割と最新話に近い話ばかり書いてきましたが、今回は原作でもアニメでも最初の方にある話です!拙作の第5話で触りだけ執筆しています!
「なぁエルダ、これってセーブしてもええの?」
「あ、ああ……寧ろした方がいいぞ?オートセーブもあるんだが、ロードしたら消えちゃうし……」
本来、高麗や小糸さんと同じく、椅子に座って授業を受けて、やっと帰路につける……そんな時間。何時もの場所で二人の帰りを待とうとしてたら、『少し忙しくなっちまうから、先に帰ってていいぜ!』って、文化祭のクラスTシャツを掲げた、高麗達の写真が送られてきた。ほんなら小糸さんも多忙やろなぁ?なんて思い至って、神様の子守りをするべく、エルダの部屋に押しかけた。
「それじゃあ、キリええし今日はこの辺で……」
「た、助かったぞマサ……買ったは良いが、普段やらないジャンルのミニゲームだったからな……」
押しかけついでに攻略が難航してるゲームがあるって告げられて、ああでもないこうでもない……二人で知恵と勇気を総動員、どうにかセーブポイントまで辿り着いた。いやぁ、ゲーマーエルフがしんどい言うだけあって、ミニの一言に集約出来へんやり応え……みたいな何かを、コントローラーから読み取った。
「俺よりゲーマーなエルダが苦戦するだけあって、相当やったな……時にさぁ、エルダ?」
「どうかしたか?まさか、やり直したいとか言わないよな……?」
「ちゃうちゃう、二度目は俺もしんどいって。ゲームの話やなくてな」
無計画にここを訪れた時から、浮き足立つっていうか、ソワソワしてたというか、何処となく……誰かを待ってるそんな気配を漂わせとった。俺が障子を開けた瞬間、一瞬見開いた目が、エルダの心を表してたと思ってる。『なんだマサか……』って言いたそうな顔を見せた途端、ぶっちゃけ回れ右!しそうになったし。
「さっきからその、何かを待ってるんか?えらいソワソワしてるやんか」
「……やるな、マサ。私の心を見抜くとは」
「見抜くっていうか……モロバレやったで?何かの正体までは見抜かれへんけど」
「ふ、ふふ……良いだろう、クリアしてくれたお礼に教えるとしよう」
聞いた限りやと、高難易度のゲームよりも楽しみな、何かの話?エルダの事やから、限定ゴンゲムとか、カエルパンツァーとか、何にせよ……神事関連ではあらへんのは確か。
「ついにこの日が来たんだ……まるで、永遠とも思える程の長き日々だった……」
仰々しい!不老不死らしい種族が語るとより仰々しい表現!何を待ち兼ねたのか知らんけど、そこまで修飾する程の何かって……一体なんなんや……!?
「そう、私はその長き日々を耐え続けて、あの……あの闘いを制して、狭き門をくぐり抜け──」
「小金井さま方高耳昆売命さまー、お届け物でーす」
「くぐり、えっあっ……ごっ、ごくろうさまです……」
俺の月島史上初、エルダの如何にも神様らしい、尊大な態度から来る台詞回しを耳にしてた最中……宅配便がやって来て、その尊大な神様は、水をさされて、荷物と引き換えに雲散霧消した。ってか宛名それなんや……てっきり矢鱈と長い『エルダリエ・イルマ・ファノメネル』って方やと思っとったわ、でもそれはそうか、本名やと長過ぎるもんなぁ?
