最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
[───さんは、本当に優秀な生徒だね。]
[───先輩は、私たちの憧れの先輩です!これからも応援します!]
[───は、本当にすごい部員だよ。私たちの誇りだ。これからも頼むよ。]
[───さんって、本当に優しいよね。理想の上司って───さんみたいなことを言うのかな。]
[ね!───さんって教え方すっごくわかりやすいし、作業が遅れそうな時とかはすぐに手伝ってくれて……───さんみたいな上司に恵まれてよかったー!]
[聞いたよ、───さん。───さんのところの部署、みんな優秀なんだってね。───さんをうちに入れて正解だった。やはり、まとめ役が優秀なら周りも優秀になる。他の連中にも見習わせてやりたいよ。]
[───さんは気配りがうまくて、本当に助かるよ。───さんには、これからも頑張っててもらいたいな。]
優秀な生徒。誇らしい部員。憧れの先輩。理想の上司。優秀な部下。優秀な人材……誰もがプラスに捉え、そして笑顔でわたしに言ってくる。
多くの人がわたしを求めて、わたしのような存在がいてくれて助かるとか、誇らしいとか、そんな風に言ってくれて、それがわたしの生きる糧だった。
誰にも嫌われず、誰もが近寄ってくる優等生……多くの人に分け隔てなく接し、必要なことをしっかりとこなす人間。
これをするだけで、わたしの周りには人が集まり、みんながわたしの名前を呼ぶ。
それに応えるように、わたしはどんな努力もした。身につけていない技術があるなら、それをしっかりと身につけて活かし、その人その人の助けとなれるように。
上位に食い込むような実力を持つ人間がいればと望んでいる人を見たら、それに合わせた人材となり、こんな上司がいてくれたらと望む人がいるならば、それに合わせた上司となり、優秀な人材や生徒がいると嬉しいと言う人がいるならば、それに合わせた人材や生徒となる。
そうすることで
だからわたしは努力をしたし、その努力を無駄にすることはなかった。
幸いなことに、わたしは人の倍は器用な方で、要領も決して悪くなかったため、いろんな人の憧れや理想、それを再現することができた。
ただの仮面ではなく、本当にそれがわたしと言う存在であると認識させることができたし、努力も気づかれることがなかった。
誰もが憧れ、理想だと思う完璧な人間……それを作り上げることができたのだ。
なのに……ねぇ、お父さん。どうしてあなたはわたしを見てくれないの?どうしてあなたはわたしを褒めてくれないの?
どうしてあなたは………笑顔になってくれないの?
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不意に意識が浮上して、それに従うようにわたしは目蓋を開ける。視界に映るのはライトアップされた、美しいしだれ桜の木と、無数の星が降り注ぐ、どこまでも広い星空だった。
一瞬だけ思考がフリーズする。しかし、すぐにこれは夢だとわかり、静かに体を起き上がらせた。
「この景色は確か……いつだったか家族みんなで遊びに行った、星降り祭りの景色か。随分と久々に見たな、これ。」
ポツリと呟く小さな声は、広がる星の世界へと消えていく。懐かしい記憶を見たからか、こんな夢まで見てしまったようだ。
「……もう、どれくらい前に見た景色か覚えてないや。綺麗だったって気持ちは、今でも思い出せるのに。」
わずかに漏らす小さなため息。今こんな景色を見たところで、少しだけ疲れる記憶を見たあとだから、あまり嬉しくないんだけどな。
「……これまで何度か精神世界を暇つぶしに彷徨いたことはありますが、まさか意識を持ち合わせている方に出くわすことになろうとは思いもよりませんでしたね。」
「!?」
そんなことを思っていると、背後から誰かの声が聞こえてきた。慌てて声の方へと目を向けてみれば、そこには、藍色の髪と、青と赤のオッドアイを持つ少年が1人立っており、驚いたような表情を見せている。
