タイトルはほぼ同じですが、中身は実質続編です!
「コマちゃんにはご当地グルメで〜小柚子には可愛いキーホルダーが良いかな?」
「あーうんせやね、グルメは選ぶけどキーホルダーは任せるわ。菊次郎さんへはどないするん?」
「爺ちゃんは要らないって言ってたけど、折角だしな〜!エルダ、これ美味しそうだよ!」
毎日お世話になってる電車の振動、駅へ止まる度に風が吹くような音を立てて開くドア。それは、何時も通りの日常の風景。
でもその日常の風景は、今日は見せてやらないとばかりに掻き消す勢いで流れて行き、ガタンゴトンと擬音一つも鳴らさずにレールを駆け抜けてる。座席の後ろに付いてるテーブルに置いたお茶は、時速数百キロを超えても微動だにしてへん。
「ほらエルダ、今見えた富士山でなんか江戸知識をひとつ」
「そ、そうだな……富士山の名前だが、かぐや姫に由来しているって話があってな?別れ際に渡された不老不死の薬を、残された人が山頂でいてて……焼いたらしいんだ。それから不老不死の山いてて、不死山、富士山と呼ばれるようになったんだっていててて……」
「重症やな、これは」
「うう……どうしてこんなことに……」
東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む、『高耳神社』。祀られてるその御神体は、細長い顔の新幹線に揺られ、苦痛に悶えながらも西へと運ばれるエルフやった──発端は、ほんの少し前の話。
「拝まへんのに、氏子さん以上に常連になってしまったなぁ」
氏子さんがご利益を願う為に潜る鳥居を、友達の家の玄関みたいに何気なく通り過ぎた。日によって巫女さんの相棒と訪れたり、仕事を任されてたりするけど、暇を持て余した時に敷居を跨ぐ頻度の方が高い。今日もその例に漏れてへん。
「あっ藤君いらっしゃい!」
「こんちは、小糸さん」
時には境内の掃き掃除、時には社務所で御守りの販売、高耳神社に足を運んだら毎回小糸さんが出迎えてくれる。
学生生活と二足の草鞋を履いて尚、明朗快活。本人は巫女の仕事で学業に支障を出したくない!とは言うてたけど……神様が神様やから、心労が祟らへんかちょっとだけ心配。やからこそ、暇を作っては遊び相手を引き受けてるんやけどね。
「エルダは?」
「藤君を待ってるよ!それよりちょっとだけいい?エルダの事なんだけどね!」
「うん?どないしたん?」
こうして相談に乗ってあげるのも、俺なりに力を貸したい一心なんやけど、珍しく相談する時のテンションじゃない。凶報よりも吉報を報せる時のそれで、特に身構える事もなく耳を傾けた。
「最近のエルダね、凄く落ち着いてるんだ!神事も真面目にやってくれるし!」
「あのエルダが?悪いもん食べ……いや、小柚子ちゃんが胃袋掴んで、でも本人がジャンクフード好きやしなぁ……どれくらい真面目なん?」
「なんかね、カフェテラスの窓際の席で物憂げに悩む麗人って感じでね!儚さが凄く美術館に飾られる絵画みたいで──」
「あーわかったわかった、要するに駄々こねへんし言う事聞いてくれるんやな!凄いなぁ!」
トレンチコート着てたり、ゾンビメイクしてた時みたいなシャッター連打ウーマンの小糸さんになってる……この時の巫女さんは関西人より早口になるから、聞かされる側がたじろいでまうしさっさと切り上げんと!
「んで、その従順なエルダがどないしたん?」
「え?それだけだよ!今日もよろしくね!」
「そ、そっか。それだけ嬉しかったんやね?了解了解」
オチは特になし。あまりにも怠惰を究める神様に仕えてると、些細な振る舞いすらも歓喜の種になるとはなぁ。
無意識で神様が巫女を労ってるみたいやし、俺も巫女さんを労うとするか!
