江戸っ子と浪速っ子   作:コーヒーまめ

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とある話を宣伝したくて急遽書き上げた話になります!普段の投稿時間からずれたのも、それが理由といいますか!ではどうぞ!


宵越しの金 エルフの銭

 

 東京都中央区月島──江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』、厳かな感じで行われとる……一切成就祓(いっさいじょうじゅのはらえ)にて。

 

「きわめてきたなきも──たまり無ければけがれとはあらじ──」

(こんな真面目な小糸さん久々に見たわ……やっぱり巫女の時の小糸さん、カッコええな?高麗)

(だろ!あたしの相棒はやる時はやれるんだぜ?)

 

 興味本位で、日常的に行われとる神事の見学をさせてもらえる事になった。少し前に探偵ごっこ?いや、裁判ごっこで使われた拝殿本来の姿に、厳かな様子の神様と巫女を真近で見て、本来の在り方に触れた気がして……改めて、月島で知り合えた事が誇らしくなった。

 

「うちとのたま──(ぐぅ〜)」

(おいマサ、もう腹減ったのかよ!さっきあたしん家で食べたばかりだろ!)

(高麗こそ、俺が持っていったお菓子完食したやんか!?)

 

 静粛に執り行われてる筈の神事に、何処からかお腹の音が乱入してきた。思わず小糸さんの奏上も止まる……高麗に疑われたけど、俺は食べてきたばかりやし、隣も同じく。咳払いを一つ、仕切り直そうと巫女が場の空気を正した。

 

「内外の玉──(ぐぅぅ)内外の玉が──(ぐうぅぅ)」

 

 いや、仕切り直すにしてはちょっと頻度高いな……?小糸さんは無理矢理続けようとしてるけど、この腹の音、発生源的に……。

 

(なぁ高麗、この音が俺等じゃないとしてさ……音のする方向から察するに、どう聴いてもお前の相棒──)

(しっ……!ま、まだエルダ様っていう可能性が残って──)

 

 その奏上しようとする声は、腹の虫にも負けない程に大きくなっていったけど、その腹の虫は的確に……かつ大きな声で神事にちょっかいをかけてきた。

 

「内外の玉が──(ぐぅう)内外のたまがきっきよくきよしと申──(ぐううううぅぅ)」

 

 やがて、誤魔化しきれへんと悟ったのか、奉書紙を静かに畳んで……祝詞ではなく、巫女自身の言葉が語られた。

 

「ごめんエルダ、それからコマちゃんに藤君……なんか食べさせて……(ぐぅ……)」

「う、うん……言っていいのか判んなかったけど、すごいお腹の音だな……!」

 

 男女問わず、恥ずかしい所って見せたくないやろうから、あまり言及するのも可哀想やし……逆に公言してくれたのに、黙っとくのもどうかと思うんが俺でして……ここは一つ、慰める感じの一言でも!

 

「えーっとその、小糸さん?可愛い鈴虫でも飼ってる──」

「あっははははは!相変わらず誤魔化すの下手くそだな小糸、学校の時より悪化してんじゃん!」

「あの時の野暮な特訓やり直すか高麗ぁ!?」

 

 見学させて貰った神事にて……脂汗をかき、紅葉よりも真っ赤に染まった顔。その巫女の正体は、健気にもボンクラエルフを崇め奉る──小糸さんやった。いやまぁ、分かってたけどな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜お昼御飯抜いたらお腹空いちゃって、いただきます!」

 

 見学しとった神事は中断、巫女の空腹を埋めるのが最優先と判断されて。俺達はエルダの部屋で……小糸さんの食事を見学する事になった。滅茶苦茶食うなぁ小糸さん!

 

「だ、ダイエットでもしてるのか……?」

「あんまり我慢しても身長伸びねぇぞ小糸」

「女子の気持ちなんて全然わからへんけどさ、身体に悪い事は止めたほうがええで?」

「あーえっとね、ダイエットとかじゃなくて……今度はお金貯めてるの!」

 

 そういう小糸さんが見せてきたんは、ベルカリの画面。そのフリマアプリがどないしたんや?

