最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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VS持田

 無事に学校へ遅刻することなく辿り着き、ホームルームが始まるまで、のんびり京ちゃん達と過ごそうとしていた時、それは訪れた。

 

「沢田 奈月はいるか。」

 

「………沢田 奈月ならここにいますけど?」

 

 持田 剣介。並盛中学校の剣道部主将である2年生。

 まさか、朝っぱらから仕掛けて来るとは思わなかったけど、まぁ、放課後に勉強疲れに見舞われていたり、昼休憩中の眠さに見舞われている時に比べたらマシか。

 朝は強い方だからね。前世でOLやっていた分。

 

「お前が沢田 奈月か。京子からいつも話は聞いている。頼り甲斐のある友人で、いつも仲良くしてもらっているとな。」

 

「そりゃどうも。ですが、どう見てもあんた、自分の大切な子がいつもお世話になってますって言いにきただけには見えませんね。何か、別の用事でも?」

 

「!」

 

 そんなことを思いながら、持田センパイと言葉を交わす。周りの生徒は既に静まっている。

 只事じゃないと思ったのか、それとも珍しい組み合わせの会話が行われていると思ったのか……なんにせよ、周りから向けられている視線は、好奇心に溢れているものであることには違いない。

 

「勘が鋭いな。」

 

「正確には京ちゃんから話を聞いた……が正しいですけどね。彼女がらみの話でしょう?」

 

 京ちゃんから話は聞いたと返し、彼女絡みだろうと問いかける。それを聞いた持田センパイは、静かに頷いたあと、私を真っ直ぐと見据える。

 その瞳には、何やら強い意思が燃えており、絶対に意思を貫くと言う気概が見え隠れしている。

 

「沢田 奈月!オレと勝負しろ!!オレが、お前よりも強く、頼もしい男であると証明し、京子に振り向いてもらうためにも!!」

 

 その瞬間告げられた言葉は、真っ直ぐで真剣な想いの言の葉。その場にいた生徒たちは、まさかの大胆告白で一気に騒がしくなる。

 背後を見てみれば、女子達はキャッキャッと騒いでおり、京ちゃんにどう言うこと!?と詰め寄っている様子だ。

 対する京ちゃんは、突然のことに表情を曇らせていた。何と言うか、こんなことになってしまったことに戸惑っていると言うか、後悔しているとか、そんな雰囲気だ。

 気にしなくて良いのにと、軽く溜息を吐く。だが、すぐに頭を切り替えたのち、表情を曇らせる京ちゃんに近寄り、その頭を優しく撫でる。

 頭を撫でられた京ちゃんは、びっくりしたように目を丸くして、私の方へと視線を向けてきた。

 ……私と京ちゃんは、身長差が7センチくらいあるから、少々上目遣いをしてるように見えて、可愛らしい。

 まぁ、京ちゃんが可愛らしいのは、仲良くするようになった時から、わかっていたことだけどね。流石は並中のアイドル的存在だ。

 

「登校中も言ったでしょ。気にしなくていいってさ。だから、そんな顔をしないで。可愛らしい顔が台無しじゃん。君は曇り顔より笑顔がいい。

 いつも見せてる、太陽みたいな明るい笑顔が一番似合うよ。」

 

「なっちゃん……。」

 

 私の言葉を聞いて、京ちゃんから曇った表情が消える。周りの女子は、先程持田センパイの大胆告白を聞いた時のように、黄色い悲鳴を軽く漏らした。

 その様子から、ちょっと気障ったらしかったかな、と少しだけ反省しながらも、律儀に教室の前の廊下で待っている持田センパイの元へと向かう。

 

「話を遮ってしまい、申し訳ありません。京ちゃんがちょっと不安そうだったもので。

 さて……勝負の話ですが、受けても良いですよ。京ちゃんは私の大切な友人(女の子)ですから、彼女をしっかりと守り抜いて、大切にしてくれるような、頼り甲斐ある人じゃないと恋人になってほしくないので。」

 

 ハッキリとそう告げれば、持田センパイは驚いたように目を丸くする。

 しかし、すぐに表情を真剣なものへと変え、ついてくるように言ってきた。

 

「じゃ、とりあえず行ってくるよ。見にくる人はついてきたら?」

 