「俺や小糸さんと違って人格変わり過ぎやろ……普段から宅配の人来てるんと違うん?」
「そ、それはその……便利だけど怖いし……偶に知らない人になるし……」
部屋の外に積まれてる空きダンボールを、俺は知ってる。ゲームにしろ、おもちゃにしろ、それ程、此処に宅配の人が来てる証拠。エルダの言う通り……偶に知らん人になるとしても、宅配ってのは担当地域が決まってるらしいから、これだけ利用してたら顔覚えるやろなぁ?そう考えたら怖いわな、知らん人が来るってなったら。
「そら宅配の人やって、休んだりするしなぁ。んで、その箱の中身は何なん?またおもちゃ買ったん?」
「そ、そうだ!そうなんだよ!──遂に、届いたんだ……!」
遂に届いたんだ!と言い切るよりも先に、手慣れたカッター捌きで開封して、俺の問いかけへの答えを示してくれた。
「おとりよせランキング3年連続第一位!金沢の実店舗でも連日完売の大行列!芋蜜の金時ムースプリン!」
「──まさかやけど、長き日々とか、闘いってのは……」
「ああ、オンラインショップでも、5ヶ月待ちの人気でな!予約し損ねたら何時になるかわからないから……フフフ、待ちわびたぞ!」
要冷蔵って書いてあったから、おもちゃやゲームやあらへんとは思ったけど……グルメの予約戦争やったとは。このプリンに、そこまで魅力あるんかなぁ?
東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』、祀られてるそのご神体は──異世界から召喚されすっかりひきこもって……長く険しい闘いを制した、エルフやった。
「レビューも良かったし、期待大だ!」
「にしても5ヶ月待ちかぁ、俺やったら諦めるわ」
「チッチッチッ、そんな様子じゃいざという時に押し負けるぞ?予約というのはだな……」
「誰目線やねんそれ……」
闘いへの心構えをレクチャーする神様。これがファンタジーな世界やったら、魔王を倒しに行く勇者への神託なんやけど……肝心の勇者には、そこまでの意気込みがないんよね!
「さて、早速味わいたいしお茶を淹れ直そう!マサもどうだ?」
「んー、お茶だけ貰おっかな。プリンはエルダが食べたらええやん、エルダが注文したんやし!」
「そ、そうか?それなら仕方無い!私だけでも……あっ」
いそいそと、キッチンへと向かうエルダの足が止まった。時計を見てるけど、おやつの時間をとっくに過ぎてるのを気にして?いや、夜更かし上等のエルダにそんな概念は……自堕落なエルフに分け与えるなんて行為は……!
「もうすぐ、小糸が帰って来る時間だな……一緒に、食べようかな」
メッセには、クラスTシャツの試着会なんだぜ!って書かれてた気がする。その文言通りなら、暗くなるまでやらへんと思うし、真っ直ぐ帰って来るとしたら、帰宅する頃合い……前言撤回、なんだかんだ言うて、優しいやんエルダ!
「そうしとき、甘いもん大好きな小糸さんやったら絶対喜ぶで?」
「い、いやでもこのプリンはずーっと前から予約して、やっとおとりよせ出来た物だし……!ひ、ひとりで全部食べちゃっても……!」
前言撤回した俺の、前言を撤回──このエルフ、卑しさの極致に辿り着いてるわ。今んとこは……天使と悪魔に揺さぶられてるけど、その発想を思いつく時点で卑しすぎる。まぁエルダの立場になったら、折角張り付いて予約した物を分け与える……って事に葛藤するのも、わからんでもないかな?
「ただいまエルダ!藤君来てたんだ、いらっしゃい!」
「こんちは小糸さん、お邪魔してるで〜」
そうこう葛藤してる最中に、例の巫女さんが帰ってきた。それに反応して挨拶を返した束の間、目にも止まらぬ瞬発力を活かして、プリンの瓶を抱えて背を向けた。いや速っ!そこまでして独り占めしたいんか、このエルフ……もっとその瞬発力をさぁ、別の事に活かそうとは思わへんのかなぁ……?
