最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
骸が大爆笑をかまし、最終的に物理(軽い頭叩き)で落ち着かせると言うちょっとしたいざこざがあったが、彼が落ち着いたあとは、互いに興味がある話題を口にする流れで過ごすことになった。
とは言え、わたしは既に精神年齢が三十路を過ぎてしまっていたため、若者の話などわかるはずもなく、とりあえず骸の質問に答えて、その質問を彼にもする流れとなった。
まぁ、最終的には質問と言うよりは、一般を知らない彼から、前世の楽しかったことを聞かれる状態になってしまったが、それはそれとして、なかなか穏やかな時間を過ごすことはできた。
そうそう……最初の質問で、互いに好きな食べ物を答える流れがあったんだけど、まさかの両方とも甘い物好きと言うことが発覚してしまった。
まぁ、わたしはマシュマロで、骸はチョコレートと種類は違うけど、甘味好きと言う共通点があるのは少しだけ面白かった。
ちなみに、チョコレートフォンデュの話をしたら「なんですかその画期的な食べ方は!!」とツッコまれた。
食べたことないのかと聞いたらないとのこと。現実世界で会ったら、間違いなく厄介な因縁ができると思うけど、もし、その因縁が互いに落ち着くようなことがあったら、試しにチョコフォンデュを食べさせてみるかね。
それはそれとして、彼からの質問……まぁ、わたしの前世に対しての質問だが、ほとんどがわたしが楽しかったことに関しての質問だった。
「……向こうではそれなりに生きていたし、楽しかった話や何やらもたくさんあるから、たくさん話すことができるからいいけど、骸はさっきの記憶に関しては何も聞いてこないんだね。」
何となく思った言葉に、骸は一瞬キョトンとする。しかし、すぐに小さく笑みを浮かべ、記憶に関して聞かない理由を口にした。
「……気にならないわけではありません。ですが、あれを見て、なぜそれを聞こうなどと思うのでしょう?
記憶には、無論感情なども含まれます。その記憶があると言うことは、その時の感情もしっかりと覚えていることになりますからね。
そして、僕は一時的にそれを共有してしまった存在となっています。意図して共有したわけではありませんがね。
ですがその際に、奈月さんの僅かな感情も同時に感じ取ることができました。
それをわざわざ掘り返すことはしませんよ。せっかく綺麗な景色が目の前に広がっているのに、辛気臭い話などご法度でしょう?」
「なるほどね。つまりは気を遣ってくれたわけか。」
「そうなりますね。余計な感情で、この景色にノイズを発生させたくありませんし。」
「ふーん。あんがとね。なんとなく気になったから、聞いたんだけど、正直、嫌な記憶の話題を出されなくて助かったわ。」
「どういたしまして。」
なんとなく口にした質問に、穏やかな声音で答えてくれた骸に、小さく笑いかけながら、そのことに関しての感謝を述べる。
わたしの言葉を聞いた骸は、同じように穏やかな笑みを浮かべたのち、こちらの感謝に対する返答をしてくれた。
「おや……もう少しお話をしたかったのですが、どうやら時間切れのようですね。」
「?」
「ほら。ご自身の足元を見てください。」
骸に言われ、静かに足元へと視線を向けてみれば、少しずつ透けてきている自身の足が見える。
「!?」
「クハハ!そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。それは、奈月さんが目を覚まそうとしている証拠ですからね。
ただ、現実世界へと戻るだけですよ。安心してください。」
それを見て思わず体をビクッと震わせると、骸の笑い声がその場に響く。
笑うなよと拗ねたように目を向けてみれば、彼は小さく笑みを浮かべたまま、ただ現実世界へと戻るだけだと告げてきた。
そのことに少しだけホッとする。急なことでかなり驚いてしまった……。
「まぁ、驚くのも無理はありません。先程も言いましたが、精神世界と呼ばれる世界は、本来知覚することができませんからね。
ましてや、僕のような放浪者に巡り合うことなど、あり得るはずがないのですから、この世界で起こる事象など、普通はわかるはずがありませんよ。」
「フォローどーも。顔が笑ってるから、楽しんでること確定だけどね。」
「クフフ……そう拗ねないでください。奈月さんのような方と初めて会ったため、その新鮮さに浸ってるんですよ。
だって、話し相手なんて向こうにはあまりいませんからね。一応、言葉を交わす者が数人いますが、ここまで長く話し合うことは滅多にないので。」
「ふーん……」
「頭を撫でられたのも、かなり久しぶりでした。幼少期以来ですかね。これもまた、どこか新鮮さに溢れている。いい気分転換になりましたよ。」
