最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「ど、どうなってんだあれ!?」
「棒を支えている生徒がめちゃくちゃ大変なことに……」
「って言うか沢田やば過ぎだろ!!あのヒバリさんとやり合ってるぞ!?」
並盛中学校の体育祭……その目玉とされている棒倒しに抜擢された唯一の女子生徒であるナツキは、オレと同じ橙の死ぬ気の炎を額に灯し、どことなくアラウディに雰囲気が似ている黒髪の生徒……ヒバリと呼ばれている男子生徒と交戦する。
勝負の場となっているのは、棒倒しの総大将が居座る一本の高い棒。かなり狭い範囲でしか動けないそこで、巧みに下に落ちないように戦っている。
まるで、ポールダンスでも踊っているかのようだと一瞬だけ考える。棒から総大将が落ちたら負けと言う変則的なルールに則ってやっているわけではあるが、あそこまでやるとは思わなかった。
だが……
『やはり……まだ精度が甘いな。』
明らかにどこまで死ぬ気になっていいか探りながら動いている様子の来孫の姿を見ながら小さく呟く。
死ぬ気は一定の気力を保たなくては、一瞬にして体力を持っていかれてしまう。
それがまだできていない状態あの子では、持って数分が限界だろう。
これから先、オレが興し、子孫達が作り上げてきたボンゴレと言う存在の頂点に立つとなると、何かしら長時間力を行使しなくてはならない時が度々くるだろう。
だからこそ、なるべく早くコントロールの仕方を教えて、少しでもナツキが自身の身を守り、そして戦える力を身につけさせたいのだが、さて……どうやってあの子を育てればいいのだろうか……。
『あれがジョットの子孫か。死ぬ気の炎のコントロールがかなり甘いが、戦闘センスはお前と同じで、かなりあるな。』
『よく似てるね。まだまだ未熟だけど、上手くすれば君と同じくらい、能力を開花させることができそうだ。』
『!?』
そんなことを思っていると、二つの声が鼓膜を揺らす。
忘れるはずがない、懐かしい声。
『G……アラウディ……。いつのまに来ていたんだ?』
それは、オレがかつて束ねていた自警団の中で、最も近くにいた幼馴染みと、普段は道を交えることなく別々の方向性で道を歩むが、重なり合う時は一緒に戦っていた門外顧問を担当していた1人の友のものだった。
まさか、こんなところで2人に会うとは思いもよらず、思わず目を白黒させてしまう。
『気がついたらここにいたんだよ。』
『僕も同じ。いつのまにかここに立ってたよ。なんで呼ばれたのか全くわからないけどね。』
オレの右腕だったGと、門外顧問のアラウディ。オレの数歩後ろの方に立っていた2人は、驚いているオレのことなど気にすることなく、静かに左右へと並んでくる。
『育て甲斐のありそうな子孫だね、君の来孫は。君があの子の側にいるようになってから、度々こっちに呼ばれて、何度か見かけたことがあったけど、ここまでじっくり見たのは初めてだ。』
『オレも何度か見たことがあったが、ゆっくり見たことはなかったからな。しばらくこっちにいることができそうだし、観察させてもらうぜ。』
2人から衝撃的な事実を聞いてしまった。
まさか、何度もこっちに足を運んでいたとは……。
だが、それなら少しくらい顔を出してもいいと思うんだがな……。
『……何度か見たことがって……来ていたのなら少しくらい顔を出してくれてもよかっただろう。ナツキの紹介もしたかったんだぞ?』
『オレは何回か顔を出そうとしたんだが、どことなく顔を出せるような雰囲気じゃない時が多かったからな。遠巻きに見るだけにしていたんだよ。』
『僕の性格、君なら知ってるはずでしょ。今回は少しだけ面白そうだったから、顔を出したに過ぎないよ。』
アラウディの反応にため息を吐きそうになるが、Gの言葉に関しては、なんとも言えなかった。
