江戸っ子と浪速っ子   作:コーヒーまめ

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今回はちょっとオリジナル要素が多めかつ、原作要素は短めの仕上がりかも?オリジナルに関しては、Go West!程ではありませんが……。


キャンプ・浪速っ子・アンサンブル

 

 ──キャンプってのは、個人的には色んなイメージがある。家族や親戚を集めてやるピクニック的なやつ、高校の登山部の部活動的なやつ、単に野外でテントを張るやつ。

 

「えーっと何々……ペグってのが杭みたいなもんで、それと張り網が無くても張れるのが自立式。自然にある大木とかを利用すんのが非自立式、と」

 

 そもそもキャンプって単語には、小屋とか野営とか、駐屯地なんて意味があるらしい。語源を辿れば、平らな場所に広場、大学の構内を意味するキャンバスも同じなんやとか……野球チームのシーズンオフにやる練習もキャンプって言うし、思ったよりも幅が広い。最近はグランピングとか言うて、コテージみたいな所に泊まれる施策も、あるみたいやねぇ?

 

「まずはペグが刺さりそうな地面を探します、場所決めてテント広げます、それから畳んであるポールを伸ばして……」

 

 いずれにせよ、世間一般に広まってるキャンプってのは……自然の中で社会から離れて、限られた道具や自然そのものを利用して、生活したり寝泊まりしたり。そっちの方が印象は強い。

 

「テントの上にあるスリーブにポールを通して、その端っこをテント本体の隅に固定する……やってみなわからんタイプやなこれ、文字とか動画だけやとパッとせぇへんな?焚き火にも、キャンプ場特有のルールがあると来た」

 

 そんなこんなで、今はテントの建て方を学んでる。林間学校とか授業でも無ければ、個人的な趣味でも無いんやけど……焚き火のルールも含めて、キャンプの事を調べてるのには、色々と訳がありまして──。

 

「もしもし、高麗?」

「もしもしマサ!調子はどうだよ?キャンプについて学べたか?」

「んー、ボチボチでんな、って感じやわ」

「スゲー!本当にボチボチって言うんだな!っと、話が逸れちまう……明日の晩飯だけどよー、米か麺ならどっちが好きだ、マサ?折角だし、好きなの食いてえだろ」

「米か麺なら?選ばれへん位にはどっちも好きやけど……キャンプって、そんなに自由なん?」

「まあな、ご飯はキャンプの醍醐味の一つだし!それにだ、初めてマサも着いてくるキャンプなんだからさ──楽しみてーじゃん、お互いにさ!」

「──そっか、それは嬉しいなぁ」

 

 何故なら……初めて高麗と、いや桜庭家と、キャンプに同行させて貰える事になったから。昨日の今日で決まった話とはいえ、予習も無しでお邪魔するんは……キャンプのいろはを楽しまれへん気がして。俺なりに、楽しむ為の下準備を整える事にした。桜庭家からの好意を、無下にしたくあらへんから。

 

「それやったら麺がええかな?お米って、外で炊いたら手間かかりそうやし」

「そういう時は無洗米使うから、手間よりも時間が掛かるって感じだけどなー……それならりょーかい、適当なインスタントラーメン買ってくるぜ!」

 

 

 東京都中央区月島……隅田川の下流に溜まった土砂を埋め立てられて、繁栄してきたその下町を飛び出し──お隣さんのキャンプに同行する事になった予定日前の、そんなお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、無理だろ」

「無理やろなぁ」

「やっぱり無理ですかね!?」

 

 学校からの帰り道。小糸さんが何を言い出すかと思ったら、エルダと一緒にキャンプに行くの!私が勉強して連れ出すんだ!なんて。突拍子もなく口にしたもんやから、条件反射で否定してしまった。なんや?何をどうしたら、エルダを連れ出す動機が生まれたんや?

