江戸っ子と浪速っ子   作:コーヒーまめ

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ホラー展開?から続けるには一番いい話だと思って書きました、原作の話数的には8巻よりも前ですね!


シュレディンガーの呪い?

 

 人間ってのは、やったらあかん事を幾つも教わる。赤信号で横断歩道渡ってはいけません、お箸でお皿を寄せてはいけません、とか。ローカルルールみたいな物まで挙げだすとキリがないけど、まぁ色々と教わる。やからこそ、そういう縛りの多そうな小糸さん……ひいては神職の関わる高耳神社には、そういうので雁字搦めなんかなー?とか思ってたら。

 

「ふ、藤君藤君!早く早く!」

「や……やっと来てくれたかマサ!さあ早く!」

「そんな急かさんでも……これでも駆け足で来たんやで」

 

 そんな物は無い、とばかりに神社は融通を効かせてくれとる。此処に通う様になった当初、巫女以外は入ってはいけない……なんて言い付けがあったらしい事を思い出す。そんな高耳のたの字も知らん頃と比べたら、入り浸りすぎて禁忌を破りまくってる、破り過ぎて破片になってるレベル。まぁ巫女も神様も受け入れてくれてる、というかウェルカム状態やから、そういう縛りはあって無いもんや。そう自分には言い聞かせてる。

 

「はい到着、っと。んで、なんか早口で喋ってから開けて欲しいの!駆け足で来て!とか電話で言うてたけど、なんの急用?家の鍵が開かへんとか?それともジャムの蓋とか?」

「「あれ!あれだよ!!!」」

 

 その手の言い付けとかルールは、ちゃんと守ってる方やと思ってる。やからこそ、許されへんかったら神社に通う事も無かったし、おまけにエルフって存在を少しも信用せずに、月島で肩身の狭い生活を送ってた……と思う。神様云々も、エルフ云々も、今でも微妙に疑う部分はあるとはいえ。

 

「これは、なんや……木箱?」

 

 そんな氏子としては相応しくもない、俺の目の前に現れたのは……風雨に曝されたか、手入れがされていないのかわからへんけど、割と傷んでそうな木製の箱。そして、それを覆い隠すかの如く、幾重にも貼り付けられた、『封』とだけ書かれた札の数々。御伽噺で怪物を封印してる壷とか、入ったら呪われるで!みたいな場所に貼ってありそうな、そんな札。実物を見るのは初めてやな?

 

「これがどないしたんよ?こいつが神社の歴史に残る世紀の大発見!……やったりするん?歴史深そうな入れもんやし」

「ある意味そうだと思うけど!とっ、とにかく藤君に開けて貰いたくて!」

「マサなら臆せず、勢いで封印を解いてくれる……そんな気がしてな?」

 

 如何にも高耳神社の私物です、みたいな物体を、そう安々と触らせるのはどうなんや?信頼から来てるのか、それとも便利屋風情にはピッタリだ、みたいに思われてるのか……考えても埒があかんな!

 

「事情は諸々後で訊くとして……因みになんやけど、俺に開けさせようと思った根拠は?」

「え?昨日学校でコマちゃんが『マサの奴、ビビる癖にホラーは怖くねえんだってよチクショー!』って言ってたのを思い出して、それならこういうのもアリかなーなんて!──私巫女だけどちょっと怖いし……」

「ほ、ほら……こんなに擦り切れた御札が貼ってあるんだ、中身がどんな呪いかわからないし?お祓いするよりも、頼れるマサに確かめて貰った方が安全じゃないか!──私だって祭神だけど怖いし……」

「せめて祓ってから呼んで!?んでそんな時に神事サボるのはどうかと思うで!?それと俺なら呪われても平気そうみたいな扱い、あんまり良くないと思うんよなぁ……」

 

 

 東京都中央区月島、江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』。呪われてるかどうかわからへんけど……お参りの作法すら曖昧な俺によって、中身すら謎の木箱開封の儀が……今、開かれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、この箱の出どころは?」

 

 敵を知り、己を知り、さすればなんとやら。鍵はなさそうやけど開錠の手掛かりでも探してみるか!って事で先ずは何処から見付けてきたのか、それを問い質すで!