間が悪かった……と言うやつだろうか?どうやら、ナツキが少しだけ辛くしている時に限って、姿を現していたらしい。
『加減を考えながら戦っているせいで、すぐに倒すことができてないみたいだね、君の来孫。』
『ああ。だから、早めにコントロールの方法を教えてやりたいのだが、なかなかタイミングが掴めなくてな。』
『まぁ、本来ならオレ達は死んでるわけだからな。やり方を教えようにも、周りの目を気にしちまう。
これまでの様子から見て、ジョットの姿が視えてんのは、あの子孫……ナツキって来孫だけなんだろ?』
『そうだな。オレと話せるのはナツキだけだ。』
『となると、ナツキにしかオレ達が視えないのは確定と見ていいな。』
『渋る必要がある?……って言いたいところだけど、君のことだ。そのせいで周りに馴染めなくなったり、傷つけられる姿を見たくないから、手を出せないってところでしょ、どうせ。』
アラウディの指摘を聞き無言になる。
そう。オレはそれを少しだけ恐れている。いくら話せるからと言って、いくら触れることができるからと言って、ナツキを守るために、オレが教えることができる全てを教えた際、もし、死人が視えると言う理由から、ナツキが周りに馴染めなくなってしまったり、急に力をつけて、ひどい言葉を言われて傷つけられてしまったりしたらと考えると、なかなか教えることができない。
あの子の周りの人間が、そう簡単に離れていかないことはわかるけど、どうしても、“もしも”を考えてしまう。
『まぁ、そこら辺はおいおい話すとしてだ。見てみろよ、ジョット。お前の子孫、だんだん動きが良くなってきてるぜ。』
“まだ、上手く扱えてる状態って言うには甘いがな”と口にするGの言葉を聞き、視線をナツキへと動かす。
そこには、いつのまにか死ぬ気のコントロールの精度が上手くなっており、ヒバリと言う少年を防戦一方に追い込んでいるナツキの姿があった。
ヒバリと言う少年は、少しだけ表情に変化を出している。先程までは楽しげに笑っていたのに、今はそれが驚愕に変わっていた。
『ようやく直感したみたいだね。気力のコントロール……それを上手く行う方法を。』
『………ああ。』
その姿を見て、オレは口元に笑みを浮かべる。また一つ、あの子が当たり前に送るはずだった日常生活を潰してしまったことに対する申し訳なさはあるけれど、オレが残したものを継ごうとしてくれていることは、やはり、どこか嬉しいと思ってしまった。
だが、やはり、一般から裏を知ると言うことは、時にどうしようもない現実に見舞われてしまい、精神的に苦しい思いをしなくてはいけなくなることも事実なわけで……。
『やはり、あの子の心は、守れるようにしなくてはならないな……』
『……まぁ、そこら辺はお前の好きにしたらいいんじゃねーか?少しくらい弱音を吐けるような相手がいてもいいだろうしな。』
『でも、干渉し過ぎない程度にしなよ。組織の上に立つ者に必要な物は何か、君はよく知ってるでしょ。』
『わかってる。だから最終的には道を見失い、暗闇に迷い込んでしまった時、どうしても答えが出てこない時にのみ干渉を抑えるつもりだ。
だが、今はまだその時じゃない。あの子はまだ子供なんだ。子供ならば、少しくらい甘やかしても構わないだろう?』
オレのその言葉を聞いたアラウディが、少しだけため息を吐く。おそらく、オレの考えに対する呆れだろう。
ああ。わかってる。自分でもこれは、少し甘い考えだと理解しているさ。
だが、いくら他の人に比べて、精神面は大人であったとしても、あの子は裏の世界に対する精神的耐性は皆無なのだから、結局は子供なんだ。
何も知らない、無垢な子供。そんな子供に、こちらの世界を教えなくてはならないと言うのは、やはり少しだけ辛いものがある。
だから、少しくらい甘やかしてもいいだろう?
