最強の愛され系ボンゴレ♀は、今を全力で楽しみたい 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「ナツ。ナツ。起きろ。屋敷に着いたぜ。」
「ぁ……ディーノさん……。すみません。熟睡してました……。」
「気にしなくていいぜ。元を辿れば、オレのせいだしな。」
ディーノさんに乗っかったまま眠りに落ちてしばらくした頃。
穏やかな声音で名前を呼ばれ、静かに目蓋を開けてみれば、ディーノさんが私の顔を覗き込んでいた。
眠っていたことを謝罪すれば、彼も申し訳なさそうな表情をしながら、寝不足に関しては自分のせいだから気にするなと言ってきた。
まぁ、それは否定しない。エンツィオをしっかりと管理してなかった結果だったから。
でも、ディーノさんは深く反省しているみたいだし、わざわざ指摘するようなことはしないでおこう。
「よぉ、お前ら。準備はできてるか?」
「ボス!」
「もちろん、いつでも始められるぜ。」
「じゃ、ナツのファミリーがきた時、しっかり遊んでやってくれ。中学生だからって舐めてると足元掬われる可能性があるくらいには、なかなか見所がある奴らだからな。」
「ってことは、ボスが横抱きしてるその姫さんが……」
「ああ。妹分であり、ボンゴレ10代目のナツキだ。ちと昨日夜中に迷惑かけて、寝不足気味にさせちまったもんだから抱えてきた。」
「相変わらずボスはやらかしてんなー。」
「ったく、仕方ねーボスだなぁ。」
なんてことを考えながら、まだ眠気が残る中、ディーノさんにお姫様抱っこされたまま屋敷の屋内に移動してみれば、そこには複数の黒服達がいた。
サングラスをかけていて、特殊メイクなのか本物か……どちらかわからない傷跡をつけていて、おそらくタトゥーシールと思わしきものを体に貼ってみたりしてと、なかなか柄の悪い見た目をしている。
「そうだ。オレがかけちまった迷惑以外にも、ナツはかなりストレス抱えているようでよ……。
リボーンのせいなのか、それとも違う要因なのかわからねーけど、さっき、ナツの目から光が消えてやばかったから、コックにふわふわのパンケーキを作らせて、それを食べさせながら休ませるから、やってきたナツのファミリーをなるべく長めに足止めしてくれ。
マジで休息取らせないと、ナツのストレスが限界に達しかねないから……。」
「「「お、おう……」」」
「ボンゴレの姫さん、かなり苦労してんだな……。」
「オレもさっき知ったからビビってる。この屋敷は訓練場でもあるが、同盟ファミリーが日本にきた時には、ゆっくり休める施設にもなるらしいから、ちょっとのんびりさせてくるわ。」
ディーノさんが部下の人達とやり取りをする中、私は無言でエンツィオを撫でる。
……なんか、周りからちょっとだけ温かい眼差しを向けられた気がするけど、今は無視だ。
ディーノさんに指摘されて、自身の精神に疲労が溜まってることを自覚したせいか、今は何もしたくないし、頭も使いたくもない。
ひたすら動物に癒されたい。甘いものを食べてゆっくりしたい。とにかく疲れることをしたくない。
「……こりゃ姫さん重症だな。」
「だな。じゃ、オレ達は屋敷の奥に引っ込むから、あとは任せたぜ。あ、ナツに食べさせるふわふわのパンケーキは頼んだぞ。」
「おう。すぐにコックに伝えてくる。」
「……よし、とりあえずナツは一旦休息タイムだ。あと、電話が海外の方にも繋がるなら、愚痴くらいは聞くから連絡してくれよ。
これはちょっとしたオレの見解だが、ナツはいろいろ我慢し過ぎる傾向があるみたいだからな。
無心で誰かをボコしたくなるレベルでやばくなってきたら頼ってくれ。いや、むしろそうなる前に連絡してくれ。
ナツが持ってる電話が国外に繋がらねーなら、こっちから国外に繋げられる携帯電話を送るからさ。」
「………わかりました。」
エンツィオを撫でながらディーノさんの言葉に返事をすれば、少しだけ苦笑いを返される。
だけど気にせずにボーッとしていれば、ゆらゆらと緩やかな揺れを感じ取った。
よく見ると景色が動いてる。ディーノさんがこのまま運んでくれるらしい。
「ちと時間はかかるが、うちのコックが今からパンケーキとか作ってくれるから待ってる間話そうぜ。
愚痴でも世間話でも、わからないことに関する質問でも、なんでも対応するからさ。」
