最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
月を跨ぎ9月。まだまだ若干暑さが落ち着かない秋への変わり目。
その日は隼人と武の2人と一緒に、私は屋上で昼を食べていた。弁当やコンビニで買ったものを交換したりしながら、適当な雑談も行って。
「にしても、もう秋か。この夏はいろんなことがあり過ぎて、一瞬で過ぎ去った感じがする。
マフィアのボス候補に挙げられたり、友人が一気に増えたりしたから。」
「オレは夏休みに補習があったせいで、一気に時間が過ぎた感じすんなー。でも、ナツのおかげでなんとか乗り越えることができたぜ。ありがとな。」
「どういたしまして。次は赤点ゼロを目指してみようか。武なら、ある程度教えたら余裕で達成できそうだし、それを維持できたら、もう二度と野球以外で取り柄はないなんてネガティブなことは言わなくなるでしょ。」
「あっはっはっは!!確かにそうだな!勉強もしっかりできるようになれば、もうあんなこと考えなくなりそうだ!」
「つか10代目のファミリーに入るなら勉強くらいできるようになりやがれ。どれだけ迷惑かけりゃ気が済むんだ。」
「ごもっともな意見だな。」
隼人の指摘を聞き、苦笑いをこぼしながら、勉強もこなせるようになるわと口にする武。
……最初のうちはどうなるかと思ったけど、この2人、少しずつやりとりに棘がなくなってる感じがするな。
このまま仲良く過ごしてくれるといいんだけど、さてさてどうなるか。
「そう言や最近、アホ牛がブドウブドウってウザくねーっスか?」
「まぁ、時期的に今が旬だからね。食べたいんじゃないかな。」
「時期で言うなら栗もうまいぞ。」
なんてことを考えながら、雑談に花を咲かせていると、何かがこちらに飛んでくる気配を感じ取る。
すかさずトンファーを取り出してそれを全て防いだ私は、手にしていたトンファーの側面に突起を出現させ、距離を取らせるように軽く振るう。
「それ以上近づかないでくれる?棘が刺さるから。」
「………ナツ。仮にもオレはお前の家庭教師だぞ。」
「もちろんそれは理解してるよ。でも、こちらも怪我はしたくないし、痛い思いもあまりしたくないんでね。
悪いけど、こちらにダメージがありそうなら、例え相手が家庭教師や殺し屋であっても牙を向けるよ。」
「……なんか風紀委員に入ってから好戦的になってねーか?」
「それは失礼。委員長が好戦的な人だから、ちょっと影響されたみたいでね。
……近寄るならそのイガグリ脱いでくれる?脱がずに近づいたら許さないよ。」
「…………」
背後で布が擦れる音が聞こえる。すぐに視線をそちらに向けてみれば、イガグリの服を大人しく脱いでスーツ姿に戻るリボーンの姿が視界に入り込んだ。
それを確かめた私は、手にしていたトンファーの突起を側面から消し、さっさとトンファーも折り畳む。
うん、本当に恭弥さんからこれもらって正解だったな。なかなか戦いやすいし、牽制にもちょうどいい。
ほくほくとこれをくれた恭弥さんに、何度目かわからない感謝を心の中で告げていると、肩に少しの重さが伝わる。
イガグリを脱いだリボーンが、肩に乗ってきたらしい。
「で?学校内であるにも関わらず、姿を現したってことは、何か用事があるってことかな?」
「その通りだぞ、よくわかったな。」
「君が出てくる時は、大抵何かする時だからね。わからない方がおかしいよ。」
そんなリボーンに、なんの用事があって姿を現したのかを問いかければ、彼はどことなく満足気な表情を見せたのち口を開く。
「そろそろファミリーのアジトを作るぞ。」
「ファミリーのアジト?」
「へー、面白そうだな。秘密基地か。」
「子供かおめーは!?アジト、いいじゃないスか!ファミリーにアジトは必要っスよ!」
「決まりだな。」
……なんか話がめちゃくちゃ盛り上がっているんだけど、すっごく嫌な予感がする。
なんだろう……獰猛な肉食獣の檻の中に投げ込まれる寸前のような、そんな予感
これ、断る準備をした方がいいかな。確かに、アジトはあった方がいいのかもしれないけど、危険をおかしてまでやりたくない。
「どこに作るんだ?裏山か?」
「んなわけねーだろ!!」
無言で思案するように腕を組んでいると、いつも通りの武と、それにツッコミを入れる隼人の声が聞こえてくる。
この2人、漫才したらそれなりに面白いことになりそうだな、なんて、ちょっぴり現実逃避をしながら、断る口実を探していると、リボーンの口元がニッと笑う。
「学校の応接室だ。」
「「!」」
「!!!?」
リボーンが口にした場所を聞き、隼人と武がキョトンとする中、私は嫌な予感が的中したことを悟る。
今の時間帯は恭弥さんが過ごしている時間帯。よりによってなぜそこを選んだんだ、この家庭教師は……!!