「普段通りに遊ばせてもらうけど、エルダと食べるつもりで生ドーナツ買って来たんよ。小糸さんも一緒にどう?」
「本当!?ありがとう藤君、それエルダが食べたがってるやつだよ!ちょっと待ってて、掃除はもう終わったから!」
偶々ゲームのつまみとして買ってきたドーナツは、以前話題になってたメーカーの洋菓子。エルダが食べたがってたなーと思いつつ、少し遠出して買ってきた。普通のドーナツと違って揚げすに作られてるらしく、そのお蔭でモチモチ食感らしい。
ドーナツの話を交わしつつ後片付けを待って、エルダが籠もる本殿へと一緒に向かう事にした。
「エルダ、お邪魔するで〜」
「あ、ああマサ、いらっしゃい……小糸もお疲れ様」
「ただいまエルダ、お茶淹れるからちょっと待っててね!」
いそいそと台所に向かう小糸さんと、のそのそとエルダと同じ炬燵に入る俺。ウサギとカメみたいな、或いはアリとキリギリスみたいな、どっちでもええか!
向かい側に座るエルダは前評判通りに儚げで、頬に手を添え天板に肘を付き、じっと俺の様子を伺ってきた。
「……話に聞いてた通りやな」
「は、話?何のことだ?」
「小糸さん曰く、えらい真面目に神事やってて、物分かりが良すぎるレベルで大人しいって。なんかゲームしよう!ってテンションでも無さそうやな」
「そっ、そんな事無いぞ?今日はアナログなゲームをやりたくて仕方ないんだ!遊ぶぞー?」
「ふーん?それなら好都合やな、今日はお菓子つまみながら遊ぼうと思ってたし。この前言うてた生ドーナツ買ってきたで!」
「生っ、ドーナツ……か……」
手に提げてたビニール袋を掲げた途端、表情どころか全身が固まったエルダ。おやつの時間やと思うけど、昼飯遅かったんかな?それとも手が汚れるのでも気になるか?
「この前食べてみたい!って言うてた代物やけど、もしかしてもう食べた経験がおありで?」
「い、いや……」
「エルダってば、この前からずっと食べてみたいって言ってたんだよ、そこの生ドーナツ!良かったねエルダ!」
「え、あ、う、うん……」
「まぁまぁエルダ、手のひらが油や砂糖でベタベタにはならんからさ。玩具的にはセーフやで?二人はチョコとカスタード、どっちがええ?」
「チ、チョコ味かな〜……」
「私はカスタード!」
普段の調子に輪をかけて歯切れの悪いエルダに違和感を覚えつつも、袋からドーナツを取り出した。目を輝かせる小糸さんとは対称的に、冷や汗を書きながら包みを手に取ってる。まるで危険物を処理する時みたいに。
こんな時やったら誰やお前!?って勢いで飛び上がる性格してるのに、スイーツに食い付かないこのエルフ、何か隠してる気がする。ここは様子見やな。
「うん!ふわっふわで美味しい!」
「ドーナツと言われると馴染みのない食感やけど、美味いなぁ……エルダ、食べへんの?」
「そうだよ、念願の生ドーナツだよ?」
「たっ、食べるよ……!?よ〜し食べるぞ〜!」
そんな嫌いな物を食べさせられる子供みたいな……みたらし団子も桜餅もいけるんやったら、これも食える筈やのに。ってか折角遠出して買ってきたのにその反応、ちょっと悲しいなぁ。
バンジージャンプで飛ぶ決心をした芸人みたいな面持ちで、ドーナツに齧り付くエルダ。美味しさのあまり固まったんかと思った刹那、矢で射抜かれた人の様な勢いで居間の畳に倒れ込んだ。
「どうしたのエルダ!?!?」
「倒れ方が尋常やない、あ、アカネちゃん呼ばんと!」
駆け寄る小糸さんの傍らで、エルフ専属の医者でもあるアカネちゃんにSOSを送ろうとした。不老不死やってもアレルギーとかあったら洒落にならんし!──なんて心からの心配は、患者本人からの台詞によって杞憂に終わる事になった。
「歯が痛い……」
「虫歯!?」
「う~ん……左の奥歯だよね、これ」
「せやろな、なんかこう、真っ黒になってるわ」
「うう……ひゃ、ひゃっはり……」
懐中電灯で口内を照らす小糸さん。目を凝らす俺。観念して口を開けるエルダ。耳が尖ってたら歯も尖ってる、と思ったけどそうでもないらしい。
倒れた原因は、日頃の不摂生による虫歯。生ドーナツを食べたがらなかったのも、その虫歯を隠したかったから?いずれにせよ、そんな時に生ドーナツは苦行もええとこやなぁ。申し訳ない!
