♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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湊と恋愛(その1) 2017/10/4(Tue)

『おい、燕条。香坂とヤったって本当か!?』

「やってませんよ!?」

 

 つい大きな声を出してしまった僕は、一人きりの自分の部屋でなんだか気まずい気分になった。

 学校から帰ってきて風呂に入って晩ご飯を食べた後。

 昨夜、香坂が使った布団はもう片付けられていてここにはない。朝のうちは部屋に漂っていたあいつの匂いも、母さんが昼間換気をしたせい──おかげでもう感じられない。

 それでも、絶対に僕のものじゃない長い髪の毛が落ちているのを見た時はどきっとした。

 

 昨日はあいつと一緒の部屋で寝た。

 

 部屋が同じだっただけで何もしていない。

 もの凄くドキドキして眠れなかったけど、それだけだ。

 先輩が期待するようなことは何もない。

 説明すると先輩は「なんだ、そうか」と残念そうに言ってから、

 

『まあでも、それならよかったよ』

「なにがよかったんですか」

『なんだ、やっぱヤりたかったのか?』

 

 別にそういうわけじゃない。

 自分に言い訳をしつつ黙ったままでいると「だからさ」と、

 

『俺の経験を教えようと思ったんだよ。……お前、中学入るまでは女とヤらない方がいいぞ』

「先輩、ちょっと言葉が汚くないですか?」

『わかりやすいだろ。っていうか、マジだからな。絶対だぞ?』

 

 なんかよくわからないけど妙に念を押してくる。

 

「どうしたんですか、急に」

『思ったんだよ。小学生のうちから経験してたらどうなってたかって』

 

 先輩は中学に入って早々に女性経験を手に入れて、それからは短い時だと一ヶ月くらいで別れては新しい女子と付き合っている。

 当然その、セックスも頻繁にしているらしくていろいろ感想も教えてくれる。

 中には大学生の女の人までいたらしい。そんな羨ましい、じゃなくて大胆なことがよくできるなと思う。人間、変わるものだというか、中学に入るとやっぱり違うんだなと思う。

 

 そんな先輩が手に入れた人生経験。

 

『一回ヤったらお前、絶対に次もヤりたくなるぞ』

「いや、だからそもそもやらないって──」

『ちょっと誘うだけでヤれる奴が学校にいくらでもいるんだ。毎日のようにヤりまくるに決まってる。俺だったらそうする。誰だってそうする』

 

 まあ、それは確かに。

 今は知らないから我慢できてるけど、知ってしまったらもう無理かもしれない。

 

「いやいや。同じクラスの女子ですよ。まだ子供じゃないですか」

『なら先生誘えばいいだろ』

 

 そんな暴挙が許されていいのか。

 

『俺は小学校の先生ともヤったぞ。知ってるだろ、音楽の──』

「その話は僕が卒業してからにしてください」

 

 そんな話を聞いたら先生の顔を見る度に「先輩としたんだ」って考えてしまう。

 相手を自分に置き換えて妄想するのもたぶん、止められない。これはもうどうしようもない。本能みたいなものだ。

 

「……なんでこんな余計なことばっかり考えないといけないんですかね?」

『男ってのはそういうもんなんだよ。俺達が女を抱かなかったらもっと少子化が進むかもしれないんだ』

 

 子供が減って人口が減るってことだ。

 人工授精で人口は維持できているらしいけど、それだって男が精子を提供しているからだ。

 だったら女と直接セックスするほうがいいに決まってる。……って、考えてしまう時点で先輩の言う通り、そういう風にできてるんだろう。

 

『だからさ、我慢してよかったよ。香坂とヤるのはあと半年くらい我慢しとけ。あいつ忙しいからなかなか会えないだろうし、たまに会ってヤると余計に燃えるぞ』

「いや、えっと。はい。……わかりました。わかりましたから」

 

 わりと強引に話を打ち切った僕は先輩との通話を切った。

 話も合うし嫌いじゃないけど、自慢するみたいにセックスの話をしてくる時の先輩はあまり得意じゃない。

 深く考えたくないのに考えてしまう。

 僕が香坂とそういうことをすることとか。

 