少年本人も、まさか、こんなところに人がいるとは思っていなかったようだ。
「……君って夢魔かなんかだったりすんの?」
「そこまでファンタジーな存在じゃありませんよ。というか夢じゃないですからこれ。まぁ、普通は精神世界なんて言葉知るはずもないし、その中を渡り歩くことなんてできませんから、そう思う気持ちもわからなくもないですが。」
“隣、よろしいですか?”と聞いてくる不思議な少年に、わたしは小さく頷き返す。
わたしの反応を確認した少年は、ゆったりとした足取りでわたしの隣へと並び、静かにその場に座り込んだ。
「とても綺麗な場所ですね。枝垂れ桜に流星が煌めく静かな星空。普段は暗くて、息が詰まるような場所にいる身からすると、とても新鮮で、とても息がしやすい。」
「息が詰まるような場所にいる?」
「ええ。少々、悪いことをしてしまったもので。」
「え?つまり牢獄にいるってこと?」
「そうなりますね。」
「……学生のうちから牢獄にぶち込まれるって、相当な悪いことしたんだな。」
「ええ。別に後悔はしていませんがね。」
「……ふーん?まぁ、あまり深く事情は聞かないよ。なんか、いつか別のところで知ることになりそうだけど。君とは腐れ縁にもなりそうだし。」
「クフフ……奇遇ですね。僕もあなたとはいつか長い因縁ができそうだと思っていたところです。まぁ、それはそれとして、あなたはなかなか興味深い女性ですけどね。」
現れた謎の少年に、興味深い状態と言われ首を傾げる。すると少年は、小さく笑みを浮かべたのち、静かに口を開いた。
「あなたの見た目は、僕とそう年が変わらない女性のものではありますが、現在はそんな女性がしないような表情をしている。
まるで、世の中に飛び出て、生活をして、それなりに社会経験を積んでいる大人のようなもの。
僕は、先程響いていた声と、何度か見えた黒髪の女性の映像に関係あると思っています。
……先程の声と映像……もしやあなたは、前世の記憶を持ち合わせて生まれた存在なのでありませんか?」
「………見えてたんだ。あれ。」
「ええ。最初見た時は驚きましたがね。前世の記憶を持っている者が、僕以外にもいようとは思っていませんでしたから。」
思わず小さく「え?」と言葉を漏らしてしまう。今、この子なんて言った?
自分以外にも前世の記憶を持っている者がいようとは思わなかった……?
「君も、前世の記憶があんの?」
「ええ。まぁ、少しだけあなたより多く、前世を持ち合わせてはいますがね。ただまぁ、これは僕の個人的な意見ではありますが、一番醜い世界である人間道の二周目を巡っているのはお気の毒だと思ってます。」
「……うん、よくわからないけど、めちゃくちゃ同情されてることはわかった。」
どうやら、ガチ目にこの子は前世を持っているらしい。それが、魂に刻まれている記憶なのか、赤い目に刻みこまれた物であるのかはわからないけど。
「とは言え、僕がこうしてあなたの精神世界に足を運べて、こうしてあなたと言葉を交わせる理由の辻褄は合いますね。
互いに前世の記憶を持ち合わせている者同士だからこそ、精神構造がどこか似ていて、どこか波長が合わせやすいのでしょう。
これも何かの縁ですし、いつか訪れそうな現実での邂逅が起こるまでは、少しだけ暇つぶしに付き合っていただけると嬉しいです。」
「まぁ、本当の意味で出会したら、なんとなく衝突すると言うか、互いに互いを殴り合いそうだしね。別に話すくらいは構わないけど。こっちもいろいろと気がまぎれるし。」
そんなことを思いながら、オッドアイの子と言葉を交わす。
前世の記憶を見たせいかあまり気分は良くなかったし、疲労を感じる結果になったから、そっちの方が助かるし。
「そうだ、いつまでも君とあなた呼びでは味気がありませんし、互いに自己紹介をしませんか?」
「ん?ああ……まぁ、構わないけど……。」
「では言い出した僕の方から……。僕は六道 骸と言います。あなたと同じ、前世を持ち合わせてこの世に生まれ落ちた者……。よろしくお願いしますね。」
