最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
ある日の昼時。今日も特に何もなく終わるかなと思った頃に、その出来事は起こった。
遠距離の補助として、銃の扱い方を学ぼうとした翌日から、あらゆる銃器をどこからか取り寄せたリボーンに、手入れの仕方や銃ごとの威力の違い、反動の違いなどを教えてもらいながら、銃の組み方なんてものを練習していたら、彼は急に言ってきた。
“そろそろ昼飯の時間だし、たまには外に食いに行くか”と。
いったいどう言う風の吹き回しかと一瞬思ったけど、まぁ、たまにはいいかと思い、それを快諾すると、リボーンは私の他にも、ビアンキ姉さんやランボにも声をかけ、ある場所へと向かった。
それは、俗に言う回らない寿司屋……一皿一皿がなかなかのお値段になるお寿司屋さんである。
そこに足を運んだリボーン達は、さっさと案内された席で、思い思いのネタを頼み、無言でそれを食べ進めてていた。
対する私は、前世からの経験もあり、安いネタのみを数皿頼み、それをゆっくり食べている。
「……ナツ。あなた値段が低いものばかり頼むわね。しかも、箸で食べてるし。」
「……お寿司を箸で食べるのは日本では珍しいことじゃないよ、姉さん。」
「あら、そうなの?って言うか、それで足りる?いいもの頼んであげるから、それを食べなさいよ。」
「いい。高いものはあまり食べ慣れてないし、これくらいがちょうどいい。」
「そんなこと言ってると、将来的に体がびっくりすることになるぞ。あっちに行ったら、そう言ったものもしょっちゅう食わねーといけなくなるしな。」
「だからって今から食育はいらないと思うんだけど。」
あまり高いものを頼もうとせず、値段が低いものばかり食べる私に、ビアンキ姉さんとリボーンは、困惑したような表情を見せる。
そんなにおかしいかな。値段が低いものを食べるの。
基本的にお寿司って、特別な時に食べるから、値段が低くても食べてるだけで十分過ぎる贅沢だと思うんだけど。
あー……でもそう考えると、母さんに黙って来ちゃったのものすっごい罪悪感。
せっかくなら母さんも一緒に来れたらよかったんだけど、母さん、今日友達と会うって言って出かけてるからいなかったんだよね。
「へいお待ち!ウニはどちらさん?」
「ガハハハハ!このオレンジのは昼寝の時間だけどがんばって起きているランボさんのだもんね!」
「大トロは?」
「私よ。」
なんてことを考えていると、かなりの高額ネタがこの机に届く。そう言えばこの2人、それ頼んでたな……と思っていると、両方とも上のネタだけを食べようとしている姿が目に入った。
「ちゃんとシャリまで食べなよ。知ってる?寿司職人になるまでの修行期間って、10年はかかるって言われてること。
確か、シャリ炊き3年、合わせ5年、にぎり一生だったかな?
そんな努力の結晶でもあるシャリを残して、ネタだけを食べるなんて、随分と贅沢なことをするな。」
「「……………。」」
あまりにも見ていられなかったため、思わず口出しをする。私の言葉を聞いたランボとビアンキ姉さんは、一瞬フリーズしたのち、お寿司を運んできたおじさんへと目を向けた。
まるで、今の話って本当?と問いかけるように。
「お。お嬢ちゃん、よく知ってるな!」
「一時調べたことがあったんです。自分でもお寿司って握れないのかな?って。
まぁ、自分で食べるだけならちょっと雑でも問題はありませんが、人に出すとなるとそうもいかない。
シャリの硬さやシャリの量、魚の切り身などのさまざまなネタとのバランス……それらを完璧に合わせられるようになるまで、厳しい修行の日々と、かなりの努力が必要であると知ってから、寿司職人さん達の大変さや、素晴らしさを改めて認識したんです。
だから、ちゃんとシャリまで味わって食べないとって思っていたんですよ。
こちらのお寿司、とても美味しいです。おじさんの努力の味ですね。」
「そう言ってもらえると、職人名利に尽きるねー!」
豪快に笑いながら、これはおじさんのサービスだ!と、大トロ、中トロ、トロの三貫セットを目の前に置かれ、思わず固まる。
ちょっと待って?これって普通は数千円するはずだよね!?
「え゛!?ちょ、おじさん!?これ、かなりのお値段がするものじゃないですか!?」
「こまけーことは気にすんな!そいつは、オレの奢りだ!」
「ええ……?それ、お店を経営してる人がやっちゃっていいの……?」
まさかの大サービスに困惑するが、せっかく用意してくれたものを食べないことほど失礼なものはない……。
なんか、ビアンキ姉さんとランボが見てるし、下手したら盗られそうだ……。
「……ん、脂がしっかり乗ってて、すごく美味しい。」
「そいつはよかった!朝イチで見つけたマグロから取れたやつでな。気に入ってもらえたようで何よりだよ!」
困惑は抜けきっていないけど、せっかくのご厚意を無碍にしたくはないと思い、恐る恐る口にすれば、かなりの美味しさに驚く。
リボーン達、こんなに美味しいものをたくさん食べてたわけ……?
今の年からこの味覚えちゃったら、後戻りできなくならない?
