♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女 作:緑茶わいん
ついに文化祭当日がやってきた。
いろいろ関わってきたせいか「待ちに待った」だけじゃなくて「やっと」という思いもある。
少し肩の荷が下りたような感じだけど、もちろんこれからが本番。
やることいっぱいのハードスケジュールなのでしっかり起きて朝ご飯を食べて気力と体力を補充した。
今日は疲れちゃうと大変そうなので朝のジョギングはなし。
「おはよう、美桜ちゃん。体調は大丈夫?」
「はい。今日はよろしくお願いします」
わたしは登校扱いになるものの、実態としては招待されたゲスト扱い。なので登校時間の厳守とクラスの出し物の準備を免除されている。
少しゆっくり朝を過ごしているとマネージャーさんがやってきた。
一応お仕事だし、今日はテレビの人も来るので一日学校にいてくれるらしい。
「おはようございます。マネージャーさんも大変ですね」
「ありがとうございます。美姫さんはお一人ですか?」
「私は美桜ほど出番ありませんし、慣れてるので」
お姉ちゃんは「一人で大丈夫でしょ?」とばかりに放任されているので普通の時間に登校していった。
美空は「楽しそうでいいなあ」と言いながら小学校に登校していく。今日は金曜日なので生徒だけでの開催。家を出る前に「明日は行くからね!」とあらためて主張していた。
恋と玲奈はそれぞれクラスの準備があるので今日は二人とも朝に会えない。
マネージャーさんと二人でのんびりと登校になった。
「なんだか偉くなった気分です」
「ある意味VIPで間違ってないじゃない」
学校は準備を進める生徒たちで大賑わい。
文化祭用に設えられたゲートは何年か使い続けられているしっかりしたもの。女子しかいなくて力仕事は大変なので毎年新しく作るんじゃなくて外注したのを壊れるまで使うスタイルが主流らしい。
みんなが作業中だからこそ、スーツ姿のマネージャーさんと歩くわたしは目立った。
「あ、香坂さんだ」
「今日は頑張ってねー、香坂さん!」
すぐに気づかれて声をかけられて、それがさらに注目を呼ぶ。
わたしはあちこちに手を振って笑顔を返しながら校舎にたどり着いた。
「今日はよろしくお願いしますっ」
制服姿で校長先生、生徒会長、文化祭実行委員長へ
挨拶している間にみんなは体育館に集まっていて──。
「美桜」
「お姉ちゃん」
わたしとお姉ちゃんは生徒会長さんの挨拶の後で舞台の上に進み出ることになった。
『それでは』
『──学園中等部高等部による第二十七回学園祭を』
『ここに開催します!』
交互に、そして最後は声を合わせて。
姉妹による開会宣言に体育館がわっと湧いた。
宣言が終わるとぱっと散っていく生徒たち。それを見ながらわたしはほっとして、
「マイク握るとほんと緊張するよね……」
「何言ってんのよ。あんた声優志望でしょ?」
「う、それはそうなんだけど」
収録なんかだとインカム型だったりスタンドマイクだったり目立たない小型マイクだったりするから逆に手持ち式だとドキドキするんだよね。
っていうかどの種類でも未だに緊張する。
「香坂美姫さん、mioさん、このまま打ち合わせお願いできますか?」
「はい。よろしくお願いします」
体育館にはテレビ局のスタッフさんもこっそり待機していて、さっと当日打ち合わせを済ませた。
「では、また後ほどよろしくお願いいたします」
打ち合わせの後は自分のクラスに戻る……と、もう恋と玲奈が待っていてくれた。
「おはよう美桜ちゃんっ!」
「おはようございます、美桜さん。ご用事は滞りなく?」
「おはよう。うん、これからしばらくは自由時間だよ」
みんなが楽しんでいる時間ほど用事の詰め込まれているわたしは平日の開場すぐのここが一番暇な時間。
「みんな、忙しいところ悪いけどわたしちょっと遊んでくるね」
「気にしなくていいから行ってきて」
「うちは劇だからそんなに忙しくないしね」