 

「ベルカリに憧れのパンプスが格安で出てるんだ!でもお昼抜いただけじゃ全然貯まらなくて……」

「靴一足で5桁円超えてる!?お古でも高いなぁ!」

「マサ、これは小糸が持ってる鞄と同じブランドなんだぜ?古くてもたけーのは仕方ねぇよ」

「俺やったら全身揃えても半分以上余るわ、この金額……」

「まっ、あたしもここまでたけーのは買わないけどな!」

 

 女性のお洒落にはお金が掛かるって言うけど、中古市場でもそんなにするんや……凄い世界やな?俺じゃあ参入出来へんわ!

 

「そ、それならサイズが合わない服とかベルカリで売ってさ……そのお金で靴を買えばいいじゃん……ほら、あのブカブカのコートとか……」

「あれは私の手足が良い感じに伸びた時に着る服なの!頑張って手足!!」

「あ、ああそうだったな……二十歳を見越した服だったな……」

(高麗、あれって死ぬ程値崩れしてたとか、この前言わへんかった?)

(んーとそうだな……同じのを5着売ってようやく買えるレベルには値崩れしてたぞ)

 

 ファッションにも流行とか、流行り廃りがあるのは知ってるけど、諸行無常って四字熟語がこれ程似合う世界もそうそう無いんと違うか?……しゃあないな、パンプスの足しになるか知らんけど、帰り際に多めに賽銭入れたろか……。

 

「じ……じゃあ質屋に持っていけば良いんじゃないか?」

「だから売らないってば!質屋ってブランド品とか買い取ってくれるお店でしょ?」

「いや、質屋は買取業者とは違ってな?品物を担保にお金を貸してくれるんだ。それで返せなくなるとその品物が質屋の売り物になる、そういう寸法だ」

 

 へーっ普通の買取業者とか違うんや、でもそうなると……物の価値が高めに保証されへんと、貸してくれるお金も安くなるよな?

 

「それちょっと面白いよな、質屋の加減次第で物の価値変わる訳やし」

「江戸の頃はそういう意味合いも兼ねてだな……将棋の歩の駒の形をした看板が、質屋の前には多く掲げられてたぞ?」

「えっあたしを!?」

「そ、そうだった……ここにはコマちゃんがいたな……」

 

 お前じゃねぇ、高麗やなくて駒!お前が将棋になったら何処からでも王様取ろうとする危ない駒になるやろ!将棋のルールが破綻する!

 

「ていうかなんで将棋?」

「将棋だと、歩や香車が敵陣に入ると『金』に成るだろ……?質屋に品物を持っていくと『金』になるっていうシャレなんだよ」

「あははなるほど!」

 

 なんか話聞いてて思ったけど、今も昔も、駄洒落を考えるセンスというか……土地が変わったとしてもレベルまでは変わってへんみたいやな?いや、昔のセンスを引き継いでるだけとも言えるのか……。

 

「質屋に詳しいけどさ、エルダは使ったことあるん?質屋をさ」

「い、いや……質屋は寺社の印がある物は扱えないって法があったんだ……私の持ち物は殆ど神紋入ってるし……」

 

 そういうエルダの手元にあるのは、プラモや飲料水メーカーのロゴ、高耳神社の神紋にゲームのマスコットキャラまで……『これは私のです!』と主張せんばかりに、背中にシールがペタペタと貼られた、ノートパソコン。俺もゲーム機に色々貼ってた気がするわ……。

 

「エルダ、気に入ったらすぐ神紋シール貼っちゃうもんね!でも質屋で扱えない物もあるんだ!」

「う、うん……家康くん家の葵の御紋が入った物とか、金銀細工とかもNGだったかな……」

「あっでもこの前あたしは見たぜ?BACK OFFで高耳神社のシールが貼られたゲームのカセット!」

「高麗それホンマに!?今度行こうや!」

「あ、あそこは例外で……何故か買い取ってくれるんだよな……ほんとなんでだろう……?」

 

