対組織であるヴァリアーの頂点に腰を据えている男、XANXUS。

 彼は、真っ先に自身が大切にしている少女、奈月の一手によりダメージを与えられ、そのまま翻弄されている。

 自身が知らないところで、誰よりも強く成長していた彼女は、格上であったはずの男に一瞬の行動の隙も与えず、力は劣れど、それを補うように身につけた素早さと連撃を駆使して、自分の倍もある男の動きを封じていた。

 

 次に、自身の学校に通っている男子生徒の1人、笹川了平・・・・・・争奪戦の開始時に、雲雀自身は立ち会っていなかったが、ことの顛末を聞いたところ、サングラスをかけていた変な人間と戦い、勝利をしたが、そのサングラスの変な男は、その後、向こう側のボスであるXANXUSの元にあったデカブツにより致命傷を負わされていた。

 結果、現在はベッドに縛り付けられている状態でこちらに呼び出されており、身動きが取れないまま笹川了平と対峙している。

 

 次に、彼が大切にしている少女、奈月の元で暮らしている子供、ランボ・・・・・・あの子供は、向こう側の巨体持ちの男と2回目に対峙し、自身の手の内にあった技術を駆使して、男を退けたと聞いていた。

 どのような技術を使ったのかまでは聞いていなかったが、明らかに戦闘技術などほとんど皆無に等しい子供が勝利したとなると、何かしらの強化を図れる技術だったのだろう。

 そんなランボが対峙した男は、その巨体一身に凄まじい雷撃をくらい、意識不明の重体にまで陥っていたとの話だ。

 そこから復活し、男もこの場所に呼ばれたそうだが、自身の足元にリングが転がってきた時、二発の銃声が聞こえていたことや、雲雀自身が知る奈月の性格から、屋外にいた自身と子供のリングを弾いたと仮定すれば、草食で狩りなどすることもない小動物なりに、何かしらの対策を練って戦線離脱をしている可能性はある。

 自身で行うべき行動を選べない子供ではないと感じていたために。

 

 次に、奈月の嵐の守護者であり、自身が通う並中の生徒でもある獄寺隼人・・・・・・雲雀が現在向かっている方角にいる少年。

 彼は、今回の争奪戦で、唯一相手に敗北した存在だった。しかし、向こう側との戦闘で負けたわけではなく、最後の最後で発生した意地の張り合いの際、奈月の言葉を聞き、自らの命を選択したことにより戻ってきたと言う結末だ。

 試合には負けているが、勝負には勝っている状態と言っても問題はないだろう。

 

 その後に戦ったのは山本武・・・・・・彼もまた、自身が身を置く並盛中学校の生徒の1人であり、並中の野球部のエースとして有名だった存在。

 奈月から、強くなる前の自分では、援軍が来るまで持久戦に持ち込むのが精一杯だったとすら言われていた剣士との戦闘を制し、雨の守護者としてのリングを手に入れた。

 かなり強くなっているため、一度本気で攻撃してみたいと思わなくもないが、今はそれどころではない。

 

 ─────・・・・・・確か、山本武が戦った相手は、結局ここには来ていないんだっけ?

 

 奈月すらも、修行前では持久戦に持ち込むのが一杯だったと口にする程の力を持ち合わせていた剣士。

 もし、この場に彼がいたのであれば、自分は容赦なく狙いに行っていたが、結局、手合わせをするような機会が作られることはなく、少なからずガッカリしてしまう。

 だが、すぐに頭を切り替えたのち、雲雀は嵐の守護者同士が戦った場所へと踊り出た。

 

 そこでは、奈月の守護者である獄寺隼人と、XANXUSの嵐の守護者であるベルフェゴールの2人が、なんとかリングを手にしようと体を動かしている様子があった。

 しかし、薬がかなり効いているのか、足元はかなり覚束なく、手にも力が入っている様子がない。

 

 ─────・・・・・・あっちの彼、かなり強かったけど、それでもこの薬って効くんだ。

 

