江戸っ子と浪速っ子   作:コーヒーまめ

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主役のはずなのに他の2組よりも特別編が短い……!現実で忙しくなって時間が……!


エルフのなんでもない一日 エルダ編

 

 東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』、祀られたるそのご神体として──異世界から召喚されすっかりひきこもったエルフが……本当に引きこもっていた。今日はその、エルフの一日を、追ってみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 午前7時、エルフの朝は……早い。

 

「エルダー朝だよー、レッド◯ル置いとくからねー?それにもう学校行くから!」

 

 何故なら、毎朝学校へ向かう、巫女が起こしてくれるから。極稀にその妹もやってくる事があるが……いずれにせよ、そのお蔭でエルフの朝は、早い。

 

「わかってるよー」

「今日は夜に藤君が来てくれるって約束したから、とにかくちゃんと起きるんだよ!」

「マサが来る事知ってるよー起きてるよー」

 

 巫女が高校生になってから、それからの話ではあるが……エルフには遊び相手が出来た。巫女よりも、現代の遊びに馴染んでおり、話も合わせてくれる。だがもし、エルダの内情を知る100人中100が今の台詞を聞いたら、きっとこう思う。

 

「寝てるな……」

 

 

 

 

 

 

 午前10時、エルフの朝は……早い?

 

「ハッ!?今何時だ!?」

 

 私用に改造された二段ベッドをいそいそと降り、私室に併設してある台所で……朝食の準備。巫女の妹が用意したサラダに、巫女が買ってきたクロワッサン。ドレッシングとトースターにかけるのは、御祭神の仕事だとか。

 

「お、amazinがタイムセールやってる……ニッパーが安いな……」

 

 そんなご機嫌な朝食を摂りながら、パソコンに向かう。エルフは社会情勢に敏感らしい、なんなら機械にも馴染んでいる。俗世に染まったエルフの生態は、ネットサーフィンだけでは終わらない。

 

 

 

 

 

 

 ぺらり、ぺらりと、紙を捲る音が部屋に響く……午前11時、読書。エルフは人知に貪欲らしい。

 

「なるほど……合わせ目消し処理は流し込みタイプで、か。変色を嫌って使って来なかったが、これなら塗れるな!」

 

 エルフは弓も扱える、という通説どおりなのか、手先がとても器用だ。現代の技術を取り込んでは物にして、実践。エルフとして、神様として……人界の技は一通り見て触れて、というのがモットーなのか。

 

「ふぅ、塗装ひとつでも奥が深いな、プラモ!塗装が乾いてからは撮影会で忙しくなるぞ!……そうだ、漫画の新刊もチェックしないと」

 

 永い時を生きる者の定めとして、流行にも目敏い。召喚されたその日から、土地単位で文化の流行りを追っている。東京……ひいては江戸の流行りに詳しいのも、その習性があってこそ、なのだろうか。

 

「あ!!『無双エルフ』の新刊出てるじゃん!!」

 

 時折、出遅れを感じては慌てふためくのは、外界との関わりを嫌ってきたツケなのか……それともあらゆる世界の情報を追いかけるからなのか……一兎を追うもの二兎を得ず。それを体現するかの如く、慌てふためく。

 

「チェックするの忘れてた〜!!で、でも、電子書籍なら今すぐ読めるし……でも1巻は紙で買ったし!お、お急ぎ便なんてあるのか!?明日に届くのか!?んぐぐ……!」

 

 結局その後、エルフは我慢出来ずに電子版を、買ってしまった。クリックひとつで今すぐ購入出来る、便利な世の中に感謝しつつ……長生きしていても、我慢出来ない物は出来ないらしい。同じ物を買ったら叱られる、そう分かっていながら頼んでしまう。紙の装丁も、保管用だと言い聞かせながら。

 

 

 

 

 

 

 正午、エルフは昼食を摂る。

 

「いい匂……あちち……」

 

 エルフは小柚子が作り置きしてくれた、月島の佃煮が具材のおにぎりと、鯖のトマト煮をいただく。とにかく煮込むのが好きなのか。そんな食欲にしたがうエルフですら、脳裏に閃光がほとばしる程の関心事には勝てない。らしい。箸を置いて、障子に張り付き、頭ひとつ分の隙間までそーっと開いて。

 

「あ……!また村井生花店のタマが来てる……に、ニャ~……」

 

 ネコの前には、エルフの食欲如きでは、勝てない。例え、土地に愛された神様ですら。

 

「ふう……今日もかわいかった……近くに来たから閉めちゃったけど」

 

 愛していない訳では無いが、部屋の前を横切るネコを撫でる事なく……眺めて終わる。このエルフ、動物は好きでも触るのは──まだ怖い。

 

 

 

 

 

