「じゃあ先にSTARRYに戻ってるね!出来たらカズ君も連れて来て!色々話し合いは必要だと思うし、ていうか私も言いたい事たくさんあるし」
「郁代、カズの事よろしくね」
「はいっ、任せてください!」
あの後、少し離れた場所まで飛ばされた後藤さんをなんとか回収して、先輩達は先にSTARRYへと向かった。虹夏先輩の笑顔に凄みの色が隠れていたように見えたのは、多分気のせいじゃない。
私はカズ君を迎える為に残る事になり、新宿FOLTの入り口に戻って近くのガードレールに腰かける。
ライブが終わってからもう30分以上経ってて、さっきまで大混雑だった入り口周りに人の影はない。歩道を歩くのは帰りがけの社会人と、少し遊んでそうな女の人が偶に歩いてくるばかりだった。
あの熱狂的なライブが、このビルの地下で起こっていただなんて信じられない。新宿FOLTの入り口を見ながら、私はそう思った。
一応、LINEで外で待っている事をカズ君にメッセージを送ったが、既読はつかない。
カズ君、いつ出てくるかな。早く逢って、話がしたい。
(…………いやいやいや!?)
ちょっと待って。先輩達とあんな会話した直後にこれからカズ君と会うの?私、カズ君の事、あ、あ、愛してるって?どんな顔してカズ君と話せばいいの? なんか話の流れでカズ君と合流するみたいな感じになっちゃったけど!?
自覚した途端、どくんどくんと急に動悸が加速し始めた。それに伴うように顔の熱も上がっていく。真冬の夜の寒さも気にならない程に全身が熱くなってくる。背中にじんわりと変な汗がでてきた。
(……落ち着いて、冷静になって。今は私がここにいるのはカズ君の意志を聞く為であって、決して、私がカズ君を迎えたいからだとかそういうんじゃない……はず)
熱が籠り始めた自分の頭に言い聞かせる。こんなのまるで、カズ君の事が大好き過ぎるデレデレ女みたいじゃない!
百歩譲って、私がカズ君を愛しているのはまあ認めるとしよう。でも、私は重い女じゃない。今時の可憐なトレンドガールの喜多喜多ちゃんだ。
ネットでよく見る「重い女」の特徴を思い出しながら、私は自戒する。束縛しない、嫉妬しない、依存しない。恋愛に限った話じゃないけど、大切な事。
SNSのタイムラインで彼氏を圧死させてしまいそうな感情を向けてる人の呟きを見かけては「こうはなるまい」と何度も戒めてきた。いつだったか、先輩達に「カズ君が浮気したら喜多ちゃん刺しそう」って言われて、地味にそれが気になっていたからだ。私ってそんな恋愛対象に重くのしかかるタイプに見えるのかしら?あの時はそう思っていたけど、客観的に今の自分の心境を省みると、少し、ほんのちょっと、重い気はしなくもない……。
でも、私が、カズ君の事をあ、愛してるのかぁ……。
「……えへへ」
あ、待って。頬が変に緩んでにやけちゃう。いけないいけない。落ち着いて私の表情筋。
付き合うはおろか告白もしていないのに、カズ君にこんな感情をぶつけるのは変な話だ。
今重要なのは、カズ君が今後どうしたいのか。私や、結束バンドがこれからどうしたいのか。しっかりと話し合う事。
でももし、それでもカズ君が「SIDEROSの方が良い」とか「結束バンドを信じない」とか言ったら――。
あ、やだ。やっぱり泣きそう。
想像したら今度はめげそうになった。通りがかった人から見たら今の私はきっと変な人に見えるだろう。あれこれと頭の中で悩んでは笑ったり落ち込んだりと独りで百面相しているのだから。
……ダメダメ!こんなネガティブになっちゃうのはダメ!
私は冷え始めていた自分の手の平を自分の両頬に当てる。氷みたいに冷たい手が、熱くなったほっぺたを冷ましてくれる。
落ち着かない気持ちだった。
足元がふわふわしてて、時間がやけに長く感じられた。体感、もう小一時間は経っているような感覚だった。
(知らなかったな……)
自分の中に、こんなにたくさんの水があった事。枯れるくらいの涙を流しても、すぐに潤してくれる大切な人がいた事。支えてくれる大切な先輩達、私の歌を好きだと言ってくれるリードギター。
心のどこかで、自分ってそんなに大した事がない人間なんだと思い込んでいた。底の浅い、小さな器。それが私と言う人間の正体だと思っていた。
でも私の器は、とっくにかけがえのない物で満たされていた。私自身は大した事ないかもしれないけど、本当に素敵な人が、私を支えて、満たしてくれている。
音楽と、私が誇れる大切なバンドの仲間、そして私の幼馴染。
「……ふふ」
恋は誰にでも歌えても、愛はロックンローラーにしか歌えない。
リョウ先輩の言葉を、私はひそかに気に入っていた。
今歌ったら、きっと凄く気持ちよく歌える。きっと今歌えれば、素直に全部を伝えれそうな気がした。
彼に伝えよう。今の自分の鼓動を。今の私の想いを。
この気持ちを飲み込んだまま、何事もなかったみたいなフリをして明日を迎えたら、きっと私は後悔する。
どんなに不格好でも、どんなにみっともなくても、ちゃんと言おう。
傍に居て欲しいって。私達と一緒に、未来の道を歩んで欲しいって。
でも、もし――それでもカズ君が結束バンドを抜けて、私達とは別の道を進むと言うなら。
その時は、ちゃんとしよう。
何をちゃんとするのか具体的な事は何一つ言えないけど、それでもしっかりしようと私は決める。彼がバンドを抜ける時、負い目を感じないように、ちゃんと飛び立てるように、私はもう大丈夫だって伝えよう。
私の心は満ちているし、もし辛い事があって渇いたとしても、いつでも満たしてくれる仲間がいるって。
それが、私のするべきことだと思えるから。
それにもし、私の手が届かない遠い場所に行っちゃったとしても。
絶対に隣まで追いかけるって決めたから。
「あれ、喜多?」
十分ぐらい、ぼんやりとSNSを眺めていたら聞き覚えのある声がした。
顔を上げると、たった今新宿FOLTから出て来たらしいカズ君が、私の方を見て駆け寄ってきてくれた。
「あ……カズ君」
一瞬、カズ君の顔を見て、嬉しくて泣きそうになる。けれどここまでで、もう散々泣いたのが不幸中の幸いだった。私の涙腺はもう干からびかけていて、出会い頭にいきなり涙を流すという醜態をさらさずに済んだ。
「待っててくれたの?ごめん、寒かったでしょ」
包帯で前髪を挙げているからか、それともさっきまでステージにいたギタリストとは雰囲気が違くてギャップを感じたからか。
まるでカズ君が別人のように思える。
「――ううん、大丈夫」
真っ先に私の身を案じてくれるカズ君に、何故か私はほっとした。彼の顔を見たら、きっと照れたり恥ずかしくなったりするものだと私は気を張っていた。でもそれよりもまず最初に元気そうな幼馴染の顔を見れて、安心が来るのがなんだかくすぐったかった。
「怪我は大丈夫なの?」
「全然平気、なんだけど……?」
するとカズ君は疑問符を浮かべて首を傾げる。どうしたんだろ。
「何?」
「いや……なんていうか」
言い難そうにカズ君は頬をぼりぼりと指で掻いた。
「近くで観たら、なんか喜多の雰囲気がいつもと違う気がした」
「そう?」
「うん。なんか大人びてる気がする。いつもはキターン!ってしてるのに」
「キターンって何!?馬鹿にしてるのっ?」
「何かあった?」
……カズ君は、普段鈍いくせにこういう時だけ勘が鋭い。こっちがどれだけ悩んで泣いてたか知らないのに、まるで見透かしたように言ってくる。
心配そうな彼に私は動揺を悟られないように返事をした。
「いつも通りよ、私は」
「そうかな……?ならいいんだけど。とりあえず歩こ。寒いし眠いし」
ぶるぶると寒そうに身体を震わせて、カズ君は歩き始め、私もそれをゆっくりと追っていく。彼に追いつくと、欠伸を少し噛み殺している横顔が見えた。
何から話せばいいんだろ。訊きたい事、話したい事がたくさんあったはずなのに、いや、たくさんあるからこそ、何から切り出せばいいか分からなかった。いつも通りの距離感のはずなのに、心の距離が少し遠い。
彼の横を歩きながらそう悩んでいると、意外な事に会話を始めたのはカズ君の方からだった。
「先輩達は?ていうか今日の練習、どうしたの」
「早めに切り上げて、皆と一緒にカズ君とSIDEROSのライブを見に来たの。先輩達は音を合わせたいから先にSTARRYに戻ってるって」
「やっぱり先輩達も観に来てたんだ。喜多がいたからもしかしてって思ってたけど、ちょっと照れ臭いな」
カズ君は少し困ったように照れ笑いをしながら、質問を重ねた。
「どうだった?さっきのライブ……ていうか、僕の歌」
「……すごかった」
わずかな沈黙の後に出てきたのは、そんな陳腐な感想だった。
