最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい   作:時長凜祢@二次創作主力垢

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ヒットマンの確信と疑問

 獄寺と山本、そして、ランボと一緒に前を歩いている奈月の姿を見て、リボーンは1人だけ少し後ろの方を歩きながら、物思いに耽る。

 今回、リボーンはリスクを承知の上で食い逃げをすると言う行動に出た。

 

 表向きは社会見学をするためだが、実際は違う。

 今回のこの行動の一番の目的は、奈月の正体や違和感を確認し、疑問を確信へと変えるためのものだったのである。

 もちろん、そのおかげでこっぴどく叱られたわけではあるが、リボーンはそれも想定していた。

 彼女の性格や、自身が考えた仮説がまごうことなき事実であるならば、こうなるとわかっていた。

 まぁ、ランボを引き合いに出された上、嫌味たっぷりなお叱りを口にされることまでは、想定できなかったが、それでも彼は抱いていた疑問と違和感の答えを得ることができたため、その怒りは甘んじて受けることにした。

 

 ……リボーンが感じていた違和感と疑問……それは、あまりにも精神面と、見た目が合わないと言うものだった。

 最初のうちは、父親の代わりに、どこか抜けている自身の母親を守るため、しっかりするようになっただけだと思っていた。

 しかし、この一ヶ月、奈月の様子を見ていたリボーンは、ある違和感を覚えるようになったのである。

 社会を知っている大人が学生を演じているような、そんな違和感だ。

 

 だが、リボーンは最初からその違和感を感じていたわけじゃない。むしろ、つい最近までその違和感に気づくことすらできなかった。

 それ程までに奈月は、少しだけ大人びた中学生を完璧に演じていたのだ。

 大切な家族に寄り添い、弟のような存在には、優しく穏やかな姉の姿を見せていたのである。

 

 しかし、彼女が盆を過ぎた頃から、度々口にするようになった秘密の友人と言う存在が現れてから、その違和感は急速に顔を覗かせるようになった。

 普段の彼女は、大人びていて、頭のいい学生……だが、時折その姿は形をひそめる時がある。

 それは、彼女を知るものが殆どいない真夜中の時。彼女はフラッとどこかへと移動することがある。

 その時に彼女の中からは学生としての彼女が消え、別の彼女が姿を見せる。

 見た目は全く変わらないのに、表情がガラッと塗り変わるのだ。

 

 まるで、成熟し、世間を理解し、そして、どこか、何かを諦めている女性のような……そんな表情を。

 だが、そんな表情とは裏腹に、彼女が口にする秘密の友人達と話しているであろう時は、とても穏やかな雰囲気を纏っていて楽しそうにしているのだ。

 おそらく、とても明るい話題を口にしているのだろう。彼女が口にする秘密の友人もまた、明るい話題をしているのだろう。

 

 ……それからと言うもの、リボーンは奈月に強い違和感を覚えるようになった。

 夜に何者かと言葉を交わし、楽しげに話しているその姿が、彼女の素であることを、それなりに人生経験を積んでいるリボーンは、見抜いてしまったのである。

 そして、彼はこれまでの奈月の言動を振り返った。それにより浮かぶ今の年齢に不相応な言動は浮き彫りとなった。

 しかし、それが浮き彫りになったからと言って、素直に奈月が答えを言うとは思えなかった。

 誰と話していた?と問いかけて、秘密の友人達と口元に笑みを浮かべながら答えいるのに、まるで、深く踏み込んでくるなと言うように、どこか底冷えしてしまいそうな表情を見せたのを見た時、その考えは明確にリボーンの脳内に焼き付いてしまった。

 きっと、外側から殻を剥ぎ取らなければ、彼女は真実を話さない。

 

 だが、リボーンは一度覚えた違和感を、一つくらいは解消しなくては気が済まなかった。

 何か違和感の答えを得ることができれば、今後の対応を考えるきっかけになると思ったのだ。

 無論、それはボンゴレの今後を図るための物差しにも使う。9代目であるティモッティオが、人選を間違えることはあり得ないが、念には念を入れておく必要があるからだ。

 

 その結果、彼は今回の問題を引き起こした。取り繕うのであれば、隠すのであれば、リスクを負ってでも、何かしらの問題を引き起こせば、本来の彼女がどのような存在であるのかを見抜くことができると考えたのである。

 そして、それは確かな答えを得るための事象となった。自身の信頼を落とすことと引き換えに。

 

 ─────……やっぱり、沢田 奈月と言う人間は……いや、沢田 奈月と言う存在になってしまった何者かは、一度社会を経験したことがある誰かだ。

 今回の適切な対応と、適切な指示、そして、相手により仮面を変えながら、どのように諭すべきかと言う思考の速さは、社会を経験し、誰かの上に立つことにより、誰かの手本となることにより、得ることができる世渡り術だ。

 しかも、そのどれもが演技だの真似事でもない、ちゃんとした大人の振る舞い方だ。

 

