♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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美桜とゲーセン(その1) 2016/6/21(Tue)

「……なんか、お洒落」

 

 何人かのクラスメートと一緒に訪れたその建物を見て、僕は呆然と呟いた。

 駅前にあるゲームセンター。

 ゲーセン自体は元の世界で経験がある。付き合い程度に格ゲーや音ゲー、ガンシューなんかをプレイしては「高得点狙うのは無理だなあ」と肩を落としていたのをよく覚えている。

 

 でも、これは僕の知ってるゲーセンじゃない。

 

 昔に比べたら清潔で安全になったとはいえ店内は騒がしいし、騒ぐお客さんもたまにいる。女子供が気軽に行くのは少し躊躇われるイメージとは全然違う。

 明るい照明に十分換気のされた店内。

 ソファや観葉植物などが置かれてお洒落に整えられたフロアにはUFOキャッチャーにリズムゲー、ダンスゲー、クイズゲーなどが十分な余裕をもって配置されている。音は抑え目で友達同士の話し声を遮らないように配慮されている。

 

「格ゲーは? シューティングは?」

 

 案内図を見ると隅っこのほうにひっそりと少しだけ置かれていた。

 視線を向ければ肩身狭そうにプレイする中学生か高校生の男子の姿。

 

「これも世界の違いかあ」

 

 男子が少ないから自然と女子がターゲットになる。

 格ゲーやシューティング好きの女子もいるとは言えライト層が好むのはもっと平和的なゲームだし、薄暗い店内だとどうしても入りづらい。

 これなら仕事帰りのOLがふらっと寄れるし、僕たちみたいな女子小学生でも怖がらずに入れる。

 

「でも、僕の中のゲーセンのイメージが」

「どうしたの香坂さん、さっきから変だよ?」

「あ、ううん。なんでもない」

 

 一緒に来たクラスメートに呼びかけられ、僕は慌てて笑顔を作った。

 

「それより、なにから遊ぶっ?」

 

 平日の放課後。

 珍しく恋や玲奈がいない中、他の子たちと普段あまり来ないところに遊びに来てみた。

 少額で色んなゲームが遊べるので案外小学生の遊び場にちょうどいい。

 うちの小学校は「暗くなる前に帰れば寄り道もOK」なので校則上も問題なかった。

 

 僕の呼びかけにみんなはやがて顔を見合わせて、

 

「そうだなあ……」

「ね、やっぱりアレからにしない?」

「いいね、やろやろっ」

 

 さて、アレとは?

 首を傾げつつ付いていくと、他のとは毛色の違うコーナーがあった。

 

 ──男だった頃の僕が決して近づかなかった筐体の数々。

 

 興味の有無以前に「男子立ち入り禁止」になってることが多くてそもそも遊ぶことさえ難しかったゲーム──その名も写真プリント機。

 なにがいったいそんなに楽しいのか、女子がこぞって利用しては変顔をしたり落書きをしたり、出てきたシールを交換したり私物に貼ったりしているイメージだったけど、こっちの世界の女子もやっぱりこういうのは大好きらしい。

 

 もちろん、今は僕も女子なので問題なく利用できる。

 

 初めて近づいたその機械はなんというか大きめの証明写真機みたいだった。

 中でいかがわしいことが行われていても外からじゃ気付けなさそう……ああ、だから男の出入りが禁止になってたのか。

 

「香坂さん、これ、やったことある?」

「あはは。……ごめん、覚えてない」

 

 重い話にならないように笑って答えると、友人たちも「あ、そっかー」と流して、

 

「じゃあとりあえずやってみよっか」

「うん」

 

 慣れた様子で機械が操作される間に隅っこの説明書きを眺めたところ、お金を入れて二回写真を撮った後、好きな方を選んでからフレームを追加したり落書きしたりして「デコる」のが主な流れらしい。

 

「あ、しまった。わたし現金持ってない」

「じゃあ後で返してくれればいいよ」

 

 ということで、お金を入れるとさっそく撮影がスタートした。

 いちおうカウントダウンはあるものの、

 

「え、心の準備は!?」

「香坂さん、読モやったのに撮られるの苦手なのー?」

 

 いや、読モの撮影だってもう少しこっちの都合を考えてくれたし。

 ツッコミを入れそうになりつつもなんとか笑顔を浮かべると、みんなが身体を触れ合わせるのも構わず身を寄せてくる。

 

 近い。

 

 カメラのほうを向いているので目は合わないけど、これは間違いなく同性だからこその無防備さ。

 思わず緊張してしまった結果、シャッター音後に表示された写真は、

 

「香坂さんかたーい」

「もっと笑わないと」

 

 ダメ出しを受けたので二回目はもっと自然に笑った。

 読モの時にカメアシの人から受けたアドバイス。

 余計な状況設定はいったん忘れて必要なことだけを頭に入れる。友達と一緒に遊ぶ無邪気な女の子のイメージで表情を作りなおすと、今度は上々。

 

「じゃあ二回目でー。香坂さん、フレームどれがいい?」

「え? ええっと」

 

 正直、どれが可愛いかよくわからなかった。

 まあ、ピンクなら鉄板だろうと選んだら、

 

「香坂さんってけっこうそういうの好きだよね」

「可愛いけど」

「うん、可愛いは可愛いよね」

 

 小五女子の感覚は未だによくわからない。

 

 ともあれ、ペンを手に写真へ落書き。

 

 どういうのが可愛いんだろうと戸惑っているとみんなが☆マークを入れたり♡マークを入れたりして可愛くデコってくれた。次からはこれを参考にしようと決める。

 しばらくして印刷されてきたシートは一人の子がハサミで切って渡してくれた。

 

「どこに貼ろうかなー」

「私はアルバム持ってるんだー」

 

 やっぱり貼るのか。

 自分の写真をぺたぺた貼った私物を持ち歩くなんて情報管理はどうなっているんだ……と、思いつつも渡されたシールを眺めてみると悪い気はしない。これが元の僕の顔だったら恥ずかしいだけかもしれないけど、映っているのはとびきりの美少女だし。

 とりあえずシートを折れないように鞄の中、ノートに挟むようにしてしまって、機械の外へ。

 

「じゃあわたし、両替機見てくるね」

「行ってらっしゃーい」

 

 近くのソファに座ってシールの見せ合いを始めた友人たちから離れて目的の機械に近寄ると、従来のお札を崩すタイプの他に電子マネー対応の機械が一台だけ置かれていた。

 機械にスマホをかざして操作すると千円分が引き落とされて百円玉が十枚出てくる。これは便利だ。

 

「気をつけないとどんどん使っちゃいそうだなあ」

 

 お嬢様の僕は基本、財布を持ち歩いていない。支払いはだいたいスマホで済むからだ。そのせいで逆に「百円玉を握りしめたまま帰る」という昔の男子小学生みたいなことになりつつ、

 

「あ、香坂さん帰ってきた」

「どうだった?」

「両替できたよ。今日はこれがわたしの全財産」

「あはは、大袈裟だよー」

 

 いやいや、千円ってだいたいマンガ二冊分、十分大金だ。

 まあ、さっきの写真プリント機だけで五百円とかしたんだけど、今日は四人で来ているので割り勘すれば一人二百円足らず。まだまだ遊べる。

 

「さ、どうしよっか。別の機械で撮る?」

「あ、わたし、やってみたいゲームがあるんだけど、いいかな?」

「いいよー。どれ?」

 

 写真プリント機ほどはっきりお断りではないものの、別にイケメンでもない男子高校生にはハードルの高かったゲーム。

 

「あのダンスするやつやってみたいな、って」

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