「SIDEROSの人達の演奏は、本当に熱くて凄いけど……カズ君の歌も負けてなかったよ」
思い出すのは、やっぱり『Wounded』だった。春の風のように冷たくて、優しい歌。
「あんな風に歌えるなら、教えてくれてもよかったのに」
「黙ってた訳じゃないんだよ。知らなかったんだ、ああいう風に自分が歌えるの」
「うん。カラオケで聴いた時とは全然違った。びっくりして、泣いちゃったよ」
「上手に歌えてた?喜多を泣かせるぐらいなら、結構うまくいったかも――」
「ううん、結構下手だったと思う」
「だよね……」
私がばっさり言うと、カズ君も自覚があったからか目に見えて肩を落とした。
「滅茶苦茶緊張したし、声が裏返らないように精いっぱいだったし、ていうか練習も少ししかできなかったし……」
カズ君は音楽に関して嘘を吐けない。私や結束バンドの練習で批評をする時、ダメだという時はダメだというし、良かったならちゃんと良かったと言ってくれる。他人に対しても、自分に対しても。
音楽に関して彼はいつだって誠実であろうとする。だから自分の歌がダメダメだったと気づいていて、それを隠そうとしない。
そんな落ち込んでいるカズ君に、私は「それでも」と、素直に想った事を継ぎ足す。
「それでも――最高のロックだったと思うよ。一番前で聴いていた私が保証する」
私がそうぽつりと言うと、カズ君は驚いたように私の方を振り向いて、やがて子供みたいに嬉しそうに笑った。
「ならよかった。喜多がそう言ってくれるなら、悪くはなかったんだって思えるよ」
「……うん」
悪くなかったどころ、じゃない。凄く良かった。少なくとも、私にとっては。
「ねぇ」
私が足を止めると、カズ君も釣られるように足を止めて私の方を振り返る。
「どしたの?」
「カズ君、結束バンドやめちゃうの?」
自分でも驚くぐらい、するりと口から抜けるように私はカズ君に問いかける事ができた。さっきまであんなに言いたくなかった言葉だったのに。
冷たい冬の風が、私と彼の間を通り抜ける。
私の質問の意図が理解できなかったのか、カズ君は戸惑いを隠せず口を開けたままだった。
「え……急に何の話?」
「だって、SNSにあがってたから。新メンバーをテストする為にサポートギターが入りますって」
「あ~……あれかぁ」
「それに、サポートに入ったギタリストがそのまま加入するのはよくあることだって……」
やってしまった、と言いたげにカズ君は頭を抱えて、溜息を一つ大きく吐いた。
他にも色々説明しようと思ったが、彼はそれより先に遮って答える。
「僕はまだ、どこにもいかないよ。結束バンドから抜ける気はない」
「――まだ?」
一瞬、自分の声が嬉しさと安堵で震えそうになる。けれど、カズ君の言い方に少し引っかかりがあって、私はまた不安になった。
「だって、僕は半年とちょっとでアメリカ行くじゃん」
「そう、だけど」
「少なくとも、それまではちゃんと約束は守るつもりだよ。僕が皆をサポートするって」
あと、半年と少しでカズ君はアメリカに行く。
分かっていた事だけど、もう私達の時間は1年もないのかと悲しくなった。けど、とりあえずカズ君が今すぐ結束バンドから抜ける事にはならないと分かって緊張が抜ける。
「よかった。そのままSIDEROSに入っちゃうのかと思ってた。サポートしてそのまま入っちゃうかもって、先輩達も心配してて」
「え、なんで」
「カズ君……今日のライブ、本当に楽しそうだったから。少なくとも、私達と演奏してる時より楽しそうだった」
「……」
「ライブが終わった後、皆で話してたのよ?カズ君がSIDEROSに入りたいって言ったら、どうするかって」
「なんか僕が思っているより話が大袈裟になってない? 僕はただサポートギターをしてきたってだけなのに」
「だってカズ君、クレイジー音楽オタクじゃない。私達より上手なバンドと一緒に演奏したら、そっちに気持ちが流れるんじゃないかって」
私は、矢継ぎ早に問いを重ねた。
「SIDEROSの人には誘われなかったの?一緒にバンドやろうって」
「……誘われた。断ったけど」
ばつが悪そうに私から目を逸らしながら、カズ君が答える。やっぱり、SIDEROSの人達はカズ君を誘ったんだ。
断ってくれた事が分かって、今日何度目かも分からない安堵のため息が零れる。
「結束バンドを信じないとか言われたら、どうしようって、思った」
「……ジョン・レノンの『God』?」
私は頷いた。
1970年、ビートルズは解散した。その同じ年に、ボーカルのジョン・レノンは1枚のアルバムを出した。シンガーソングライターとして、最初に出した一枚目のアルバムだ。
そのアルバムに収録された1曲は、ジョンの悲痛な叫びとビートルズへの決別を歌っていた。
僕はビートルズを信じない
僕はヨーコと自分を信じる
それが現実
夢は終わった
ビートルズのアルバムは、カズ君と一緒にたくさん聴いた。
けれど最初に『God』を聴いた時、あんなに楽しそうに歌うビートルズを、『楽しい夢』だったとあっさりと片付けてしまうジョンの言葉に愕然としたのをよく覚えている。
カズ君曰く、この頃のビートルズのメンバーは関係が修復が出来ない程こじれてしまっていて、特にジョンは精神的にかなり疲弊して病んでいた時期があったらしい。
きっと私には計り知れない苦悩や悲しみがあったんだと思う。けれど、大切なバンドを信じないと言ってしまうジョンが、なんだか信じられなかった。ビートルズのジョンとは全く知らない別の人が代役として歌ったんじゃないかと思えてしまったぐらいだ。
ビートルズの曲は好きだけど、ジョン・レノンのこの曲だけは、どうしても好きにはなれなかった。
だって、ジョンにとってビートルズは掛け替えのない大切なバンドだったはずなのに、決別して仲間と離れ離れにならなきゃいけないだなんて、とても悲しいじゃない。こんな世界一綺麗なお別れの歌なんて、ジョン・レノンに歌って欲しくはなかったし、こんな歌を歌ったジョンの気持ちなんて1ミリも理解できなかった。
でも今なら、この歌を歌ったジョンの気持ちが、少しだけ分かる気がする。
大切な物を手放さなきゃいけない時は、いつかやってくる。楽しい時間はいつか終わりを迎える。
それでも、生きて行かなきゃいけない。
楽しい夢が終わった後は現実がやってくる。ジョンはそんな当たり前の喪失感を歌っただけだ。多くの苦しみや痛みを抱えながら、その歌の裏に、きっとレノンとビートルズのメンバーにしか分からない、色んなメッセージや想いを隠して。
きっと、そうやって歌わないとジョンは次の現実に向かう事が出来なかったんだと思う。そうやって、ビートルズのメンバーにサヨナラを歌わないといけなかったんだ。
普通に手紙に書くなり言葉で直接伝えればいいのにと呆れてしまう。でもしょうがないんだ。
ロックンローラーは、本当に難儀な生き物だから。
ロックが無いと、楽器を弾きながらじゃないと、何も伝えられない臆病な生き物だから。
「……喜多もすっかり、音楽通になったね」
「カズ君のおかげよ」
本当に、お陰様で。
「カズ君がもしSIDEROSに入りたいって言うなら、止めるつもりはなかったの。カズ君が本当にやりたいって、思った事を、応援したくて……」
喉に石が詰まったように、言葉が途中で止まる。やっぱり、自分の思いをそのまま素直に伝えるのは、怖い。
否定されたら、拒絶されたら。そんな不安が、私の言葉を縛っていく。けれど私はその不安を振りほどく様に伝える。
「でも……カズ君にどこにも行って欲しくない。私達のバンドに、ずっと居続けて欲しいの」
声が震えないように、精一杯、気丈にふるまって、私は言い放った。
カズ君に「夢は終わった」だなんて、そんな冷たくて心地よい終わりを言って欲しくはない。そんな、数年後には「いい思い出だったね」と振り返る事が出来てしまうような、綺麗な形で終わって欲しくなんかない。
でも私の願いと、カズ君がやりたい事がイコールになるとは限らないから。
頭では分かっていても、それでも言わずにはいられない、私の大切な願い。
けれど、かなり覚悟していた私の話を聞いたカズ君は、きょとんと首を傾げるだけだった。
「喜多って心配性って言うか、重い?」
「――なっ」
若干呆れた風なカズ君に、温厚な私もさすがにキレそうになった。
誰のせいでここまで悩んでると思ってるのよ!
「わ、私は真面目にっ」
「いやごめん……。だって、そんなに大切にされてると思ってなかったから」
軽く笑いながら逃げるようにカズ君はまた駅へ向かって歩き始めた。
私がカズ君の事を大切に想ってないとでも考えてたのっ?