 “相当強い薬なんだ”・・・・・・なんて、少しばかりどうでもいいことを考えながらも、雲雀はゆっくりとリングがあるポールへと足を進める。

 

「ゲッ!?」

 

「!?なんでヒバリがここに!?」

 

 その瞬間、獄寺とベルフェゴールの2人が、雲雀の気配に反応して表情を歪める。

 だが、雲雀は特に気にすることなく、そのままポールに近寄った。

 

「確か、君って王子なんだっけ?名前忘れたけど。随分と奈月にちょっかいを出してくれたみたいだね。」

 

 静かに紡いだ言葉は淡々としており、ベルフェゴールは少しばかり冷や汗をかく。

 表情はあまり変わらないが、目の前にいる女王の浮雲の目には、明確な苛立ちと敵意が渦巻いていた。

 

「奈月はうちの生徒であり、僕の大切な女の子なんだよね。だから、あまり手を出さないでもらえる?」

 

 それが、恋敵に向けるものであることに気がついたベルフェゴールは、口元に笑みを浮かべながらも無言を貫く。

 目の前にいる女王の嵐も、突然現れた浮雲も、どちらも自身が気に入った少女に対して明確な恋慕を抱いているのだと。

 

「・・・・・・それは無理。だって王子も姫のこと気に入ってんだもん。最初はさぁ、王子を差し置いて女王とか言われてる生意気な奴としか思わなかったけど、姫と話すようになってから、考え変わったんだよねぇ。」

 

 しばらくの間、無言を返していたベルフェゴールだが、程なくして静かに口を開き、手を出すなと言う言葉に対して、拒絶の言葉を吐き捨てる。

 彼の前髪の隙間から見えた涼やかな瞳に、少女に対する好意を宿して。

 

「姫って、お前らと一緒に過ごした時間が何よりも大切だって言ってんの。金はいっぱいあんのに、ゲームセンターにある安もんのぬいぐるみ程度で喜べるのは、自分を想って取ろうとしてくれたことが嬉しいから。

 プリクラとか言う写真撮るだけの機械で写真を撮って喜べるのは、一緒に過ごした思い出を見返せるから。

 姫って物の価値より、お前らと過ごした時間の方を重点的に大切にしてるっぽいんだよね。自分と過ごしてくれる奴らが、ただただ好きで大切みたいでさぁ。」

 

 ベルフェゴールの言葉に、獄寺と雲雀は目を丸くする。しかし、すぐに思い当たる節があるのか、どことなくその空気が和らいだ。

 そんな2人を見て、ベルフェゴールはわずかな苛立ちを胸に宿す。

 

「本当・・・・・・お前らってムカつくわ。姫にそんな風に想ってもらえる上、明らかに姫、お前らの前じゃ完全に素じゃん。

 しかも、守護者として選ばれてるから、これからも姫の側にいれるわけっしょ?

 王子より長く姫と一緒に過ごすなんて、生意気なんだよ・・・・・・。」

 

 それが、自身のうちに芽生えた恋心と、それに伴って姿を見せた嫉妬心であることに、ベルフェゴールは気づいていた。

 どこか、悲しげに、踏み込むなと言うように、自分にとっては人と過ごした時間と思い出が、何よりも価値のある物であると口にした彼女は、すぐに消えてしまいそうな程弱々しかった。

 そんな彼女を見た時から、風に攫われてしまいそうなお気に入りを繋ぎ止める存在になりたいと思った時から、ベルフェゴールは、自身は彼女に対して明確な恋慕を抱いていると気づいた。

 

 だが、そんな彼女は自身には一歩も踏み込ませることはなく、彼女の周りに集まる、彼女の守護者達には踏み込ませ、懐に入れていく。

 “気に入らない”・・・・・・ベルフェゴールの脳裏に過ったのは、その言葉だった。

 

