江戸っ子と浪速っ子   作:コーヒーまめ

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筆が軽い内は毎日投稿出来れば、と思うものの……忙しかったり暑さで体調崩すとなると難しいかも。


浪速流 神様との向き合い方 そのいち

 

 軽食にしては重めの軽食を(約1名が)摂った帰り道。食後の運動とは言われへんけど、他愛もない話でカロリーを消費しようと躍起になっとった。

 高麗はほぼ近所やし、小糸さんも通学路が大体同じだから首根っこ掴まれて帰路を共にする、そんな事が半ば日課と化してたある日。

 

「ったく、小糸どころかマサからもしっぺ返しを喰らうとは思わなかったぜ……」

「あれはコマちゃんの自業自得だよ」

「やな、ええ加減にせんともっとえらい目に遭うで」

「へーい善処しまーす」

(藤君、これは懲りてないよねコマちゃん)

(小糸さん、懲りてへんなこれは)

 

 間食目的で立ち寄ったワクドナルドにて。級友を口説き落とそうとしたり、自分のご近所の同い年を巻き込もうとしたり。やり返したら思いの外可愛げのある、高麗らしくもない女々しい一面を見てしまい……なんか得したそんな気分やった。

 いやぁ普段サバサバしてるのに、照れると焦りだすのは反則やん、こっちがドキっとしたって!……あれ?その理屈やと三人とも負けたんやないか?

 

「高麗の調子乗りは置いといてやね、ホンマにええのん小糸さん?」

「ええのんって、何が?」

「いやさっき言うたばかりやん、俺と高麗をその……神様に会わせるって話」

「うん!私が会って欲しいから大丈夫!」

 

 気軽に言ってくれるなあこの巫女は、いきなり『二人にはエルダに会って欲しいんだ!』とは言うけどやな。

 人見知り極まる神様とやらにやで、一人でも許容範囲超えそうやと思うのに、俺と高麗が押し掛けるのは中々キツいもんがあると思うんよなぁ。しかも俺なんて月島の人間でもないし!

 

「いやいやいや、千歩くらい譲って高麗は幼馴染枠として?お目通りが許されるとしてやで?余所からやって来た俺は、なんの枠で許されたんや?」

「マサはあれだろ、あたしのご近所枠!」

「横暴がすぎるやんそれ……それが許されたら芋づる式にみんな会えるで!本音を言うたらその、未だに神様の存在を半信半疑で見てる、どっちかて言えば不敬寄りの人間やのに大丈夫なん?しかも男で」

 

 そこまで言って初めて、小糸さんは考える節を見せた。そうそう、フツーはそういう反応するもんやで?そのエルダって奴の事考えたらなアカンよ、小糸さん!

 

「う〜ん……巫女的には実際に会ってもらう事で、エルダの事とか気に入って貰えると嬉しいし。そこに信心深さとか性別は関係無いかな。男子禁制っていうなら、ウチのじいちゃんが神社にいられなくなっちゃうもん!」

「神道ってのは、案外アバウトやね」

「まっ、私とコマちゃん程付き合いが深いとは言えないけどさ!藤君が月島のみんなに馴染もうとしてるのは、周知の事実だし!なんならじいちゃんも話題にしてたし、私は歓迎するよ!」

 

 みんなって小糸さんあんた……なんか話大きくなってきたなぁ。その神様とやらにお目通りする為に、月島中の人から信頼を勝ち取れ!って言うようなもんやんか。そんな大層な存在かねホンマに?

 

「へへっ良かったじゃねぇかマサ!日頃の行いってやつだな!」

「ええんかなーそんな日頃の行いとやらで謁見を許されるなんて。まぁ神様とやらが顔見せてくれるんなら、あまり粗相の無い様にはしますよっと」

 

 どうやら改めてお目通りの許可が下りたらしい。そこまで信心深い訳でもあらへんけど、まぁその、謂われのない神罰とかはごめんやしな。お賽銭とか入れたらなアカンかな?