歩いていく背中を見て、私は一回本気で叩いてやろうかと思って拳を握りしめる。
けど、カズ君の耳が赤くなっているのが一瞬見えて、さっきまで沸いていた怒りは行き場を失くして蒸発してしまった。
私はもやもやとした霞みたいな変な感情を抱きながら、またカズ君を追いかけ始める。
新宿駅に近くなるにつれて、人が少しずつ多くなっていく。たくさんのビルと街路樹を横切り、車が通りすぎる度に風切り音が響く。
私はなんて言えばいいか分からず、カズ君の背中を見つめながらしばらく黙って歩き続けた。
新宿駅の近くの交差点で信号が赤になり、足が止まると同時に、カズ君は真っ暗な空を見上げながら話し始めた。
「本当を言うとさ、ちょっと考えたんだ。このままSIDEROSの人達と一緒に演奏出来たら、どんなに楽しいのかって。ていうかあの瞬間まで、結束バンドの事はあんまり頭になかった。SIDEROSっていう最高の技術を持った人達とどうやれば最高の音楽を奏でられるか、それしか頭になかった。それぐらい、今の自分の全力で出してもそれに応えてくれる、自分の全力を出しても追いつけなかった、最高の人達だったから」
淡々と、ミニライブを追想するように語る。けれど、私には罪を告白しているようにも聞こえた。
そうだよね。あの時のカズ君は、私達の事なんて頭にない顔をしていた。ただどれだけ綺麗な音を奏でられるのか、それしか考えていない顔だった。
「でも、あの時喜多の声を聴いて僕は……ああ、ううん。なんていうか……」
足が止まったカズ君の隣に追いついて顔を覗き込むと、頬をうっすらと赤くするカズ君と目が合う。
すぐに目を逸らされてしまって、カズ君の言葉はそれ以上続かなかった。
私も急に照れ臭くなってしまい、ちらちらと彼の顔を視界の隅に留めたまま明後日の方向へ視線を向けて、「あー」とか「うー」とか、眉間に皺を寄せて唸るカズ君の言葉をしばらく待った。
「いやダメだ。何て言うか、言葉にしにくい……」
口の中で言葉を形にしようとカズ君は悪戦苦闘しているようだった。けれど、カズ君は大きくため息を吐いて、
「ごめん喜多、なんて言葉にしたらいいか、分かんないや……」
照れ臭さと、申し訳なさをない交ぜにしたようにカズ君は言った。
「もっともっと、言いたい事はあったはずなんだ。あのステージの上で、答えを掴んだはずなのに。喜多に会ったら話したい事がたくさんできたはずなのに。それを言葉にする勇気が、僕にはなくて……。ごめん、よく分かんない事言っちゃって」
「分かるよ」
私ははっきりと言った。
「分かるよ、私も、そうだから。カズ君と話したい事、もっとたくさんあったはずなのに……」
心の声を繋ぐのは、本当に怖い。すぐにぽんと勇気を出して言えるなら、どれ程楽に生きていけるんだろう。
だって、たったひとつの言葉で大切な関係が壊れる事があると、私達は知っているから。
それでもきっと確かめずにはいられない、どうしようもなく臆病で弱虫な私達が確かに持っている物。
サンボマスターの詩はきっと正しい。
確かにそれは、世界は愛と呼ぶのだろう。
「そっか……喜多もそうなんだ」
カズ君はしばらく、眼を閉じて何か物思いに耽った。数秒ほどの沈黙の後、彼は大きく息を吸って、私の方へ向き直る。
「喜多、この後時間ある?」
「え?あ、う、うん……普通にこのまま帰るつもりだったけど……」
それを聞いたカズ君は3回ほど小さく咳払いをして、気まずそうに言った。
「ならちょっとSTARRYに寄って、一曲歌ってくれない?僕が弾くからさ」
まるで「今からカラオケに行こうぜ」と言わんばかりの軽い提案だった。
その突拍子の無い提案に、私はぽかんと口を開けるしかなかった。
だって、私から言おうと思ったから。カズ君に私の歌を聴いてもらおうって、そう考えていたのに。まさかカズ君の方から言われるとは思ってもいなかったから。
「それは別にいいけど……何歌うの?」
私がそう訊くと同時に、信号が青になる。カズ君はいたずらを企む子供みたいに笑って答えた。
「中央線」
その選曲に、私はかなり驚いた。
だってその曲は、数か月前。中学最後の合唱コンクールで、皆と歌った曲だから。
THE BOOMと言えば『島唄』を連想する人が多いと思う。三味線を取り入れた沖縄民謡風のロック『島唄』は世界的に有名で、多くのミュージシャンがカバーするぐらい有名だ。男女の別れを歌ったラブソングであると同時に、第二次世界大戦の沖縄戦で生まれてしまった悲劇と、そんな哀しい事が二度と起こらないようにと平和への祈りを唄った曲。
そんな世界的な名曲を歌ったTHE BOOMだけど、実際の所、私はカズ君にTHE BOOMをちゃんと教えてもらうまでは島唄以外の曲は知らなかった。島唄以外の曲を聴くようになったのは割と最近。
当時は幅広く古今東西の音楽を取り入れた先進的なロックバンドだったらしいけど、私達の世代じゃないしクラスで知っているのはやっぱりカズ君だけだった。ほんの数人、親がアルバムを持っているって子はいたけど、それでもちゃんと聞いたことがあるクラスメイトは皆無だった。
カズ君はそんな反応を見て「TVとかのメディアは島唄以外を取り上げる事がないから他の曲の知名度が極端に低いんだよね。他にもいい曲たくさんあるのに」とぶつくさ文句を言っていた。それに同意していたのは当時世代でTHE BOOMの大ファンらしいクラスの担任だけだったけど。
「なんで今年は洋楽じゃないんだ?他のクラスは皆洋楽を選んできてるのに、これじゃあ優勝は厳しいんじゃない?」
クラスメイトの中で、カズ君の選曲に疑問を浮かべる人が何人かいた。
私達が二年生の時、Queenの『Somebody To Love』を歌って優勝する事ができたから、洋楽じゃないと優勝は厳しいんじゃないかと思ったらしい。
カズ君はその疑問に「だからこそだよ」と答えた。
「今年の2,3年生はほとんどが洋楽を選曲してきたでしょ?どの曲もいいけど、エレキギターやドラムを禁止されたから、いくらピアノアレンジにしても原曲程のパワーはない。だったらアレンジしやすいゆったりしたJ-POPの方が良いよ。歌いやすいし、THE BOOMだったら教頭先生とか校長先生とか絶対世代だからぶっ刺さると思う。何より、Queenの『Somebody To Love』よりロックで映える合唱曲なんてないでしょ!」
自信満々に笑うカズ君だったが、後に別のクラスがQueenの『We Will Rock You』をハンドクラップで歌ってきて大接戦になり、大慌てになる事をまだ知らない。
「それにほら、今年はこのクラスの最後の合唱曲でしょ?THE BOOMの『中央線』は別れの歌とも取れるし、再会を願う歌とも解釈できるいい曲なんだ。来年、僕らは卒業する。高校生になって、大学生になって……。そして大人になった後、皆この曲を聴く事があって。その時に「また皆と会いたい」って再会したくなるような、そんな曲を合唱したかったんだ。激しいロックを聴いてもさ、「皆と会いたいなぁ」ってなんないでしょ?切なくて優しい曲の方が、きっと未来の僕らを繋げる思い出になってくれる……って、なになになに!?いきなりいだだだだばしばし叩くなって僕は太鼓か!」
カズ君がこの曲を選んだ理由を淡々と語ると、男子達は嬉しそうにカズ君を取り囲んでばしばしと叩き始めた。
「良い事言うじゃんか!」
「さすが音楽データベース!」
「俺お前の事ちょっと誤解してたわ」
「いた、痛いって……ヤメっ、ヤメロォ!」
一年ほど前まで、あまりクラスメイト達と会話を交わさなかったカズ君を、ただ音楽を聴くだけのロボットみたいだと私を含めて皆が思い込んでいた。けど、毎日一緒に過ごしているとそんなことはないって分かる。カズ君はただ音楽馬鹿で、人付き合いより音楽を優先しちゃうクレイジー音楽オタクなだけで、本当は情に厚い優しい人なんだって皆が知っている。
そんなカズ君がクラスメイト達にそう思ってくれていた事を、私含めて皆が嬉しくなったと思う。
その後、試しにカズ君がスピーカーでその曲を流すと、曲が終わらない内に満場一致で「この曲にしよう」と意見がまとまった。それぐらい、『中央線』は最高のバラード曲だったのだ。
「でもこの曲だと、喜多ちゃんをボーカルにはできなくない?男子と女子それぞれパート分けして編曲すればいいし」
原曲の楽譜を読んでいた編曲担当の渡辺さんがそう言った。
「あー……そっか。うん、無理に独唱パートを作るより、普通に男女で二つにパート分けした方がいいね。喜多もそれでいい?」
「大丈夫よ。去年みたいなボーカルが出来ないのは少し残念だけど、それでも皆と一緒に歌えるの、本当に楽しみだわ!(キターン!!)」
「喜多ー、そのオーラ抑えてー。渡辺さんの目にダメージが深刻みたいだからー」
ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ。
渡辺さんの言葉にカズ君が残念そうに声を萎ませたのが何となく印象に残っている。
下北沢に着く頃には、もう夜の9時になろうとしていた。
カズ君は今日のミニライブの為に午後はずっと練習漬けで夕飯を食べていないみたいだったので、駅前の店でハンバーガーを一緒に食べる。私は夜遅いのもあったので小さなハンバーガーを1個だけだったけど、お腹を空かせていたカズ君は3個のハンバーガーとポテトをぺろりと平らげてしまう。こういう所は「男の子なんだな」と私は感心してしまった。
遅い夕食を食べ終わって、店を出てSTARRYへ向かう頃には夜の10時に差し掛かろうとしていた。ちょうどSTARRYでも今夜のライブが終わったらしく、行き道でSTARRYから出てきたらしい観客達と何度もすれ違った。今日のライブはSTARRYでは稼ぎ頭の人気バンドだったので、この時間までずっとアンコールに応えていたのだろう。
いつもの薄暗い階段を下りて入り口に入ると、ロビーにはさっきまでライブをしていたらしいバンドマン達が打ち上げの相談をしていて、受付にはポスターの張替をしている店長さん……星歌さんがいた。
「店長さん」
カズ君が真っ先に店長さんに挨拶しに向かったので、私も慌てて追いかける。
「なんだ、カズじゃんか。虹夏から訊いたぞ、ボーカルデビューしたって」