「応接室はほとんど使われてねーんだ。家具も見晴らしもいいし、立地条件は最高だぞ。」
「…………私は行かないよ。」
リボーンの話を聞き、表情を明るくする隼人と武を一瞥した私は、提案をしてきたリボーンへと目を向け、吐き捨てるように告げる。
「ナツ?」
「10代目?」
それを聞いた隼人と武が、少しだけ困惑したような様子を見せ、私のことを呼ぶが、私はリボーンだけを見つめ、少しだけ目を細める。
「よりによってなんでそこを選んだのかは知らないけど、理由はなんであれ、私はそこに行かないから。
行っても意味はないと思うしね。何度か人が出入りしてるのを見たことがあるし、関係者から追い出されてしまうのは目に見えているよ。」
普段より明らかに冷めた声が出ているのを自覚する。
でも、それだけ私はこの提案を拒絶したいのだ。彼の前では絶対に群れない、その約束を守るためにも。
そして、この子達が大怪我を負い、病院送りにしないためにも。
「じゃあ、ナツはここで待ってていいぜ。」
「準備ができたら呼びにきますんで、少々お待ちください!」
「……あっそう。どうなっても知らないよ。」
“一応、忠告はしたからね”……と目を細めながら告げるが、隼人と武は屋上から立ち去っていく。
呑気に模様替えだとか、どちらが右側に座るかだとか、そんなことを話しながら。
「……いったいどう言うつもり、リボーン。君なら知ってるはずだけど。あそこには誰がいるのか。」
「実力を測るためだ。雲雀 恭弥は、将来的にナツの役に立つ。あとはまぁ、獄寺と山本に対するちょっとしたやき入れだな。平和ボケし過ぎるのは良くねーしな。
それに、獄寺と山本は自分達より強い相手を多く知っといた方が成長する奴らだ。
キケンな賭けであることは理解してる。だから、危なくなったら必ずオレがなんとかする。」
「………あの人は、気に入らない人間を容赦なく病院送りにする人だよ。だからリボーン、絶対にあの子達に大怪我をさせないで。
もし、大怪我をさせるようなことがあったら、私は絶対に君を許さない。」
「ああ、わかってるぞ。ナツはここで待っとけ。」
そう言ってリボーンは屋上から姿を消す。
それを見送った私は、深くため息を吐いてその場にしゃがみ込んだ。
『ナツキ。大丈夫か?』
「……ちょっと大丈夫じゃないかな。本当は、絶対に行くなって止めたかった。
でも、リボーンが何か提案をする時は、それが必要なことだからって、少しだけわかってきたから、強く止めようにも止められなかった。」
『そうか……。』
「それに……なんとなくわかってるんだ。この出会いが2人にとって重要なことだって。なんでかわからないけど、出会わせなきゃいけないって、心のどこかで思ってるんだ。
でも、無傷で何もかも終わるわけがない……そう思うと、ちょっとだけ、精神的に辛い。」
『……………。』
リボーンがいなくなったのを確認し、話しかけてきたジョットさんに、自身の想いを静かに吐露する。
すると、ジョットさんは私の横に座り込んだのち、自身が羽織っているマントの中へと誘うように私を抱き寄せ、そのまま頭を撫で始めた。
『しばらくの間こうしておこう。少しでも、気持ちが落ち着くといいのだが……』
優しい温度に包まれて、どことなく落ち着く匂いを鼻腔で感じて、緩やかに動く温もりを感じて、私は少しだけ無言になる。
でも、次第にこの温もりが心地よくなり、少しずつ気持ちが楽になって行くことに気づき、少しの間だけと、ジョットさんに身を委ねた。
わずかに体を抱き締める力が強くなり、先程より強く熱を感じ取る。
まるで甘えていいと許可されたような気がした私は、みんなが無事でありますようにと一つの想いを胸に宿しながら、目の前の琥珀色に擦り寄った。
沢田 奈月
ファミリーのアジトを作ると称し、獄寺と山本の2人が雲雀と接触するように謀ったリボーンに、少しだけ怒りを見せたボンゴレ10代目。
しかし、これは必要なことだとどこかで思う自分がいたため、あまり強く引き止めることができず、忠告だけを口にして、精神的な疲労を食らう。
リボーン
奈月が忠告だけを残し、獄寺達を見送ったことに少しだけ驚いた家庭教師なヒットマン。
しかし、彼女が口にした、絶対に2人に大怪我をさせないでと言う望みはしっかりと聞き入れ、必ず大怪我をする前に助けることを約束する。
獄寺 隼人&山本 武
奈月の様子がおかしいことに気づいたが、アジトは必要だと思い、ともに応接室へと向かった2人。
このあと、奈月の忠告の意味を痛いほど理解することになるが、同時に、一つの強さの壁を見つけるきっかけとなる。
ジョット
必要なことだとわかってると口にした奈月を見て、自身の血に刻まれている能力の影響であることをすぐに理解していた初代ボンゴレ。
精神的に疲労するとわかっていても、その血により導いた答えに従って、仲間を見送った奈月に、申し訳なさを抱きながらも、頑張ったなと優しく抱き締めた。