♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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美桜とクリスマスプレゼント 2018/12/1(Sun)

「ねえ玲奈、あの変なスカウトのことなんだけど」

 

 クリスマスの相談が落ち着いた後、わたしはついでにと玲奈に尋ねた。

 大学の学園祭でわたしたちにスカウトを持ちかけてきた青年。

 どこが、とは言いづらいものの、なんとなくうさんくさい感じがした。邪な目的がありそうだったし、わたしに恨みがある感じも。

 玲奈とは知り合いっぽかったのでなにかわかれば助かる。

 と、少女は「ああ」と頷いて、

 

「彼のご家族──お母様とお姉様が母の会社に勤めていらっしゃいまして、お二人とは多少面識があります。特にお母様は重要なポストに就いておられるのですよ」

「じゃあ会ったことはないんだ?」

「ええ。気弱で前に出て来ない方だと聞いていましたし」

 

 そこまで言ってから「あの時のご様子は奇妙でしたけれど」と付け加える玲奈。

 

「念のため、母にもスカウトの件は報告済みです」

「お母さんはなんて?」

「特には何も。ただ、彼のスカウトは受けるな、と」

 

 これはあの青年自身を信用していないというよりは、まだ出来てもいないプロダクションに娘を預けるなんてありえない、という真っ当な判断。

 

「うーん……わたしの考え過ぎかな? ちょっと嫌な感じがしたんだけど」

「それはわたくしも感じました。こう言ってはなんですが、あまり好感の持てない態度でしたね」

「そう? けっこう格好良かったと思うけど」

 

 む、と、わたしと玲奈は恋を見つめて、

 

「恋さん。ああいった殿方は危険です。女など所詮は消耗品のようなもの、多少嬲られたところで子供さえ与えていただければ十分──そういった面があるのは事実ですが、恋さんは簡単に使い捨てられるほど安い女性ではありません」

「そうだよ恋。付き合うならせめてもっといい男の人にしよ?」

 

 すると恋は「付き合ったりしないよ!」と首を振った後、

 

「もっといい男の人って、美桜ちゃんが仲良かったカメラの人とか?」

「鷹城さんかあ。確かに良い人だけどちょっととっつきづらいっていうか……あ、でも恋なら大丈夫かな」

「恋さんは物おじしない方ですからね。感情表現の苦手な男性とは相性が良いでしょう」

「だから男の人と付き合ったりしないからね? 私、今、すっごく楽しいもん」

「うん、わたしも」

「もちろんわたくしも同じ気持ちです。……クリスマス、楽しみにしておりますね」

 

 

    ◇    ◇    ◇

 

 

 クリスマス会について念のため家族にも相談するとすぐにOKが出た。

 

「なによそれ、楽しそう。動画に撮って後で見せてくれない?」

「絶対やだ。お姉ちゃん絶対からかうもん」

「キッチンを使うのはもちろん構わないけれど、危ないことはしないようにね? ……まあ、美桜たちなら大丈夫ね」

「うん、小百合さんも来てくれると思うし」

「お母さん? もしかして私だったら危ないとかそういう話?」

「そうね、美姫はもう少し料理を覚えてくれないと──」

「大丈夫だよ、美姫お姉ちゃん。お姉ちゃんにもいいところはいっぱいあるよ」

「美空、それ私トドメ刺されてるんだけど?」

 

 わたしは場所を提供するということで、玲奈がケーキを、恋がチキンを用意することに。

 他の食材に関しては三人で割り勘にする。恋にお小遣いを使わせてしまうのが少し申し訳なかったけれど、本人が「それくらい大丈夫だよ!」と請け負ってくれた。

 確かに、事務所との契約が済めば一定のお給料が入ってくるようになるし、いまちょっとくらい散財しても大丈夫か。

 さて、プレゼントは何にしようか。

 ノートパソコンを開き、ブックマークしておいたページをいくつか開いて悩む。画面を睨むのはストレッチしながらだけど、気持ちは真剣だ。

 候補はいくつかに絞ったけど、まだ本決定じゃなかった。

 あまり高い物だと二人共恐縮しちゃうかもだし、かと言って安く済ませていいほどわたしの気持ちは軽くない。

 ただ、値段に任せた品物だと目の肥えた玲奈には気に入ってもらえなさそうだ。

 悩んだ末、髪に付けているシルバーのお守りに触れて、

 

「やっぱりこれかなあ」

 

 わたしとしてはお守りだけど、みんなからはもうトレードマークのように扱われている。

 恋たちからも「いいなあ」とか「よくお似合いです」と褒めてもらっていて、どうせならお揃いにしたいという気持ちがある。

 お店が家に来てくれる玲奈みたいにはいかないけど、わたしも中学生にしては行動範囲が広いほうだ。

 一葉やマネージャーさんにも相談したりして、事務所の近くに安くていい品物を置く雑貨・アクセサリーショップを見つけたので、そこでアクセサリーを探してみることにした。

 

 別に本当のシルバーアクセサリーでなくてもいい。

 むしろ、気軽に使ってもらう意味ではフェイクのほうがいいかも。

 

 というわけで数日後、お店に顔を出してみると情報通りいい感じのところだった。

 アクセサリーの棚で悩んでいると店員さん、というか店長さんが「プレゼント?」と声をかけてくれる。

 

「はい。恋人へのクリスマスプレゼントなんです」

「恋人かあ、いいなあ。mioちゃんの恋人ってことは、女の子だよね?」

「わたしのことご存じなんですか?」

「もちろん。この辺歩いてると芸能人見かけることも多いし、そういうのは多少詳しいの」

 

 というわけで相談に乗ってもらえて、結果、良い品が見つかった。

 恋には可愛いウサギのチャームがついたネックレス×2。ウサギのデザインは違っていて、ネックレスと言っても首にかける部分はゴムの安いやつで、本体はフェイクシルバーのチャームのほうだ。

 ヘアゴムに付け替えたりもできるので、そうすると恋のツインテールと一緒にウサギが揺れてきっと可愛い。

 

 玲奈にはフェイクシルバーのチェーンブレスレット。

 店長さんによると、袖の長い服を着る子なら腕じゃなくて服の上からつけて袖口を絞る感じで使ってもいいかも、とのこと。

 それなら金属アレルギーとかも気にならないし、なんならバッグを飾るのとかにも使えるだろう。

 これも若干デザインの違うものを二つ買っておく。

 

「ありがとうございます。……あ、ラッピングする?」

「いいえ、大丈夫です。せっかくなので自分でしようかと」

「そうだね。そのほうが気持ちが籠もってるかも」

 

 わたしは帰りに別のお店に寄ってラッピング用のアイテムも買い求めた。

 好きな人のためにあれこれ考えてプレゼントを飾り付けるのは楽しい。

 思わず鼻歌まで交えそうになってから、ちょっと恥ずかしくなった。

 

「わたし、女の子してるなあ」

 

 恋のときめきというのは本当にいいものだ。

 恋や玲奈のことを考えるだけで幸せになれるしやる気が湧いてくる。

 

「本当、いいクリスマスになるといいなあ」

 

 ラッピングを終えたプレゼントを埃が被らないよう、ガラス戸つきの本棚の空いている箇所に据えて、呟く。

 無事にクリスマスを迎えるためにも残りのお仕事を頑張らないと。

 それからクリスマスに使えそうな料理のレシピも検索して予習しておこう。

 気づけばもう十二月。

 今年も、わたしの中学一年生も、残り少なくなりつつあった。

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