「最近妙に落ち着いてたのは、痛くてションボリしてただけなんだね……」
「う、うん……実はご飯を食べるのも凄く大変だった」
「それでも残さず食べたのは偉いよ!」
隠し事は出来ないと悟って、添えてただけの手で頬を擦るエルダ。見栄すらも張る元気はないらしい。
「そんな痛いのに悪かったなぁ、こんな食べにくいもん買ってきて」
「い、いや……折角買ってきてくれたのにごめんな……?」
「っていうか、エルフも虫歯になるんだ。不老不死なのに……」
どうやら同じ疑問を抱えてたらしい。小糸さんがごもっともな台詞を投げかけると、エルフ特有の病歴?みたいなのを語りだした。
「う、うん。ヨルデなんかはよく虫歯になってたみたいだけどいてて……私はなるのは初めてだなー……ちゃんと朝晩歯磨きしてるのに……」
「エルダ、歯磨き粉に対する拘り凄いのにね」
「どんなやつ使ってるん?」
「ミントは弱め味は甘め、だよね」
「ああ、色がカラフルなら最高だ!」
思い描いた歯磨き粉のイメージを固めてから、小糸さんの隣に近寄った。もし想像通りの歯磨き粉やったら、何処からどう考えても。
(それって子供向けのやつなんちゃうの?)
(バリバリの子供向けだよ、エルダの歯磨き粉は……)
これはあれやな、毎回エルダの分まで買いに走ってるな?子供向けの商品は、エルフ向けでもある訳か……エルフ向けの歯磨き粉を作れば局所的に売れる可能性が……?
「もしかしてだけど……寝る前にチョコ食べたくなって、たまにそのまま寝落ちするのが良くないのかも……」
「もしかしなくてもそれでしょ!!」
「血糖値スパイク……!」
「『佃祭』っていう落語のオチにもなってておすすめ痛たたた……」
「そんなに悶えるレベルで痛いんか……」
「困ったね〜、歯医者さんはエルダのかかりつけの先生いないもんね」
江戸時代の歯磨きの歴史を語る合間だろうと、容赦なく痛覚を刺激する虫歯。俺は経験した事あらへんけど、歯医者のドリルは走馬灯が見える!って高校の友達が話してた記憶あるから、どう転んでも痛いらしいな?
「アカネちゃんは虫歯治されへんの?風邪引いた時は診に来てくれたらしいやん」
「あ、茜は口腔外科じゃないからな……小糸とマサは虫歯無いのか?」
「うん!定期健診しっかり受けてるから!」
「健診は受けてへんけど、飯後の歯磨きは欠かさへんなぁ」
エルフの専門医でも、治されへん病気があると来た。真面目にどないするんやろ?
そんな中、策を閃いたらしい巫女さんがスマホを片手に立ち上がった。
「そうだ!私のかかりつけの歯医者さんに聞いてみるね、エルフ虫歯の事!」
「う、うん……悪いな……」
それは、一般の医者に尋ねても分かる事なんか?と問いかけるよりも先に小糸さんは席を外した。エルフって種族が認知され、愛されてるからこそ聞ける内容やとは思うけど、個人的には……。
「なぁエルダ」
「ど、どうした?」
「人間の食べ物で虫歯になったんならさ、治療法も人間のやつでなんとかならんのかな?キュイーンってやるドリ──」
「い、嫌だ!それだけは!いてて、エルフの聴覚であんな恐ろしい機械を使われたら……!」
「──うん、治療法見つかるとええな」
それからエルダが時々罹る風邪の話とか、その時に刺される注射の話とか、アカネちゃんは容赦が無いとか私怨混じりに病気の話が語られた。江戸時代の知識よりも口が回ってて、その時だけは虫歯の存在を忘れてた。これが、緩和ケアってやつなんかな?