 後で二人で月島のBACK OFFに行ったら、本当に神紋が入ったカセットが売ってました。エルダじゃなくて、高耳昆売命って差し込む部分に書いてるやつ。氏子は神様のお古でも、喜んで買い取ってくれるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た、たまには小糸にお小遣いでもあげよう……」

「え?ありがと!」

「見たことないコインやな……いや待てよ、これ……!」

「寛永通宝じゃねぇか?あたしも実物は初めて見たけどさ」

「江戸時代のお金!?すごーい!じゃあ結構価値あるんじゃない!?」

 

 まさか歴史的資料価値のある物体を拝めるとは、しかもそれをエルダが保管してるとは。生きてみるもんやなぁ?

 

「う〜んどうかな……流通が多かった物だし、今だと150円くらいじゃないか……?」

「ジュース一本くらいかぁ、でもありがと!」

「エルダ様!あたし達には!?なんかそういう珍しい物ない!?」

「俺も俺も!」

「え!?えーっと……そのコインを小糸と分け合ってくれ、コマちゃんにマサ?」

 

 然りげ無く何かを貰う戦法、失敗。まぁそこは巫女の特権ってやつよな!

 

「そういえばこの前にテレビで見たんだけどさ、不良品の硬貨とかが高く売れたりするんだって」

「ああ、エラーコインだな……オークションとかで50万円の50円玉を見た時は、我ながら人類に驚いたよ……!」

 

 そう言って、相場を調べだす小糸さん。エラーコインか知らんけど、俺が知ってるのはギザギザの10円玉とか、穴のズレた5円玉とかかなぁ?

 

「へー!年代が新しいエラーコインの方が価値が上がるんだって!」

「そ、そうなのか……?」

「古い方が高そうな気がするけど、なんでなん?」

「えーっとね、昔の物は造幣技術が未熟で不良品も多かったけど……技術の進歩で最近はあまりエラーコインが出ないから、だってさ!」

 

 なるほどな、古さよりも最近のエラーに価値を見出してる訳やね?荒削りの素人の頃の作品より、職人の凡ミスで産まれた芸術の方が凄い訳か……。

 

「なぁエルダ様に小糸、もしかしたらお賽銭の中にそのエラーコイン?混ざってたりするんじゃねぇか?」

「な、なるほど!いっちょ探してみるか……!財布の中にもエラーコインが紛れてるかも!!」

「うん!探そう!50円玉とかは穴がズレてる程高いんだって!」

「両面が同じなのもレアらしいぞ……!」

 

 この神様、然りげ無く賽銭箱を財布扱いせぇへんかったか?いや間違いではないんやろうけど……。探すにしても、おもちゃにゲームを買い漁る神様と、ブランド品を買う為に食事を抜く巫女の財布は……エラーコイン以前に、暖かいとは思われへんけどね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「高麗、そっちはどうや?」

「ぜーんぜん!どれもこれもちゃんとした硬貨だな!」

 

 賽銭箱に、各々の財布。小銭を炬燵にぶちまけてみたものの、それらしきコインは一つも無かった。

 

「うう……こんな事なら日頃から貯金しとくんだった……!」

「私も小糸も、あんまり貯金しないもんなぁ……」

「小柚子は凄くしっかり貯金してるのにねぇ……」

 

 この神社、一体どうやって生計成り立ってるんやろ?って位には……素寒貧というか。氏子さんが居らんかったら、今頃路頭に迷ってるで?と言いたくなる程には、エラーのないコインすら少なかった。そんな中、小糸さんが勢いよく発した言葉が──。

 

 

「江戸っ子は宵越しの金は持たねぇ!!」

 

 

 言い訳!それ無駄遣いする人の言い訳!他の地方でも宵越しの〜って言うんかな?なんて一瞬思ったけど!懐事情をぶち撒けた人間の台詞やないからそれ!