 別に、あいつとそこまでしたいわけじゃない。

 

 ただ触ってみたい。髪とか。顔とか。それくらいは思うけど「女とセックスすると気持ちいい」っていう知識のせいでついもっと先まで想像してしまう。

 

「ああもう、なんなんだよあいつは」

 

 どうしようもなくなった僕は香坂のせいにして考えるのを止めた。

 あと半年。

 少なくとも卒業までは余計なことをしないようにしよう。我慢するためには、まあ、いろいろ策を講じるのも仕方ない。

 僕はベッドに放り出されていた長方形の箱を引き寄せた。

 

 

   ◇    ◇    ◇

 

 

「本当に何もしてこなかったの!?」

「だから最初からそう言ってたじゃない」

 

 案の定、お姉ちゃんがめんどくさかった。

 グループチャットで何度も「どうだった?」って来るから「何もなかった」と返したのに、納得いかなかったみたいで帰った途端に怒られた。

 小学生の女の子が無事に帰ってきたのになんで怒られるのか。

 

「男の子から家に呼ばれて何もないとか……美桜、あんた致命的に魅力ないんじゃない?」

「わたしは別にそれでいいよ……」

「駄目。可愛いんだから男の子の一人も捕まえないと!」

「さっき魅力ないって言わなかった?」

「男子には気づかれないんじゃないかってこと」

 

 じゃあもう女の子と付き合っちゃおうか。

 恋なら二つ返事で受けてくれそうな気がする。玲奈は……お互いに覚悟が必要だから気軽には言い出せないけど。

 若干本気でそんなことを考えつつ、お姉ちゃんをなんとか納得させる。

 

「燕条君の家には定期的に遊びに行くことになったから」

「定期的に? ……クラスの男の子をキープしたってこと?」

「え? ええっと、まあ、そうかな?」

「すごい。お姉ちゃん悪い女だ!」

 

 美空が変な感動の仕方をする。

 お姉ちゃんまで「確かに悪い女ね、これは」と頷いた。

 

「やるじゃない、美桜。好きなだけ焦らしてから手に入れるわけね。……それはなかなかいい方法かも」

「私も参考にした方がいい?」

「美空ならできるんじゃない? 私たちの妹だし」

 

 妹に変なことを教えないで欲しい、と主張したら「あんたがやったんじゃない」と言われてしまう。

 なんか納得いかない。

 頬を膨らませていると、お母さんが「まあまあ」と宥めてくれる。さすが大人だけあってお姉ちゃんよりは冷静だ。

 

「美桜はまだ六年生だもの。焦らなくてもいいかもね。……どっちにしても子供は作れないんだし」

「え、そこなの?」

「大事でしょう? 初体験で妊娠して結婚なんて女の子の夢よ?」

 

 レアアイテムが向こうから来てくれると思えば確かにそんなものか。

 でも、あいにく僕は興味がない。

 

「そういうのはゆっくり考えるよ。まずは声優になるのでせいいっぱいだし」

「そうね、それもいいかもね。仕事熱心なのも家系かも」

 

 この一件以来、お姉ちゃんたちもそこまでうるさくは言わないようになった。

 僕のペースをある程度理解してくれたらしい。

 ひと安心して夕食をとり、お風呂に入った。

 

「……はあ、それにしても」

 

 意外と湊のやつ僕のことちらちら見てきたな。

 あいつもそういうのに興味あるのか。……そりゃあるか。男子だし。小六でそういうのに興味津々なのは早い気もするけど、この世界だとそうなるんだろう。

 でも見られただけで何もされなかったし、ゲームは普通に楽しかった。

 湊のお母さんからも「また来てね」って何回も言われた。本当にまた遊びに行っても歓迎してくれそうだ。

 

 あいつもそんなに僕に興味があるわけじゃないのか。

 

 またゲームしたいし、暇を見て遊びに行こう。

 でも、泊まりだけは極力避けたほうがいいかもしれない。

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