♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女 作:緑茶わいん
「で? あんたの用事はなんだったの?」
「ああ、うん。今週末にある大学の学園祭にあのメンバーでライブに出ないかって話が来たの。で、みんなはどうかなって」
「それを先に言いなさいよ!?」
新規プロダクションからのお誘いの件が「スルー」で一件落着した後。
この感じだとお流れになりそうだなー、と思いながら本題を切り出すと何故か叶音に怒られた。
「あれ? 叶音、もしかして乗り気?」
「当たり前よ。大学の学園祭なら関係者が見に来てもおかしくないし、やらない理由がないわ」
「そっか。じゃあ参加に一票だね」
考えてみると文化祭でのライブの時も「あんたの人気を利用してやる」って言ってたし、あんまりそういうの気にしないのかも。
と、ここで一緒にライブをした後の二人が手を上げて、
「ね、香坂さん? それってメンバー全員でっていう話なんだよね?」
「私たちも出ないとだめなのかな?」
「まだ引き受けたわけじゃないからぜんぜん断れるけど、気が乗らない?」
「うん、まあ……ね?」
「文化祭だから楽しくできたけど、ほかのところで歌うのはちょっと……」
さもありなん。
みんながみんなプロを目指してるわけじゃない。ましてわたしたちはまだ中学生だ。大学生に交じって、しかも特別ゲスト扱いなんて気おくれしても仕方ない。
これに叶音は「なによそれ」と頬を膨らませて、
「それじゃああたしまで出られないじゃない」
「まあまあ叶音。無理強いはよくないよ」
「それはそうだけど……」
まだ納得いかないという感じの彼女に不参加希望の二人は、
「相原さんがそういう感じだから、っていうのもあるんだよね」
「練習もかなりきつかったし……」
「それはわたしも張り切りすぎちゃってごめんなさい」
「ううん。香坂さんはプロなんだし当たり前だよ」
「でも、私たちは……ね?」
であれば、参加するにしても「フルメンバーでなくてもいいか」先方に確認を取ってからになる。
チャンスに息巻いていた叶音はだいぶ気落ちした様子で「……そう」と頷いて、
「恋。あんたもやっぱりやりたくない?」
「ううん。私は叶音ちゃんと美桜ちゃんがやるなら一緒にやるよ」
「本当!?」
急に生き返ると恋の肩をがしっと掴んだ。
「恋もけっこうやる気なんだね?」
「えへへ。ライブ楽しかったから、叶音ちゃんたちと一緒ならいいかなって」
「そっか。……うん、わたしもあのライブは楽しかった」
「ごめんなさい、香坂さん。相原さんも」
「別にいいわよ。強要はできないし……あたしもちょっと我が儘言い過ぎたわ」
人数が減っても問題ないか、マネージャーさんを通して確認してもらうと先方はOK。
『美桜ちゃんがいるなら残りのメンバーはある程度変わっても大丈夫だって。……これは他の子には伝えなくてもいいからね?』
「はい。でも、二人なら伝えてもたぶん大丈夫だと思います」
叶音と恋のお母さんからも許可が出た。
一日だけとはいえ大丈夫か……と思ったけど、中一で男の家にお泊まりしても平気なのがこっちの世界だし案外その辺は緩いのかも。
出演OKと電話で伝えると叶音は歓声を上げて喜んだ。
『やった! じゃあ、もう一回練習し直さなくっちゃ!』
「気合い入ってるなあ」
『当たり前でしょ? 今度こそちゃんとしたスカウトが来るかもだし』
もともとキーボード以外の演奏は生じゃなかったし、ボーカルはみんなで担当していたから問題なし。
『でも、三人だとちょっとインパクト弱いわよね。……玲奈でも誘ってみようかしら』
「さすがに今週末のライブに誘うのは厳しくないかなあ」
なんて言っていたら、翌日の火曜日、振替え休日だって言うのに叶音から電話がかかってきて、
『玲奈も出てくれるって』
「ほんとに!? 叶音、いったいなに言って説得したの?」
『人聞き悪いこと言わないでよ。普通にお願いしただけ』
もともとピアノを習っている玲奈だ。
キーボード担当なら多少の練習と楽譜だけでステージに立てる。わたしは叶音たちに教えるのにダンスも覚えたからダンスボーカルにシフトしても問題ない。
念のため本人にも確認してみると、
『ええ。急遽のお話ではありましたが、せっかくですので参加させていただこうかと』
「大丈夫。けっこう大変だと思うんだけど」
『ご心配なく。普段からピアノには触れておりますし、それに』
「それに?」
『美桜さんと恋さんだけずるいです』
玲奈のご両親は理由さえ明確なら鷹揚な人なので問題なし。
こうして大学でのライブは仲良しメンバー四人での参加となった。
「ほんとはほのかも誘ったんだけどね。断られちゃった」
「わ、私にライブなんて無理だよ……!?」
水曜日の夕食時、件の四人+一人の夕食時には当然その話題が出て、
「うん、無理しなくて大丈夫だよ、ほのか。玲奈と違って普段から練習してるわけでもないんだし」
「う、うん。ありがとう美桜ちゃん。その、ちょっと残念だけど……」
「わたしもちょっと残念。ほのか声が綺麗だからセンターボーカルとか似合いそうだし」
「センターは絶対無理だってば……!」
「ほのかにセンター勧めるとか美桜もエグいことするわね……」
数日後のライブに素人を誘おうとした叶音には言われたくない。
「ほのかさんは裏方のほうが向いているかもしれませんね。オリジナル曲の歌詞を書いていただくとか」
「詩はあんまり得意じゃないんだけど……歌うよりは気が楽かな」
なんだかこのメンバーでガールズバンドでも組むような勢いである。
「なんかほんとにスカウト来ちゃうかもね」
「かも、じゃないわよ。あたしは最初からそれを狙ってるんだから!」
「ところで、衣装はどうしますか? 前回と同じでしたらわたくしも何かしら見繕ってまいりますが」
「玲奈、そういう服持ってるの?」
「幸い、父からプレゼントされた衣装が山のように」
ゴスロリみたいな動きづらい服が多いのでほぼ手つかずで眠っているのだという。
「いっそのこと全員分そちらから調達いたしましょうか?」
「いいの、玲奈ちゃん?」
「ええ。プレゼントされた以上、わたくしの私物ですし。お友達に着ていただく分には父も喜ぶでしょう」
「フリフリのドレス系なら統一感が出ていいかもね」
ダンスに支障が出るようなら振付けをちょっと抑えめにしよう。
「じゃあ今日、みんなで衣装見に行っちゃう?」
「あ、あたしはパス。放課後はカラオケで練習するから」
「では、叶音さんのスリーサイズだけ教えてください。調整しておきます」
「……なんだかみんな楽しそう」
「あはは。ほのかも次があったら一緒にやる?」
駄目もとで誘ってみると、ほのかは恥ずかしそうに「裏方なら」と頷いた。
見せてもらった衣装はほんとにたくさんあって、恋だと胸がきついのがあった以外はそれほど問題なくわたしでも着用可能だった。
結果、わたしたちのグループはゴスロリ・ロリータ系中学生スクールアイドルとなることが決定。
この時点でかなりキャラが濃いのでたぶん、ある程度のインパクトは叩き出せそうだった。