 

「──粗相を働くのは多分、エルダの方だけどね」

「なんか言うた?」

「ううんなんでもない!さっ、ウチに着いたよ!」

「高耳様に会えるの楽しみだなーホントに耳なげーのかなあっははは!」

「ここが本殿で、あっちが社務所!御守りとか御朱印はそこで書いてるんだ!」

「ほーん……何気に高耳神社に来るの、初めてかもしれへんわ」

 

 神聖な場所ってのは都会だろうと田舎だろうと、空気が変わるらしい。境内に足を踏み入れた途端、吸っている空気の味が澄んだ気がした。

 月島は一軒家とか、この辺りには背の低い建物も多い。けど遠目には高層マンションとか、帰宅路にも建ってたりするしなぁ。こういう神社の方が逆に目立つか!

 

「何度も遊びに来た事あるけど、やっぱり広いよな〜」

「境内の掃除とか大変やないの?参道だけでも中々のもんやんか」

「毎朝5時には起きてるからね!だから大丈夫!」

「はっや!神職ってのは朝寝坊でけへんなぁ」

「えへへ、あっエルダは本殿の裏に住んでるよ、行こっ」

 

 離れに住まう神様との御対面まで、あと少し。期待半分、不安半分。想像上の生き物とされてきたエルフも神様も、すぐそこにまで迫っとった──いや緊張する程の事でもないんやけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこの離れでエルダが暮らしてるよ」

「おーなんか隔世っていうんかな?橋一本隔てるだけで、それっぽい雰囲気醸してるわ」

「コマちゃんも藤君も、一応その辺の柱に隠れてて。いきなり押し寄せたらビックりされるから」

「りょーかい、なんかワクワクしてきたな、マサ!」

「お、おう」

 

 境内の神聖な空気に充てられたのか、なんか知らんけど緊張感にブーストがかかり出した。関係者以外立ち入り禁止!って札の向こうとか、そんな場所に足を踏み入れるのって……なんか毛が逆立つ感じがな?昔、水族館のバックヤードツアーでも同じ事考えた記憶あるわ。

 ところで俺の知ってるエルフってのは、うっそうと茂った森の中でひっそりと暮らしてたり、アニメやゲームだと長命で、耳が長くて、弓使いで、人との関わりを苦手とする種族……そんな古典的なイメージ。

 原典がなんなのかはわからへん。でもどこのエルフを見ても大抵そんな位置付けなんやから、偏見でもなく、世間一般的なエルフのイメージはそんなもんやと思ってる。

 

「ただいまーエルダ!」

 

 小糸さんがそんな種族、森の隠れんぼの住まう離れに声を掛けた。あの障子の向こうに、ファンタジーでは一番有名な種族でもある、小糸さんからエルダと呼ばれてる神様が!

 

 

「お、おかえりー小糸……ラッキーセットのおまけは……!?」

 

 

 神様ってのは、どこか尊大で、尚且つ自らに仕える人間に慈悲深い……そんな印象があった、何処かにあった。種族的に関しては、まぁさっき言った通り。外界との交流があらへんから、世俗に疎いし人に興味を示さへん、そんな感じやったけど。

 

「はいはい、貰ってきたよ。はいこれ」

「イエーイありがとこいとー!カエルせんしゃは人気だからな……コンプ出来て良かった……!」

 

 そんな前評判は何処へやら、今の一瞬のやり取りで世間一般の歴史に刻まれていた神様のイメージは、儚くも崩れ去っていったのでした。現代のおもちゃに滅茶苦茶興味示してる──!今コンプって言葉使った!?しかもイエーイって言うた!?最早現代人のなんら変わらへんなぁおい!

 そんな衝撃を喰らってた俺を他所に、高麗が第一印象について語りだした。

 

「あれが高耳様かぁ、小糸より頭1つでかいなーおい」

「せ、せやな。一応、高麗よりもちょっとだけ背の高い俺より身長高いであれは、なんならその、背筋伸ばしたらそこら辺の男じゃ敵わんわ」

「だよなーマサよりも高いよなあれだと!って戻ろうとしてるから呼び止めるか、ヤッホー高耳様!」

 

 人間対エルフの身長談義もそこそこに、離れに戻ろうとする推定神様エルダ様を高麗が引き止めた。勢いは大事やけど、即断即決すぎひん高麗!?