 

「テント建てんのって、そりなりに知識も経験も要るし、冬は寒いし夏は暑いし……引きこもりのエルダ様じゃハードル高いって!」

「た……たしかに……」

 

 エルダやったら、寒いの嫌い!暑いの嫌い!虫怖い!その三拍子が絶対邪魔するはず。炬燵は常に出しっぱなし、冷凍庫にはアイス完備、虫嫌いは筋肉痛を起こす程。そんなエルダを連れ出そうってのはねぇ……その考えに至ったフローチャート、是非とも知りたいなぁ?

 

「そもそもなんでそう思ったん?無理難題感あるけど、小糸さんやけに乗り気やんか」

「それなんだけどね!?エルダが室内キャンプを始めてて!」

「「室内キャンプ……?」」

「そうなの!夜中に電気も付けずに部屋でテントを張っててさ?プラネタリウムで夜空を映して、動画で自然音流したり、ホットココアまで飲んじゃって!……エアコン効きまくりの部屋だったけど」

「まあお部屋キャンプも無くは無いしなー」

「布団やなくてテントで寝るってのが味噌やね、それ」

 

 割と保守的な考えやのに、流行に目敏く反応するエルダやから……なんかそういうアニメとか漫画にハマったんかな……?

 

「まぁ理由はわかったけどさ、エルダを神事以外で連れ出すのは中々しんどくない?」

「そうだぜ小糸。こんな相談持ち掛けてきた時点で、一悶着あったんじゃねーの?」

「……うん、あったよ。凄くあった。烏骨鶏に接するつもりで誘ったんだけどね……」

 

 そこから語られたんは、小糸さんが幼少期の話とか、まだ神社が佃島にあった頃は、この辺でも潮干狩りが出来たとか……江戸時代には『大山参り』なんて文化があって、隅田川で身を清めて出発したらしいけど、エルダは溺れるし結局行ってへんとか。気まずいエピソードしか出てこなかったけど、キャンプに興味を示したから、良い機会やからどうにかして連れ出したい!って訳らしい。健気やねぇ……。

 

「それはその、連れ出すハードルが高すぎひんか?」

「そうなの、だから私が勉強してもっと興味をね?持ってもらおうと思ってるんだ!」

「もっかい言うけど、それはハードル高いって」

「そうなんだよね……ねえコマちゃん!よくキャンプに行ってたし、なんかセールスポイントをさ!」

 

 そのセールスポイントを練る為に、幼馴染が腕を組んだ。そこから出された提案は、無難というべきか、キャンプ初心者──というより、外出初心者へ向けた助言やった。

 

「無難に豊洲の公園でバーベキューにしとけば?」

「それええやん!キャンプやあらへんけど、外で飯を食うってのは楽しそうやで?」

「でも、エルダが折角キャンプに興味持ってるし……好きな事で外に出たいと思えるなら……私も応援してあげたくて」

 

 本人曰く、神事やくじ引きの一件以外では、境内でしか出現せぇへんエルダ。そんなエルダに外の景色を見せてあげたい小糸さんのその優しさは、不器用ながらも、俺のみならず……幼馴染にも伝わったらしい。

 

「ったく、しゃーねーな、じゃああたしが色々教えてやるよ!」

「ありがとコマちゃん!流石親友!」

「俺にはキャンプの知識はあらへんけど、入門書でも奢ったるわな!」

「藤君もありがとっ!」

「じゃあ先ずは道具だな、夜は冷えるから防寒具とか、テントも色々あるけど──」

 

 エルダを外へ連れ出す為、小糸さんの意志を尊重する為、高麗と俺が助け舟を出す事にした。しゃーねーな、なんて悪態をつきながら、その手を伸ばす幼馴染の顔は……なんだか晴れやかで、見てるこっちまでその気にさせてしまう程、惹かれる引力があった──最も、俺にはキャンプの知識も、ボーイスカウトの経験もあらへんから、こっちも教わる側になるんやけどね!