 

「遠藤さんってわかる?その遠藤さんの亡くなったお婆ちゃんにね、何代か前のウチの巫女が預けてたらしいんだ。詳しくはわからないから、開けて中を確かめて……って、風呂敷に包まれた状態で持ってきたんだよ!」

「当時の物を大事にしてたんは大したもんやけど、こんな禍々しい物体を預けてたと思うとおっそろしいなぁ……」

 

 遠藤さんとはたまーに挨拶する程度で、当時の巫女との関係性は知らんけど……こんなに御札ペタペタした代物を託せる絆、まぁ、きっと、親友めいた奴やったんかな?遠藤さんがこの禍々しさを知ったら、卒倒しそうな感じはする、あの人見た目も性格も優しいもん。

 

「エルダはなんか覚えてへんの?巫女が預けたんなら、なんか知ってそうやんか」

「う、ううん……全く……氏子の子に預けたことすら知らなかったし……」

「謎は深まるばかりやなぁ?よし、確かめる意味合いを込めて、ちょっとこれ振ってみよか!」

 

 どうか呪われませんよーに、と脳内で御利益の無いエルフへと拝みながら触れてみた。持ってみた感じやと、軽い。呪いで重量増してるとかあんのかなー?なんて考えを巡らせたけど、そうでもなく。試しに揺さぶってみたら……コツンコツン、と木にぶつかる音が聴こえた。なんていうか、筆箱の中で転がる鉛筆みたいな?

 

「な、なんか入ってるのは確かだな……」

「軽そうだけど、封印の御札が貼ってあるのが気になるよね……」

「なぁエルダ、もしこれ開けてみんな呪われたらどないする?当時の巫女が箱に呪いを込めた説あるで、しかも開けたらそれが出てくるパターンやわ!」

 

 面白半分で適当こいたけど、高耳神社の仲良しこよしな二人組。冗談を割と真に受けたんかな?さっきまで血色良かったのに、顔面蒼白になってしまった……ごめん、ごめんて二人とも、冗談の方向性が悪かったから!

 

「で……でもさ!何か良い物入ってるかもしれないよ!氏子さんが大事に預かってくれたんだし!」

「適当な事言った俺が言うのもなんやけど、やっぱ小糸さんポジティブやなぁ……」

「な、なるほど!御札が貼ってあるのは、大事にしましょうって意味かもしれないし……!」

「き、きっと良い物が入ってるに違いないな!」

 

 良い方に考えよう!と両手でサムズアップしながら箱に向き合う小糸さんとエルダ。当時の巫女の遺産というか、何代目が遺したかはさておき、向き合うのに多少勇気を振り絞る外見で遺すなんて罪やねぇ。

 

 

「ええもんって言うけど、どんなのやったら嬉しいん?」

「──当時の巫女が書いたエルダのトリセツとか入ってたら嬉しいな、何処を叩けばシャキッとするとか書いてるやつ」

「ひ……ひとを古い家電みたいに言うんじゃない……!」

 

 

 シマデンに教えて貰ったけど、古い家電が叩けば直るのは、接触不良とかホコリや入り込んだゴミが落ちて、ショートしなくなるかららしい。最近の家電には通用せぇへんらしいけど、電池式の物なら今でも同じ理屈が通じるんやとか──エルダは叩く以前に、壊れてるかどうかを知りたい所やなぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペリペリ……ペリペリ……恐る恐る、腫れ物を扱う様に御札を剥がす俺。シールって剥がすの何気に難しいというか、ちゃんと剥がしきれへんくて欠片みたいに残ったりするんよね!ってか御札ってペタペタ貼れる仕様なんやな、とか剥がしながら思ったり思わなかったり。

 

「よし、これで全部やな」

「よーし!じゃあ開けてみて、藤君!」

「た、頼んだぞマサ!呪われたらお祓いしてやるからな……」

「結局開けるの俺かい!まぁ開けるけどさ……ほんなら行くで、せーの!」

 

 意を決してというか……いっその事、俺が呪いを解くつもりで箱を支えつつ、蓋を持ちあげてみた。さぁ御開帳や!と、思ってたんやけど。

 

「……ん?んんん?」

 

 あれ?御札は全部剥がしたんやけど、この蓋全然開かへんで?重いというか硬いというか……敢えて押し込んだりしてもずらそうとしても、ピクリとも動かへんぞこいつ?