「「…………。」」
あまり食べ慣れない美味を口にして、噛み締めるようにもぐもぐしていると、ビアンキ姉さんとランボが自分達の前にある皿を見つめたのち、ネタだけを食べようとするのをやめ、しっかりとシャリまで口にした。
うん。それでよし。人の努力の結晶は、絶対に無碍にしたらダメだよ。
「にしても……リボーン達高いネタをひたすら頼んで食べてるけど、お金は大丈夫なの?」
こっちの言いたいことはちゃんと伝わったようで……と少しだけ満足しながら、先程から考えていた疑問を口にする。
すると、それを聞いたビアンキ姉さんは、頼んでいたお寿司を全て食べたのち、
「ごちそうさま!」
……なんでハッキリ言って、この場から猛ダッシュで立ち去った。同時にリボーンは手元からワイヤーのようなものを取り出し、ビアンキ姉さんの方へとそれを投げる。
ビアンキ姉さんがそれを腕に絡ませたら、リボーンの体がビュンッと宙を舞った。
「悪いな、大将。財布忘れたからツケといてくれ。」
「は!?」
「ばいばい!!」
「あ……」
財布を忘れたと言っていなくなったリボーンと、急足で逃げ出すランボの姿に、何度か瞬きを繰り返す。
え?もしかしてこれ、3人が食い逃げしちゃったパターン?
「……………。」
「……………。」
嵐が過ぎ去ったかのような静けさの中、私は出されていたサービスのお寿司を全て食べきり、さっさとお茶を淹れて口をサッパリさせるためにそれを飲む。
そして、口元をさっさと拭いたのち、持って来ていた財布を開いた。
「………んー……頼んでいたネタは確か…………。」
リボーン、ビアンキ姉さん、ランボが食べていたものを一つ一つ思い出しながら、自分が食べていたものと合わせて計算する。
手持ちの財布にある値段は……と……。
「……あー……ちょっと足りないかな、これ。」
「嬢ちゃんが払うのか?」
「そのつもりだったんですけど、今の手持ちが少なくてですね。家にある貯金からお金を持ってくれば、十分払える値段なんですけど、あいにく、現在親は久々に学生時代の友人と出かけておりまして、連絡がつかないんですよ。
携帯電話に連絡すれば、話すことはできると思いますが、お金を届けてもらうのはちょっと難しいだろうし……かと言って、自宅まで取りに行く……と言うのもなんかアレだし……。」
「それは言えてんな……。」
“うーん”……と2人して首を傾げる。念のために財布を持って来て正解だったけど、流石にこの値段を今すぐ全部支払えない……。
おじさんの監視のもと、家まで取りに行くと言う手段もあるにはあるけど、いつ他のお客さんが来るかわからない現状で、来てもらうのはよろしくない。
一時的にお休みにする……と言う提案は却下だな。こんなに美味しいお寿司が食べれる場所なんだから、楽しみにしてる人がたくさんいるだろうし、臨時休業って休んだりしたら、その人達ががっかりするだろう。
こっちの私情……さらには、悪いことをした身内の責任を取るための私情に、他のお客さんへ迷惑かけたくないんだよね。
「あー……おじさんさえ構わなければなんですが……」
「なんでい?」
「足りない分のお金、このお店をお手伝いすることで補わさせてもらえませんか?お客様に提供する以上調理を手伝うことはできませんが、皿洗いやホールの掃除くらいはできますし。」
「そいつは構わねーが、いいのかい?嬢ちゃんは悪くないだろう?」
「うーん……まぁ、私がやらかしたわけではないので、その意見はごもっともですが、先程の3人は私の身内でもあるので、呆気に取られていたとは言え止められなかった私にも責任はあります。
せっかく、さまざまな努力やお心遣いの末、美味しいお寿司を作ってくださっていると言うのに、食い逃げなどと言う努力を踏み躙るような行為のせいで、支払われるべき報酬が支払われない……など、あってはなりません。ですので、全部支払えるまで働かせてください。」
そうと決まればやることは一つ。私がしっかりと働いて、足りない分のお金を全部補うのが一番!!そう考えた私は、お寿司屋さんのおじさんにお願いして、足りない分を補うために店の手伝いをさせてほしいと伝える。
最初、おじさんは驚いて、私に非があったわけじゃないことを指摘して来たが、身内の責任は自分の責任でもあると返し、足りない金額分働かせてほしいと伝えれば、彼は何度か瞬きをしたのち、声を出して笑った。
「だっはっは!!嬢ちゃんはしっかり者だな!!じゃあ、頼んでも構わねーかい?」
「ええ、もちろん。」
「ありがとよ!っとそうだ。嬢ちゃん、名前はなんてーんだい?」
「私ですか?沢田 奈月です。」
「沢田……奈月……?どっかで聞いたような……」
名前を名乗った瞬間、首を傾げたおじさんに釣られて、私自身も首を傾げる。
はて……?私の名前がこのおじさんに聞かれるようなことはあったかな?
「ただいまー……ってナツ!?」
「あれ?武?」
そんなことを思っていると、店の出入口側から聞き慣れた声が聞こえて来た。
すぐに振り返ってみれば、そこには武がいて、目をぱちくりしながら私のことを見据えていた。
沢田 奈月
元は冴えないOLだったサガが、回らない寿司屋さんに行くだけでも十分な贅沢だと言う思考回路をしており、値段が低いものを1人食べていたボンゴレ10代目。
まさかの食い逃げをやらかした身内の尻拭いをするため、自ら店の手伝いを申し出たところ、外出していた山本と出くわす。
山本 武
外出から帰ってみたら、まさかの奈月来店の場面に出くわし、かなり驚く。
寿司屋の店主(山本 剛)
奈月の態度や誠実さを見て、彼女にかなり好感を抱いていた寿司屋の店主。
帰宅した息子と顔を合わせて、言葉を交わす姿を見て、あ、タケシの想い人か!とガッテンがいく。
リボーン、ビアンキ、ランボ
奈月の言葉を聞き、シャリまでしっかり食べたが、原作通り食い逃げをかました3人組。