「お、おかえり……」
「ん、なんか届いたの?」
「い、いや……うん、まあ……」
その俊敏さをもってしても、空きダンボールまでは回収出来ず。通販を利用した形跡がバレた。あーあ、これは追及される流れやで!甘さに目がない小糸さんの事やから、名探偵顔負けの捜査が始まるわ!──そんな一時的な偏見は、直ぐ様崩される事になった。
「?……あ、そうだ!アイス買ってきたからみんなで食べよ!」
「え?」
「東京限定のコンビニアイスなんだって、コマちゃんが教えてくれたんだ!エルダ、限定品とか好きでしょ?藤君も好き?」
空き箱について問い詰めるどころか、善意100%で限定品を分けようとしてくれた。あまりにも、あまりにも優しすぎる!普段あんなに手を焼かされてる神様に、慈悲の心でアイスを買ってきてくれるなんて……!その善意に充てられたエルダは、緊張した飼い犬みたいな、浅くて速い息遣いになっていって──。
「ごめんなさいー!!ひとりじめしようとした卑しいエルフでごめんなさいー!!」
「は!?」
抱えとったプリンを差し出し、あろうことか土下座までして、隠し通そうとした事実を謝罪した。案の定、小糸さんは土下座した意図を飲み込めてへんし。まぁ、プリンについて力説してた威厳は消え失せたけど、神様としての良心が湧いてきたから……良かったんやないかな?
「うま────い!お芋の蜜の部分だけ集めたみたい!」
「はい……喜んで頂けた様でなによりです……」
「何その喋り方!」
小糸さんによる、おとりよせプリンの試食会。その声色が、どれ程絶品なのかを伝えてくれたから……少しだけ気になってしまった。俺は一度断った手前、それなら是非!とは言われへんけど。
「ほら、もういいじゃん!エルダも一緒に食べよ!」
「うん……!」
嬉し涙って言うんかな?一瞬で生気を取り戻したエルダが、小糸さんの誘いに乗った。こっちはお茶だけで十分やし、晩飯ガッツリいきたいし。いざ食べたくなったら、反則かもしらんけど、いすずさんにお願いすれば多分贈って貰える……インフルエンサー特権で、何卒!
「あーん……美味しい、美味しいなあ……流石はおとりよせ様だ!あと1つは……マサは食べないし、小柚子にあげよう」
「それがええわ。俺なんかより、もっと相応しい人が食べるべきやしな!ってかその名前を聞いた途端、尚更断って良かったって思うわ……」
「ふ、藤君はこのアイスで我慢してね?」
「アイスもや、アイスも小柚子ちゃんに!」
「お、お茶だけだと寂しいぞ……何か食べてもいいんじゃないか?」
なんにせよ、大食いな体質でもないし、お菓子やアイスなら家にもあるから今日の所は我慢やわ!それでも二人とも、美味しそうに食べるから、ちょっとだけ腹減ってきたけどな?
「あはは、食べたくなったら言ってね?……そういえば、さっきコマちゃんともおとりよせグルメの話してたんだ〜!」
「おとりよせか……おとりよせは季節も地域も関係なく、楽しめるから凄いよな……!」
「ねっ!宅配の人のお蔭だね!」
「全国のもんを運んでるんやもんな、ありがたい話やで」
取り寄せる人がいるのなら、当然それを運ぶ人がいる訳でして。少なからず、俺だって利用してる。まぁでも正直な話、エルダに関しては少しは自分で買いに行け!なんて、思ったり思わなかったり。本人はぜっったい、月島からも、神社からすら出ぇへんと思うけど。
「後は、冷蔵とか冷凍技術だな……江戸の頃はそんなもの無かったから、季節外れの氷なんて、凄く貴重な物だったよ」
「貴重って事は、あるにはあったんだ〜」
「冬に作った氷を切り出してな、山腹や洞窟の奥にある『氷室』っていう貯蔵施設に保存したんだ」
「なんか藁で作ったテントみたいな奴やんな、それ?日本史の教科書に載ってたで!」
「天然の冷蔵庫だね!」
今でこそ、当然の様に家電として冷蔵庫があって、大小違えど一家に一台存在してる。冷蔵技術の進歩も凄いけど、その技術を享受出来る時代に産まれたんも、中々に幸運やなぁ?春夏秋冬、何時でも何度でもアイスが頂ける訳やしな!