私達に気付いた店長さんはどこか嬉しそうにカウンターから身を乗り出してカズ君の肩をばしばしと叩いた。
「怪我しながらステージに登るなんてな。もう半人前だなんて呼べねーよ、ったく。心配かけやがって。虹夏から聞かされて結構心配したんだぞ?」
「イデデデ、ちょ、一応怪我人なんですけど!」
「心配させた私からの罰だ、有難く受け取っておけ」
乱暴に何度も力強く肩を叩きながらもどこか嬉しそうな店長さんと、痛がりながら逃げようとしないカズ君。傍目から見ると二人は仲のいい姉弟にも見えた。
「それで、喜多ちゃん連れてどうしたんだ。もう店は閉店だぞ。虹夏はスタジオでリョウとぼっちちゃんと一緒になんかやってるみたいだけど」
「ああ、その、カズ君が……」
「ステージを貸して欲しいんです」
カズ君が要件を言うと、店長さんは怪訝そうに眉を歪めた。
「なんでだ?練習ならスタジオ使えよ。今虹夏達がレンタルしてるぞ」
「それはそう……なんですけど。良ければステージの方を使いたくて。喜多とちょっと演奏したいんです」
「もう閉店だし音合わせしたいならスタジオの方行けよ。ここはカラオケじゃねーんだぞ」
目が細くなり、迫力のある顔で私達を睨みつける店長さん。この人は私達を『妹の友人』と言う身内としてじゃなく、一つのロックバンドとライブハウスの店長としても接してくるから、こういう所は厳しい。
確かに、ただ音を合わせたり練習をするだけならわざわざステージを借りる必要はない。スタジオを貸してもらえばいいし、なんならカズ君の家でも演奏はできる。私も最初は歌うならSTARRYじゃなくても良いんじゃないかとカズ君に確かめたけど、どうしてもステージで演奏したいと押し切られて、ここに連れてこられてしまった。
店長さんの睨みに、カズ君は一歩も退かずに頭を下げる。
「店長さんにも
「は?」
「去年言ったじゃないですか。僕が何者になれるのかって。その答え合わせがしたいんです。だから、店長さんにも聴いて欲しいっていうか……その為には喜多の力が必要なんです。そして、それを演るならここしかないって」
「……お前」
「お願いします」
カズ君が真剣な声音で、店長さんにお願いする。
店長さんの厳しい目線に、私は少し腰が引けてしまったが、私も一緒に頭を下げた。
だって、歌いたいのは私も一緒だったから。
「……見つける事ができたのか?お前の答え」
「はい。でも、あとちょっと、もう一押しが欲しくて。それでどうしても、ここのステージを使いたいんです。ここはある意味で、僕の原点の一つでもあるから」
カズ君と店長さんが何かを話す。
傍で聴いている私には、要領を得なくて理解する事はできない、二人だけの間に通じる真剣な会話。とてもじゃないけど、私が口を挟める空気じゃなかった。
「…………はぁ。ったく」
しばらく頭を下げると、呆れたように長い溜息が聞こえた。顔を上げると、少し優し気な笑みを浮かべた店長さんが言った。
「あと30分待ってろ。まだ他の客やスタッフが帰ってねーし。あと代わりにステージとホールの片付け手伝え。そしたら10分だけ貸してやる」
「ありがとう師匠!」
「師匠って言うな。あと給料は出ないからな」
「もちろん。喜多、先輩達の方に行っててもらっていい?僕は片付けの方手伝ってくるから」
私がうんと答える前に、カズくんはさっさとステージの方へ駆け足で向かって行ってしまった。
「……答え合わせって何のことなんですか?」
カズ君がホールの方へ走って行ったのを見送って、思わず私が店長さんに尋ねてしまう。店長さんはカズ君の方から目を逸らさないまま呟いた。
「去年の夏だったかな。あいつと少し話したんだよ。その時、あいつに一つ課題みてーなもんをあげたんだ。『自分が何者になれるのか』って。それを見つけてみろって」
何者になれるのか。
それは多分、将来の夢とか、何の職業に就くとか、そういう具体的な何かじゃないのはなんとなく分かった。
「あいつがこれからどう生きるにしろ、自分の芯を自分で作っておかねえといざという時迷う。迷ってると周りが見えなくなって、その場から動けなくなる。でもあいつなら、きっと私みたいには……」
店長さんの言葉は、どこか寂し気で、最後の方は空気が抜けていく風船みたいに小さく萎んでしまって、上手く聴き取れなかった。
「それより、喜多ちゃん、大丈夫か?」
「え?あ、はい……何がですか?」
片づけをしていたPAさんと何かを話しているカズ君の方を見ながら、店長さんはそうぼそりと私に問いかけた。質問の意図が分からず、思わず店長さんに質問を返す。
「あのバカに振り回されて、喜多ちゃんは大丈夫かって。ほら、あいつ音楽馬鹿だろ。自分の快感と気持ちよさだけを求めて、周りを見ないでひとり突っ走る事ができちまうタイプだ。周囲に影響されない強さでもあるけど、そーいうのは周りの人間を置いてけぼりにして傷つけちまう事があるし、自分自身を傷つける。あいつにはそんな目に遭って欲しくねーからな」
どこか懐かしさと後悔が入り混じった目つきだった。見ているとこっちの胸が締め付けられそうな、悲しさが滲んだ言葉。
カズ君の後ろ姿に、店長さんは一体誰を重ねているんだろう。
「カズは、ちゃんと喜多ちゃんと歩幅を合わせてやれてるか?」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、店長さんなりに私を心配して気を遣ってくれたんだと理解する。虹夏先輩の言う通り、ツンツンツンデレな人。不器用な人だけど、いつも私達を見守っててくれるんだと嬉しくなる。
「大丈夫です。カズ君に振り回されるのは悪くないですし。勝手に独りでどっか行くなら、私が走って追いつくって決めたんです。それに、どんな場所でも一緒に歌えるなら、私も望む所ですから」
私がそうはっきりと答えると、店長さんは一瞬ぽかんとして、すぐに優しく笑った。
「やっぱり喜多ちゃん、ロックンローラーだな。出来るだけあいつの傍にいてあげろよ」
「はいっ!」
「で、いつプロポーズすんだ?」
「し、失礼しますっ!」
私は急にカッと熱くなった顔を誤魔化す様に、結束バンドの皆が居るレンタルスタジオに逃げ込んだ。後ろの方からからからと笑う店長さんを少し恨みながら。
いつも使っている練習スタジオに来ると、先輩達の演奏が扉から少し漏れて聞こえた。ここ最近ずっと練習している『忘れてやらない』だ。後藤さんとリョウ先輩の渾身の作曲で、皆のお気に入りのナンバーだ。私もこの歌は気に入っていて、すぐに歌詞は歌えるぐらい覚えた。ギターの方は……まあお察しだ。
スタジオに入ると、新曲の練習をしていた先輩達はすぐに演奏を止めて私を出迎えてくれた。
「喜多ちゃん、お帰りー!カズ君の説得どうだったっ?」
虹夏先輩が真っ先に私に確認してくる。
リョウ先輩も後藤さんも気になってたみたいで、私の顔を見て答えが出るのを待っていた。
「SIDEROSに誘われてたみたいですけど、断ってくれたみたいです。私達のバンドをちゃんとサポートするって」
たじろぎながら私がそう答えると、3人共「はぁ~~」と緊張が抜けたように安堵のため息を吐いた。
「よかった~!カズ君が居なくならなくて!」
「うんうん。やはり幼馴染が最強。郁代、よくカズを説得した」
「ああいや、私が説得した訳じゃ……」
「やっぱ愛だね」
「うん、愛だね」
「あ、愛ですね……」
しみじみと感慨深そうに頷く先輩達。恋バナが苦手な後藤さんも苦笑いしながら言ってくるので、私は恥ずかしくなって顔が真っ赤になるのを見られないように、自分の顔を両手で覆った。
ひょっとして私はこれから、このネタで永遠にいじられる事になるのだろうか……。
もう私自身がカズ君を愛しちゃってると心の底から認めてしまったので、否定も誤魔化しもできない。私はその場に蹲って丸くなるしか防御手段がなかった。
その様子を見てワンちゃんを見るように私をナデナデしてくるリョウ先輩と虹夏先輩。私は抵抗できずにただ撫でられるがままだった。
「だ、大丈夫です喜多さんっ」
「後藤さん……」
「これからバンド内でイチャイチャしたりカズさんと愛を囁き合っても出来るだけ死なないようにするんで!頑張りますから!だから遠慮しないでいいんですよ!」
それはひょっとするとフォローのつもりなんだろうか。下手な愛想笑いをしてくる後藤さんの言葉に、私は益々縮こまるしかなかった。顔から火が出るんじゃないかと思えるぐらい恥ずかしい。
「まあよかったよかった。これで憂いはなくなった。もし郁代が振られたらKillersの『Mr.Brightside』とかSpeedwagonの『Take It On the Run』とか弾いてあげなきゃとか思ってた」
「ひ、ひどいです先輩!」
どちらの曲もNTRとか浮気とかされて相手を見送る失恋ソングで、カズ君がガチでNTRされる危険性が在った事を考えるとあまり笑えないチョイスだった。
でもリョウ先輩の『Mr.Brightside』はちょっと聴きたかった……。
「結局、喜多ちゃんはカズ君に告白したの?」
きらきらとした、新鮮な恋バナに興味津々と言った感じで虹夏先輩は私の両肩を掴んできた。虹夏先輩達も今回の件は当事者の一人だから事の顛末が気になるのは当然だ。けれど私はその質問に答えるのが恥ずかしくて、しばらくダンゴムシみたいに丸まったままダンマリを決め込んだ。だけど我慢ができないのか虹夏先輩は子供みたいに「早く教えてよ~!」と肩を掴んでがくんがくんと揺さぶって来た。
「私も気になる。郁代、カズと何話したの?ほらほら、ぼっちが干物化し始めちゃってるよ」
「うぅ……」
敬愛するリョウ先輩が訊いてきたので、とうとう私は観念する。ささやかな抵抗として虹夏先輩の方を見ずに俯いたまま答えた。
「……『傍に居て欲しい』って言いましたけど」
「きゃ~~~~~!素敵だね~~~~~!」
虹夏先輩のテンションが爆上がりだった。手をぶんぶんとさせて、体中で喜びを表現してる。
「ついに二人は結ばれたんだね~!よかったよ~!」
「いえ、別に告白した訳じゃ……」
「違うの?傍に居て欲しいとか、100%愛の告白じゃん!」
その通りですけど!言わないでください恥ずかしいから!
