最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
恭弥さんにバイクの後ろに乗れと言われ、大人しく指示に従って座り、そのままバイクに揺られること数十分。
恭弥さんは、人が多くいる道を見事なまでに全躱しし、私をある高台にまで連れて行った。
その高台は、並盛全体を見下ろすことができる場所で、初めてくる場所だった。
「すご!?」
「たまに1人でここにくることがあってね。せっかくだし、君にも教えてあげようと思って連れてきたんだ。」
“屋上から見る景色とはまた違う景色でしょ?”なんて言いながら、話しかけてくる恭弥さんの言葉に素直に頷く。
恭弥さんがいつも座ってる場所よりもはるかに高い場所。そこから全体的に見下ろせる並盛の景色はすごく綺麗で、私は高台の柵付近まで足を運び、今いる場所より近い位置で並盛を見下ろした。
「ここ、学校も綺麗に見える場所ですね。恭弥さんの愛校心はそれなりに理解しているので、恭弥さんが気にいる理由もよくわかります。」
「まぁね。」
並盛中を大切にしている恭弥さんにとってのある種のベストスポット。そんなところに連れて行かれるとは思わなかったけど、連れてきてもらって正解だったと感じる程に、私もこの景色が好きだ。
“私”として生まれ落ちた素敵な町。もう一つの大切な“わたし”の故郷。それがこんなにも綺麗に見える場所があったなんて知らなかった。
「ここ。僕と君しか知らない場所だから。」
「え?そうなんですか?」
「うん。草壁にも教えたことがない。」
「まさかの草壁さんも知らない場所だった……」
風紀委員副委員長すらも知らない場所を教えてもらえるとは思わず、苦笑いをこぼす。
なんだろう……私、あとから入ったはずなのに、かなり恭弥さんから優遇されている……。
でも、恭弥さんが1人で来ることがある場所を、私が知っちゃっていいのかな。
「……草壁さんにも教えない場所、私が教えてもらってもよかったんですか?」
「逆に聞くけど、僕が教えたくない場所に、誰かを連れてくると思う?」
「……思いませんね。」
「それが答え。君には教えていいと思ったから教えただけ。わかりきったこと、いちいち聞かないでくれる?」
「あはは……そうですね。すみません。あまりにも、優遇されてしまってるような気がして、ちょっと戸惑ってしまったもので……。」
「こっちがしたいことしてるだけだから、難しく考える必要はないよ。」
「……わかりました。風が気持ちいいですね、ここ。」
「それなりに高い位置にあるからじゃない?まぁ、気に入ったなら別にいいけど。」
サラサラと撫ぜる風に、先祖譲りの金髪を遊ばせながら、目の前に広がる並盛の景色を記憶に焼き付ける。
いつかこれが思い出となった時も、ずっと色褪せないように。
しかし、眼下に広がる並盛の景色にむけていた意識は、程なくして別のものへと向けられることになった。
「イテッ!?」
「これ、君にあげる。」
「?」
ポカッと言った衝撃を頭に受け、混乱しながらその正体を探ってみると、恭弥さんの手元に小さな箱があることに気がつく。
え?と小さく声を漏らしながら、その箱をおずおずと受け取ってみれば、贈り物用にラッピングされている箱であることが理解できた。
「赤ん坊から聞いたよ。今日って君の誕生日らしいね。」
「えっと……はい。確かに私の誕生日ですけど……」
「じゃあ、それ持って帰りなよ。少しだけ君っぽかったから買ったんだ。」
「私っぽいってなんですか!?」
「それは開けてみたらわかるよ。言っておくけど、学校はアクセサリー禁止だから気をつけてね。」
いったい何を渡してきたんだこの人は……と思いながら、私は箱を見つめる。
て言うかこれ、私への誕生日プレゼントってこと?別に気を遣わなくても……あ、いや、恭弥さん程気遣いからかけ離れた人いないな。
と言うことは、彼はなんとなく、自分がそうしたかったからって理由だけで、誕生日プレゼントをくれたのか。