 

「って言うけどアレほんと?ウチの爺ちゃんとか無駄遣いすると、凄く怒るけど」

「それ誰でも怒るやつやで、多分……」

「この前叱られてたもんな〜小糸!」

「うーん、お金離れが良いのが粋っていう……江戸っ子の気風の良さはあったと思うけど……」

 

 火事と喧嘩は江戸の華、俺も日本史の授業で聞いた事がある。背の低い家屋に、その木造なのも相まって火事が多かったとかなんとか。お金を貯めても、火事で燃えたらなんにも残らへんしなぁ?

 

「そんな感じで……あまりにも火事が多いから、大事な絵草紙とかコンプした浮世絵を枕元に置いて寝てたもん私!」

「今でもエルダの非常用袋の中身はおもちゃとゲームばかりでしょ!!ちゃんとして!」

「まっ、避難先でも遊べる位の心のゆとりって言うの?そういう意味ではさ、エルダ様も間違ってねぇと思うぜ!」

「プラモはまだしも、避難先でゲームとかやれるんかな……?」

 

 憶測の域を出ぇへんけど、神様が避難してきたら……拝まれまくってゲームどころじゃ無くなりそうな……そんな気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、貯金が1億円あったら良いのに……」

「お、お金はいくらあっても困らないもんな……!」

 

 議題はエラーコインから、いつの間にか『もしも貯金があったら』って議題に。雑談の定番でもあるもしもの話は、男でも別作品のキャラが戦ったら?みたいな話もするし、妄想はタダやから何時でも何処でも出来るわな!

 

「みんなは100万円あったら何に使う?」

「2桁減ったでおい……」

「唐突だな小糸……!」

「楽しい事考えようと思って!」

「か、仮の話でもいい?」

「うん、仮に!」

 

 そう言って考え込む俺達。もしも、もし仮にお金があったら、ねぇ?金額が増減するにしても……あんまりやりたい事は変わらへんかなぁ。大事な人達に贈り物するとか、高麗と約束した小旅行の代金……とか。

 

「無難かもしれへんけど、大阪のみんなにこっちの高そうなもん送ってみたいかなぁ?余ったら旅行とかに回せばええし」

「あたしも無難だけど、キャンプ道具でも買うぜ!レンタルじゃなくて新しいの揃えると結構掛かるし!余ったらマサみたいに旅行でもしたいけど……キャンプ自体旅行みたいなもんだしな」

「藤君もコマちゃんも、意外とあっさり答え出すね!」

「これでも考えた方やで?」

「そうだぜ小糸!コマちゃんブレイン、フル回転だ!」

 

 それなりに考えて答えたけど、幾ら高麗との約束とはいえ……余ったら〜とか言った時点で『宵越しの金は持たない』理論と変わらへんな?浪速っ子も宵越しの金は持たへんって事か!

 

「エルダは?なんか思いついた?」

「そ、そうだな……買いそびれたプレ値のおもちゃ買うだろ?それから7.1chのスピーカー買ってP○5も欲しいし……駄目だ使い切れない!」

「普通に貯金で良くねぇかそれ?新しいゲームとか出たら買えるじゃん」

「それはナシ!その日の内に使い切らなきゃいけません!」

 

 何その宵越しルール!?後出しジャンケンは反則やと思うで!?しかも1日で使い切るって意外と大変やと思うんやけど!?そんな疑問をエルダも感じたのか、唾を飲み込み……小糸さんにその真意を尋ねた。

 

 

「つ……使い切らなかったらどうなるんだ……?」

「すごく悲しい気持ちになる……」

「そりゃそうだよ……!なんたって100万円だもん!」

 

 

 思ったより単純な理由でしたー!手に入らずに嘆く事はあるけど、あったとしても使えなかった事に嘆く人を見たのは初めてやなぁ……!でも確かに、自分の使いたい物に使えないと勿体無い!みたいな気持ちなら……共感出来なくはないかなぁ?