「別にカズ君の事が好きだとか愛してるとか言った訳じゃないですし……それにカズ君もイエスノーで答えた訳じゃないですから……」
「え、じゃあまだ恋人未満の関係なのか……なーんだ」
期待していた答えじゃなかったらしく、虹夏先輩は残念そうに肩を竦めた。
「じゃあカズと郁代の関係って何なの?愛人?」
「その言い方は誤解を招くからダメ!」
虹夏先輩に鋭く脇腹をチョップされたリョウ先輩は「う゛っ」と苦しそうに呻いてそのまま蹲ってしまう。
「それで、カズ君はどうしたの?先に帰っちゃった?」
「あ、いえ。今ライブハウスのホールの片づけしてます」
「え?どゆこと?」
首を傾げる虹夏先輩に、簡単に事の経緯を説明した。カズ君が私に1曲歌って欲しいと頼んできて、その為に店長さんにステージを貸して欲しいと頼み込んだ事。
説明を聞いた虹夏先輩は呆れを隠し切れずに苦笑した。
「あんなライブした後なのに、カズ君元気だね~」
「ずっとSIDEROSと合わせをして、ミニライブまでこなしたのに。カズって意外と体力お化け?」
「ああ、いや……本人的にはもう体力の限界が近かったみたいで……電車の中でちょっと寝てました」
座席のシートに二人で座ったらカズ君が寝落ちしてしまい、重力にされるがまま私の肩を枕代わりに載せて来た時はびっくりした。電車に乗っている乗客達は微笑ましいものを見つけたように笑ってくるし、もう本当に恥ずかしかった!もし先輩達やクラスメイト達に知られたらしばらくイジられ続ける事間違いなしだ。
「で、何歌うの?」
「中央線です、THE BOOMの」
「おー、確か喜多ちゃんの中学の合唱コンクールで優勝した曲だよね?何で今更……ていうか、あれだけカズ君嫌がってたのに」
「カズは何で弾くの?ピアノ……じゃなくてキーボード使うの?」
「いえ、アコギを使うって……」
駅前で寄ったハンバーガー屋で、カズ君とどういう風に歌うのか簡単な打ち合わせをした。
カズ君曰く「エレキは今日はもう散々弾いたからアコギやりたい」とのこと。アコギもエレキもどっちも同じギターなのに、よく分からない拘りだった。
私としてはキーボードでも、アコギでも、どっちでも大丈夫だった。クラスメイト達と散々練習した『中央線』はいつでも歌える自信があるし、カズ君が演奏してくれるなら心強かったから。
「ひょっとして、小田和正のカバーを弾くのかな?」
「あ、え、小田和正ってTHE BOOMカバーしてましたっけ……?色んな人がカバーしてたってカズ君は言ってましたけど……」
小田和正。確か、カズ君の名前の由来になったシンガーソングライターだ。
カズ君のお母さんが熱狂的な小田和正のファンで、そこから名前を付けてくれたってカズ君が少し自慢げに話していた事を覚えてる。でも、カズ君が私に小田和正やオフコースのアルバムを貸してくれたことはあまりなかった。
「だって、『言葉にできない』とか『Yes-No』とか自分の名前の由来の人の曲勧めるのは……少しナルシっぽくてやだ」
その時は知らなかったけど、オフコース時代の小田和正の歌は愛を歌う曲が多くて、それを私に勧めるのは気持ち悪く思われそうだったから避けていたと、後にカズ君はしょんぼりしながら語った。ラブソングなんてMaroon5の『Sugar』とか他にも散々私に聴かせてきたのに今更どうしてと思わなくもなかったが、カズ君にとっての小田和正は、ビートルズやツェッペリンとはまた別の意味で特別な歌手だったんだと思う。
「確かやってたよ。聞いた事ない?小田和正と、もう一人の歌手とアレンジカバーしたんだ。特にそのカバー曲は、日本でも名カバーの一つとして有名だよ」
「え……誰なんですか、その人」
「矢野顕子だよ。その人が小田和正をゲストとして呼んで、一緒に『中央線』をカバーしたんだ」
後に、矢野顕子のピアノと小田和正のアコースティックギターでアレンジされたその曲は、Queenの『Somebody To Love』やJourneyの『Don't Stop Believin' 』に並ぶ、私の人生で最もリピートされる曲の内の一曲になる。
知らない間にスタジオの隅っこで壊れたファービー人形みたいになっていた後藤さんを正気に戻していると、いつの間にか時計は30分を過ぎていた。壊れた後藤さんをドライバーとかの工具を使って直すのはいつだって人間を元に戻す作業とは思えない。
作業を終えてスタジオを出ると、さっきまでいたスタッフやライブ上がりのバンドマン達はいつの間にか姿を消し、店長さんしかいなかった。
「お、来たな」
店長さんが何かを企むように笑いながら、親指でステージの方を指し示した。
ライブホールは照明を落とされて、ステージの上にだけ暖かい色の照明が落とされている。
その光の下で、カズ君は小さな丸椅子に腰かけて私を待っていた。
カズ君は先にステージの上に登って、見慣れたアコースティックギターのチューニングと、アップを兼ねて独りソロを演奏していた。
ディズニー映画『リメンバー・ミー』の『音楽はいつまでも』だ。
カズ君が学校とかで独りで演奏する時、よくアップ代わりに演奏している曲だ。学校の友人達によくギターを弾いてくれとせがまれると、カズ君は決まってこの曲を演奏していた。「ディズニー映画の曲は受けがいいから」って言ってたっけ。
私達がホールに来た事に気付くと、カズ君は演奏を止めてこっちを見た。
「お待たせ。先にアップしてたよ」
「カズ君!!」
ステージの上にいるカズ君に真っ先に噛みついたのは虹夏先輩だった。
先輩は遠慮なしにステージに駆け上がるとカズ君の肩をぽかぽかと殴り始めた。
「約束したじゃん!君は私達の仲間だってことを忘れちゃダメだって!なのに
「イデデデ、痛い、痛いですって!謝りますから!なんで店長さんと同じ場所を叩くんだこの人!」
文句を言いながらドラムスティックを操るように叩き続ける虹夏先輩。
途中から「あのライブ良かったよ!」とか「あんなに歌えるなら先に言いなよ水臭い!」とか「怪我したの心配だったんだよこの馬鹿!」とか「次の動画はカズ君がメインでボーカルねこれ決定!」とか、怒ってるんだか笑ってるんだか分からない口調で叩き続ける。
カズ君はアコギを掲げて先輩からの猛攻をガードするけど、抵抗虚しくカズ君はぽかぽかと殴られ続けてしまう。
それを見て「止めた方がいいんじゃ」とあわあわしだす後藤さんと、「先に行かれて出遅れちゃった」と悔し気な顔をするリョウ先輩。でも二人共、自分達が言いたい事を虹夏先輩が全部言ってくれているからか、どこかすっきりとした表情だった。
1分ぐらい文句と拳を叩き続けてようやく気が済んだのか、虹夏先輩は少し鼻息荒くステージから降りてきた。
「お待たせ、喜多ちゃん!私はもう言いたい事全部言ったから、後は喜多ちゃんの歌を楽しみにしてるね」
そうすっきりしたような笑顔で私の肩を叩き、虹夏先輩は私とすれ違うように暗闇の中へ戻って行った。
私はそっと、ステージを照らす光の下へ足を踏み出す。
いつもスタジオに入る前に視界に入る場所。バンドマン達が毎晩ここで汗を散らせ、歌を響かせる見慣れたステージ。
でもこの場所に登るのは数日前のデモ審査以来だったからか、それともSIDEROSの生演奏を見た直後だったからか、私にはこのステージがとてつもなく神聖な場所で、そこに土も払わず土足で踏み入れてしまったような気分になる。
例えお客さんが入っていなくても、たった一曲を合わせる為だけの時間でも、この場所はいつだって、幾千万のミュージシャンにとっては特別な居場所だ。
多くのミュージシャンがここに立つ為にたくさんの時間と労力を注ぎ込み、そして楽器を持ってここで暴れまわる。血が滲むような努力を経て、ようやくここに立てる資格を得る事ができる。私はその資格をちゃんと持っているのだろうか。
カズ君の椅子と対になるように、もうひとつの椅子が置かれていて、私は自然とそこに腰を下ろした。ギターを抱えるカズ君と真ん前から向き合う形になり、私は少し居心地の悪さを誤魔化す様に手をもじもじとさせた。
「……郁代、緊張してる?」
リョウ先輩が私に気を遣って声を掛けてくる。
「緊張と言うより、少し不安で……やっぱり、ここからの景色は……」
「特別だよね」
私の言葉の続きを答えたのは、カズ君だった。
「僕もさっき、新宿FOLTでボーカルしてさ。ステージの上って、本当に何か、神聖な場所だって感じたんだ。ほんの少し、床より高い場所にあるだけなのに、不思議だよね」
カズ君が照れ臭そうにぽりぽりと頬を掻きながら、私の気持ちを汲み取って言ってくれた。