「そんなの知らないよ。奈月は並盛の女の子で、僕が隣を許せる女の子。君らはそんな奈月の邪魔をする群れに過ぎない。

 奈月の邪魔をするってことは、僕の邪魔をするってこと。奈月に手を出すと言うことは、僕に対する明確な敵対行動だ。」

 

 しかし、雲雀はそんなベルフェゴールに奈月と言う少女は、自身の・・・・・・並盛の外部にいるような連中が手を出していい人間ではないことを言い返したのち、側にあったポールを薙ぎ倒す。

 そのタイミングを見計らって、ベルフェゴールは自身の手元にあるワイヤーを使い、落下するリングを入手しようとするが、すぐにそれに気づいた雲雀は、トンファーを使ってワイヤーを振り払う。

 

「!?」

 

「赤ん坊から話は聞いてたからね。君が、ワイヤーとナイフの両方を使うことは知ってるよ。」

 

 同時に、手元に落下してきたリングを手に取った雲雀は、背後にいた獄寺へとそれを投げつける。

 自身の手元に飛んできたリングを掴み取った獄寺は、すぐにリストバンドへとリングを差し込み、自身の体を蝕んでいた薬による効果を打ち消した。

 

「・・・・・・奈月さんが使ってる薬・・・・・・かなり厄介なもんだったな・・・」

 

「?何?奈月がこの薬の所有者だったの?」

 

「正確にはボンゴレだが、奈月さんは、自身の攻撃手段の一つとして使う手榴弾の中に、この薬を仕込んでんだよ。

 前、奈月さんを暗殺しようとしていた連中がいて、その時に奈月さんが注射器を使ってそいつらに薬を投与したのを見たことがある。

 まぁ、あの時は奈月さんが散々そいつらボコった上で薬を使用していたからな・・・・・・。ここまで強力なもんだとは思わなかったぜ。」

 

「は?奈月が暗殺・・・・・・?どう言うこと?」

 

「一時、マフィアのボスやボス候補を狙った連続暗殺事件があったんだよ。まぁ、奈月さんに手を出した時点で、そいつらは終わったも同然だったけどな。」

 

「・・・・・・そう。じゃあ、もういないんだ?残念。」

 

 “残念って何する気だったんだよ”・・・・・・と、獄寺は雲雀の言動に軽く引く。

 しかし、すぐに頭を切り替えたのち、彼は雲雀へと視線を向けた。

 

「奈月さんは?」

 

「サル山の大将と戦ってる。多分、あっちの彼は、奈月から先制を受けて動きが鈍くなってるよ。

 明らかに、少しだけ体を庇ってるような動きがあったからね。おそらくだけど、肋骨辺りをやられたんじゃない?

 向こうの武器は拳銃だったから、その反動も相当だと思うよ。」

 

「他に動けてない奴らは?」

 

「山本武の方には六道骸が向かってる。ランボって子供は、奈月が真っ先に動けるようにしていたから逃げ回ってると思うよ。

 笹川了平だけ少し遠かったから、まだリングは渡してない。」

 

「わかった。」

 

 雲雀から戦況を聞いた獄寺は、短く言葉を返し、その場から走り去る。

 それを見送った雲雀は、静かにベルフェゴールへと視線を向けた。

 

「この場で咬み殺してもいいけど、どうせ力が入らないだろうし、僕はこれで失礼するよ。奈月の元に行かないといけないしね。」

 

 そして、静かにそれだけを言い残して、近くにあった窓から外へと飛び降りる。

 ベルフェゴールは薬が入ったままとは言え、体を動かせないわけではない。

 そのため、すぐに雲雀を追いかけようと足を動かしたが、その瞬間、膝から床へと崩れ落ちた。

 それにより、自身の体に投与された薬の進行がかなり進んでしまったのだとわかり、表情を歪める。

 

 ふらつき、窓の淵に縋るようにして座り込んだベルフェゴールの視界に、まるで、冠を戴いたかのように、眩いオレンジの炎を揺らす、琥珀色の姿が映り込む。

 確かな威圧感と気高さを感じるその姿を見たベルフェゴールは、口元に小さく笑みを浮かべた。

 