『あ。』
『よし。』
『お。やったな。お前の子孫、あの黒髪の生徒地面に引き摺り下ろしたぞ。』
そんなことを考えていると、ナツキがヒバリと言う少年の攻撃に合わせて高く舞い、落下する際に彼を道連れにする形で棒の下へと落ちたのを確認する。
そのままでは負けてしまうのではと思ったが、そこはちゃんと考えていたのか、彼を先に地面へと押し倒したことにより、相手に敗北を押しつける形で終わらせていた。
「うおお!?沢田がヒバリさんを地面に落とした!?」
「ウッソだろ……あのヒバリさんを負かすことできんのかよ……」
「ていうか、マジで何がどうなってああなった?全然動き見えなかったぞ……」
「よく棒から落ちることなく動き回れたよな。沢田もヒバリさんも。」
「オレ、あの2人の前では絶対に風紀乱さないようにするわ。」
「オレも。」
「オレも。」
生徒達が賑やかにする中、オレは少しだけ考える。手探りにやれることを探し出し、それを見事こなしてみせるあの子に、本格的に技術を教えることができたら、あの子は間違いなく全てを身につけるだろう。
そうなったら最後、あの子は後戻りができなくなってしまう。だが、もし、それでもいいからと力を身につけるためにオレを頼ってきた時は、その声に応え、様々なことをあの子に教えてあげよう。
『……オレの技術を教えるにあたり、今一番ナツキに必要な物は体力だと思うんだが、Gとアラウディはどう思う?』
『まぁ、間違いなく体力だろうな。やっぱり女って言う性別上、今の時期の体力は男に劣っちまう。』
『あとは、多少の筋力と戦闘能力の更なる向上じゃない?』
『他にも、何かしらサブウェポンになるものを覚えさせた方がいいんじゃねーか?』
『道具を媒介して、炎を遠距離攻撃に転じさせるのもいいかもね。』
『遠距離か……。確かに、ナツキは女という性別上、死ぬ気の炎を使用した状態に移行していても、ガタイがよく屈強な男と対峙した場合は真っ正面から戦闘を行うには限界がある。
やはり、何かしらそこを補える能力を教えた方がいいか。』
『あの子は小柄だからスピードに特化させてもいいんじゃない?筋力で劣るなら、速さを鍛えて、相手を翻弄するように戦えば、無傷の勝利も達成できるはずだよ。』
『となると、やはり、素早く戦える素手による戦闘と、遠距離攻撃を優先して教えた方がよさそうだな。』
そうと決まれば、今からやるべきことや、備えるべきことを考える。
まずは、戦うための技術よりは、体力面の育成からか。
『何にせよ、体力はもう少しつけさせたほうがよさそうだな。体力程度であれば、まだ裏のことを知らない今であっても、鍛えさせるメリットはある。』
『だったら、ナックルでも呼ぶか?』
『いや、体力に関してはオレが鍛える。』
『そうか。』
『ねぇ。少しだけ僕もあの子に手を出してもいいかい?』
『は?』
『何だよ急に。』
『別に。少しだけ興味が湧いただけ。殺しの技術じゃなくても、戦い方を教えたらどうなるか気になるんだ。』
『アラウディが興味を持つなんて珍しいな。』
『僕自身も意外だと思ってるよ。でも、興味を持ったのは変わらない事実だし、興味が薄れるまでは、ちょくちょく手を出させてもらうよ。なかなか面白そうだしね。
じゃあ、僕はそろそろ失礼するよ。君の子孫……ナツキだっけ?彼女には個人的に接触させてもらうから、あまり邪魔しないでよ。』
『………行ってしまった。』
『ったく……まさか、あいつがジョットの子孫に興味を持つとはな……。』
アラウディが去っていった方角を見つめながら、何度か瞬きをする。
彼が、個人的に接触をさせてもらうと言ってくるとは思わなかった。