 それを確認した私は、すかさず教室に視線を戻し、好奇心に目を輝かせる同級生達に声をかける。

 すると、同級生達は全員顔を合わせたのち、パァっと明るい表情を見せては、教室から飛び出してきた。

 

「こいつは朝っぱらから面白くなりそーだ!」

 

「見にいこーぜ!!」

 

「行く行く!!」

 

「やっば!!ナツがめちゃくちゃカッコいいんだけど!!」

 

「京子ちゃんモテモテー!!」

 

「これは見届けなきゃ損だよ!!」

 

「わ、ちょっと、みんな押さないでよ!」

 

 背後から賑やかな声が聞こえてくる。そのことに小さく笑いながら、私は前を歩く持田センパイの後ろを歩く。

 ちょっと盛り上げすぎたかもしれないけど、まぁいいか。さて……持田センパイは、京ちゃんの恋人に相応しいのかね……。

 

 

 

 *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀ *:・゚*.+ *:・゚*.+ ❀

 

 

 しばらくしてたどり着いたのは剣道部が使っている道場。そこの中央に足を運んだ持田センパイは、私の方へと体を向けて、真っ直ぐと視線を向けてきた。

 

「オレがお前に告げる勝負は、もちろん剣道だ。これ以外の勝負は思いつかなくてな。悪く思うなよ。」

 

「……なるほど。」

 

 どうやら、彼は私とホームで挑もうと考えたらしい。自身に有利なフィールドを用意してくるとは思わなかったけど、彼が口にした、これくらいしか勝負が思いつかなかったと言う言葉に偽りは感じ取れない。

 

「オレは剣道経験者。お前は剣道初心者。これでは勝負にはならない。ゆえにオレは、お前でも十分に対応できるように、いくつかハンデを用意した。

 それは、お前は全身に防具を着け、10分間のうちに、一本でも取ることができれば、お前の勝ち。オレがお前の手元から竹刀を手放させることができればオレの勝ちと言ったものだ。」

 

「……確かに、防具がないのとあるのとじゃ、環境は全然違いますね。一応、剣道はテレビで観ることがあったので、なかなかわかりやすい勝負です。

 それに、センパイの勝利条件は、こちらの怪我の配慮もできている。まぁ、手放させる……となると、腕あたりを狙われそうではありますが、防具がある分、ダメージは少ない。

 ご配慮、ありがとうございます。ですが、念のためにセンパイも防具はつけてください。

 こちらのハンデは、一本取ることができればだけで良いので。」

 

「何?まさか、小学生の時にでも経験したことがあるのか?」

 

「いいえ?経験はありませんよ。」

 

 この世界では……と言う言葉を飲み込みながら、私は真っ直ぐと持田センパイを見据える。

 このままでは防具を着けなさそうだから、尤もらしい言葉を口にして。

 

「ただ、先程も言ったように、私は剣道初心者です。それってつまり、下手したら持田センパイに怪我をさせる可能性もあると言うわけです。

 経験してるから食らわないと言いたいのでしょうけど、初心者って、わからないままに何をしでかすかわからないでしょう?」

 

 だから、念のためにです。と笑みを浮かべながら告げれば、彼は少しだけ思案したのち、わかったと一言返したのち、部員達に声をかけて防具を持ってこさせた。

 同時に、私の元にも部員がやってきて、私に防具を見せる。着け方がわからないだろうからと、丁寧に着用も手伝ってくれた。

 

「(うん。懐かしいな、剣道の防具。やっぱりちょっと汗臭いけど、ちゃんと洗浄はしてんのね。)」

 

 着用した防具を見つめながら、そんなことを考える。懐かしい重さに、少しだけ遠くを見つめ、手渡された竹刀を受け取った。

 

「では、竹刀を構えろ。」

 

「その前にセンパイの手本を見せてもらっても?」

 

「む……まぁ、いいだろう。」

 

 私の問いかけに、持田センパイは素直に竹刀の構え方を見せてくれた。

 それを真似するようにして、自身も竹刀を握り締めれば、持田センパイは審判役の部員へと視線を向けた。

 

「始め!!」

 

