♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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美桜とお婆ちゃんの家(その2) 2018/8/13(Mon)

『その方の訳書でしたらわたくしも読んだことがあります。まさか、美桜さんのおばあ様だったとは』

『北海道って涼しいんだよね。いいなあ、夏は部活出るのが大変だよ~』

『わたしもお婆ちゃんの本ちゃんと読まないと。北海道のお土産いっぱい買って帰るからね』

 

 北海道の夜は向こうに比べて静かな気がする。

 土地がいっぱいあって家の間隔が広めだからだろうか。

 お婆ちゃんの家のリビングはけっこう広くて玲奈たちとグループチャットで話すのにもよかった。ほんとは電話したいところだけど、お互いの都合もあるし三人同時だと逆に話しづらかったりもするので文字で。

 道中で撮った画像なんかをついでに貼りつけて少しでも雰囲気を楽しんでもらう。

 せっかく北海道に来たからには本物のシマエナガに会ってみたいけど、明日一日程度じゃまるまる探し回っても見つからないかも。

 代わりにグッズとか売ってたら買って行こう。

 

 しばらく話して、玲奈たちにおやすみの挨拶を送ったところでお婆ちゃんがリビングに顔を出した。

 

「美桜、まだ起きていたの? 美姫たちは?」

「お姉ちゃんたちは寝ちゃったよ」

 

 わたしたちはお母さん&美空、わたし&お姉ちゃんと二人ずつに分かれて泊まっている。

 二部屋も余っているのはもともとわたしたちが遊びに来てもいいように考えていたかららしい。

 

「そう。じゃあ、みんなに内緒でホットミルクでもどう?」

「飲む!」

「はいはい。じゃあ、ちょっと待ってね」

 

 お婆ちゃんのホットミルクには焼いたマシュマロまでついてきた。

 ほっこりしていたら、お婆ちゃん自身は焼酎とスルメをテーブルに置いて楽しみ始めた。マシュマロはスルメを温めるついでだったのでは。

 ミルクを吹いて冷ましつつじっと見ていると「珍しい?」と聞かれる。

 

「あの子もお酒好きでしょう?」

「うん。でも外ではほとんど飲まないし、うちでも酔いすぎないようにしてるみたいだから」

「しっかり母親してるみたいね。じゃあ、大きくなったら一緒に飲んであげなさい」

「けっこう先の話だなあ」

 

 わたしはまだ中一。

 高校を出て、大学に入って──元の身体でも未経験の年齢に到達しないとお酒は飲めない(先輩の家で飲んだのはノーカン)。

 まだ見ぬ未来に想いを馳せていると、お婆ちゃんは「大丈夫よ」と微笑んだ。

 

「お守りも持っているみたいだしね」

「あ、もしかしてこれのこと?」

 

 お風呂に入った後なのでお守りは首に下げていた。

 取り出してみせると「さすがにそれは目立つもの」とのこと。

 ここだけの話、とばかりにウインクされて、

 

「記憶喪失と関係があるのかしら」

「なんでそんなことまでわかるの?」

「年の功、それから職業柄かしら。ちょっと怪しい研究をしている人と話したこともあったしね」

「そうだったんだ……」

 

 ひょっとしてあのおまじないの本の出所ってその知り合いからお婆ちゃん経由だったり……?

 じゃあお婆ちゃんに聞いても解決したかもしれないのか。いやまあでも娘が入れ替わったなんて聞いたらショックだろうし。

 

「大事にしなさい。それからちゃんとお礼はした方がいいわ」

「うん。なにかちゃんとした物をお返ししたいと思ってる」

「出来た子ね、美桜は」

 

 本当の美桜じゃないと知ったらこの人は怒るだろうか、悲しむだろうか。

 申し訳ない気持ちになっているとお婆ちゃんの静かな瞳に見据えられる。

 

「あなたの思う通りにすればいいわ」

 

 まさか全部お見通しなんだろうか。

 最後まで隠し通すつもりだったのにちょっと揺らいでしまう。

 

「ありがとう、お婆ちゃん」

 

 結局、わたしはただ微笑んでお礼を言うだけに留めた。

 お婆ちゃんは「いいのよ」と言って静かに焼酎とつまみを味わう。

 いや、なにげにけっこうぐいぐい飲むなこの人。

 

「お酒好きなの?」

「大好きよ。うちの家系はだいたい酒飲みだから、美桜もきっと好きになるんじゃないかしら」

「一番危なそうなのはお姉ちゃんかなあ」

 