まぁ、それだけアラウディもナツキを気に入ってくれた……認めてくれたと言うことだから、別に構わないのだが、ナツキに無茶をさせたりしないだろうか……。
『……早めにナツキに体力をつけさせる方がいいかもしれない。』
『……だな。女に無茶をさせたりしないとは思うが、早めにそこら辺の対処をしといた方がいいかもな。』
Gと一緒に思わず遠い目をしながら、とにかくナツキにはまず体力をつけさせることを決意する。
せめてアラウディの指導が厳しくなる前に、少しでも早くやろう。
『ところでジョット。』
『なんだ?G。』
『ナツキのやつ、拗ねた様子のヒバリってやつに問答無用で連れ去られてっけど、側にいてやらなくていいのか?』
Gから告げられた言葉に、一瞬だけ無言になるが、慌ててナツキの方へと目を向ける。
そこにはむすっとした表情をしているヒバリと言う少年に俵担ぎをされて校舎の方へと連行されているナツキの姿があり、困惑した状態で担がれていた。
『……一応様子を見てくる。何もないとは思うが、側にいてあげた方が良さそうだ。』
『おう。オレは先に退散するぜ。じゃあな、ジョット。また今度、お前の子孫のことを紹介してくれ。』
『ああ。』
立ち去ることを告げ、赤い炎となり姿を消すGを見送ったあと、オレはナツキの元へと急いで向かう。
ヒバリと言う少年は、まるで納得がいかないと言った表情をしているからな。
もし、改めて戦闘を挑まれたりしたら、ナツキの体力と気力が限界を迎えるだろう。
そうならないように、戦闘を回避するための助言をしないとな。
ジョット
奈月の活躍を校舎の屋上から眺めていた初代ボンゴレ。
途中、かつての仲間のまさかの乱入を受けて驚いたが、これからのことを考えて、奈月にどのようなサポートをするべきか相談していた。
楽しげな様子で奈月に手を出すと言ってきたアラウディに少しだけ不安を感じながら、雲雀に連行された奈月へ、戦闘を回避するための助言を行うため行動を移す。
G
ジョットが観戦する中、合流したジョットの幼馴染み兼彼の右腕の初代幹部。
奈月のことは遠巻きに眺めていたことがちらほらとあり、そのたびにまだまだ甘いなと考えていた。
遠距離攻撃はオレが教えてやった方がいいか?と考えながら、ジョットの前から立ち去る。
ジョットから奈月を紹介される日を楽しみにしている。
アラウディ
観戦中のジョットの元に合流した初代ボンゴレ幹部兼門外顧問。
奈月の戦闘センスの高さを見て、育てたらなかなか面白いことになりそうだと興味を持ち、個人的に接触を図り、戦い方を教える気満々である。
奈月と直接会うのを楽しみにしており、近々会いにいってみようと企んでいる。
沢田 奈月
死ぬ気モードのコントロールを手探りに身につけながら戦っていたため、少々ゲームに手こずっていたボンゴレ10代目。
最終的にコントロール方法を理解し、雲雀を素手で圧倒し、見事彼を棒の上から引きずり落とすことに成功したのだが、負けたことが気に食わないらしい雲雀に連行されていた。
このあと合流したジョットから助言を受けながら、雲雀の本日中の再戦をお断りする。
雲雀 恭弥
奈月の本気の本気モードの一撃を防御した際、その力の強さにテンションが若干上がった風紀委員長。
しばらくは棒の上での攻防で互角にやり合っていたが、次第に動きがいい方へと変化していった奈月に対し、防戦一方に追い込まれてしまい、地面の方へと落とされた。
最初から全力じゃなかったの?と言う疑問や、地面に落とされてしまったことに腹が立ったため、屋上で第二ラウンドをおっ始めようとしたが、ひらりひらりと奈月に躱されることになった。