♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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美桜と恋愛(その2) 2018/4/22(Sun)

 三日間の映画撮影は無事に終わってわたしは家に帰ってきた。

 無事と言っても何度もやり直しをさせられたり、脚本が急遽変更になったり、雨が降ってしばらく撮影できなくなったりといった小さなトラブルはあった。おかげで予定していたところまで撮り終わらなかったりもしたけど、そういうのはまあよくあることらしい。

 廃校には今週末もう一回行ってそこで撮りきる予定。

 後のシーン──家とか通学路とかは別に撮れるので、こっちは登場する出演者だけをその都度呼んでスタジオやロケで撮影する。

 他の人の出番をえんえん見させられてるのはきつかったけど、ここまで来ると出番がほどほどの量なわたしの役はちょうど良かったかもしれない。

 

「ただいま。みんな、お土産買ってきたよー」

「美桜さんをお届けにまいりました。ご心配をおかけしたかと思いますが、今回は無事に終了いたしましたので──」

「これはご丁寧に。あら、ずいぶんたくさんお土産買ってきてくれたのね?」

「みんなにも配らないといけないからね」

 

 帰りはマネージャーさんが付き添ってくれた。

 お土産がいっぱいになってしまったので荷物持ちの意味が大きかったかもしれない。

 

「でもあんた、よくお土産買う時間あったわね?」

「わたしはなかなか外に出られなかったからマネージャーさんに買ってきてもらったの」

「恐れ入ります」

 

 観光している時間があれば最高だったけど、さすがにそれは高望みしすぎだ。

 他の出演者とも三日間一緒だったせいかけっこう打ち解けられたし、演技の勉強もたくさんさせてもらった。

 家に帰りついた時はもう夜だったので、マネージャーさんが挨拶だけして帰っていった後(マネージャーの仕事も本当に大変だと思う)、わたしは家で簡単な夕食をとった。

 美空に向こうで撮った写真を見せたりしているとあっという間に時間が過ぎていく。

 でも、家にいるというだけで疲れが取れる気がするのはどうしてだろう。

 

「本当にお疲れ様、美桜」

「ありがとう。うん、本当に疲れたよー……」

「美桜がそうやって弱音吐いてるの見ると安心するわね、なんか」

 

 そうだろうか。けっこう愚痴言ったりしてる気がするんだけど。

 

「明日も学校休むんでしょ? 一日ゆっくりして疲れを取りなさい」

「そうする。お土産は日持ちしそうなやつを残しておいてね」

「じゃあお饅頭とかは食べちゃっていいわけね」

 

 シャワーを浴びてパジャマに着替えたらもう寝ないとまずい時間だ。

 さすがに三日間の疲れが取れないまま登校するのはつらい。月曜日もお休みするスケジュールにしておいて正解だった。

 でも、目覚ましのアラームはいつもの平日と同じにセットする。

 どうしてかと言えば、

 

「おはよう、美桜ちゃんっ。お帰りなさいっ」

「おはよう。それからただいま、恋」

 

 出かけている間できなかった日課のランニングをするためと、恋に会うためだ。

 積もる話があるのでちょっとだけ公園のベンチで雑談。

 ついでにお土産も渡す。大きいものを持ってくると邪魔なのでキーホルダー。どこにでもあるような代物だけど小さくてかさばらないし、あまりちゃんとしたものだと恐縮されてしまいかねない。これから似たような感じでお土産渡す機会が増えるだろうからこれくらいのほうがいい。

 こうやってお土産渡していけば少しは玲奈からもらった分も返せそうだ。

 

「食べ物のお土産はみんなと一緒に学校で渡すね」

「ありがとう。そっちも楽しみ。でも学校、今日はお休みするんだよね?」

「あはは。思ったより疲れちゃったから、今日はお休みするよ」

 

 なのにこうやって走ってるのは怠けるとその分、しっかり身体が鈍るからだ。

 一日サボると取り戻すのに三日かかる、というのは体感的にも真実だ。

 

「みんなにもそう言っておいてくれる?」

「わかった。……えへへ、私だけ先に美桜ちゃんに会えちゃった」

 

 そう言った恋はキーホルダーを嬉しそうにしまうと、わたしの手に指を絡めてくる。

 

「じゃあ、美桜ちゃん。今日の分、しよ?」

「う、うん」

 