「やっぱり東京には治療出来る人いないんじゃないかって」
「そ、そうか……そう聞いたら余計に痛くなった気がする……」
かかりつけ医との通話が終わったのか、残酷な結果だけを伝えに来た小糸さん。その報せを受け取ったエルダは、段々と声が萎れていった。
「でもね!大阪にエルフ虫歯の治療が出来る先生がいるんだって!」
昔の自分やったら荒唐無稽や、と一蹴しそうな話題が舞い込んだ。
住んでた地域は田舎すぎてエルフの話題すら持ち上がらへんかったし、ましてやエルフを治せる医者の存在なんて。今でこそエルフの存在を認知してはいるけど、地元にそんな特異なお医者さんがいたとはなぁ。
「大阪?それって……」
「そう!ヨルデ様のかかりつけの歯医者さん!」
「せやろなぁ、ヨルデちゃん以外に居るとは思われへんしなぁ」
「あいつ、よく虫歯になるって言ってたもんな……!」
「さっそくひまちゃんに聞いてみるよ!」
善は急げとばかりに、廣耳神社と電話を繋ぐ高耳神社。医者同士で繋がりがあるみたいに、巫女同士でも繋がりがある──なんで俺は、そんな人達と繋がりがあるんや?
『もしもし小糸ちゃん、今日はどないしたん?』
『小糸ー元気かー!ウチやで!ヨルデちゃんやで!!』
煩……いや、賑やか。向こうでも神様と巫女が揃ってるらしく、仲良く電話先で俺達を迎えてくれた。
「もしもしひまちゃん、ヨルデ様、ちょっと聞きたい事があってね?」
事のあらましから今に至るまでの話の後、エルフの虫歯を治せる医者を探してる事を話した。一応、エルダが虫歯になってる話まで。
『なんやエルダ!自分虫歯なったんか!あはははは!』
『歯医者さんなら、ヨルデがお世話になってる先生がいてるよ。先生に話通しとくわ』
「本当!?ありがとうひまちゃん!ヨルデ様!」
「あ、ありがとな……いてて」
普通の電話やったらこの辺でお開きなんやけど、神様ってかあっちの神様が、それで終わる筈もなく。幾度となく繰り返されたであろう勝負を持ち掛けてきた。
『ほんで何本あんねや、エルダの虫歯!』
蓋を開けたら、リングベリなんたらとか、駄洒落勝負みたいな可愛らしくてしょーもない勝負やったけど。なんでも勝負に持ち込めるのは才能やね?
「え……?一本だけど……?」
『ウチは三本や!ウチの勝ちや!』
『ヨルデも絶賛治療中やねん』
「あははは……」
困ったように笑う小糸さんから、精一杯の愛想を感じ取れる。厄介なのは身内だけやないんやなぁ、巫女になってしまうと。
『せや、小糸ちゃん。話通す代わりにウチからも一つええかな』
「勿論いいよ!何?」
『もし、雅さんに会ったらな、伝えといて欲しいねん。ヨルデに吹き込んだ駄洒落の件でお話があるんよ?って』
『マサー!ほんまおおきに!駄洒落の世界は広いなあ!』
「う、うん、伝えとくね……?」
同じ大阪弁やからこそ伝わる静かな怒り。程度こそ低いものの、一言言いたいですよ?感は伝わった。駄洒落といえば、帰省した時にヨルデちゃんと対決した時のそれ。寧ろそれしかあらへん──さてはヨルデちゃん、あれから使いまくったな?
そんなお願いを面と向かって受けた窓口担当は、炬燵の向こう側にいる俺に目配せしてきた。今ここに居る事を暴露しないのは、紛れもない小糸さんの良心。ほんまおおきに……向日葵さん、後で折り返し連絡させていただきます。
「な、何とかなりそうで良かったね!」
「う、うん、一時は永遠にこのままかと……」
「こっちはこっちで何とかせなアカン訳ですが、まぁうん……」
そう告げた俺を見る二人の目は、憐れみ半分優しさ半分、そんな視線を送ってきた。女の子の怒りを抑えるお医者さんはいますか?いませんか?そっかあ!