「…………ん。」
「……リボーンの奴、オレの時はすぐに疲労やらなんやらの変化に気づいてたってのに、なんでナツの変化には気付いてないんだよ。」
「……私が隠してた。」
「マジか。リボーンの目を誤魔化すって相当だぞ……。」
「……全然気づかなかったよ。まぁ、心配かけたくないから気づかれなくて正解だったけど。
でも、ディーノさんにはバレちゃったな……なんでだろ……。」
「見た目と立場の違いかもな。どう考えてもリボーンの奴は、見た目通りの年齢じゃねぇが、姿は赤ん坊にしか見えないし、教えることがあまりないって言っても、結局は教育係って立場がある分、自分だけに構わせるわけにもいかないって無意識に思ってる可能性は十分ある。
対してオレは見ての通り、年齢も見た目も年は上だし、確かに1ファミリーのボスではあるが、兄弟子だからな。だから、その分疲れ過ぎも相まって、無意識にSOSを出したのかもしれないぜ?」
「…………誰にも迷惑かけたくなかったのに。」
「何がナツをそこまで頑なにさせてんのかは知らないけど、必要な時は甘えてもいいと思うぞ。
ていうか、我慢し過ぎるのも絶対良くないから、せめてこう言う時くらいは頼ってくれよ。」
「……………うん。」
「よし、じゃあ、注意はここまで。部屋に着いたし入るか。」
ディーノさんが目の前のドアに近寄れば、彼に同行していたロマーリオさんが部屋のドアを開ける。
ドアの先には明らかに普通とは言えない程の豪勢な部屋が広がっていた。
「……高級ホテルのスイートルーム並みに豪勢だった。」
「そうか?ファミリーのボスなら、これくらいの部屋はよくあるけどな。」
「……マフィアのボスって…………。」
ここまで規模が違うのか……少しだけ遠い目をしていたら、再びゆらゆらと緩やかな揺れに見舞われる。
よく見るとディーノさんが大きなベッドの方へと歩いており、それにより僅かな揺れを感じ取れていたのだと理解する。
程なくしてたどり着いた大きなベッド。キングサイズくらいはありそうだと、ぼやけた頭で考えていると、ゆっくりとベッドの上に座らされた。
すごくふかふか……柔らかい……。家のベッドもふかふかだけど、こっちはもっとふかふかしてる……。
「よし。コックに頼んだパンケーキがくるまではゆっくり眠ってろよ。眠たくないなら、おしゃべりに付き合うぜ。」
“どうすんだ?”と小さく口元に笑みを浮かべながら聞いてくるディーノさん。
私は、無言で瞬きをしながら、どうするか考える。
……うん、今は話したい気分じゃない。今まで気づかないフリをしていた自身の疲労を自覚したからか、なんだかすっごく体が重たいし、寝よう……。
そう言えば、ディーノさん、すごくいい匂いがしてたな。香水かな?それとも石鹸?
なんにせよ、すごく落ち着くと言うか、なんだろう……こう言うのもあれだけど、かなり好きな匂いだったんだよね……。
「…………。」
「?ナツ?どうしt……うお!?」
頭上からディーノさんの驚く声が聞こえてきた。当然だろう。急にノーモーションで倒れ込むように抱きつかれたら、誰だって驚く。
でも、今はそんなことより、誰かにくっついて休みたい。
「ロ、ロマーリオ……たすけて……」
「いやぁ……流石にオレでも無理だぜボス。多分姫さん、今は誰かに甘えていたいくらい疲れてんだろうし。」
「それはわかるけど!!いや、これ、オレどうしたらいいんだ!?」
「とりあえず添い寝でもすればいいんじゃないか?」
「添い寝って!!中学生とは言え、ナツは女なんだぞ!?」
「妹と思えば問題はねーって。髪の色もよく似てるしな。」
「そう言う話じゃねー!!」
「むぅ……ディーノさんうるさい……。」
「いや、その、ナツ?ちょっと離れて……って寝てる!?」
ディーノさんが賑やかに騒ぐ中、うつらうつらと眠気に誘われるように私は目蓋を静かに閉じる。
いつもはランボやリボーンにくっついてあげる側だけど、たまには誰かにくっついてもらう側だっていいじゃないか。
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「……あーあ……こりゃ完全に熟睡中だなぁ……。」
ナツの部下を試すため、誘拐紛いの方法で訓練場まで連れてきたオレは、苦笑いをこぼしながら呟く。