「あーあ・・・・・・本当・・・・・・姫って女王様だよな・・・・・・。」

 

 多くのマフィア連中から、“ボンゴレの女王”(クイーン・オブ・ボンゴレ)の名で呼ばれていた少女。

 最初は、王族でもないくせにと思ったりしたが、視界に映り込む少女の姿は、例え王族の血が入っていなくとも、確かな高貴さと王威を感じるものだった。

 同時に、ベルフェゴールは彼女を敵に回した自分達は、完全に断罪される側になっているのだと思い知る。

 

 確かな存在感を放つ、自身の初恋の少女に対して、穏やかな眼差しを向けたあと、彼はそのまま床に大の字で転がった。

 自身が従うボスのため、本来ならば動かなくてはならないところではあるが、ベルフェゴールにはその気力が出てこなかったのだ。

 

「あー・・・・・・下手したらカッ消されるよなぁ、オレ。でも、あれはちょっと無理だわ。」

 

 隙を狙ってリングを奪えたらと思ったが、ベルフェゴールが見た少女の姿は、隙の一文字すらも見当たらない。

 そんな彼女の裏をかくなど、天才と謳われた彼であっても、流石にお手上げだと言わざるを得なかった。

 

 精度の高い超直感。瞬時の判断による行動の実行。目で追うのがやっとどころか、時折、全くと言っていい程に見えなくなるスピード。

 どの能力値も、あまりにも高過ぎるのである。

 

「・・・・・・最初は、簡単だと思ったのにさ。蓋を開けてみれば、ただの無理ゲーじゃん。」

 

 呟くように紡がれた言葉は、静寂の中へと溶けて消える。

 そのことに小さく笑ったベルフェゴールは、そのまま瞼を閉じるのだった。

 どうせ、眠るだけなんだし、もう疲れたと、わずかな諦めを抱いて。

 

 

 




 六道骸
 奈月が置かれた状況に、一番憤りを抱きながらも、彼女が確実に勝てるように盤面を動かす女王の霧。
 XANXUSがこのまま簡単に引き下がるとは思っていないため、戦力になる守護者達を、薬の効果から解放していく。

 雲雀恭弥
 獄寺の元へと向かっていた女王の浮雲。
 奈月にちょっかいを出すベルフェゴールに、釘を指すように言葉を返し、嵐の解放とと共に、奈月のサポートをすぐにできるようにと外へ移動した。

 山本武
 骸の手により薬の影響下から解放されると同時に、雷の守護者であるランボとの合流に向かった女王の雨。
 奈月のためだと言いながらも、しっかりこっちが動きやすくするために色々教えてくれるんだな、と骸の背中を見送った。

 獄寺隼人
 雲雀の行動により、薬の影響下から解放されると同時に、了平との合流を目的に移動を開始する。
 奈月に対する想いを口にした雲雀に、お前の奈月さんじゃねーよ!!とツッコミを入れたくなったが、今はやるべきことを行う。

 ベルフェゴール
 獄寺と同じ場所でリングを取ろうとしていたが、女王の浮雲によりそれを阻まれた憤怒の嵐。
 奈月が誰かと過ごす時間を大切にしていることを知り、ファミリーに心を開いていることを知り、明確な嫉妬を抱いたことにより、恋慕を自覚する。
 もし、自分が彼女の隣に早く身を置くことができていたのであれば、自分と過ごす時間も、彼女にとって価値のある大切なものへと変えてもらえていたのだろうかと言う感情を抱きながら、脱落する道を選ぶ。

ハルのハルハルインタビューや、犬のケンケンぱぁ〜、ルッスーリア3丁目、怪物使いツナのネタは・・・・・・

  • 骸「奈月ありで番外に書きましょうよ。」
  • リ「別にいらねーんじゃねーか?」
  • 雲「どっちでもいい。」
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