 審判部員の声を合図に、持田センパイが距離を詰め、私の竹刀を狙ってくる。

 すかさずそれをいなした私は、彼の動きを見極めるために、行動の一つ一つに注意を配った。

 まぁ、だからと言って何がわかるかなんてないんだけど。なんせ、前世で見たことがある動きしかしてないんだから。

 私から竹刀を手放させること……そんなものを条件にしたのが、彼の敗因と言えるだろう。

 だって、竹刀を手放させるためにコテか竹刀そのものを狙ってくるんだから。

 たまに、剣道のルールに沿う程度に動きを妨害しようとしているようだけど、それの防ぎ方や躱し方は知っている。

 

「持田センパイが、2年生でありながら主将をしている理由がよくわかります。それだけ動きは洗練されているし、一撃一撃がかなり重い。でも……」

 

 放たれた一撃を竹刀でいなし、生まれた隙を突いて、私は持田センパイの頭目掛けて竹刀を振り下ろした。

 辺りに竹刀と頭の防具がぶつかることにより発生する乾いた音が響き渡る。

 一本を取ったことがわかりやすいように、道場全体へこだまするように。

 

「ちょっと隙を作りやすいですね。自信過剰になり過ぎて、慢心している証拠だ。」

 

「!?」

 

「一本!!」

 

「な!?」

 

「あ……」

 

 軽い指摘と同時に、私が一本を取ったことを知らせる声が響き渡る。

 それを聞いた持田センパイは、驚いたように審判に目を向けた。それに気づいた審判は、しまったと言うような表情を見せて、小さく声を漏らした。

 

「……やっぱりか。」

 

「!?」

 

 呆れたように言葉を紡ぐ。すると、持田センパイが驚いたように表情を崩しては私の方へと目を向けた。

 私はと言うと、先程審判を担っていた部員へと目を向けて、溜息を吐き防具を外す。

 

「ホームである以上、何かしらの細工はしやすくなる。だから、仮に私が持田センパイを打ったところで、音が聞こえなかったとか、当てるべき部位じゃないとか、何かしらの難癖をつけて一本を取らせるつもりはないんじゃないかと思ってたんだよね。

 わかりやすく、音を響かせやすいように、そんで何も言われないように、ピンポイントで正しい位置を狙って良かったよ。

 あれだけ綺麗に決めたら、例えどれだけ息がかかった人間であっても、反射的にあげるって考えは正解だったらしい。」

 

 私の言葉を聞いて、持田センパイが顔を青くする。打ち合わせにない行動を取られた時に発生する動揺って、何よりも証拠になるからね。

 

「オ、オレが審判に息をかけた証拠はどこにあるんだ!?」

 

「そ、そうだそうだ!!その証拠がどこに……」

 

「さっきの反応から丸わかりだっての。一本と言われた瞬間、持田センパイはどうして旗を上げたって反応をしたし、審判役はしまったと言わんばかりの反応を示した。

 あとは、まぁ、そこら辺の部員に聞いてみればわかるんじゃない?例えばほら、持田センパイが審判役の人に、話を合わせてくれたら、次の大会で活躍できるようにするから協力してくれとか言ってなかったか、ってさ。」

 

「「「「「!!!?」」」」」

 

 私の一言に、周りにいる部員達に動揺が走る。なんとも大きな動揺だ。鈍い人でもしっかりとわかる。

 

「マジかよ……」

 

「え、つまり、沢田が絶対に勝てない状況を作ろうとしたってことか?」

 

「うっわ、最低……。女の子相手にそこまでしないと勝てないと思ったわけ?」

 

「堂々と宣言していたのに、実際はインチキをやろうとしてたとかひど過ぎない?」

 

「ていうか、部活ぐるみでやってのがあり得ないんだけど……」

 

 ざわざわと騒がしくなる中、私は竹刀と防具をさっさと外し、その場に立っていた部員に手渡す。

 そして、顔を青くしている持田センパイと向き直ったのち、静かに言葉を紡いだ。

 

「真剣勝負かと思ったのに、なんともまぁ、武道に反することをしていたご様子で。

 八百長で勝って何が楽しいのかさっぱりわかりませんし、そんなせこい手を使わなくては女にすら勝てない男に、大切な京ちゃんは任せられませんね。

 てなわけで……私の大切な友達(京ちゃん)を振り向かせたいなら、その腐った性根を叩き直してからきてもらえる?