「昔は夏の氷を『お氷様』って呼んでな、毎年旧暦の六月一日に、加賀の氷室から江戸に届けられたんだ」
「将軍さまが、かき氷食べたとか?」
「いや、氷と言っても雪の塊位の物だったし……食用じゃなかったから、触って涼んだり……果物を冷やしたりしたんだよ!」
「エルダは?一応神様なんやし、捧げられたりされたんと違うん?」
「ああ、私もほんの少しだけど、嬉しかったな……!」
指でこれくらい分けて貰った、ってジェスチャーしてくれたけど……確かにほんの少しって感じ。縁日のかき氷の屋台の方が多そうに見える。
「あはは、エルダは何に使ったの?」
「食べてお腹壊した……テンション上がってつい……」
「食用じゃないって言うたやん貴女……」
「食べちゃったんだ……」
雪が降った日とか、スキー場に連れてって貰った時とかに、俺も氷……に近いであろう雪に齧り付いた事は、確かにある。味も無いし、親にはばっちいから止めなさい!って怒られた経験あるから、気持ちはめっちゃわかる。地元で雪降らへんから、テンション上がるんよね!
「『お氷様』かあ、ホントに貴重なものだったんだね」
「うん、横浜港が開港した時に……アメリカから氷を輸入したら、みかん箱位の大きさでな?3両もしたんだってさ」
「3両って、今やとなんぼするん?」
「……1両が10万円前後だから、大体30万円くらいだな」
高すぎひんそれ?みかん箱の大きさでそれやと、江戸の商人が未来を知ったら卒倒するで?冷蔵庫で氷を!?何個でも!?今までの商売は!?俺達の商いはなんだったんだよ!?って叫ぶんと違うかな……。
「私なら、そのお金でハーゲンダッツ1000個買うな!」
「私もだよ……たぶんみんなもだよ……」
「俺はそんなに要らんけど、まぁ、確かになぁ……?」
江戸の商人には悪いけど、今を生きる俺達には、ただ固められたお氷様よりも、もっともーっと……甘くて有名なスイーツがあるから、そっちを買うわ!ごめんな、昔の人……。
「ああ……食べ終わってしまった……」
小糸さんとエルダ、おとりよせプリン完食。底にくっつくカラメルまで丁寧に掬い取るその姿から、どれだけ美味いのかが見て取れた。
「物凄く美味しかったな……」
「これからは、おとりよせグルメはおとりよせ様って呼ぼう!」
「ああ……これはもう、おとりよせ様と呼ばざるを得ないな……」
「そこまで美味いんか……」
二人の中で格上げされたプリン。そこまで持ち上げる位やったら、俺も食べてみたかったと思いつつ、いやでも小柚子ちゃんの分やし……とも思いつつ。
「じゃあ片付けちゃうね」
「あ……!ま、待って!それ、ほしい……」
「えっ、これ?なんで?」
「空きビンやで?」
名残惜しすぎて、とうとう空の容器を欲しがるエルダ。幾らなんでも……って思ったけど、そういや昔、こういう容器集めてるとか言うてたっけ?あの時はもっとこう、くねくねしてたら欲しかった、とかなんとかで断ってた気がするなぁ?
「う、うん……ジャムのビンとか、きらきらしてて好きなんだ……これもまるくて、なかなか良い」
「ふーん、まあ確かに綺麗だね?」
「エルダ、こういう曲線もアリなんや。ゴンゲムとは正反対の造形やん、くねくねもしてへんし」
「──ふっ、仕方無い……色々分からせる為に、二人にコレクションを見せてやろう……!」
えっ、どの辺が仕方無かった?と反射的にツッコむ小糸さんの台詞を聞き流し、押入れを漁り始める神様、エルダ。そこまで奥深くに仕舞ってへんかったみたいで、俺達に見せたがってた物を……三方に乗せて持ってきた。
「ジャジャーン!」
束の間の静寂。エルダが俺達に見せてきたのは、なんか光沢のある、色とりどりで形すらバラバラの、一言で言うならガラス細工。その光沢を失ってへん辺り、日頃から手入れしてますよ感は……伝わる。
「ほ、ほら!この空きビンは六角形でかっこいい……!」
「あ……う、うん……」
万年筆のインクとか、高そうな墨汁が入ってそうな、角ばったビン。均一に型取ってる直線が、ビンとしてのディテールを示すかの様な?