屋台とかメイド喫茶と違って忙しさにメリハリが利いているのは劇のいいところだ。
前日までに準備はほぼ終わっているので後は開演中が忙しいだけ。今のうちに遊んでいる子も多いみたいなのでわたしもお言葉に甘える。
恋、玲奈と手を繋いで、
「どこから回る?」
「えっと、今のうちに端から見ておきたいかな」
「強行軍ですね。……では、飲食系は手分けして対処しましょう」
ゲートのある校門あたりから順に見てまわっていく。
外は屋台系が集中しているのでさっそく飲食がメインだ。
たこ焼き、ベビーカステラ、チョコバナナ、フランクフルト。人数分買いたくなるのを堪えて一つずつ買い、焼きそばなんかの量の多いものは泣く泣くパス。
「はい。美桜ちゃん、あーん」
「あ、ずるいです恋さん」
「じゃあ玲奈にはわたしがしてあげる。あーん」
「……あ、あーん」
チョコバナナとかをシェアできるのは女の子同士の特権。
ご飯を食べてからそんなに経っていないのもあってあっという間にお腹がいっぱいになったところで遊び系の出し物をまわっていく。
「玲奈ちゃんのところの展示も見たほうがいいかな?」
「特に面白いものでもありませんので無視してくださって構わないかと」
生徒のやるお店なのでぶっちゃけ大したものはないんだけど、その手作り感が嬉しくて楽しい。
輪投げをしてささやかな景品をもらったり、フリーマーケットで掘り出しものを探したり、部活系の展示を見たり。
楽しみつつも高速で移動していたせいか疲れてきたので最後は休憩しつつのんびりすることに。
「たしかメイド喫茶があったよねっ?」
「ええ。たしか中等部三年の──」
「あ。メイド喫茶はお姉ちゃんのところだ」
まさかばったり会わないよね? と思ったら案の定、
「あ、美桜。いらっしゃい。そちらのお二人もこんにちは」
「わ、美桜ちゃんのお姉さんすごく似合ってる?」
「でしょう? 現役モデルは伊達じゃないのよ?」
お姉ちゃんが自分のクラスの看板娘をやっていた。
他の子は手作り感溢れるメイド服を着てるのにお姉ちゃんのだけはやけに気合いが入ってる。
いや、これプロの犯行でしょ?
「お姉ちゃん、そのメイド服どうしたの?」
「これ? これはね、仕事関係から提供してもらったの」
それは凝ったつくりになってるわけだよ……。
「すごいすごい。可愛い~」
「ありがとう。もっと言ってくれていいわよ」
「お姉ちゃんすごい調子に乗ってる……」
「美桜さん。メイド服でしたら当家のお仕着せも負けてはおりません。ご要望でしたらいつでもご用意いたしますからね?」
玲奈がこっそり耳うちしてくれたけど、別にわたしはメイド服フェチじゃない。
それにメイド服なら自分でも一着持っている……と答えたところ「今度見せていただいても……?」と変なスイッチを押してしまった。
「まあ、せっかくだからゆっくりしていってよ。飲み物はペットボトルだけど」
「看板娘がそういうこと言っちゃだめでしょ、お姉ちゃん」
「何言ってんの。可愛ければだいたい許されるのよ?」
そんな馬鹿な、と思ったけど「美姫は今日も可愛いなあ」で笑って許されていた。
「あの、美桜ちゃん。写真撮らせてもらってもいい?」
「あ、はい」
何故か店員さんから声をかけられて、わたし、お姉ちゃんとセットで撮影。
すると他の人まで「私も私も」と集まってきて撮影会が始まってしまった。
「ご、ごめんね二人とも。変なことに巻き込んで」
「お気になさらず」
「美桜ちゃんがお仕事してるところなんてなかなか見られないし」
いや、これはお仕事じゃない……いや、お仕事なのか?
なんて言っているうちに時間が過ぎていって、注文したアイスティーとお茶菓子が綺麗になくなる頃にはわたしの自由時間が終了した。
「それじゃあ、行ってくるね?」
「行ってらっしゃいませ」
「時間があったら見に行くからね、美桜ちゃんっ」
恋、玲奈と手を振りあってから、わたしは最初のお仕事に急いだ。