 午後5時、エルフは巫女が帰って来たので、真剣に神事を執り行う。神様としての、見せ所。

 

「極めて汚《きたなき》きも──滞《たまり》なければ(きたなき)とはあらじ──」

「すぅ……すぅ……」

「しゃんとせい!」

 

 神様として……御祭神として……毎回真剣に、神事を執り行う。多分、きっと、恐らく。

 

 

 

 

 

 

 午後6時、エルフは夕食を摂る。

 

「ん〜やっぱり小柚子の作ってくれるデミチーズハンバーグは美味い!特にこの中から垂れてくるチーズが舌に触れた時なんか!」

「小柚子に言ってあげてね?おかわりいる?」

「いる!!!」

 

 エルフは巫女の妹が作ってくれた、デミチーズハンバーグをいただく。和洋中、なんでもいける……エルフというのは、雑食な生き物らしい。

 

 

 

 

 

 

 午後8時、エルフは引き籠もりだが、対戦ゲームでも遊ぶ。オンラインでもオフラインでも。ここ最近、遊び相手が増えたからだ。

 

「じゃーんエルダ!専用装備とも言えるコントローラー買うてきたで!気分も新たに、これでリベンジするで!」

「ほう、ちゃんと2Pキャラに合わせてるじゃないか……良いだろう、かかってこい!」

 

 巫女に妹に宮司に、巫女の幼馴染まで……とにかく趣味が合わない。だからこそ、npcでもなく話の合う遊び相手は、長く生きているエルフにとっては貴重だった。

 

「あっ……あれ!?このコンボ繋がらなくなってる……!?」

「命も機械も、データやって更新されるんやで……大振り!貰った!」

「あーっ!私のマイキャラがーっ!あ〜〜……」

「やーっと勝てた!落ち物パズルも上手いのに、アクションまでいけるのは反則やで」

「……前バージョンのままにしとくんだった、アップデート、恐るべし……今日はありがとな、マサ」

 

 エルフはゲームで負けると、わりと本気でヘコむ。それでも、遊び相手への感謝は、忘れない。

 

 

 

 

 

 

 午後10時、エルフは小腹が空いたので、氏子が奉納してくれたどら焼きをいただく。

 

「へへ……あばら屋のどら焼きは、大人気で中々買えないんだよな……!」

 

 同じく午後10時、巫女が高耳昆売命に一日の感謝を奏上しにやって来る──。

 

「おやすみエルダ……あ〜っ!また間食して!!」

 

 巫女は、人間は太るのに……エルフばかり間食してズルい!とばかりに糾弾……いや、一日の感謝を捧げ、お参りして……そして、結局叱る。このエルフ、一日に一回は叱られる程の、ダメエルフである。

 

「こっこれは、その……小糸も食べるか……?」

「食べます」

 

 

 

 

 

 午後10時30分、エルフは巫女と語り合う。

 

「昼間村井生花店のタマが庭に来てな?かわいかったぞ」

「あ、私も見たよ!2丁目辺りで!その後でシマデンのばあちゃんに栗きんとんご馳走になってね?エルダによろしくって」

「好きな漫画の新刊が──」

「文化祭の準備でコマちゃんが藤君を──」

「セブンの新作アイスが──」

 

 女神は巫女と語らい、春夏秋冬何時でも咲ける雑談の華が咲き、地にはただ……平和。何気ない幸せが、この月島には溢れているのは、きっとこの神社からの、お裾分け。

 

 

 

 

 

 午前2時、エルフの風呂上がり。

 

「ぷっはー!一日頑張った後の一杯は格別だー!」

 

 エルフは特に頑張っていなくても、格別の一杯を飲む……飲むったら飲む。それが自分へのご褒美だから。巫女に叱られない時間に飲むのは、狙っているのかわからない。

 

 

 

 

 

 そして午前4時、エルフは私用に改造された二段ベッドをいそいそと登り、眠りに着く。変わらぬ明日の、月島の平穏を願いながら──

 

「……カエルパンツァー……しんさく……」

 

 プラモデルの新作も、ついでにしては強く強く、願いながら──女神は月島に知ろしめす、すべて世は事も無し。

 

 

 

 

 

 

「これが、わ、私の一日の日記だ。小糸が監修したんだぞ?どうだ……?」

「エ、エルフってエルフの本読むんやな……」

「改めて読むとひっどい生活だな」

「ふへっ」

 

 

 東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』。こんな毎日が、ずっと──続いているらしい。




前の2話と同じく特別編というか、アニメ10話に当たる番外編ですね!小糸視点とエルダ視点を混ぜてます。
前の話がガッツリ高耳神社メインだったので順番を変えましたが、これ以降は通常運転に戻ると思います、アニメ範囲外で刊行されているネタも書くつもりです!

文章量これだけなのに時間掛かってごめんなさい!
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