♂♀ 1:1世界の平凡高校生 ⇔ ♂♀ 1:100世界のハイスペ美少女   作:緑茶わいん

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美桜と大事な告白(その3) 2018/4/7(Sat)

 土曜日の朝、僕は早くに梟森(きょうもり)家をお暇した。

 儀式にお守り、服までもらってこの上朝ご飯までご馳走になれない。再度しっかりお礼を言ったうえで帰宅。

 

「お帰り美桜。どうだった?」

「うん。……だいぶすっきりしたかな」

 

 微笑んで答えると、お姉ちゃんは「……へえ」と変な声を出した。

 

「そのアクセ、貰ったの? ……やっぱデートだったんじゃん」

「違うってば!」

 

 梟森先輩と付き合っている、と思われるのは本気で困る。

 軽く睨んで威嚇するとなぜか頭にぽん、と手を置かれて。

 

「でもよかった。なにがあったか知らないけど、あんた、ますますいい顔になってる」

「お姉ちゃん」

「あんた今日出かけるんでしょ? 準備しなくていいの?」

「あ、そうだった……!」

 

 早く帰ってきたのにはそういう理由もあった。

 僕はシャワーを浴びて朝ご飯を食べて着替えを済ませ、遅れないように早めに家を出た。

 今日は映画の稽古。

 少しでも上手くなるために今のうちに頑張らないといけない。……でも、頭の片隅にはどうしても「これからどうしよう」という思いがあった。

 

 先輩たちのおかげで「明日元に戻ってしまうかもしれない」という心配はなくなった。

 

 代わりに持ち上がったのは「恋たちの告白にどう答えるか」という問題だ。

 まずはおまじないの件をなんとかするために悩み過ぎないようにしていた。だからいざきちんと考え始めるとうまく考えがまとまってくれない。

 告白されること自体はもう何度目かわからない。

 でも、今までの告白は「断るのが前提」だった。考えるべきは断り方だけ。方向性が明確な分だけ考えるのは楽だった。

 

 今回の告白はそうもいかない。

 

 受けても断っても、恋たちとは今まで通りでいられない。

 恋たちのことは好きだ。大好きだ、と言ってもいい。

 恋人同士になれるなんて夢のようだとさえ思う。今までと違って「OKする前提」で考えている。でも、どちらかをOKすればどちらかは断らないといけない。

 片方と恋人同士になって、片方とは友達に戻る。

 僕たちにそんな器用なことができるだろうか。

 

 恋か玲奈、どちらかとの関係が崩れてしまうくらいならいっそ両方断ったほうが。

 

「どうしたの、美桜ちゃん? 何か悩み事?」

 

 稽古終わり、葉が声をかけてくれた。

 

「ごめん。稽古に身が入ってなかったよね」

「ん……」

 

 苦笑して応える葉。監督からも何度か怒られた。

 

「でも、どっちかというと上の空っていうより気負い過ぎって感じだったよ。監督も本当は心配してるんじゃないかな」

「気負い過ぎ、なのかな」

 

 個人的事情で仕事を滞らせるなんてプロ失格だ。

 お仕事もののアニメやドラマを見る度に「仕事はちゃんとやろうよ」と勝手なツッコミを入れていたくせにいざ自分がその立場になると同じ事をしている。

 そうならないようにと気合いを入れたつもりはあったけど、から回っていたか。

 

「葉、ちょっと相談に乗ってもらえる?」

 

 申し訳ないと思いつつも訪ねると、少年は「いいよ」と笑った。

 

「むしろ、頼ってくれて嬉しいよ。じゃあ、場所を変えようか」

 

 あまり人に聞かれないところがいい、と言ったら葉は個室形式の喫茶店に案内してくれた。

 お互いまだ中学生とはいえ恋愛関係のゴシップとか流れないだろうか、と思ったら、

 

「まあ、流れても無視してればいいよ」

 

 こっちだと男の子が女の子に手を出すのは当たり前。

 女の子にとってもイケメンに誘ってもらえるのはステータスなので、写真週刊誌の類にネガティブなイメージは薄い。

 まあ、これが例えばプロデューサーとアイドルとか、政治家と若い女の子とかだと不正や汚職を疑われるので話は別なんだけど。

 オレンジジュースとチョコレートケーキを注文し、品物が運ばれてくるのを待ってから、

 