 

「ど、どうしたマサ?」

「ああいや、こう、硬いっていうかなんていうか、御札は全部剥がしたのにビクともせぇへんのよ……んぎぎ」

「え〜何で〜!?本当に封印されてるとか!?」

「か、貸してみて……!」

 

 まさか小糸さんの説が本当にあり得るんか?いやいやそれは流石に!そう思ってエルダに箱を手渡してみたものの、一見俺よりも非力そうな神様でも、開く事は叶わへんかった。正直な所、力関係やとエルダに負けそうなんよね……弓耳祭のあの跳躍を見るに、瞬発力は間違いなく人間離れしてたし。月島を練り歩くだけで筋肉痛になる程には、体力は無いらしいけど。

 

「ほ……ほんとだ……ビクともしない……!」

「中で何か引っかかってるとか?……ん、ねえこれ!模様だと思ってたけど、継ぎ目じゃないかな?」

「継ぎ目?」

 

 観察する内に箱の秘密に気付いたんか、小糸さんがその継ぎ目をなぞる様に箱に触れていく。焼き魚の切れ目みたいな物かと思ってたけど、その切れ目にしては、とても規則正しくて、横から見たジェンガの様に黒い線が走っとった。

 

「ああ……これ、秘密箱だ……!」

「ひみつばこ?」

「って、なんや?おもちゃ箱みたいなやつ?」

「いや、子供がお人形とか入れる感じのじゃないんだ……」

 

 ここでエルダの江戸知識コーナー、今回は手元にある秘密箱とやらについて。江戸の末期、箱根の寄木細工の職人が考案した物らしく、天井の蓋以外の板を正しい順番に動かせば鍵が開くとか。入れ物自体が鍵になってる、そういう訳やね!

 

「あーなんか似たような話聞いた事あるで、タンスの引き出し……の後ろにまだ引き出しあるやつとかさ」

「マサの言うそれは、からくり箪笥だな……盗まれるのを防ぐ為、同じ頃に普及したから……ある意味それも秘密箱とも言えるかもしれないな」

 

 現代やと、ドアには鍵があったり、入れ物と鍵が別々になってるのが基本ではあるけど……入れ物自体を開けにくく、わからなくすればええってのは、とんちが効いてる感じがするなぁ。知らんだけで昔も鍵はあったかもしれへんけどな?

 

「あっほんとだ!ここの板動きそう!」

「とりあえず動かしてみようや小糸さん!」

「も、物は試しだな……」

 

 今度こそ、開封の時──テンションの上がった小糸さんが主導して、秘密箱の側面が徐々に動き出した。どないしよ、ちょっと格好ええなこれ……!

 

「こう?」

「なんか箱がカコッって言ったで!」

「そうそう……他に動きそうな所はあるか?」

「えーっと、あっここだ!ここも動くよ!」

「なんかすんなりと動くなぁ」

 

 そう、すんなりと、あっさりと開いてくれる……!小糸さんが順調に仕掛けを解いてる!と思ったのも束の間。

 

「あれ?どこも動かなくなっちゃったよ?」

 

 謎の箱の正体を暴いて、秘密箱とわかったまでは良かったけど、うんともすんとも言わなくなったらしい。持ち上げて底まで覗いたものの、手掛かりすら無さそうやった。

 

「たぶん、スライドさせる順番が違うんだな……やっぱりノーヒントで開けるのは難しいかも……多いと100回は超えるし」

「それは仕舞う時も開ける時もしんどそうなやつやな?小糸さん、エルダ、遠藤さんから他に貰わへんかったん?開け方のメモとかさ」

「遠藤さん貰ったのはこれで全部だけど……後で聞いてみるね!」

「江戸時代のパズル、中々に手強いんやな……」

 

 江戸時代から続く、雁字搦めの難問。現代に蘇ったのが嬉しかったのか、俺と小糸さんどころか、生き証人らしいエルダですら……呪いの話が頭から飛んでいく位には、悩みの種になりつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり開け方のメモみたいなのは無かったって、遠藤さんが」

「数代前のメモなんて、書いてても残ってる方が奇跡やんなぁ」

「遠藤さんのお婆ちゃんが預かったから、先々代の巫女だよね」

「うん……昭和の後期辺りだな……」

 

 ちょっとした江戸時代の遊びで時間を潰した後、小糸さんが遠藤さんに話を通してみたものの……以前手順書は発見に至らず。虚しく中身を暴けないまま、時間だけが過ぎていった。

 