 しかし、それがわかったところで、沢田 奈月と言う存在になった何者かを完全に引き摺り出すことはできないだろう。

 これでは、害があるかどうか判断をつけることができない。

 

「ナツ。お前はいったい何者なんだ?」

 

 答えが知りたい……その想いに任せて口にした疑問。

 しかし、奈月はそんなリボーンの姿を見たのち、小さく笑みを浮かべたあと……

 

「……日々さまざまなことを学びながら生活している、沢田 奈月と言う1人の女子生徒。」

 

 “それ以外何があるわけ?”と、わかりきったことだろうと問うような、同時に“それ以上踏み込まないでくれ。話すべきではない”と言う拒絶を乗せたような表情をして告げてきた。

 

「10代目?」

 

「ナツ?どーかしたのか?」

 

「ん?なんでもないよ。送ろうとしてくれてありがとうね。」

 

「これくらい当然っスよ!」

 

「ナツは女の子なんだから、もっとオレ達を頼ってくれよな。全然迷惑とか思わないしさ!」

 

「むしろじゃんじゃん頼ってください!オレは10代目の右腕ですからね!」

 

「ナツの右腕はオレだって言ってるだろー?獄寺は左腕な。」

 

「左はおめーだろ!!」

 

「あはは!どっちも頼り甲斐あるから悩むなー。」

 

 だが、その表情は一瞬にして消え失せる。ともに歩む2人のファミリーの声を聞き、再び違和感に気づけていない人間には、それが演技だと思わせることがなく、それが奈月と言う存在であると認識させてしまうような、雰囲気と表情に覆われる。

 おそらく、ボンゴレの血に刻まれている超直感や、彼女と同じく、自身を偽り、その偽りを真実であると誤認させることを得意としている者、もしくは、自身のように、本来の彼女の片鱗、沢田 奈月と言う存在の中に宿る誰かの顔を少し見た者であれば、それが本質ではなく、本来の彼女は違う存在であることを見抜くことができるのだろうが、それを持たぬ者や、自身を偽ることを得意としていない者では、きっと、見抜くことができない。

 

 ─────……いつか、奈月の中の誰かを、オレは知ることができるのだろうか。

 

 一瞬だけ過ぎるその言葉は飲み込み、リボーンは前を歩く、複雑な事情を持ち合わせているであろう少女……いや、女性を見つめる。

 誰かを知りたいと思ったのは、いつ頃ぶりだろうかと思いながら。

 

 しかし、そんな中彼は、ふと、奈月になった誰かに対する疑問とは、また少し違った疑問を脳裏に過らせる。

 それは、誰かの影響を受けやすく、まるで相手の望みに共鳴するかのように仮面を作り上げ、望みを映し出す鏡のように、自身を変化させることができるのはなぜか、または、変化させた仮面に合わせたように、身体能力や意思を変えてしまうのはなぜかと言う疑問だ。

 最初は流されやすいだけなのかと思っていたが、日に日にその仮面は流されたからではなく、確かな彼女の顔として機能し、相対する存在の望みを体現させ、確かな意思を乗せているものであると感じ取れた。

 ……雲雀がいい例である。最初は確かに流されたのかもしれない、強引さに引っ張られたのかもしれない、だが、次第にそれは流された影響ではなく、自分自身が望み、染まっていくように見えていたのだ。

 

 ─────……いったい、ナツの過去に、ナツとして生まれた存在の過去に、何があったんだ?

 

 そんな疑問を脳裏に過らせながら、リボーンは一瞬だけ表情を曇らせる。

 もし、ただ流されやすいわけじゃなく、誰かの側にいることにより、意図的にその仮面を作り上げ、そして、染まっていっているのだとしたら……?

 

 ─────……下手したら、被り過ぎた仮面に精神が摩耗して、自ら潰えていく可能性があるんじゃねーか?

 

 誰かのためにと自身を変貌させ、甘えることを封じ、自身の意思も、その能力も、全て相手の望みに塗り替えて、自ら染まることを選び取ることで、潰える可能性を一瞬考えてしまい、リボーンは視線を彼女からそらす。

 その間も奈月は、ともに歩む2人のファミリーと一緒に、笑い合いながら言葉を交わしていた。

 

 

 




 ナツとして生まれ落ちただれか
 社会を経験し、なんらかの原因により命を落とし、そして、リボーンの世界に生まれ落ちた誰か。
 どことなく流される部分があるが、最終的には流されたからではなく、自らの意思で流してきた何かの望む姿へと自ら変貌させている様子がある。
 (例:雲雀にとっての最高の好敵手。母親にとっての自慢の娘。ランボにとっての憧れのお姉さん等)

 リボーン
 奈月の違和感に気づき、その違和感の正体を少しだけ見抜いたヒットマン。
 しかし、彼女が持ち合わせている誰かの理想、望んだ姿に自らを変貌させる悪癖の発現理由はわかっておらず、それが重なればいつか潰えてしまうのではと言う不安と、奈月ではなく、奈月となってしまった誰かを知りたいという感情を抱く。

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