「こ、この空きビンは色がキレイだろ……!?」
「あ……うん……ほんとだね」
南国の海を思わせる様な、透き通る青。なんか文字が入ってるけど、どこかの会社の贈答品やったりするんかな?
「この空きビンはなんと、動物の形だ……!」
「へ、へー……」
その外見は、まるでニワトリ。頭の部分が蓋になってて、それを取り外すと、醤油さしみたいな小さな蓋が露わになった。割れ物でありながら、小さな仕掛けが少し面白いなぁ……?
「もー!なんでそんなに二人とも興味ないの!!」
「え!?私達が怒られるの!?」
「あーごめん、脳内のツッコミで忙しくてな……」
どう取り繕うか、なんて返せばええか悩んでたら、エルダに興味ない判定を下された。ごめん、ごめんて!俺もそういう空きビン取っておきたくなる気持ち分かるって!興味ある、あります!
「凄い量だね?話には聞いてたけど、初めて見たよ……こんなに集めるなんて、光り物好きのカラスみたい」
「つまりは習性やね……昔から好きやったん?」
「う、うん……江戸の頃、舶来品のギヤマンに衝撃を受けてな?」
舶来品──外国からの輸入品、つまりは、江戸時代のおとりよせ様。昔は象とかラクダ、インコまでもが舶来品として、江戸にやってきたらしい。
「インコはまだ分かるけど、ラクダかぁ」
「江戸に象さんもいたの!?」
「うん、時の将軍に献上される為に来日したんだけど、象さんを乗せられる船が無くてさ?長崎港から歩いて江戸に入ったんだぞう!」
「象だけに?」
「……そ、そこからはもう、空前の象さんブームでな?」
この歴史語りのエルフ、駄洒落を言ってしまった事実を華麗にスルーしやがった……!ヨルデちゃんとの対決が、こんな時にまで波及してくるなんて……。
「象さんモチーフの印籠とか、刀の鍔なんかも作られたんだ!私も関連グッズ買い漁ったよ──お賽銭前借りして」
「えーっと、江戸時代からやから、西暦換算で……」
「400年間、まるで成長してないのか……」
月島の皆さん、今からでも遅くあらへん。もう少し、エルダへの評価を改めた方が、エルダ自身の格にも繋がると思うんやけど……どないやろか?
「昔からおとりよせ様は、人を惹きつけてきたって事だねえ。今もこうして……正直、もういっこ食べたい!」
エルダの格式の話もしたけど、巫女さんは巫女さんでどうかと思うなぁ。この食い意地、とても神聖な肩書きを持つべき人間には思われへんで?
「そうだなあ……近所では手に入らないという、非日常にはロマンがあるもんなあ……あとそれは、小柚子のだぞ?」
「わかってるよ〜、愛でてるだけです〜!」
恐らく史上初、未開封のプリンに頬ずりする小糸さん。そこまで食べたいとしてもさ、冷蔵品をベタベタ触ってたら保存に関わるで?ええの?小柚子ちゃんに美味しいプリン食べさせたらなアカンやろ?
「ん?なんや急に立ち上がって」
「どうしたのエルダ?」
決意したっていうよりは、観念したって方が正しいであろう、そんな顔。そう、それはまるで……隠してたもんを白状するかの如く、曝け出す前の犯人みたいな……!
「──実は、昨日届いた別のおとりよせ様がある」
「ほほう」
「まだあったんか!」
併設キッチンから持ち出されたんは、プリンとか違う方向性に甘い、正直普段生活してたらあまり耳にもせぇへん……矢鱈とお洒落な名前の……!