「遠藤さんは、そもそも中身を確かめて欲しい……ってこっちに渡して来たんやんな?それならメモがあったとしても、知る由も無いって感じやね」

「うーん、そのメモは残したけど、長い年月で紛失しちゃったか……」

「そ、それか先々代が、絶対に開けて欲しくなかったか……だな」

 

 この一件は、物を後世に残すっていう点では、必ず着いて回りそうな課題やと思う……捨ててしまった物が、実は大切な付属品やったとか、時代の流れで受け継ぐ人達との価値観の相違で、割れ物やけど保管が雑になったりとか。預かってくれるだけ、ありがたいと言えばそうかもしれへんけど。

 

「それならこのまま開けない方が良いのかもしれないね」

「うん……この箱の事はスッパリ忘れよう……」

「まっ、単なる家具としてみなすしかないかぁ」

 

 きっとこの、開きそうで開かへん箱も、そんな感じのインテリアや!そう自分に言い聞かせて、押入れに仕舞われる一部始終を……ただ眺めとった。

 

 

 ──それで終われば、良くある話で済んだんやけど。

 

 

「あはははは!あのゾンビ、壁に引っ掛かって動けてねー!」

(気になるわぁ……)

 

 お隣さんと、ゾンビゲームに興じている最中も。

 

「マサ、これ2番のテーブルによろしく!」

(気になるわぁ……)

 

 バイトで店を切り盛りしてる最中も。

 

「まさぁ、ビール!景気よくついでちょーだいよ!」

(気になるわぁ……)

 

 酒呑みの晩酌を監視してる最中ですら、頭の片隅から離れてくれへんかった……押入れに仕舞われた筈の木箱が、まるで手元に残ってるかの様な感覚は、本当に呪いなんか、それとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──エルダエルダエルダーっ!!」

「ま、マサ!やっぱり来たか!!」

 

 その呪いの仕業かはさておき、俺は居ても立っても居られへんくなった瞬間……高耳神社へと駆け出していた。こうも四六時中気になってしまうと、流石に始末が悪いんよ!飯食ってても寝ようとしても授業中も、箱の事が気になってまう……木箱の中身はなんやろな!?

 

「エ、エルダ!やっぱりその箱!」

「ああ……やっぱり気になるんだ……凄く……開けられないとわかると余計に!!」

 

 やっぱりな、なんとなくシンパシーを持って接して来たからわかる。このエルフ、本質は何処か似てる!きっとエルダも、何をやってても……木箱の中身が頭から離れへんかったんや!621歳らしいのに、飯を食おうが神事をやろうがずーっと、頭の中に!

 

「なぁエルダ、はよ開けようや!なんか気になってしゃーないねんて!」

「勿論だ!私はこういう所あるんだ!amazinでタイムセールしてたらその都度見に行っちゃうし……まとめサイトが更新してるか10分おきに見に行っちゃうし……ツイッターとかやったら多分宇宙が滅びるまで張り付いちゃうし……だからやらないし……!」

 

 前言撤回。そこまではいってへんわ、俺。新しいものを、いや刺激を求めてるのは伝わるけど、ここまで俗世には嵌まってへんわ……そんな独白をしながらも、秘密箱をスライドさせる手は止まってへん。

 

「くぅ……やっぱり開かない……!」

「どいてくれエルダ!こうなったらもう、力技……正拳突きか踏み付けで──」

「エルダー小柚子がマフィン焼いたからお茶にしよー、あれ?藤君も来てたんだ、いらっしゃい!」

「おじゃましまーす、マサさんこんにちは!」

 

 冷静になれとばかりに、部屋の障子が開かれたと思ったら、小金井の姉妹が揃ってエルダの下を訪ねて来た。焼いたばかりのマフィン……焼かれて香ばしくなった小麦の香りが、辛気臭い部屋を満たしていった。

 

「ふ、二人とも、こんちは」

「エルダも藤君も、今日はなんの遊び……ってあれ?その箱また出したの?」

「や……やっぱり中身が気になっちゃうんだよう……!」

「そうなんよ!ゲームしててもバイトしてても、こいつが思考のリソースを渡してくれへんねん!」

「ふ、藤君はともかく、この所輪をかけてボンヤリしてたのはそのせいか……」

 

 巫女から見てもわかる程には、心此処に非ず……やったんか。俺が言うのもなんやけど、普段のエルダですらサボりたがりの一面があるのに……輪をかけて、なんて言う位ボーっとしてたってのは、よっぽどやな?──そんな中、呪いの存在を知らなかった、知らなくて良かった筈のただ一人が、箱の存在に手をかけた。