 

「──そんで、この動画みてーにフックを固定して……ほら!」

「へーっ、骨組みから大変なんだね、テントの設営って!」

「エルダがこのテントに収まるんかな?この中に寝袋とか、ランタンとかも置くんやろ?」

「んーそれはそうなんだけどさ……地面に直置きだと寝れねーから、マットとかも敷いたり……っし!折角だから、キャンプ用品でも見に行くか!実物見ながらの方がはえーだろ!」

「さんせ〜!」

「いよいよ本格的になってきたなぁ!」

 

 こうして俺達は、高麗教官先導の元に、キャンプ用品を取り扱う専門店へと足を運んだ。通い慣れてるんかして、俺達の案内に迷いがない。

 

「ほら、これがさっきのテントだぜ」

「おお〜、これが動画の……えっ何この値段」

「ろ、ろくまんえん超え……」

「それは割と高いんだけど、安くても数万円はするなー」

「へ、へー……まあ安物買いの銭失いは駄目だし!お高い方が安心だよねっ!100万はするやつないかなー!?」

「その金があればコテージに泊まった方が良くねえか、小糸」

「高麗、情緒情緒!」

 

 自分の知らん世界ってのは、目に入る物もそうやけど、雰囲気から肌を通して伝わるというか。厚手のベストにバックパック、果てはライフジャケットに至るまで──品揃えも思ってた以上に幅広く、それの選び方から奥深い趣味やと、高麗の振るう教鞭が教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は色々教えてくれてありがとね、コマちゃん!藤君も、これ読んで勉強するからね?後で神社の経費からお金は出すよ!」

「良いってことよ、親友!」

「別に経費とか要らんて、プレゼントやからさ!それに……小糸さんが知識つけるより、やりたい事あるんと違う?一番の目的はそっちやろ?」

「えへへ、確かに!それじゃあまたね二人とも、キャンプ体験記……楽しみに待っててね!」

 

 専門店の品揃えに目移りしつつ、巫女さんが必要な物に目星をつけて。それを元にあれやこれやと教わりつつ、月島へと戻って来た。電車でも熱心に読み込むその姿勢からは、まるで定期テスト前みたいな、そんな気迫すら見て取れた──そんなに行きたいんやねぇ、エルダとキャンプに。

 

「楽しんで来いよ、小糸ー!」

「それ以前に、エルダを引っ張り出せたらええな~」

 

 小柚子の料理で引っ張り出すよ!なんて言いながら駆け出す背中には、こう書いてあった……早くエルダとキャンプに行きたいんだ!って。

 

「まだ道具すら買ってへんのに、えらい楽しそうやったなぁ?小糸さん」

「遠足前みてーな小糸だったな!」

「遠足って言うても、引率の先生役になりそうやけどな……とりあえず、俺達も帰ろか?」

「だな、暗くなって来たし!……そうだ、なぁマサ?」

 

 自宅への歩みはそのままに、高麗の台詞に耳を傾ける。夜風って呼ぶには早い時間やけど、その風が、心地良く頬を撫ぜた。何気に『なぁマサ?』って久々に聴いたかもしれへんわ、なんやろ?深刻な話じゃなかったらええんやけど。

 

 

「うん?なんや?」

「小糸ん家がキャンプに行くんだしさ、マサも行ってみねぇか──キャンプに!」

 

 

 何時やったか忘れたけど、俺も誘ってキャンプに行こうって、マサと一緒なら楽しいから!って誘われた記憶がある。あの時は、親子水いらずの空間に……お邪魔出来へんとか考えて、断った。近所に越して来ただけの、他人でしかあらへんから。気持ちだけ受け取って、そのまんまにしてたけど……小糸さんのやる気と、高麗の陽気に充てられて。なんとなく、本当に、なんとなく。

 

 

「──せやな、折角やし、行ってみよかな」

「へへっ、そうこなくっちゃ!早速今週の土曜にマサも着いてくる事、伝えてくるぜ!」

「ふーん今週……はぁ!?今週!?」

「おう!そうと決まれば、食料も買い足しとかねーと……じゃあな、善は急げだ!」

 

 

 ──誘いに、乗りたくなった。高麗を悲しませたくないとか、気が向いたとか、それもあるけど、一言に纏めるなら……キャンプに行きたくなったから。実行される日程に早速振り回されてるけど、まぁええやろ。

 

「あっ、おーい高麗!」

「ん?なんだよー?」

「……俺も入門書、読んどくわ!」

「──おう!楽しみにしとくぜ!」

 

 小糸さんへの授業を横目に見ながら思ったけど、キャンプは結構、手間が掛かってる。だから、おんぶに抱っこで終わらん様に、テントの建て方位は学んどくか!