 言われたわたしはどきどきしながら恋に身体と顔を寄せる。

 三人で初めてのキスをして以来、恋は朝会うたびにキスをねだってくる。学校だとなかなかタイミングが掴めないし、生徒の目があるところよりはわたしとしても気が楽なんだけど……朝の日課みたいになるとそのたびにそわそわするというか、なんというか。

 指を絡めたまま目を閉じて、触れ合うようなキス。

 離れるまでの時間は回を重ねるごとにほんの少しずつ長くなっている気がする。

 

「あの、恋。……これ、回数記録してるんだよね?」

「してるよ? 玲奈ちゃんに教えないといけないもん」

「そっか」

 

 わたしと恋がキスしてるとことは玲奈も知っていて、それどころか回数も把握している。

 同じ回数だけ玲奈にもキスする権利が発生するシステムらしく「わたくしにはまとめてくださいますか……?」と今から誘惑を受けている。

 一回ごとでもどきどきするのに一日に何回もキスするとかほんと困ってしまいそうなんだけど。

 

「じゃあ、ゆっくり休んでね!」

「うん。ありがとう、恋」

 

 小休止の後、二人で少し走ってから家に帰った。

 今日はお母さんが早めに家を出ないといけない日だったのでわたしが見送る形になる。

 

「美桜、お昼は適当に食べてもらうことになるけど、お金渡しておきましょうか?」

「大丈夫、お金ならあるし、わたしだって簡単なものなら作れるんだから」

「本当、頼もしくなっちゃって」

 

 お姉ちゃんが学校に行くのも見送ると美空と二人に。

 

「美空は今日どうするの? 研究所?」

「うーん。どうしようかな。お姉ちゃんと一緒にいてもいい?」

「わたしはもちろんいいよ」

 

 小学校に留年システムはないし、研究所のほうも不定期で問題ない。

 むしろ天才少女としての美空が求められているのは予定通りの学力向上。与えられた課題をこなせるのであれば研究所に顔をだしても出さなくても変わらない。

 取り組んでいる参考書がわたしの教科書より難しかったりするのはほんと凡人の理解の外だけど。

 ……難しい問題って、単に学年が上の問題が出てくるだけじゃなくてひねりが加えてあったり、簡単な解き方を思いつくかどうかで全然変わったりするから難しいんだよね。

 

 食べ終わった食器の洗い物を済ませたら久しぶりのリビングでのんびりする。

 美空もわたしの傍で課題をもくもくとこなしていて、

 

「ね、お姉ちゃん?」

「なあに?」

「わたしもお姉ちゃんや美姫お姉ちゃんみたいになれるかなあ?」

 

 突然の問いかけにわたしは目を瞬いた。

 

「美空も芸能人になりたいの?」

「うん。お姉ちゃんたちが楽しそうにしてるのを見てて、いいなあって」

「そっか」

 

 芸能一家、なんて言われたりする我が家。

 家族にそういう人がいると普通より芸能関係に触れる機会も多くなるし、興味だって持ちやすくなる。わたしもお母さんやお姉ちゃんの影響をかなり受けてる。

 美空が興味を持つのもある意味当然だ。

 だんだん丈夫になってきて、学校にも普通に通えるようになってきているから体力的にも無理とは言い切れない。顔はもちろん十分可愛い。

 

 だからわたしは妹に尋ねた。

 

「美空はどんなことがしてみたいの?」

「……うーん」

 

 まだ難しいか。

 

「やりたいことと、できることと、向いていることは全部別だったりするもんね。焦らなくてもいいから、まずはそれを考えてみたらいいんじゃない?」

「私のやりたいこと?」

「そう。それか美空の得意なことかな」

 

 わたしの場合は歌いたいとか踊りたいといった芸の道への興味が最初。お姉ちゃんは可愛いが武器になるモデル業が色んな意味で向いてた。

 きらきらする、なんて言い方があるけど。

 芸能界に入ることが目標で、モデルとか役者とか声優とかそういうのにこだわりがないなら、美空が得意なことを武器にするのがいいと思う。

 

「わたしは美空がやりたいことなら応援するよ?」

「うんっ。ありがとう、お姉ちゃん」

 

 少しでも参考になればと、わたしはわたしの知っている芸能関係の話をいろいろ話した。

 美空の癒し効果のおかげで疲れとストレスもかなり取れて翌日から元気に学校へ通えたのだった。

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