 

「なあにこれ?」

「小柚子それはね、秘密箱っていって、パズルを解かなきゃ開かない箱なんだって」

「へー!この板を動かすんだね!」

 

 あかん、小柚子ちゃん!純真無垢の代名詞みたいな子が触れてしもたら……なんて静止は間に合わず、仕掛けの解除に夢中になってしまった。

 

「こ、こうなったらもう破壊するしか……!」

「ちょっ、ダメだって!スッパリ忘れるって言ったじゃん!」

「こ……小糸!ハンマー持ってきて!」

「いいや俺が、男なら武器が無くてもこの拳ひとつで……!」

「だめだっつーの!力技も禁止──」

「やったあ、開いたよ〜!」

 

 少し口論に発展した最中、パコッ、という小気味のええ音と共に……秘密箱の蓋を持ち上げた小柚子ちゃんがいた。嘘やろ!?文殊の知恵ですら開かへん箱を!たった一人で!他所でドタバタしてた隙に!?

 

「え〜!?どうやったの小柚子!?」

「あっ開けちゃ駄目だった!?動く所触ってたらパカって……」

「それはもう超能力の類いやん……触れば開くとかさぁ」

「い、いや、ありがとう小柚子!箱にすら愛される妹!それで中身は!?中身は何だったの!?」

「そ……そうだった!え~っと……」

「厳重な箱に仕舞う程大切にしてた物なんや!きっと、凄い宝物に違いな、い──えっ?」

 

 一見呪われてると見せかける程、御札で固めた秘密の正体は。色褪せへんというか、秘密箱とは違う方向性の、立体の面全てをスライドさせて完成させる……あのパズルが入っとった。

 

「「ルービックキューブ……?」」

「パズルの中身が、パズルやて?」

「……思い出した」

 

 苦い思い出なのか、少し顔を引き攣らせながら口を開いたエルダ。色とりどりの立方体には、並々ならぬ思い出があるんやろうか?

 

「ルービックキューブは、昭和初期に物凄く流行ったんだけど……私もハマっちゃってな?夜通しやるし神事も疎かになるしで、先々代の巫女に取り上げられたんだった……この擦り切れ具合、同じやつだ」

「ご苦労お察しするよ、先々代……」

「はぁ〜、一日中考え過ぎたからか、徒労感が凄いのか、肩に力入らんくなってきた……小柚子ちゃん、焼いてくれたマフィン、頂いてもええかな?」

「う、うん!紅茶も淹れるね?」

「でも中身が分かってすっきりしたね!」

「こ、これで神事に集中できるな……!」

「あはは、いつもあんまりしてないじゃ〜ん!」

 

 こうして、封印の木箱開封の儀は、神様に仕える巫女──その妹によって、あっさりと幕が下りたのでした。六面全部は揃わへんかった気分やけど、まぁええか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、本当に後日。勝手に命名したルービックキューブ騒動が閉幕してから、暫くしたある日の事。神妙そうな面持ちの高麗と、夕食のつもりでワクドへとやってきた。

 

「なぁマサ、作戦会議を開きてえんだけど……良いか?」

「作戦会議?声色が穏やかやないなぁ、どんな作戦なん?」

「……今日小糸の奴にさ、登校してすぐ『コマちゃん、これ200年くらい預かっといて!』って言われて、スゲー怖い感じの物を預かってさ。正直置いてるだけでこえーから、マサの力を借りたくて」

「怖い感じ、ってのはどんなやつなん?見せて見せて!」

「これ、なんだけどさ……なんか御札みてーなのいっぱい貼ってるから、開けるのも怖くてよ……」

「ああ、うん、なるほどな。取り敢えず──ポテト齧りながら、ゆっくり考えようや、高麗?」

 

 

 東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』。経緯はさておき、そこの御神体に仕える巫女からの呪い?は、先祖代々受け継がれてしまったらしい──どないしよっかな、このパズル?




年末に向かうに連れて、仕事柄忙しくなってしまう……ここすき機能を空いた時間に見てみたら、恐らく最近読んで下さった方が付けてくれたであろう痕跡が垣間見えて嬉しかったり……修正したらずれたり消えてしまう事があったので、ああ、訂正後も読んでくれている人がいるんだと思って、なんだか癒されました。
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