「葉はさ。同じくらい仲の良い女の子二人から同時に告白されたらどうする?」

「っ!?」

「だ、大丈夫?」

 

 切り出した途端、少年が飲んでいたアイスコーヒーを噴き出してしまった。

 慌てて背中をさすり、落ち着くのを待つ。葉は「ごめん」と言って深呼吸。

 

「……美桜ちゃんから恋愛相談されるとは思わなかったよ」

「ごめんなさい。ちょっとその、切羽詰まっちゃってて」

「からかってる、とかじゃなくて本気なんだね」

 

 こくん、と頷いて答えると「そうだなあ……」と視線を彷徨わせて考えてくれる。

 

「男子と女子だといろいろ違うと思うんだけどさ」

「うん」

「両方と付き合っちゃえばいいんじゃないかな?」

 

 今度は僕がオレンジジュースを噴き出しかけた。

 

「そ、それアリなの?」

「アリだよ。男でも女でも、三人以上で付き合ったり暮らしてる人けっこういるよ? 会ったことない?」

「会ったことはないかな」

 

 でも、確かにそういう話は聞いたことがある。

 普通の「結婚」観が崩れているこの世界。愛の形もいろいろある。女が子供だけ作らせてもらう、というのはもちろんだし、結婚している男に愛人がいて、その愛人と奥さんのほうも恋愛関係にある、なんていうケースもある。

 

 女子三人以上での交際というのもわりとあるケースの一つ。

 

 どうせ女同士で子供は作れないわけだし、誰かは働いてお金を稼がないといけない。

 さらに「同性愛でも子供作るのは普通」な世界ならむしろ人手が三つ以上あるのは便利だ。例えば一人が外で働いて一人は在宅ワーク、一人が専業主婦、みたいな形なら平日でも子育てにプラスアルファの労力が避けるしお金のほうも安定しやすい。

 自分の話になったとき、そういう発想が出て来なかったのは元の世界の感覚が残っていたせいだ。これまで自分のこととして考えてこなかったせいとも言える。

 

「でも、そっか。それでもいいのかな……?」

「その子たちがどう考えてるかにもよるけどね。美桜ちゃんの素直な気持ちを伝えてみるのもいいんじゃないかな?」

 

 そこで葉は笑って、

 

「それともこれ、『友達の話』だった?」

「ううん。わたしの話だよ。……ありがとう、葉。相談に乗ってくれて」

 

 相談はわりとあっさり終わってしまったけど、せっかくなので僕たちはしばらく雑談を繰り広げた。

 一つの方法論が見つかったことで気持ちは楽になり、さっきの稽古の駄目な点もぽんぽん思いつくようになる。反省すると共に次に活かそうと心に決めた。

 

 そして。

 

 恋、玲奈と向き合うべき時がやってきた。

 学校で話してもいいけど、うまく三人だけになれるとは限らない。日曜日は幸い予定がなかったので恋たちに駄目もとでメッセージを送ってみた。

 返事は、二人ともOK。

 翌日の日曜日、僕は我が家に恋と玲奈を迎えることになった。

 

「お邪魔いたします。……あの、この度はお招きいただきありがとうございます」

 

 玲奈は大人っぽく見えるワンピースに可愛い帽子、ほんのり香水を纏って礼儀正しくお辞儀してくれた。

 

「こんにちはっ。美桜ちゃんのおうちって初めてだよねっ」

 

 恋はツインテールにチェック柄のリボンを結び、明るく、それでいてどこか気恥ずかしそうに笑顔を向けてくれる。

 この子たちが僕のことを。

 あらためて考えるだけで不思議な気持ちに包まれながら、僕は「ようこそ」と二人を出迎えた。

 

「いらっしゃい、恋お姉ちゃん、玲奈お姉ちゃん」

「美空ちゃん久しぶりー。元気だった?」

「はいっ」

「またお会いできて嬉しいです。こちら、良かったら皆さまでお召し上がりください」

「わ。ありがとうございます、玲奈お姉ちゃん」

 

 今日、お母さんとお姉ちゃんは仕事で不在。

 家にいるのが美空だけで良かったと思う。特にお姉ちゃんがいたらいろいろうるさかったに違いない。

 僕が女の子二人からの告白に返事をする、なんて。

 

「恋、玲奈。とりあえず、わたしの部屋に来てくれる?」

 

 声をかけると、二人は美空と談笑していた様子から一転、緊張した面持ちで僕のほうを振り返った。

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