 長女だし、お母さんとお酒飲むのはお姉ちゃんが先に果たしてくれるか。

 お姉ちゃんのことだから二十歳になる前に一人暮らし始めてなかなか帰って来ない──なんていうのもありそうでちょっと不安だ。

 

「美桜は明日、行きたいところはあるの?」

 

 明日はみんなで観光を予定している。

 北海道の美味しいものを食べて、普段見られないものを見て、お土産も買って明後日帰る予定だ。

 お姉ちゃんは「ぜったい海の幸!」って言ってたっけ。

 

「シマエナガが見たいんだけど、この辺にもいるかなあ?」

「ときどき見かけるけど、どうかしらね。自然の多いところでも必ず見られるわけではないから」

「だよね。上手く会えるといいなあ」

「好きなの?」

「なんか運命を感じちゃって、それから追っかけてるんだ」

 

 北海道にしかいない鳥だし、ひょっとしてわたしも北欧の血に惹かれて寒いところを本能的に選んでるんだろうか。

 中身の違うわたしにまでそんなのが影響するとしたら身体の影響恐るべしだ。

 

「お婆ちゃんも一緒に来てくれるんでしょ?」

「ええ、もちろん。今のうちに話しておかないと次に会えるのはいつになるかわからないもの」

「う。会いに来たいけど、来年の予定はわからないかも」

「暇がないくらい忙しいほうがあなたたちにとっては良いのかもね。いざとなったらこっちから会いに行こうかしら」

「布団も場所も余ってるからいつでも歓迎だよ」

 

 わたしはしばらくそうやってお婆ちゃんと会話を楽しんだ。

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

 美空にも聞いたところ「緑がいっぱいのところに行きたい」ということだったので、翌日はまず郊外に出ることになった。

 

「どうせ行くなら海の方がいいのに。魚の美味しいお店ありそうだし」

「まあまあ美姫。海鮮は夜でもいいでしょう?」

「お姉ちゃんもこういうの嫌いじゃないでしょ? そうだ、写真撮ってみる?」

 

 ぶつぶつ文句を言っていたお姉ちゃんも実際現地に行って売店でアイスを買ったり、わたしがスマホのカメラを向けておだてたりしていると機嫌を直してくれた。

 

「美桜、誰にカメラ向けてるかわかってるの? 下手な写真は許さないからね?」

「わたしだってモデルの端くれだもん。撮られる側の気持ちはわかるし」

 

 スマホのカメラも十分性能がいい。

 ぶっつけでもけっこういい写真が撮れて喜んでいたら、当のモデルさんに「まだまだね」と笑われた。

 

「じゃあお姉ちゃんやってみてよ」

「いいけど、じゃああんたがモデルやりなさいよ」

 

 勝負の結果、お姉ちゃんの写真のほうが確かに出来が良くてわたしは悔しい思いをしながら降参した。

 ……悔しいから今度、鷹城さんに写真の初歩だけでも聞いてみようか。

 と。

 

「お姉ちゃん、私もやりたいっ」

「美空も? うん、もちろんいいよ。ね、お姉ちゃん?」

「うん。いくらでも撮りなさい」

「やったっ」

 

 大喜びで自分のスマホを構える美空。

 撮れた写真を見せてもらったらわたしのよりお姉ちゃんのより良い出来栄えで、わたしたちは顔を見合わせてどんぐりの背比べを恥じた。

 そんな風にはしゃぐわたしたちをお母さんとお婆ちゃんは少し離れたところから見守っていて、

 

「どうでもいいけど、あなたたち、そんなに目立ってると──」

「あの、もしかしてモデルの美姫さんとmioさんですか?」

「写真撮らせてください!」

「あ」

「あ」

 

 周りにいた人に気づかれてさらにしばらく時間を取られることになってしまった。

 姉妹三人での写真を要求されたり(SNSに上げる時は美空の顔にモザイク入れてもらうようお願いした)した後、やっと解放されたところでふと顔を上げると木の上に白くて小さな何かが。

 大福が飛んでる……わけがなく。

 わたしは美空と顔を見合わせるとなるべく刺激しないように近づいてその子をカメラに収めた。

 

 夜はお姉ちゃんの希望で海鮮の美味しいお店。

 海鮮丼や焼いた貝なんかを味わい、大人たちはそれを肴に飲んで──なんだか帰るのが惜しいくらいだったけど、みんな予定が詰まっているので次の日には帰りの飛行機に乗り込み自宅へと帰ってきたのだった。

 

「なかなか会えなくても応援してるからね」

 

 お婆ちゃんに無事を伝えるためにもこれからもっと頑張らないといけない、と思った。

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