私はおかしくなって、思わず顔を綻ばす。カズ君も釣られるように笑って、そして結束バンドの皆に、店長さんに向き直る。
「今日は1曲だけ。僕等のクラスが演った『中央線』を……二人で歌います」
「おー!ぱちぱちぱちー!」
虹夏先輩が口で言いながら明るく拍手してくれた。
「なんだか思い出すね。あの時の『Can't Find My Way Home』みたいだ。今日はカズも歌うの?」
「はい。さっきのライブでボーカルに味を占めちゃったんで」
「いいよ。どんどん味を占めていこ」
リョウ先輩が嬉しそうに微笑んだ。
「わ、わたしも……楽しみにしてますっ」
「後藤、無理してない?足震えてるよ?」
「だ、大丈夫です!どんなラブソングが飛んできても死なないようにするんで!」
「なんで身内の演奏にそんな死地に飛び込む覚悟してくるんだよ」
『中央線』はそんなにラブソングの色が強い歌じゃないんだけどなぁと笑うカズ君。私や先輩達も含め、いつも通りの後藤さんに思わず苦笑する。それでもこうやって、ちゃんと聴こうとしてくれるのは後藤さんなりの成長なのかもしれない。
「じゃあまあ、とりあえずやろっか。喜多、準備はいい?」
「……」
「喜多?」
「あのさ、カズ君」
「何?」
「私、真剣にやるから」
私に歌える、載せれる想いを全部出すから。
カズ君に、あんな楽しそうな表情をさせることは今の私にはできないけど。
それでも伝える。私の気持ちを。
「……分かった」
私の本気が伝わったのか、力強く頷き返してくれるカズ君。
結局そうだ。
私はいつだって、カズ君に伝えたいメッセージがある時はロックを歌った。それしか方法を知らないから。それ以外の方法は必要なかったから。
だって私達を結び付けたのは、幼馴染と言う関係でも、同じ学校のクラスメイトと言う関係でもなく、ロックンロールだったから。
フレディがいたから、私達はお互いを知れた。ジョンレノンがいたから、私達は束ねられた。たくさんの音楽が私達を結び、そして私に『愛』を教えてくれた。
私達はいつだって、ロックでしか思いを通わせることができない。楽しい気持ちも悲しい気持ちも、メロディに載せないと相手にちゃんと届けられない。
難儀な生き方だ、と自分でも思った。でも、それでいいと思った。私らしくて、私達らしくて、ずっといい。
「じゃあいくよ」
私が静かに頷いて、カズ君がギターを構える。
「ワン、ツー、スリー、フォー」
カズ君が4カウントを取るのと同時に、優しいギターの音色が響き始めた。
それに耳を委ねながら、私は目を閉じ、大きく息を吸って言葉をそっとカズ君のメロディーに載せた。
優しく繊細に爪弾くギターの音色。私、やっぱりカズ君のギターの音が好きだなぁ。
そんなことを思いながら、私は合唱コンクール以来、一度も歌っていなかった『中央線』を歌い始める。
久しぶりに歌うはずなのに、私の喉は、声は、リズムを、歌詞をしっかりと覚えていた。
でも、合唱の時とは違う。クラスの皆と練習した時のように音の粒を揃えない。だってこれは、私とカズ君のセッションだから。
私は自由気ままに、好き勝手に歌い始める。自分が想う、最高の『中央線』をイメージして、全身で音を奏でる。
87bpm、ひょっとしたら寝てしまうんじゃないかと思えるぐらいのゆったりとしたテンポで奏でられるカズ君のギターは、完璧だった。学校の練習だとピアノ以外は弾いていなかったのに、一体いつの間に練習していたんだろ?
私のパートが歌い終わると、今度はカズ君がギターを優しく弾きながら歌い始める。そしてすぐに私と、私とカズ君の声が踊るように入れ替わっていく。
最初は互いのリズムを探りながら、一緒に歩く様にゆっくりと。それは段々と、息を吸うタイミングさえ合い始め、私の声と、ギターの音色に寄り添うように、そしてサビで一つに重なる。
瞬間、私達の声が、ひとつの音楽になった。
カズ君の優しい、風みたいな歌声と、私の歌声が混ざって、繋がれて、固まって、そして薄暗いライブホールの天井で砕け散っていく。
まるで小さな星屑みたいに。
私達の歌声は、一体どこに消えていくんだろう。私が今感じている、この胸の暖かさは錯覚なのかな。どこにも届かないのかな?
ただの空気の振動が、音の羅列が、心臓の音と同調しているだけ?それがこの熱の正体?そんな訳ない。
だって、今私達が宮沢和史の詩を吐き出す度に、一音一音を空中に解き放つ度に、流れ星みたいに綺麗な音が流れていくのが見えるもの。
隣をちらりと見ると、偶然、カズ君とばっちりと目があった。
急に目が合うとは思わなかったのだろう。私もカズ君も、思わず吹き出そうとしてしまったのを堪えてしまう。
私は目を閉じて、更に歌に没入する。
カズ君のギターの音色が、私の身体の、心臓の更に奥にある部分に染み入っていく。
声とメロディーに熱が帯びていく。陽だまりのように、春の風のように優しく暖かな音が流れていく。もう、私達と、私達の歌声と、ギターの音色以外の音は聞こえない。
君の息遣いが聞こえる、君の歌声が聞こえる、君のギターが聞こえる。
そっと撫でるように優しい音。いつまでも聴いていたい音。その音を聴きながら、私はふと、少し前にカズ君に言われた事を想い出した。
なんだっけ。「心が空っぽの奴は、コレクターになるしかない」だっけ?
そんなのないよ。私達の心が空っぽだなんて、絶対ないよ。
少なくとも、カズ君の心が空っぽだなんて嘘。底が抜けてるなんてのも絶対嘘。
だってそんな人が、こんな綺麗な音を奏でられる訳ないよ。そんな人の奏でる音で、こんなに優しくて切ない気持ちになんかなれないよ。
きっとカズ君の心は、他の人より物凄く大きくて広くて、簡単に満杯にならないようになってるだけ。
――海。そう、きっと海みたいに広いんだ。地球を覆う程じゃないけど、何千枚ものCDじゃ、何万もの曲じゃ満たせないぐらいの、大きな――いや、
カズ君の中にある、小さな海を感じる。透き通ってて、誰の手にも汚されていない海。
そしてその海は、私の中にもある。誰にも穢せない、私達だけの海がある。満天の星を映す、遠く銀河の星々の光を受ける小さな海が。
けれど、もっと先を歩いていけば、もっと綺麗な海岸線が私達を待っている。そんな予感がする。
私、カズ君と歌いたい曲がたくさんあるんだよ。結束バンドの皆と演奏したい曲、たくさんあるんだよ。カズ君に色んな曲を教えてもらってばっかりだったけど、私だって独りで色んな名曲を探して、聴いてるんだから。
だからもっと演奏しよう。色んなステージに立とう。これからは聴く人と演奏する人に分かれるんじゃなくて、一緒にステージに立って歌おうよ。
私ももっとギターを練習する。いつか他の楽器も弾けるようになる。歌ももっと上手くなる。
そうすれば、もっともっとたくさんの宝物を見つける事が出来る。飽きるまで探そう。お腹いっぱいになるまで創り出そう。溢れるぐらいの『楽しい』で満たしに行こうよ。
この旅に、終わりなんてきっとないんだから。
――うん、僕もそう思う。だから、一緒に行こう
言葉に、声に出していないはずだった。
なのに、一瞬、ほんの一瞬だけ、カズ君のそんな言葉が聞こえた気がした。
まるで心と心が、一瞬だけ目に見えない糸で繋がれた気がしたんだ。
私は嬉しくなって、更に声に力が籠る。
この想いがどんな駅に到着するのかは分からない。
でも、できるならば。ずっと遠くまで運んで欲しい。辺境の地まで。
走れ、走れ。私が観た事もない遠い場所まで。アメリカでもイギリスでも、未来でも過去でもどこへだっていい。ただただ遠くへ運ばれて行け。
銀河鉄道の夜のように、夜空を走る列車に載せて、星の裏側にまで、宇宙の果てまで。どこまでも走っていけ。
そう願いながら、私は歌った。
気が付けば、演奏は終わっていた。
「あれ?……ああ、そっか、もう終わりか」
そんな声を出したのは、虹夏先輩だった。
「うん。……最高のデュオだったよ、二人共」
リョウ先輩が優しく拍手を送ってくれたのを皮切りに、店長さんも、後藤さんも虹夏先輩も優しく拍手してくれた。
当の私達は、歌い切った実感がまだ湧かなくて、ただお互いの顔を見つめ合うしかなかった。
やがてそっとギターのストラップを外したカズ君が笑った。
「あっ……」
SIDEROSのステージでギターを弾いていたカズ君じゃない。教室でぼんやり音楽を聴いていた顔でもなかった。
結束バンドの皆と一緒に、演奏を終えた時の微笑み。
私と一緒に、CDのアルバムを聴き終えた時の優しい表情だ。
「THE BOOMの『中央線』が、色んな人にカバーされたってのは教えたよね」
「……う、うん」
自分のギターをそっと撫でながら、独り言みたいにカズ君は呟いた。