それだけ昨日の寝不足が祟ったのか、それとも見て見ぬフリをしてこれまでの疲労を認識しないようにしていたのか……おそらく後者が強いそうだな、と困ったように笑みを浮かべる。
そういやリボーンが言ってたっけ。ナツは学校で風紀委員に参加して、その仕事をこなし、帰宅したら自身の親の手伝いをして、その合間に宿題を済ませてるって。
さらに言えば、自宅に滞在している香港の方からやってきたヒットマン、人間爆弾のイーピンや、ボヴィーノファミリーからやってきたランボなど、裏の世界を知っていながらも、まだまだ子供である2人の面倒を見てるとも聞いたな……と考えれば、この疲労も十分頷ける。
それに、少しでも技術を身につけるために、秘密の友人と呼ばれている何者かからも技術を学んでいるとなると、その疲れは正直測りきれない。
だが、ナツはそれを悟らせないように、少しでも異変を感じさせないように、いつも通りに日常を送り、いつも通りのやり取りをしていた。
自身の限界を理解できなくなるほどに、何でもかんでも貪欲に吸収し、新しい技術を見つけて使えると思えば、さらに追加で教えてもらって……だけど、それが当たり前であるかのように、ナツは日々を過ごしている。
今回、初めてしっかり向き合ったことにより、少しだけこの姫さんの特性を理解することができた気がする。
「何かを成し遂げるために、必要だと思った技術を身につけること……それは決して悪いってわけじゃねーけど、ちょっと詰め込み過ぎだよな。」
だから今、限界を迎えたんだぜ?なんて言葉を紡いでも、疲れ切ってる眠り姫に、オレの声は届かないんだろう。
熟睡してたらなんも聞こえなくなるもんな……と、かつてリボーンに扱かれまくっていた時の経験から遠い目をしたくなるが、今はとりあえず堪えておく。
やれやれ、目を覚ましたらちゃんと限界を理解するように言っとかねーとな。
そうしとかないとまたぶっ倒れちまいそうだ。
「こう言う時ってなんて伝えればいいか……。とりあえず段階的にストレスの累積値がわかるように、何かしら考えた方が良さそうではあるな。」
すやすやとオレに抱きついたまま寝息を立てるナツの頭を優しく撫でる。
癖毛のせいでかなりふわふわしてるプラチナブロンドだが、しっかりと手入れがされているのか、どことなく長毛の猫のような触り心地だ。
そんなことを思いながら、この状況の解決策を考える……が、不意にあくびを漏らしてしまう。
「……なんかナツの寝顔見てたらオレまで眠くなってきた。」
「なら、ボスも一眠りしたらどうだ?注文したもんが運ばれてきたら、ちゃんと起こすからよ。」
「んー……そうするわ。」
よいせっ、とナツが起きないように少しだけ抱き上げ、まずは彼女をベッドの方へと横たわらせる。
履いていたスクールシューズは静かに脱がせてベッドの下に。あとは、自分も靴を脱いで、ナツの横に体を倒し、ベッドに備え付けられていたシーツと毛布をかけて……と。
「なんか、結局添い寝することになったな……」
まぁ、今回ばかりは仕方ないか……なんて思いながら、オレにくっついて眠っている妹分の頭をもう一度撫でる。
それが少しくすぐったかったのか、ナツはちょっとだけ身動いだが、目を覚ますことはなかった。
「じゃ、あとは頼んだぜ、ロマーリオ。」
「はいよ。」
それを確認したオレは、ロマーリオに一言声をかけたあと、静かに目蓋を閉じた。
すぐ側にナツの温もりがあるからか、眠気はかなり強くなり、程なくしてオレは意識を手放すのだった。
沢田 奈月
疲れを自覚してから一気に動けなくなってしまったボンゴレ10代目。
ディーノに横抱きで運ばれていた時、彼からした香りにかなり落ち着きを得てしまったのか、マタタビを渡されたネコのようにディーノに甘えてロマーリオが起こすまで眠りに落ちた。
ディーノ
新しくできた妹分があまりにも我慢し過ぎてしまう性質であることを見抜いてしまったキャバッローネ10代目。
これはまずいと、話の過程で判断した結果、とりあえず奈月を甘やかすことに徹することにした。
このあとロマーリオが起こすまで、妹分を(無意識に)抱きしめたまま眠りに落ちた。
ロマーリオ
奈月とディーノの様子を見て、マジで兄妹みたいだなこの2人……と思いながら、2人のボスを眺めていたディーノの部下。
パンケーキが届くまでは、ゆっくり2人を休ませるために、2人の警護を担当した。