「わたしは沢田 奈月。前世の名前はとうの昔に忘れたから今の名前を教えとく。
……まさか、わたし以外にも前世がある人間が世の中にいるとはね。しかも無断でこっちの領域に入り込んでるし、さらには記憶も覗き見か。」
「ゔ……それは……はい。少々反省しています。まさか、波長を合わせやすい方がいるとは思わなかったもので……。前世の記憶を覗かれるのは、あまりいい気分ではないですね……。」
“申し訳ありません……”と謝罪の言葉を口にする少年……骸の姿に、わたしはやれやれと首を左右に振る。
別に怒ってるわけじゃないんだが、まぁ、こんな態度をしてっから、そう思われてもしょうがない。
少しだけそう考えたのち、目の前にある個性的な髪に片手を乗せる。
ポスリと軽く触れてきた手に、骸は少し驚いているが、そんなことは気にしないで、緩くその頭を優しく撫でる。
「別に怒ってないよ。少々口調がぶっきらぼうってか、なんか冷めたもんになってる自覚はあるけどさ。こっちが素のわたしなんでね。
別にいいっしょ。こっちの本来の記憶……沢田 奈月と言う存在として、記憶を持ったまま新たな世界で生まれ落ちた“名前を忘れた何者か”の記憶を見た人間に、わざわざ猫なんて被んなくても。」
「……そちらが本来の奈月さんなんですね。」
「ん。まぁ、前世じゃストレス発散のために、酒とタバコを口にしていたような社会人女だったからね。こんな風に荒んでも仕方ないって話さ。」
「見た目と口調が全くと言っていい程に一致しない面白い状態になってること気づいてます?」
「なんならタバコ吸ってみようか?夢ならなんとかなりそうじゃん。」
「ですからこれは夢じゃないですよ。と言うかやめてください。愛らしい見た目をしてる同年代の女性が目の前でタバコ吸うとか面白過ぎて笑いますから。」
既に小さく笑ってる骸に釣られ、わたしも小さく笑い声を漏らす。
こんな姿、ジョットさん達以外には見せたことないから、なかなか新鮮だ。
ていうか、サラッと愛らしい女性とか言ったなこいつ。やっぱ、“私”の外見って、前世のわたしみたいなモブ顔じゃなくて、可愛らしい女の子なんだな。
それなら、確かに今のわたしはなかなかに面白い状態だろう。やめるつもりはないけどね。
「互いに名前も教えたわけだし、目を覚ますまで時間がありそうだからちょいといろいろ話しますかね。なんか知りたいこととか、話したいことある?
残念ながら、わたしはそう言う話題に少々疎くってね。釣書渡されて見合させられる遅れ組みたいな話くらいしかできないんだわ。」
「ん゛……待ってください……っ……笑い声がでそうに……っ」
「ははは!そゃそうだ。精神年齢三十路の女舐めないでくれ。」
「なんで得意げにしてるんですか!!」
その言葉がトドメとなったのか、骸が目の前で爆笑する。クハハって随分と独特な笑い声してんなこの子。
口癖なんかね。さっきもクフフって笑ってたし。
あ、おいこら、何むせるほど爆笑してんだよ骸。そこまで笑う必要ないんじゃないかなぁ!?
沢田 奈月(として生まれ落ちた誰か)
前世の記憶を久々に見たと思ったら、なんか知らん子に勝手にそれを覗き見されていた女性。
自身の記憶を見た人間の前で、何も知らない中学生なんて演じる必要がないと素の自分を曝け出した。
奈月としては「私」と名乗るが、前世の誰か……本来の素の時は一人称が「わたし」に変化する。
骸とは、何かしらの因縁ができることを確信してる。
六道 骸
牢獄暮らしで暇を持て余す時間を利用し、精神世界を彷徨いていたら、星空と枝垂れ桜が美しく映える奈月の精神世界へと偶然入り込んでしまい、同時に彼女の前世の記憶の断片を見てしまった少年。
自身と同じく、前世と言うものを持ち合わせている奈月と波長が合わせやすく、精神世界で互いを認識できるのは必然と考えており、最初は驚いたが特に気にしていない。
彼女と会話をしているが、いつかはなんらかの因縁ができそうなことを予感している。