「その中に、矢野顕子って言うシンガーソングライターが、ピアノの演奏と合わせてアレンジカバーして、その後に小田和正がゲストギターとして招かれて歌ったんだ。僕の名前も和正だから、この曲は結構好きで。それで、ええと……クラスの皆には、中学の卒業ソングにしたいとか、再会の歌だとか、色々理屈を捏ねて……全部が嘘って訳じゃないんだけど、でも、根っこの部分を探るとさ。この曲を合唱曲に選んだ本当の理由は」
カズ君はそこで言葉を区切って、静かに大きく息を吸って、私の顔を見た。
「ただ、君に歌って欲しかったからなんだ。だから、この曲を選んだんだ」
息が止まりそうになった。
そっか。あの時残念そうな顔をしたのは――私のソロパートが生まれなかったからか。
どこまでもカズ君らしい、身勝手な願望だった。私に中央線を歌わせて、クラスメイト達にバックコーラスをさせて、自分は指揮者として一番前で私の歌を聴くつもりだったんだ。
でもその願望を叶えられないって気付いて、それを胸の奥に押し込んで隠したままにしたんだ。
「じゃあ……なんで今まで一緒にデュオをしてくれなかったの?」
「……僕はどこまでも聴き専でさ。喜多の歌声に、自分の声を混ぜたくなかったんだ。あんまり自分の声が好きじゃないし、喜多の歌声に自分の声を混ぜる価値なんてないってずっと思い込んでたんだ。不純物を混ぜるような気がしてさ」
そんな事ない、そんな事ないよ。カズ君の歌声はどこまでも優しいよ。誰かを癒してくれる、綺麗な声だったよ。
「でも今日SIDEROSのサポートギターをして、ボーカルとして歌って、……演奏が終わって、楽屋から出た時、純粋に思ったんだ。二人でこの曲を演奏したいって。僕がどんなに不格好な歌でも、一緒に歌えば、THE BOOMの曲でも、矢野顕子のでもなく、小田和正の曲でもない、僕と喜多だけのロックが歌えるんじゃないかって想えたんだ。それで喜多との演奏が終わったら、今度は結束バンドの皆と歌いたい。ステージの上でもいい、動画でもいい、スタジオ練習でもいい。ただ、皆と一緒に奏でたいって、素直に想えたんだ。それをこのステージで確認したかった」
胸の奥から、熱い塊がせり上がってくる。それを吐き出してしまわないように、息を止めるように堪えて、カズ君の言葉の続きを待った。
「半年前に、自分の一生を注いでもいいと思える唯一を見つけろって言われたんだ。それが、あのステージの上にある。SIDEROSの皆と演奏してそれは分かった。でも、何かが欠けてるって思ったんだ。それがないと寂しいって思った。それで今、こうして喜多と演奏して、確信した」
だから。
「喜多に……僕のギターを、僕の一生を捧げたいと、これからもそうであって欲しいと思うんだ」
それが僕の答え合わせ。
「君が僕の隣に居てくれると、嬉しいと思う……うわっ!?」
気付いたら私は椅子から飛び出して、カズ君に飛び込んでいた。突然私が抱き着いて来た事に驚いたカズ君だったけど、そのままひっくり返らずに踏み止まって、私を受け止めてくれた。
「カズ君、カズ君!」
ステージに膝を突きながら彼の腰に腕を回し、私は力いっぱい抱きしめた。
カズ君のお腹に自分の額を押し付ける。私の涙で服が濡れちゃうけど、それぐらい許して欲しい。
私の心の中は、今嬉しさでいっぱいだ。これは嬉しくて流れちゃう涙だから。だからそれぐらい、大目に見て欲しい。
「……いつからこんな泣き虫になってたのかなぁ……」
カズ君は若干呆れながら、私の頭をそっと撫でてくれる。
カズ君のせいだし、カズ君のおかげだよ。私の心をこんなに動かしてくれるのは、いつだってカズ君なんだから。
「あーあ、カズ君、まーた喜多ちゃん泣かしてる~。罪な男だなぁ。ほらぼっちちゃん、死んでる場合じゃないよ!今最高にエモいシーンなんだから!」
「あばー……」
するととんとん、と足音が響いた。ステージの上に登って来た、結束バンドの皆だ。後藤さんは半分意識がなくて引きずられてきてるけど。
「人聞きが悪い。僕は思った事を言っただけですよ」
「カズって結構ドストレートにそういう臭い事言えるよね。二人だけの世界作っちゃって、私達は二の次?」
「そんな事ないですよ……。僕にとっては、このライブハウスも、先輩達も、大切なんです。僕のもう一つの夢の出発点は、間違いなくここだから」
「どういう事?」
「……ずっと考えてたんです。海外のロックを翻訳するのも、きっと最高に楽しいと思う。でもここ半年で、それだけじゃ満足できないと思えて、色々考えてて。それで、音楽を好きなだけ聴けて、好きなだけ演奏できる場所が欲しいって。そこで暮らしていけたらって考えてて」
「え……まさか」
「ライブハウスを建てたいんです」
埋めていた顔を上げると、暗闇の中で驚く店長さんの顔が見えた。
「えぇー!いいじゃんカズ君その夢!私絶対応援する!それでカズ君がライブハウスをオープンしたら、私達の結束バンドを最初にライブをさせてよ!もちろんワンマンで!」
「ちゃっかりしてるね虹夏。でも、カズのライブハウスなら私も最初にやりたい。カズ、建てるなら1000人くらい入れる箱にしてね」
「好き勝手言いますね……」
先輩達が嬉しそうにカズ君の頭を撫で始める。彼は少し照れ臭そうだったけど、それでも嫌じゃないのかされるがままでしばらく撫でられ続けた。
「ライブハウスの名前とかもう考えてるの?」
リョウ先輩がそう訊くと、カズ君はしばらく考え込み、ぽりぽりと頬を掻いて、呟いた。
「ライトハウス」
「ライトハウス?」意識を取り戻した後藤さんがぽかんと聞き返す。4人分の視線を受け止めながら、カズ君は少し恥ずかしそうに、私達から目を逸らしながら言った。
「……
小さくぼそりと呟かれた言葉に、私達は一瞬呆気にとられ、やがていつかと同じように、感極まったように虹夏先輩が後藤さんを引っ張ってカズ君に勢いよく飛び込んできた。リョウ先輩もワンテンポ遅れて、倒れ込んだ私達の上に飛び込んでくる。
だって、英語が得意じゃない私達だって、カズ君が何を想ってその名前を付けたのか分かる。
私達の、結束バンドの為のライブハウスだ。
私達がカズ君の事を大切に想っていたのと同じように、カズ君も私達の事を、ちゃんと大切に想ってくれていた。それが、とても嬉しい。私達は見えない糸……ううん、見えないバンドでちゃんと束ねられているって分かったから。
カズ君は私達4人分の重さを支えきれずに、椅子からひっくり返るように潰された。
でもその後、5人分の笑い声がSTARRYのホールに響いた。
「……良かったな、カズ。ちゃんと見つけられて。それを大事にしろよ」
星歌さんはどこか嬉しそうに笑った。手のかかる子供が成長した場面を見た、母親のような愛情に満ちた、優しい笑顔だった。
あの後、閉店時間がとっくに過ぎたライブハウスを、店長さんは特別に朝まで私達の貸し切りにしてくれた。
中央線を歌い切ったからか、それとも私達が飛びついて押しつぶしてしまったからか、体力が尽きたカズ君がステージの上で眠ってしまったからだ。揺すっても叩いても起きる気配がまったくなく、どうしたものかと悩んでいたら。
「もう夜遅いし、今日はここで泊ってけ。あんま散らかすなよ。あとで毛布持って来てやるから」
店長さんがそう気遣ってくれたのだ。
時計を見たら針はもう夜の11時を過ぎていて、後藤さんも今から帰ると深夜になってしまうという事で、私達はその言葉に甘える事になった。
こうして突発的にお泊り会になった私達。
ライブハウスに泊まるというあまりない体験をすることになって、私は少しワクワクしてしまって寝るどころじゃなかった。
一応、ステージの上に店長さんが持って来てくれた布団や寝袋を敷いてみたけど、全然寝れる気はしなかった。ステージの上で一晩を明かしちゃうなんて、なんだかいけない事をしてるみたいでわくわくする。
「郁代、今日の中央線凄いよかった。あんな風にも歌えるんだね」
「えへへ、ありがとうございますリョウ先輩!」
「うん、それでなんだけどさ。郁代、バラード曲をやってみない?」
「え、私が、ですが?」
「さっきぼっちと一緒に話してたんだけど、郁代にも歌詞を書かせて、何か歌わせてみてもいいんじゃないかって。郁代は郁代で、ぼっちとは違った良い歌詞を書けるんじゃないかって」
「……やってみます!」
「あ、でもカズへのラブソングはダメだよ。ぼっちが死ぬから。動画の撮影中ならともかく、ライブの演奏中にぼっちに死なれるのは困る」
もう既に今日だけで何回も意識不明になっている後藤さんを横目にリョウ先輩がぼそりと呟いた。
書きませんよそんなの!