「こっちはまぁええとして、そのエルフ虫歯はどうするん?話通したとは言うてたけどさ」
「ひまちゃん曰く、エルフ虫歯はほっといても治るみたいだよ?」
「え、そうなの!?じゃあ治療しなくてもいいんじゃない!?」
「でも十年かかるって。完治まで」
「じっ……えっ……!?」
人間の虫歯と違って放置しても治癒するのは、なんとも羨ましい限りで。それを調べたであろう医者も我慢したエルフ──多分ヨルデちゃんやろうけど、大した根性やわ。
「き、気の長い話やな?後十年、頑張りやエルダ」
「そ、そんな殺生な!」
「だから治療した方が絶対いいよ!」
「そ、そうだな……!」
「じゃあ今から、大阪に行こっか!」
「え?」
あまりにも唐突な提案に面食らうエルダ。幾らなんでも急過ぎひん小糸さん?早く治してあげたいのは分かるけど、何も今から──。
「あ、藤君も一緒に行こうよ!」
「えっ」
「大阪でしょ?案内してくれる人がいたら嬉しいもん!」
「あの、仮に行くとしても、新幹線代とかは──」
「勿論神社から出すよ!普段のお礼も兼ねたら、それ位は安い安い!」
「──えっ」
「うう……どうしてこんなことに……」
「ほんまに、なんでこうなったんやろなぁ」
「そりゃ歯医者さんは大阪にあるんだし、大阪に行かなきゃ治療してもらえないでしょ?れっつごー大阪ー!!」
東京都中央区月島……江戸時代より400年以上の歴史を刻む、『高耳神社』。祀られてるその御神体に仕える巫女は、思い立ったが吉日を体現した、ポジティブ過ぎる巫女やった──人様のお金で、帰省する日が来るとはなぁ。
櫓を組み立てる木槌の快音、行き交う職人さんや氏子さん達の活気。社紋と名前が記されたのぼり旗が並びつつある風景は、祭の仕込みに尽力してくれる、皆さんのご尽力の賜物。
でもウチやって、ただ指を咥えて見てるだけやない。主戦場に住んでる以上──巫女としての責務をこなさなアカン。
「折角小糸ちゃん達が大阪に来はるのに、忙しなくてしゃないなあ?ヨルデ」
その祭のメインキャストは、まだ未完成の神楽台に陣取って、自らの存在を誇張してみせるウチの御祭神。まだ骨組みしか出来てへんのに、危なくてしゃーないわ。
「ふふん!むしろめっちゃナイスタイミングやろ!!」
そんな御祭神は、近所の子供よりも幼くて、泣き虫で、やかましくて、一人で歩き回って、おつかいの牛乳はほぼ間違えるスカタンなエルフやけど。
「──ウチと精霊と向日葵の、めっちゃエエとこ見せつけたんねん!あははははははっ!!」
「廣耳さ〜ん、神楽台が作られへんで〜」
「早よ降りやヨルデ、大工さん困ってはるで」
これから始まる祭、通称『赤竜祭』を象徴するかの様な、激しい熱気を纏う紅炎。ウチの御神体が使役してるという火の精霊。
御神体の周囲で渦を巻き、燃え盛る剣呑な風貌に反して……神楽台や拝殿は勿論、衣服の一つすら燃やす事のない、ウチの知る限り──一番優しい炎。神社もウチも氏子さんすらも温かく包み込める、御神体の器を象徴する様な優しい炎が、今日も境内を包み込んだ。
大阪府のとある場所にある、江戸時代より400年の歴史を刻む『廣耳神社』。祀られたるその御神体は──その日の気分であちこち動き回る……文字通り誰よりも温かいエルフやねん。
「そうやヨルデ。想像してた日より早いけど、雅さんも一緒に来るんやって」
「ほんまに!?そら楽しみやなあ!マサに精霊見せたらどんな反応するかなあ!?めっちゃカッコええもん!」
「今度は丁重に、おもてなししたらなアカンなあ?」
勢いで話を練ってしまったかな?とは思わなくもないですが、これはこれで……。
精霊を従えるヨルデちゃんがかっこかわいいので、原作を是非。