「あっそ。ま、牢獄の中の息苦しさなんて知らないし、窮屈さも知らないから共感できるかと聞かれたら共感できないし、あまり共感したくないものではあるけど、多少の気晴らしになったんならいいや。」
どこか穏やかな様子を見せてる骸にそう告げて、わたしは静かにその場から立ち上がる。
目を覚ましたらこの景色がしばらく見れなくなるのなら、最後くらい景色を満喫してもいいだろう。
「奈月さん?」
「……さっきから思ってたけど、さん付けいらないから。見た目はわたしと同年代だし、精神面はわたしよりかなり熟れてそうだし。
そんな奴にずっとさん付けされんの、なんか違和感覚える。敬語は癖っぽいから、変えなくてもいいけどね。」
「……では、奈月と呼びますね。」
「ん。」
骸が呼び方を変えたのを確認したわたしは、辺りに咲き誇る枝垂れ桜に足を運ぶ。
父さんと母さん、家族みんなで見に行った桜と流星群……いつ頃見たのかまでは覚えてないけど、この下から見ていた記憶はある。
「こっちきてみなよ。結構珍しい景色になるからさ。」
「?」
わたしの声かけに首を傾げ、静かに近寄ってきた骸。
そんな彼の手を引いて、静かに枝垂れ桜の下へ。
「ほら、上を見て。わたしは、この景色をこっから眺めていたんだ。自分の両親と一緒に。」
「……?………!……これは……すごいですね。」
枝垂れ桜が揺らぐ中、キラキラと降り注ぐ数多の流星。桜の下から眺めるから、少しだけ見える範囲は狭まってしまうけど、緩やかな風に吹かれ、そよぐ枝垂れ桜の雨と、星の雨の不思議なコラボは、かつてのわたしを釘付けにした。
他にも見とれた景色は沢山ある。思い描いた景色もある。そして……見ること叶わず失った景色も……。
どうして失ったのか覚えてる。何が原因で消えたのかも覚えてる。だけど、それは今、話すべきものじゃない。
せっかくの幻想的な景色に、水を差すわけにもいかないし、ノイズを発生させるべきでもない。
どこか暗い感情を纏い続けているように感じる、この男の子を癒せるのであれば。
「ああ。どうやら時間みたいだな。もう少し、この世界でゆっくりしたかったけど、あっちの“私”が目を覚ますらしい。」
呟くように言葉を紡ぐと、その場に強風が巻き起こり、足元に散らばっていた桜の花びらが、わたしを巻き込むようにして、天へと高く舞い上がる。
「!?」
「はは。こりゃいいね。まるで時間切れの桜の精にでもなったかのようだ。昔のわたしも、こんな風に消えることができたなら、多少はあの人にも見てもらえたのかな。」
随分と新鮮な感覚に、どこか穏やかな……だけど、少しの寂しさを孕む気持ちを抱きながら、わたしは枝垂れ桜の外へ出る。
わたしの周りをぐるぐると回りながら、星空の彼方へと舞い上がり、次第に花びらの量を増やし、わたしのつま先から姿を消していく。
「じゃあね、骸。妙な出会いだったけど、あんたと話せてよかったよ。次に会うのは
また会おう、どこか似ている境遇の人。いつか巡り合わなくなる時か、縁に亀裂が入る時が来るかもしれないけど、それ来るまでは、のんびり話せる時に話そう。」
別れの言葉を口にした瞬間、桜の花びらは竜巻のようになり、わたしの視界を埋め尽くす。
それに合わせて、踏み締めていた幻想の大地を強く蹴り飛ばせば、わたしの体はふわりと浮かび上がり、消えゆく速度が速くなる。
「…… Arrivederch, Natuki。あなたの波長は覚えることができたので、いつか来るその時まで、あなたとは穏やかな話と時間を過ごしたいものです。」
穏やかな笑みを浮かべる彼のまた会おうを受け取ったわたしは、僅かに見えた骸に笑みを返し、緩やかに左右へと手を振る。
しかし、それが終わると同時にわたしの意識は現実へと引き寄せられ、こちらの世界のわたしの姿も、桜の花びらとなり消えるのだった。
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「……本当に変わった女性でしたね。ここまで穏やかな気持ちになれたのは、いつぶりでしょうか。」
奈月が姿を消したことにより、自身が足を運んだ精神世界は消えていく。それに合わせるようにして、己が意識を覚醒させたオッドアイの少年、六道 骸は、静かに自身の片手を見つめる。
桜とともに消えた、前世を持ち合わせていた1人の女性……沢田 奈月の名を賜り、新たにこの世へと生まれ落ちた彼女が消える時、僅かに伸ばしていたその手には、一枚の桜の花びらが乗っていた。
無論、これは先程の世界にあった桜の花びらではない。目を覚ますと同時に、彼が自身の手元に出現させていた、幻術による桜の花びらだ。
“桜の精にでもなったかのようだ……こんな風に消えることができたのならば、あの人にも見てもらえたのだろうか”
確かな寂しさのみが宿っていたその言葉は、きっと、彼女の記憶に一瞬だけ映り込んだ、前世の彼女の父親に向けたものだろう。