 それができてから、また挑みにきなよ。もっとも、あんたが挑みにくる頃には、こっちの腕も上がってるだろうけどね。」

 

 吐き捨てるように告げた私は、呆然としている持田センパイに背を向けたのち、私のことを見つめていた京ちゃんに視線を向ける。

 すると京ちゃんは私と目が合うなり、まっすぐと走り寄ってきて、いつものように抱きついてきた。

 

「おわ!?」

 

「なっちゃん!!すごくかっこよかったよ!!」

 

「ちょ、わかった、わかったから抱きつかないで……」

 

「「「「沢田!!」」」」

 

「ナツ!!」

 

「「「「奈月ちゃん!!」」」」

 

「って、押し寄せてこないでぇ!?」

 

 それを合図に、私達の勝負を見にきていた生徒が一気に押し寄せてきた。

 一気にやってくる人の群れに、夏場だと暑すぎるわ!!と怒鳴りながら、離れるように言うが、お祭り騒ぎになってしまっているのか、誰も話を聞いていない。

 

「……沢田 奈月。」

 

「はい?」

 

「お前は……本当に剣道の初心者だったのか?」

 

「…………ああ、それ。」

 

 そんな中、持田センパイが口にした言葉に、まぁ、あれだけ綺麗に入れられたら、そら疑いたくなるわなと考える。

 もちろん、私は初心者じゃない。学生の時に、全国大会でそれなりにいい成績を残していたくらいには、経験を持ち合わせていた玄人だ。

 でも、それはもう昔の話。今の私は、剣道なんてしたことがない。

 

「本当に初心者でしたよ。私は剣道をしたことがない。ただ、持田センパイの動きを見れば、なんとなく仕様が理解できたのと、防御よりは受け流す方が、バランスを崩せそうだと思ったことがうまく噛み合って勝てただけです。

 ……まぁ、これから頑張ってください。しっかりと性根を叩き直して、そんで、もうちょっと男を磨いてから、リベンジしてくるのをお待ちしてますんで。」

 

「………ああ、わかった。いつか、必ずお前を越えてやる。」

 

「……そうですか。まぁ、楽しみにしてきますよ。多少はマシになってくるのをね。」

 

 俯いて黙り込んでしまった持田センパイを見て、大人になるまでは、もうちょっと性格をカッコ良くしてくださいよと思いながら、未だに群れている全員に声をかける。

 

「ほら、さっさと教室に戻るよみんな!!この勝負はお開きお開き!!早くしないとHRが始まっちゃうから!!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

「「「「はーい!!」」」

 

「ほら、京ちゃんも行くよ。」

 

「うん!一緒に行こ、なっちゃん!!」

 

「はいはい。」

 

「ちょっと、私も混ぜなさいよ!!2人だけで行くな!!」

 

「たはは……ほら、花もさっさと行くよ。」

 

「ええ。」

 

 みんなと一緒に自分達が通っている教室へと急いで戻る。

 これで、少しは落ち着くといいんだけどねぇ……。

 

 

 




 沢田 奈月
 持田に勝負を挑まれて、引き受けたところ、持田のホームでの勝負だったことに不信感を抱き、その原因もろとも持田を叩き伏せた転生者。
 実は前世で、学生の時に剣道の全国大会に出ていた経験があった。
 本人はそこそこの成績と言っていたが、実は準優勝も優勝も取った経験がある。(基本ベスト8か5止まりだったため、そこそこと認識していた)

 笹川 京子
 持田と奈月が勝負する原因になってしまった女の子。奈月から大丈夫だと微笑まれて、マイナスの感情を払拭することができた。
 持田に見事勝利した上、彼が用意していた策略も見抜いていた奈月には、ここを境目に全力で信頼も親友もするようになったし、もっと好きになった。

 黒川 花
 やっぱりそこらの男子よりも奈月はイケメンで頼り甲斐ある友人だと改めて認識。奈月が男だったら、間違いなく惚れていたし、本気で恋人になろうとしただろうと苦笑い。

 持田 剣介
 奈月から見事なまでに叩きのめされた剣道部主将。防具や竹刀に細工をしなくても自分が勝てることを全く疑っていなかったし、絶対に京子を振り向かせることができると思っていたが、念には念をとこすい真似を使った結果、因果応報か見事に返り討ちにされたし、周りから白けた目で見られてしまった。
 これを境に全力で男を磨き、真面目な主将道を歩き始める。

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