♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女 作:緑茶わいん
「これがカードゲーム……」
夏休みのある夜、わたしの部屋。
パソコン画面に表示されたゲームのスタート画面を見て、美空が感慨深げに呟いた。
チェスや将棋での配信を何度か終え、そろそろDCGにも手を出してみようか、ということでまずは遊んでみることにしたのだ。
実際遊ぶのは初めてだけどゲームの内容はある程度二人とも予習済み。
「チェスとか将棋とはぜんぜん違うね」
「そうだね。どっちかっていうとゲーム機で遊ぶほうのゲームに近いかな」
チェスや将棋のアプリはシンプルなゲーム画面が多い。古くからあるゲームでアナログでも普及しているだけに下手な演出がノイズになるからだろう。
将棋とか向こうの世界でもおじさんとかおじいちゃんが趣味でやってるイメージだった。ニュースになるのは若くて強いプロが出てきた時とタイトル戦の時くらい。
「でも、大会では賞金が出たりするんだよ」
「知ってる。Eスポーツっていうやつでしょ?」
「そうそう」
こっちだとFPSや格ゲーなんかよりもパズルゲームとかクイズゲームがメインだけど。
ある意味、タイトルが変わるごとにバランス一新されたりしてゲームシステムに勝敗が左右されづらい分、こっちのほうがスポーツ感はあるのかも……?
「とりあえずやってみよっか」
「うんっ」
ユーザー名を登録すると、ちょっとしたストーリー仕立てのチュートリアルが始まる。
背景ストーリーとしては世界の異変に際して神々、妖精、幻獣、人間、魔物などがそれぞれの陣営に分かれ争うことになった……っていう感じらしい。
いろんな種族の女の子が小さな争いをしているところに出くわした主人公は誰にまず話しかけるか選ぶことになり、これがそのまま最初にもらうデッキの種類につながる。
うん、リアル世界も女の子がいっぱいだからか、当たり前のように女の子がいっぱい出てくるのはいいところかもしれない。
「どれにするの、美空?」
選ばなかったデッキのカードも入手することは可能だし、レアカードはそんなに入ってないからぶっちゃけどれでもいいんだけど好みの問題はある。
自分に合わないデッキを選んでしまうとぜんぜん勝てなくて最初からやり直し、なんてこともあるのでわりと大事だ。
「私、もう決めてるんだ。妖精のデッキにするの」
「そうなんだ。どうして?」
可愛いからかな? と思っていると「妨害ができるから」との答え。
「強いカードでも出てくる前に妨害しちゃえばなにもできないでしょ?」
思ったよりも堅実というか攻略を重視した回答にわたしは「さすが美空」と素直に口にした。
デッキをもらったら使い方を教えてもらいながらNPCとバトル。
他のプレイヤーとの対戦じゃないので時間制限はない。慌てなくていいから初心者にも優しい。
こういうの、ひとつでも他のカードゲームをやったことがあるとちょっと説明が丁寧すぎて「早く対戦させてよ」と思ったりするよね……とか考えていたら、美空は一つ一つの説明にふんふんと頷きながら淀みない手つきでゲームを進めていく。
え、あれ、初めてだよね? なんか早くない?
一つも迷っている様子がないし、普通に勝ってる。いや、勝てるようになってるんだけど。
「お姉ちゃん、説明終わったから対戦できるようになったよ!」
「さっそくやってみる?」
「うんっ」
わくわくしながら対戦ボタンを押す美空。
あれ、これわたしが傍についてる必要なくない?
わたしだってこのゲームは初めてなわけで。なんならわたしと美空で対戦しても普通にわたしが負けるんじゃないかって気がしてきた。
……うん、やめよう。前世でもあんまり強いほうじゃなかったけど、その理由が運とかカードの強さじゃなくて単なる実力だったとか気づきたくない。
「なんか待ってる間どきどきするね」
「でも配信するよりは気楽じゃない?」
「そうかも」
美空もだいぶ配信に慣れてきたので二回くらい前からは一人で配信するようになっている。
……と言っても今のところ念のためわたしかお姉ちゃんが映らないだけで傍についているけど、頭のいいこの子なら一人でも特に問題はないはずだ。
ゲーム自体もエモーション機能でちょっとした意思表示ができる以外、チャットとかそういった機能はないので「ゲームがしたいだけでコミュニケーション取りたいわけじゃないです」っていう人でも安心。
女の子の多いゲームだと交流機能多いのかなと思っていたので意外だったけど、調べてみたら「嫌がらせや喧嘩が横行したので廃止になった」とあった。男子より積極的に話す人が多いから洒落にならなかったんだと思う。
「よかった。相手の人も上級者じゃないみたい」
「できるだけ同じくらいの人と当たるようになってるみたいだね」
勝つとポイントが増えて一定になるとランクアップするよくあるシステムが採用されている。
と言っても、サブアカウントで遊んでる上級者やいきなり課金でカード集めまくった人なんかは弾けないので妙に強い人と当たることもある。
美空も初心者にしてはものすごく上手いけど、運もあるし負けることもあった。
「むぅ……難しい」
「美空にはどういうところが難しいの?」
「対戦相手のできることがみんな違うところかな」
チェスに例えると駒の配置が違うどころか自分の持ってない駒を持ってる相手までいる。
「カードの種類覚えないとだめかも。あと、カードもできれば全種類揃えないと」
「いきなりそこまでする?」
「そうじゃないと駒落ちで戦ってるようなものだよ、お姉ちゃん」
持ってるカードで試行錯誤するのも楽しいと思うけど、頭脳ゲームとして真剣勝負を楽しむ人にとっては確かにそうかも。
「お小遣いどれくらい使っちゃおうかなあ」
無課金でプレイしていても少しずつはカードが集まるけど、早く全部集めようと思ったら課金が必要。
いきなり投資を検討し始めた美空を見て、ハマってくれたことを嬉しく思うと同時に「一番人気のあるゲーム勧めてよかった」と心から思った。
とりあえず初期配布されている無料通貨でカードを購入した美空はさっそくデッキの入れ替えに悩み始める。
「うーん、こっちのカードとこっちを……あ、だめだ。枚数オーバーしちゃう」
このゲームもチェスをモチーフにしてるところがあるみたいで、場に配置して戦わせるユニットにはキング、クイーン、ナイトなどの役割が付加されている。
チェスの駒数にならってキングやクイーンのユニットは一種類、ナイトは二種類までなどと投入制限があり、さらに一種類のカードは三枚までしか投入できない。
当然、強力なカードはキングやクイーンであることが多いので入れ替える時は悩みどころだ。
イラストは美少女から可愛い・綺麗な動物、異種族、格好いいモンスター、さらには美形の男子まで幅広く見ているだけでも楽しめる。ギャラリー機能やカードの詳しい解説・裏設定が見られる機能なども充実。
「うん、これは確かにカードプールを増やしたくなる」
美空に対戦相手を作ってあげたいし、っていうかわたしもやりたいので後で自分のアカウントも作ろうと思う。
どうせお小遣い余ってるし、少しぱーっと課金してもいいかもしれない。
空き時間にプレイできるようにスマホにもインストールしておこう。
……とやっていたら姉妹揃ってそこそこハマってしまい、後に再び姉妹での配信をすることになったりもしたけど後悔はしていない。