 

「あ!じゃあこういうのは?エルダの好きな漫画家さんにさ」

「エルダ様の好きな……なんだっけ、『無双エルフ』ってやつ?」

「そうそう!その漫画にエルダを出してもらうの!100万円で!」

「それはいちオタクとして断固反対します……!」

 

 普段奥手なエルダが、両手でバツ印を作る程の意思表示。なんとなく想像つくけど……でも芯の部分が同じなら、俺も同じ事言いそうな気がする。

 

 

「え?なんで?自分の好きな漫画に自分が出たら嬉しくない?」

「そりゃ嬉しいよ……!だけど他の純粋なファンたちには迷惑なだけでしょ!!!私が100万円で浅慮な欲望を叶えたばかりに作品ひいては作者そのものの評判を落としかねない──」

「ごめんエルダごめんて!!」

 

 

 神の逆鱗をこんな形で目にするとは……同じ事言いそうとは思ったけど、それ以上に入れ込んでるなぁエルダ。オタクの鑑ってやつなんかな……?

 

「ところで小糸ならなんに使うんだよ?まだ小糸だけ発表してねぇぞ」

「そ、そうだよ小糸!小糸は100万円あったり何に使うんだ……?」

「う~ん、やっぱり大人っぽい服とか色々買うかな!あ、でも、エルダと一緒に世界一周旅行とかも良いかも!」

 

 前者は普段の小糸さんやけど、後者は俺の想像よりスケールが大きいな?世界、じゃなくて一周ときた。

 

「100万やと、二人どころか一人でも足りないんと違う?」

「行き先とかプランを絞れば80万辺りでも行けるみたいだよ、ほら!」

「へ〜ほんとだ……まあ絶対行かないけどな、私。船で旅とかおそろしい……!」

「だろうな〜エルダ様だし!」

「隅田川で溺れとったもんな……」

 

 泳がれへん人が船旅とか、考えたくもないと思う。そもそも引きこもり大好きなエルダが、ヨルデちゃんみたいに動き回る絵面が想像出来ん!

 

「えーいいじゃん一緒に行こうよ!100万円あげるからさ!」

「小糸が赤字になっちゃってるじゃないか……!」

「そりゃそうだよ!でも本当はね──」

 

 ん?本当は?小糸さん、もしも話に本当も何もあらへんと思うけど……。

 

 

「私は100万円あったら、エルダが欲しいもの買ってあげたい。いつもお世話になってるからね!」

「小糸……」

 

 

 ちょっと野暮な事考えてしまったみたいやな、俺の方が。こういう話の良い所は、タダな所ともう一つ……好きな人と好きなだけ、好きな様に話せるのが楽しい訳やし!

 

「……じゃあ私は、私の100万円は小糸にプレゼントを買うのに使うよ。小糸が欲しがってたあの靴を買ってさ……」

「小糸の理屈だとあたしにも何か買って貰える?いやそうなるとあたしも小糸の欲しがってるやつを……」

「待てよ高麗、小糸さんのブランド品に釣り合う物やないと断られる可能性が……その分俺達も節約せぇへんと!」

「ふふふっ」

「へへ……」

 

 なんだかんだ言って、使い道を考える時が一番楽しかったりするからなぁ。遠足みたいに、持っていくお菓子選んだり、しおり読んでる時みたいな感覚で。なんだかふわふわとした、午後のひととき。

 

「ま、まあ……無いんだけどな、その100万円……」

「無いんだよね〜……」

「無いんだよな〜!」

「急に現実に帰ってきたやん、みんな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホンマに置いてるとは思わへんかった……なんで買い取って貰えるんやろ……?」

「ご利益があるからじゃねーか?御守りみたいにさ」

 

 なんでもない話の後、高耳神社のシールが貼られたカセット見つけて、氏子さんの懐の広さに感心した……高麗とのそんな帰り道。さっきは現実に引き戻されて、なんとなく話し損ねたから、ちょっと喋ってみたくなった事があった。