 

 そんな理由で、キャンプについて調べ出した。自分でも分かる程に……本を捲る指の速さを、内心で自覚しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──静かやなぁ」

 

 あっと言う間に、週末がやって来て。あれやこれやと戸惑いながらも、桜庭家の休暇にお邪魔させてもらった。高麗曰く、『オフシーズンかつ穴場なんだぜ!』って言われたこの広場は、家族連れどころかソロキャンパーすら居らへん……そんな閑散としたキャンプ場やった。

 

 東京とは比べ物にならん程に空気は新鮮で、辺りには静寂が満ちていた。この場にあわせて耳を切り替えなアカン位の、深い静寂。山の木々が風で揺れる音、脚を組み替える時の衣服の擦れ、ぱちぱちと燃える焚き火、それから……俺がコーヒーを飲み込む喉の音──月島では気にも留めへん様な音が、そこには確かにあった。耳をすませたら、心臓の鼓動までわかるかもしれへん。座ってる折り畳み式の椅子も心地良くて、座面や背もたれの張りの良さに、身も心も預けたくなってしまう。

 

「大阪でも東京でも売ってるコーヒーやのに、不思議と美味いなぁ」

 

 さっきは学んだ事を頼りに、試行錯誤しながら桜庭家のテントを建てようとしたけど……本や動画みたいには出来なくて、結局、手慣れとる高麗が粗方やってくれた。気にしないで!って高麗の親にも言われたけど、一番読み込んだのがそこやったから、ちょっと悔しかった。

 

「マサ、コーヒーはどうよ?」

「高麗……ええ感じやで、家と同じ感覚で淹れたし丁度ええわ。それやのに家より美味っ、ってなってた所でな?」

「だろ!外で食うラーメンも、コーヒーもなんだか美味いだろ?」

 

 食後の余韻に浸ってたら、厚手のマフラーとニット帽にオーバーオール、その上からダウンジャケットを羽織った高麗が、テントから這い出て来た。月島のファッションリーダーは、キャンプ場でもそのセンスを発揮してる。

 

「さっきのラーメンも美味しかったなぁ。このコーヒーもやけど、なんでやろ?」

「身も蓋も無いけど、テント建てるのも大変だし、なんだかんだ遠かったし……要するにだ!腹が何時もより減るからじゃねーかな?」

「でもその身も蓋も無い事が、キャンプの魅力なんかもなぁ」

 

 そんな他愛のない会話の間にも、焚き火はぱちぱちと燃え続けて、俺達を赤く染め上げてくれる。日中は太陽が照らしてくれるけど、今は焚き火がその役目。

 

「せや、親御さんは?」

「ラーメンを作ったクッカーとかを洗いに行ってるぜ、サボって持って帰っても良いけど……焦げ付くと次が面倒でさ」

「やっぱり、俺がやるべきやなかったかそれ?お世話になってるんやし」

「初めてなんだからもっと任せりゃ良いんだよ、楽しんで欲しいって出発前にも言ったじゃねーか!」

「うーん……そこまで言うなら、しゃあないか」

 

 当たり障りのない会話を最後に、沈黙がこの場を支配した。暴風とまでは言わへんけど、そよ風が草木の匂いとかを運んで来たり、囲う焚き火の炎を揺らす。時計もスマホも見てへんから、どれだけ沈黙を貫いたか、わからへん。

 

 そんな中、一つのアイデアを思い付いた。普通のキャンプ場なら、夜更けに騒いだり、キャンパー仲間への迷惑行為はNGなのがルールらしいけど……幸い、桜庭家と俺以外には見当たらん。もしかしたら、今がチャンスなのかもな?