「……ありがとうございます。大切にしますね。」
「うん。」
まさか、この人からも誕生日プレゼントを渡されるとは思わず、少しだけ間を空けた返事をする。
でも、恭弥さんは気にしていないのか、特に何か言うわけでもなく、サラサラと優しく吹いている風に、髪と学ランを遊ばせながら、ここから見える並盛の町並みを見つめていた。
「……帰るよ。途中まで送ってあげる。」
「はい。ありがとうございます。」
どこか穏やかな時間が流れる中、恭弥さんから帰りを促す声が聞こえてきた。
すぐに返事をして恭弥さんの元へ近寄れば、すぐにヘルメットを渡してきた。
そっとそれを受け取り、しっかりと被れば、恭弥さんが前の方へと座る。
それに倣って後ろに座り、来た時のように恭弥さんの腰へと手を回せば、そのままバイクは走り出した。
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恭弥さんの安全運転に揺られながら、しばらくバイク移動を過ごしていると、自宅の近くにある公園付近にまで戻る。
そこで止めた様子から、ここまでのようだ。まぁ、こっから先は知り合いに会う可能性が高いからね。
恭弥さんもあまり長居はしたくないだろうし、とりあえずここまで送ってもらえただけでもよしかな。
「ありがとうございます、恭弥さん。」
「こっちがやろうと思っただけだから。誕生日おめでとう。それじゃあ、また明日。」
「はい!お疲れ様でした!」
恭弥さんのバイクから降り、預けていたスクールバッグを受け取ったあと、感謝の言葉とあいさつを彼にする。
私の言葉を聞いた恭弥さんは、私の方に一度視線を向けたあと、そのままバイクでこの場から去っていった。
心なしか、恭弥さんが口元に笑みを浮かべていたような気がする。
バイクでの移動のこともあり、ハッキリと確認できたわけじゃないけど。
「……風紀委員達と恭弥さんから誕生日プレゼントを渡されるとは思わなかったな。」
私の誕生日のこと、どうやらリボーンが伝えたみたいだけど、なんでそんなことを……。
いや、恭弥さんが言った通り、深く考えなくていいのかもしれない。ただ、そうしたかったから……気を遣ったわけじゃなくて、ただ、そのちょっとした気持ちだけで。
とても嬉しいことだ。素直に喜んでもいいことだ。でも、少しだけ戸惑いが強いかな……。
「……純粋な祝いたいと言う気持ち……こっちに来てから何回も向けられてきたけど、こんなにたくさんの気持ちは、向けられたことがないよ。」
少しだけ泣きそうになる。素直に喜びたいのに喜ぶことができない自分に対するやるせなさや、嬉しいと言う気持ちでぐちゃぐちゃだ。
「あ、ナツさん!」
リボーンから渡された袋の中に入っているプレゼントと手紙を見つめながら物思いに耽っていると、背後から名前を呼ばれる。
すぐに声がした方へと目を向けてみると、そこには正一君の姿があった。
「正一君……?」
まさかの接触者に驚き、首を傾げながら彼の名前を呼ぶ。
正一君は私の声に笑顔を見せながら、ゆっくりとこちらへと歩み寄ってきた。
沢田 奈月
雲雀のバイクの後ろに乗り、並盛を一望できる高台へと連れて行ってもらったボンゴレ10代目。
雲雀が気を使うような人物ではなく、自分が思ったままに行動を取る人物であることを理解していた結果、彼には気を遣わなくてもいいのにと言う言葉を使わなかった。
雲雀 恭弥
奈月を並盛がよく見える高台までバイクで連れて行った風紀委員長。
奈月には自分だけが知っている場所に連れて行ってもいいと思うくらいには気に入っており、連れて行くついでに、誕生日プレゼントになりそうなものを渡した。(実は奈月がこの日彼に出くわさなかったのは雲雀がそれを買いに行ったからだった。)
入江 正一
公園付近で奈月を見つけた別の学校に通っている少年。
その手元には少しだけ大きめの袋を持っていた。