 

「あのさ、高麗?さっき神社で話してた、100万円の話なんやけどさ」

「ん?あたしのキャンプ道具の話か?今日見に行っても良いぜ?買えねーけど!」

「あーそっちじゃなくて、余ったお金で旅行する、って話」

「マサが余ったお金で〜ってやつだろ!続きでもあるのかよ?」

 

 続きというか、なんていうか。これからやりたい事の内の一つ、それを話したいから、さっきの続きとは少し違うかも。

 

「…………この前のスタンプラリーで約束した日帰り旅行、いつ頃行きたい?」

「──マサ、お前」

「もしもの話で流れそうになったの思い出したから、ちゃんと決めたくなってな?世界旅行よりもお金掛からへんとはいえ、その……」

 

 もしもの話するのも楽しいけど、これから現実でやりたい事計画するのも、楽しいから……な?

 

「あれだけその、くじ引きより喜んでくれてたから……二人でちゃんと行きたいなーって思って──」

「──明日」

「えっ?」

「明日熱海に行こう、マサ!」

「明日!?待ってくれ高麗!俺から持ちかけた話やけど、展開が早いわ!自業自得とはいえ金欠になったばかりで……」

「そ、それならあたしが帰ってすぐに親に掛け合って、熱海への交通費とかバス代とか、フェリーもあるらしいし仲見世通りでのランチの費用だって……江ノ島の方が安上がりだからそっちにしても!」

 

 待て待て待て話が飛躍してる!なんか俺より情報仕入れてるし……しかも高麗の親に頼る話やないってこれ!そういう主旨の話がしたいんやなくてさ!

 

「せ、せめて来月に入ってからにしようや!?その方が俺も高麗もお金の都合つくやろ!?」

「い、良いだろ別に!?あたしは明日マサと行きたくなったんだ!だから親にお願いして」

「あかんって!そもそも勝手な口約束やねんから、そんな周りに頼りたくないんやって!だからさ、来月、来月まで待ってや!な?」

「……本当に、来月ならいいのかよ?」

 

 少しだけ逆立つ髪の毛が、高麗の意志の強さを表していた。まさかここまで念を押してくるとは、スタンプラリーの時も提案しただけであれだけ喜んでたから……それだけ嬉しかったんかなぁ。

 

「もちろんやって!俺も熱海も逃げてる訳じゃないねんから、それまで楽しみはとっとこう!」

「……わかったよ、約束したからな!あたしも来月の旅行まで色々節約するから!」

 

 良かった、納得してくれた……それなら後は簡単や、計画建ててこんな店で飯にするとか、ここで足湯に浸かるとか決めてもええけど……行き当たりばったりでふらつくのも、いや日帰りやからそんなのんびりとは──

 

「マサ!」

 

 思考の渦に嵌まろうとしてた俺を、高麗が一声で引き上げた。

 

「来月、楽しみになってきたな!待ちきれないぜ!」

「ああ!俺が言うのもなんやけど、ちゃんと貯めとけよ?」

 

 もしもの話ではなくて、洋菓子や魚介類に舌鼓をうち、バスで熱海を周れるだけ周って、足湯で歩き回った疲れを癒して。日帰り旅行の事はまた……別の日に。

 

 

 東京都中央区月島……隅田川の下流に溜まった土砂を埋め立てられて、繁栄してきたその下町から発信される──江戸と浪速が織りなして行く、そんなお話。




本日9/18の19時丁度より、敬老の日に江戸前エルフの一挙放送がニコニコ生放送にて実施されます!!ゴンゲムの一挙放送を楽しみしてたエルダみたいに、私も楽しみにしてました!連休最終日は江戸前エルフでのんびりします!!

本当は前回の投稿で告知したかったのですが、その一報を知ったのが前話投稿の直後だったので……どうにか知らせようとした結果、何時もとは違う時間になってしまって、ごめんなさい!次回からは何時も通りの時間になります!
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