「でもさ、カズ君も私達の事、思ったよりしっかり考えててくれたんだね。デビューするステージがないなら自分が作っちゃえばいいって、発想がぶっ飛びすぎてびっくりしちゃったよ」
「うん。でも本当にカズらしいと思う。自分が好き放題演奏出来て、それでいてたくさんのバンドの曲を聴ける場所なんて、カズは絶対に欲しがるよ」
「そうだね!」とにししと歯を見せて嬉しそうに笑う虹夏先輩。その言葉に、私達も思わず釣られるように笑ってしまう。
「店長、一番うれしそうだったね」
「カズ君がお姉ちゃんの事を尊敬してるって、お姉ちゃんも知ってるからね。今頃上の階でお酒飲みながら笑ってるんじゃないかな?」
「あー、想像できる。店長、カズの事弟みたいに可愛がってるよね」
「えー?じゃあカズ君は私の弟ってことになるかなぁ」
スマホでラジオ代わりに音楽を流しながら、私達は言葉を交わした。
今日のライブ良かったとか、4月のライブのセトリを少し変えようとか、好きな曲がどうだったとか。
「あ、あの」
時計の針が深夜の1時になった頃、後藤さんはスマホを取り出して私達に画面を見せて来た。
そこには、今年の参加は既に締め切られた『未確認ライオット』のホームページが表示されている。
「ら、来年のこれに、み、皆で出てみませんか?」
おずおずと、人見知りを表に出しながらも、後藤さんはそう言ってくれた。
虹夏先輩は力強く頷き、リョウ先輩は優しく微笑み、私は「うん!」と力強く頷いた。
それから私達は眠くなるまで話して、話が飽きたら適当に音楽を掛けて、気付いたらそれぞれいつの間にか眠りに落ちた。
目が覚めてスマホを見ると朝の6時ぐらいで、太陽が昇り始める頃だった。硬いステージの上で眠っていたせいか、私の身体はあちこちが固まっていた。周りを見回すと、結束バンドの皆が小さく寝息を立てているのが見える。私は皆を起こさないように静かに立ち上がった。身体を解すついでに何か飲み物を買ってこようと、私はコートを羽織ってSTARRYの外へ出ていった。
予想していた通り、STARRYの外はちょうど朝焼けの景色だった。
階段を登っていくと、遠い空の向こうから徐々に日の光が滲み出していて、冷たい冬の空気がちくちくと私の頬を刺した。
両手を掴んで大きく伸びをして、下北沢の夜が徐々に明けていく朝の空を、私はのんびりと眺めていた。
建物の影が多くて、STARRYの周りはまだ少し薄暗い。人もほとんどいない、静かで冷たい空気が満ち満ちている。
私は周りに誰も居ない事を確認して、静かに口ずさむ。
どうせならもう ヘタクソな夢を描いていこうよ
どうせならもう ヘタクソで明るく愉快な愛のある夢を
――ガチャ
STARRYの入り口の方から、扉が開く音がした。
私は歌を止めて後ろを振り返る。
地下の階段から登ってきたのは、欠伸を噛み潰すぼさぼさ頭のカズ君だった。起きたばかりなのか、眼がまだ半分も開いていない。見ていてなんだか笑っちゃいそうな寝ぼけ顔だった。
「カズ君」
「おはよう、喜多」
「……おはよ。ごめんね、起こしちゃった?」
「ううん、いつもこの時間に起きるから……昨日は寝ちゃってごめん」
カズ君はそう眠気半分にぼやきながら、生垣の冷たいコンクリートに腰かけた。
「……いい朝だね」
「うん」
徐々に明るさを取り戻し、夜は光に滲み、どこかへと消えていく午前6時の空。
ただ太陽が昇っていくだけなのに、見慣れたはずのいつもの朝なのに、今の私にとって、この瞬間が、何故かとても大事な一瞬の気がした。
「何か歌ってた?」
「え?」
急にそう訊かれて、私は少し驚いた。
「なんとなく。ほら、誰もいない道って、鼻歌とか歌いたくならない?Aqua Timezの『決意の朝に』とか」
「……うん、分かるよ」
雀が電線に飛び乗り、ちゅんちゅんと鳴いている。
息を吸うと、冷え切った冷たい空気が喉を伝って肺の中を冷やしていく。
私は小さく、祈るようにさっきの歌の続きを歌った。
他人の痛みには無関心
そのくせ自分の事となると不安になって
人間を嫌って 不幸なのは自分だけって思ったり
与えられない事をただ嘆いて 三歳児のようにわめいて
愛という名のおやつを座って待ってる僕は
自然と足がステップを踏み出し始める。
カズ君はそれを、懐かしい物を見るように静かに見守ってくれている。
まだ下北沢の町は眠っている。目を閉じて眠り続ける住民の人達を起こさないように、静かに囁くように私は歌う。
でも、どんなに小さい声でも、カズ君ならきっと聴いてくれる。きっと受け取ってくれる。
真冬の朝の、冷たい路上ライブ。
聴いてくれるのは私の幼馴染。ドラムもギターもベースもいない、聴かせられるのは私の声だけ。
けれど歌えるなら、私の歌を聴いてくれる人が一人でもいるなら。私はどんな時でも歌い続けよう。
マイクもスピーカーも、アンプがなくても。
ロックはいつだって、私の中で響き続けているのだから。
アスファルトの照り返しにも負けずに
自分の足で歩いてく人達を見て思った
動かせる足があるなら 向かいたい場所があるなら
この足で歩いてゆこう
もう二度とほんとの笑顔を取り戻すこと
できないかもしれないと思う夜もあったけど
大切な人達の温かさに支えられ
もう一度信じてみようかなと思いました
私はリョウ先輩を信じる。
私は後藤さんを信じる。
私は虹夏先輩を信じる。
私は音楽を信じる。
私はギターを信じる。
私は結束バンドを信じる。
私はカズ君を信じる。
カズ君と皆を信じてる。
私達はビートルズみたいにはならないし、なれない。
世界の頂点とか、日本一とか、そういうのは後回し。
ただただ、今の私は、自分の喉が枯れるまで歌い続けたい気分だった。この心臓の鼓動が止まるまで、自分の血液の中にある熱を、結束バンドの皆の為に使いたいと思えた。
将来がどうなるとか、いつか来る別れとか、そういうのは未来の私に任せよう。
大丈夫。私達はいつだって一緒だから。神様だって、私達の
辛い時 辛いと言えたらいいのになぁ
僕達は強がって笑う弱虫だ
淋しいのに平気な振りをしているのは
崩れ落ちてしまいそうな自分を守るためだけど
そして、いつか私の幼馴染が驚くような。ずっと永遠に聴きたくなるような音楽を歌ってやる。
私の歌で、結束バンドのロックで、カズ君の一番になってやるんだから。
だから待ってて。ちゃんと追いつくから。
この歌は、私から未来のカズ君への宣戦布告だ。
過ちも傷跡も 途方に暮れ べそかいた日も
僕が僕として生きてきた証にして
どうせなら これからはいっそ誰よりも
思い切りヘタクソな夢を描いてゆこう
冷たい風が道路の真ん中を通り抜ける。登り続ける日の出が、私とカズ君を照らし始めた。
長かった夜は終わり、新しい朝が始まる。
また今日も、新しい音楽を探しに行こう。
言い訳を片付けて 堂々と胸を張り
自分という人間を 歌い続けよう
覚悟してね、カズ君。
私にこんな気持ちを気付かせちゃったんだから。ちゃんと責任、取ってもらうからね!
作中に登場したバンド名&曲名
John Lenon - God
THE BOOM - 島唄
- 中央線
リメンバーミー - 音楽はいつまでも
結束バンド - 忘れてやらない
- 小さな海
The Killers - Mr.Brightside
REO Speedwagon - Take It On the Run
オフコース - 言葉にできない
- Yes-No
Maroon5 - Sugar
矢野顕子 小田和正 - 中央線
Aqua Timez - 決意の朝に
これもロックの為…(弦一郎感)
前回もたくさんの感想、評価、誤字、ここすき、Xでの感想ポスト等ありがとうございます。いつもチェックして元気をもらってます。低評価入れた人はFUCK凸YOU。
これにてSIDEROS編、工事完了です……
夢の中でヨヨコパイセンがわざわざ殴って来たからSIDEROSをちょろっと書こう、と思いながら執筆していたらとんでもない文章量になってしまった…本当は文化祭編まで一気に書くつもりだったのに。
SIDEROSを取り巻くあれこれを書き連ねて居たらこんな感じに。12万字以上言ってるんじゃない?喜多ちゃんの語りだけで6万字近く行ってるよ。バカかな?
自分が物書き兼音楽オタクに染まったきっかけが、『ブレイブストーリー』と言う小説を原作にしたファンタジー映画と、その主題歌でした。
テレビのCMでアクアタイムズの歌に聞き惚れ、親にせがんで映画に連れて行ってもらい、そして家にあった宮部みゆきの小説が、自分を一人の物書きとしての道を歩ませました。
もし、ブレイブストーリーを観て興味を持ったのが原作の小説ではなくアクアタイムズの楽譜かギターだったのなら、きっと自分は物書きじゃなくギタリストを目指していたんじゃないかと思うと、とても不思議です。
ぼざろの二次創作を書き始めて、こういう形で自分の人生を変えた『決意の朝に』を書く事になるとは思いもしませんでした。
ぜってぇ喜多ちゃんにアクアタイムズ歌わせる……そういう覚悟を込めて書きました。
次回は第二部のあとがきと、今後の予定をちょろっと書いておこうと思います。
具体的な事を先に言っちゃうと、この作品、しばらくの間休載します。その理由とかも含めて色々ね。
↓いつもの宣伝
Xのアカウントでのんびり呟いてます。
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カーラジオと言う名義で新しく作ったアカウントです。ここではその時の気分で聴く曲を垂れ流したり小説の更新予告をしたりしてます。この小説内で紹介しきれなかったロックもここに載せていくつもりなので、よければフォローとかしてくれると嬉しいです。
あと、オススメ曲とかあればぜひこのアカウントに送り付けて欲しい。DMでもリプでも、推し曲があれば良ければ教えてください。絶対に聴きますので。
あと、活動報告にて推し曲募集中です。どうぞ、どしどし送ってください。
喜多ちゃんに推したい音楽
ここすき、Twitterで宣伝、感想などで幸福度を上昇させてるので、たくさんもらえればきっとモチベーションが上がるのでください(正直)
感想もっともっともっと欲しいんだ……具体的には500件くらい(強欲の壺)
高評価くれ~感想くれ~!(承認欲求モンスター感)