「バスクチーズケーキ様です!!」
「ほほう!うわっ美味しい!!」
「手に取るの速っ!食べるのも速っ!」
バスクチーズケーキ。片手間に検索してみたけど、スペインのバスク地方発祥のケーキらしい。クリームチーズを使ってて、一般的に知られてるチーズケーキとは違い、外側全体をカリカリに焼いてるのが特徴……らしい。
「生地がほろ苦くてクリームチーズに凄く合う!」
「こ、このアップルパイもいけるぞ!」
「まだあるん!?手際が良すぎひん!?」
「はわわわわ……三等分しよ、三等分!」
「し、正直見てるだけで胃もたれしてきたから、お二人で味わってや……」
「それなら仕方無いよね!半分こしよ、半分こ!」
「いや、半分と言わず──」
「一個ずついっちゃう!?」
プリンから、ケーキの後にアップルパイ。甘味の波状攻撃をこれでもかと繰り出す神様の前に、肩を掴むよりも前に小糸さんは──陥落。美味しそうに食べてる人を見ると、大抵お腹空くんやけど、なんでかなぁ?甘ったるい匂いの充満する部屋、それから二人の食べっぷり……結果、食指は微動だにせず。最早夕食すら、遠慮しようか悩み出してた。
「なんかしょっぱいのも欲しくなってきた……」
「両手にパイ持っといてその台詞!?まだ食うんか!?」
「あ!それなら……もぐもぐ」
「あーっ小糸さん、お菓子でも押し込んだら喉詰まるって」
「じゃーん!限定ポテチ東京もんじゃ味!」
最早言葉にもならへん……甘味から、塩味。次々出てくる間食のフルコースを見せつけられて、勝手に請け負ってたツッコミ役の看板を、そっと下ろした。女子って……そこまで甘いもんが好きやとはなぁ?
「ひゃー!ソース味、丁度欲しかったんだよなー!っと、ソースと言ったらサイダーだよな!……これを見ろ!」
「ご当地サイダーじゃん、イエーイ!」
「さっき買ってくれたアイスもあるぞ──」
「社務所の台所に長崎カステラあったはず!藤君は……いらないんだっけ!ダイエット中?」
「あ、うん。ダイエットでもなんでもいいです……」
もう、どうにでもなぁーれ。
「「おとりよせ様に……かんぱーい!」」
こうして、駄目エルフと駄目巫女は、おとりよせ様の魔力にすっかりあてられ……間食を完食する程、暴食の限りを尽くし、欲に溺れて──。
「「ゲフッ」」
「──お姉ちゃん?エルダ様?」
「あの……はい、すみません……」
「た、たいへん申し訳なく……」
夕飯がどうあがいても入らなくなり、神社の食を担う……あの小柚子ちゃんが青筋を立て、しっかりキレる位には、静かに怒られとった。それは小学生が醸し出す迫力やないって、小柚子ちゃん!
「えっとぉ、カラスも鳴いてるし俺は帰るわな……?ほなさいな」
「──マサさん?どうして、一緒にいたのに止めてくれなかったの?」
「いやーその、なんか二人がやけに美味しそうに食べてるからさぁ、止めるに止められ……あっハイ、力不足ですみません……」
その場に居合わせた俺も、監督不十分として叱られた。小糸さんにもエルダにも、暴飲暴食しようとしてたら、今後はきっちり止めますんで、ハイ……。
東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む『高耳神社』。その神社に代々仕える巫女の妹さんは、月島の皆に愛されてるけど……その妹さんだって──キレる時は、キレる。
Go West!の様なオリジナルの話を投稿する予定で、執筆し終えた物があるのですが……先月に前編の時点で面白すぎる文化祭の話が更新されたので、私のそれはなかった事にして、そちらを元にお話を練る所から書き直しています。二次創作である以上、やっぱり原作ありきですし!(告知があった時点で没にしていました)