 

「え?」

 

 今目の前にいる高そうな装束を身に纏う神様は、今日、俺達の訪問なんて想定してませんけど?みたいな呆然とした顔で、俺達を凝視してきた。色々言いたい事はあるけど、とりあえずアポなしですよね?って言いたそうな顔。小糸さーん?もしかして無計画に俺達を会わせようとしたんか、巫女特権ってやつでもあるんか?

 

「ひひっ」

「お、お邪魔するで」

「ヒイッ」

 

 ビビりを通り越して挙動不審、小糸さんに隠れたつもりが図体のせいで丸見えだった。

 どうでもええけど耳長っ!重量に耐えきれず少し垂れ下がってる!なんにせよ、下々の者と高貴?なる神様とのファーストコンタクトは、人間軍の圧勝という形となったのだった。なんせ相手がビビリ散らしてるからなぁ。

 

「ここここここ小糸!小糸!し、ししししし知らないひとたちが…………!」

「知らない人達ではない、こちら桜庭高麗ちゃん」

 

 誰がどう見ても挙動不審なデカブツに、小糸さんを通した自己紹介が始まった。いやそっちの神様?にとっては知らん人達やろ!小糸さん視点では『知らない人達ではない』って言えるとしてもやね……。

 

「オッス!」

「それでこっちが、藤岡雅くん」

「えーっと、ども」

「ま、また小糸は……み、巫女以外は本殿に来ちゃダメでしょ……!」

「せやろなーアポ無しやもんなぁ」

 

 やっぱりな、やと思ったで!神職のしの字も関係あらへん人間が踏み入れてええ領域とちゃうやん!ルール違反ですやん!

 

「小柚子はちょくちょく来てるじゃん」

「そ、それは……小柚子は優しいし」

「宅配の人だって」

「そ、それは……便利だし」

 

 妹さんはまぁ、何度か外で会った事あるから分かるけど、気立てのええ娘やねと誰もが思うわ。でも宅配便を便利グッズ扱いとはなぁ?傲慢な神様としての一面が出てるな!……第一印象は確かにこういうのでしたわ、うん。

 

「エルダにはコマちゃんと藤君に会って欲しかったんだよ。コマちゃんは、昔からの幼馴染でなんでも話せる私の親友だし、藤君は縁の下の力持ちって感じで月島を支えてくれる存在になってるし」

 

 なんか照れるわこうやって褒められると。面と向かって言われるのに弱いんかな、自分。

 そんな褒められた気分の余韻に浸っていたら、高麗が何かを言いたいとせんばかりに神様の……小糸さんの前に足を踏み入れた。

 

「なぁ、高耳様ってさ……」

「エッ」

「……」

「…………」

 

 人?いやエルフ?にもパーソナルスペースってもんがあるやろうけど、それにズカズカと入り込めるのはある種の才能やねぇ。神様が後ずさりしてるで?そんな領域に踏み入れて、溜めに溜めた一言とは──!

 

 

「やっぱ耳なげー!あっはははいっひひひひひうえっへへへへへ!」

「もー!コマちゃんはすぐそういうこと言う!」

 

 

 この思った事を口に出す女子、桜庭高麗。俺ですら言うべきか悩んだ事を、どストレートで投げてしまった。そして、反応を伺う限り、エルフに耳長いは禁句らしい。高麗の歯に衣着せない一球は、神をも落とす投球となって突き刺さり、ガーンという擬音が耳の長い神様からそのまんま、境内に轟いた気がした。

 あー良かった俺は口に出さなくて──内心考えてたから余計に。

 

「お、男の方はわからんが、あ、あいつキライ……」

「まあまあ、悪いやつじゃないから……ちょっとだけお喋りしようよ!」

 

 神頼みなんて事をする程信心深くもなければ、毎年の初詣程度でしか神社に来ない俺が、神様らしきエルフ?と何を話せばええんやろ……参拝に来なかった事に対する懺悔?うーんわからん!そんな俺の心配を余所に、俺と高麗は神様の住処で雑談に興じる事になったのでした。大丈夫かこれ?




日常物としては少し長いかな?なんて思ったのでそのいち、とタイトルに入れました。アニメはともかく原作も割と短めに区切られているので本作も続きは次回へ。
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