 

「なぁ高麗、今やったらさ、持ってきたアコギ弾いてもええかな?」

 

 荷物は嵩張ったけど、こんな時の為、余興がてら愛機を担いでやって来た。騒音問題が駄目なら諦めたけど、今のキャンプ場なら、いけると思う。

 

「そういや持ってきてたよな、なんだか新鮮で良いじゃねーか!何を弾くつもりなんだよ?」

「せやなぁ、こんなに静かで、夜空の星も綺麗やし……そんな時に似合う曲って言えば……持ち曲やないから、楽譜見ながらでええ?」

「勿論だぜ!」

 

 足元を気にして生きてる都会とはまた違う、星空の向こう側に見える宇宙が、一等星達を見て欲しいとばかりに引き立てていて。何気なく見掛けた流れ星が、その選曲を後押ししてくれた。

 

 テントに置いてきたギターケースを担ぎ、椅子に座った。それからケースのポケットに入れてた楽譜を開いて、そっとコードを確認する。テンポは原曲よりも遅くなるけど、どうせ観客は高麗しか居らん……まぁこんな雰囲気やし、のんびり弾くか。

 

「それじゃあ、弾くで」

 

 その一言を皮切りに、お隣さんは目を閉じる。これが高麗なりの拝聴姿勢。

 

「〜♪」

 

 曲と、この空気感を尊重して、一気に六つの弦を鳴らさずに、6弦から1弦まで……一本一本、指で撫でる様に。この曲は、世界中でも有名で、とある映画の劇中歌。音楽理論は知らんけど、綺麗な和音を中心に成り立ってる。その歌詞も、英語やけどどこか普遍的で、みんなが星空の下に願ってもええんよ?とか、迷ってても星が導くとか、コード進行も歌詞も、全部が優しさで出来てる。

 

 家で演奏するのとは訳が違うのは、屋外やから反響もせぇへんし、月島よりも冷えるお蔭で、弦に触れる感覚も変わる所。でも、鳴り止まへんそよ風とか、目の前の焚き火のお蔭で、合奏している気分になっていて。飯の美味さも然る事ながら、自然音とのアンサンブルも……キャンプの醍醐味なんやと、心の奥に刻み込んでおいた。

 

 フルバージョンでも短めの曲とはいえ、楽譜をなぞりながらの独奏。それでも何処か満ち足りた気分に浸れるのも、きっと、この夜空と──聴衆がいたからこそ。

 

「……ふぅ、なんか久々に弾いたなぁこの曲。なぁ高麗、どうやった?雰囲気は良かったんやないか?」

「なんていうかさ、祭で盛り上がる奴も良いけどよ……服にもドレスコードってのがあるみたいに、曲にも服飾規定みたいな?要するに、雰囲気にピッタリな感じでさ。マサの家で聴くギターも良いけど……今のもすげー良かったぜ!」

「褒め上手やね。拙さ出たけど、それなら何よりやわ」

 

 楽譜を流し見て、見切れる所で楽譜を捲って。それで思わず手を止めてしまったけど……それが逆に良かったんかな?それならまぁ、結果的には良かったか!

 

「なぁ……もし、もしもマサが、良かったらだけどよ……」

 

 俺自身も演奏の余韻に浸りつつ、バッグにアコギを仕舞う最中。高麗は俺の顔を見てへんけど、夜空の星の見つめながら……願う様にポツリと、呟く声を耳が拾った。

 

「──また、私達とキャンプ、来てくれねーか?」

「──せやな、高麗がそう望むんなら、何時だって」

 

 高麗の独り言へと返すつもりで、俺も、星を眺めて呟いた。お互いに、次を深く考えずに願ったけど──これはきっと、そう遠くない未来の約束。

 

 

 東京都中央区月島……隅田川の下流に溜まった土砂を埋め立てられて、繁栄してきた下町から遠く離れ──お隣さんのキャンプに同行した緩やかな日の、そんなお話。




元にしたエピソードは同じでも、原作とは違う結末といいますか……締め方は原作とは変わって、オリジナル話に路線を変えて、しんみりとさせてみた感じです。いかがでしょうか?ギャグ調の締めも好きですが、たまにはこんな終わり方もアリだと、個人的には思っています。
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