───……穏やかに言葉を交わし、穏やかな笑みを浮かべていたにも関わらず、どことなくあの子は……ずっと寂しげな様子でしたね。
なぜそのような感情を抱いていたのか……彼女の記憶のカケラへと触れたことにより、その時の感情にも僅かに触れた骸は、その理由に見当がついていた。
しかし、あの景色を汚したくないと思っていたがために、その理由を指摘することはしなかった。
どこか似ている精神構造……そんな彼女に、少しだけ同情したかもしれないと、静かに骸は考える。
───……彼女との因縁……それは間違いなく発生するでしょう。妙な胸騒ぎがあります。
ザワザワとした胸騒ぎ……それは、自身が嫌悪するあるものと出会した時に感じ取ることができるものによく似ている。
それと同じものを彼女に感じてしまうということは、因縁はそれに関係するものであることを意味しているのだろうと、彼はため息を吐きたくなった。
なぜ、よりによってそのようなものと彼女に関係があるのだろうかと、今いる世界に怒鳴りたくなる。
だが、それもまた運命であるのだろうと、少しだけ諦めの感情を抱く。
───……初めて……会ったのですがね。数は違えど、同じように前世の記憶を持ち合わせている方に。
できることなら、このように残酷な目には遭いたくなかったし、遭わせたくもないのですが……。
しかし、世界は非常なまでに、それが事実だと訴えかける。嫌という程に感じ取ることができる。
思わず骸は舌打ちしそうになってしまった。しかし、周りに悟られるのはあまり好ましく思わないため、なんとかすぐに飲み込んだ。
───……可能であれば、別のアプローチをかけていくべきですかね。もし、この胸騒ぎの正体が予想しているものであるならば、上手く利用し、奈月をこちら側へと引き込むこともできるかもしれません。
せっかく、波長を合わせやすく、互いに精神世界で顔を合わせることができて、言葉を交わすことができるのですから、不可能というわけではないはずだ。
脳内に巡らせる一つの計画。それが上手くいけば楽なのにと、骸は再び小さく溜息を吐く。
そして、手にしていた自身の幻術による桜の花びらを見つめたのち、フッと小さく息を吹きかけ、ヒラヒラと空へと舞い上げる。
同時に幻術を解除すれば、瞬く間に消えゆく桜の花びら。それを精神世界から立ち去っていった時の彼女と重ね、骸は静かに目を閉じた。
「……願わくば、この穏やかさとあの景色は、
これまで心から綺麗だと思ったものを、骸は見た覚えがなかった。あったとしても、奈月と言う名を賜り生まれ落ち、壊れかけながらも美しさを保っていた記憶、心から美しいと思えるような景色を維持し続けていた彼女の精神世界程、穏やかで綺麗なものはなかっただろう。
そう思うと骸は、彼女の景色を壊したくなかった。どうかそのままで、自身の手により壊されないようにと、抱いたことのない感情を僅かに芽生えさせていた。
「奈月。どうかその世界が壊れてしまう前に、僕の元へと堕ちてください。それが今の、僅かに芽生えた僕の望みです。」
───……あなたが抱えている思い、その辛さを多少なりとも僕は背負うことができますから、どうか、あなたも僕の声にも応えてください、奈月。
願うように、祈るように、静かに考えた骸は、ゆっくりと目蓋を開ける。
広がる世界は暗く、無機質な牢獄の景色。先程まで見ることができた綺麗な世界は、今は目の前に広がっていない。
当然だ。あの世界は彼女が眠りに落ちていたからこそ、彼も見ることができたのだから。
「また会う約束をしましたからね。再びあなたの気配を感じる時にでも、夢幻の世界へと馳せ参じましょう。
例えあなたが僕が嫌うものと関係を持っていようとも、あの世界のあなたは、きっと、穏やかで、そして、壊れてしまわないようにと耐え忍んでいるのでしょうから。」
初めて出会したにも関わらず、ここまで気にしてしまうとはと、骸は小さく苦笑いをこぼす。
しかし、あの世界で話していた時の自身が、ひどく穏やかだったことは、幻想でも錯覚でも幻覚でもなく、確かな事実として記憶しているのだから、また、同じような時間を過ごしたいと思う気持ちは、本当の思いだった。
沢田 奈月
前世で色々あったせいで、実は結構壊れかけだった1人の女性。
精神世界で巡り合えた骸のことは、暗い感情を纏う深海のような人と言う印象を抱いていたため、かつての記憶……辛い記憶ではなく、自身が楽しいと思い、綺麗だと思っていた景色が、少しでも癒しになればと思っている。
六道 骸
自分以外の前世の記憶持ちに出会い、それなりにテンションが上がっていた青年。
チョコレートの可能性に新たな見解をもらい、外にはそんなものがあるんですか!?とかなり驚いていた。
奈月のことは寂しさと悲しみに飲み込まれ、壊れかけていながらも、誰かのためにを維持し、美しい精神世界を持ち合わせている女性だと思っており、なんとかその世界が失われないでほしいと思っている。