【とある魔術の禁書目録】雷神伝 ~常戦飢闘のルサンチマン~ 作:白滝
感想・評価など気軽にお願いします。
オリアナ=トムソンの今回の任務は、ひどくあっけからんとした不明瞭な依頼だった。
『とあるバーにて、とある人物からスーツケースを受け取り、とある場所でとある人物に渡して欲しい』。
「ったく、お姉さんを口説きたいなら、もっと胸を熱くさせる甘い文句を選んで欲しいわね……まぁ、ぶっきらぼうでガサツな年下の男の子だったら許すけど」
そう言って、舌の上でアイスフロートの上に乗っていた真っ赤なチェリーを転がす。
そんな彼女の艶めかしい様子に、バーに詰め寄る男共がチラチラと視線を泳がせていた。
「声をかけてくれる子もいないし、つまらないわぁ……」
何度目になるか分からない溜息をつく。
仕方なく、もう一度依頼内容を確認する。
固有名詞はバーの名前と荷物の運び先の住所のみ。運び屋であるオリアナ自身にも情報を隠したい、という意図が受け取れる。
麻薬でも運ばされるのかとも勘ぐったが、それなら裏稼業でプロの運び屋として名を馳せるオリアナに直々に指名が来るような事とは思えない。橋下にたむろするホームレスに移動費を与えて、依頼すればいい。任務自体に『魔術』が必要ないのだ。
(……となると、死体の搬送とか、そういう面倒な依頼かもしれないわね)
重要人物の生死確認の重要証拠として、頭部を運ばされる。組織間での対立でもあるのかもしれない。
その場合は、魔術結社同士の抗争の駒として自分が利用されている事になる。ヤバくなった際、いつでも組織とは無関係な人間としてトカゲの尻尾のように切り落とす事ができるように。
(ギャラはいいし、手頃なところで退くのが最善ね)
任務はこれ一つではなく、荷物の受け渡し人から次の依頼を続けて頼まれる手筈になっていた。それを含めた前金も貰っているし、そのまま引き受けた振りをして逃げても報酬は万々歳。
そんな風に思案に耽っていたオリアナの横に、青年が腰をかけた。
若い。
ギリギリ成人しているか、といったような年齢。中性的な容姿も相まって、オッサンだらけの小汚いバーに不釣合いで目立っている。
カウンター席でオリアナの隣に腰をかけた青年が、柔和な態度で彼女に話かけてきた。
「アンタ美人だな。俺もよくここら辺のバーに通ってるが、アンタみたいな女は久し振りに見たよ」
「あら、可愛い事を言ってくれるのね。そういう必死に口説こうとする姿勢、お姉さんは嫌いじゃないわよ。でもね、坊やに一つ言っておくと、レディにはまず一杯奢ってあげるくらいの気前の良さをアピールしてからの方がいいかな?」
「うっ……そういうマジな指摘はやめろって。でも、本当にアンタには惚れたんだ。一目惚れってヤツだ」
「へぇ、なかなかにロマンチックね。聞かせてくれるかしら?」
図々しいガキだな、とオリアナは思った。
依頼人が来る前に、余計なガキに絡まれてしまった。意識をオリアナから外れさせる気配遮断の術式を彼女は得意としているが、依頼人自身にも気付けなくなってしまっては困る。
そういった配慮が仇になってしまった。
必死にアピールしてくる年下の青年を見ていると、つい可愛くて苛めたくなってしまい、胸が熱くなる。
が、彼女はプロだ。
軽口を叩く事はあっても、プライベートと混同はしない。
(残念だけど、今は適当にあしらおうかしら?)
と、醒めた態度を取っていた。
「いや、一目惚れに理由なんてないだろ……まぁ、強いて言うならアンタの目だよ。いい目をしてる」
「あら、目を褒められたのは初めてね。そんなに坊やの気持ちを惹きつけたのかしら?」
しかし、
「あぁ、いい目だ……目の前の人間を平気で殺せる、そんな人間の目だ。魔術師だろ、アンタ?」
青年が言葉を言い切るより早く、世界が破裂した。
目の前でいきなり生まれた野球ボールほどの氷の塊が、爆弾のように炸裂したのだ。
寸前、氷の塊の中心に見えたのは、青色の筆記体で単語帳の一ページに記された『Fire Symbol』という文字。
眼前の現象は物理法則を超えている。
すなわち魔術。
回避なんて発想を浮かべる余裕もなく、爆風に弾かれた青年の身体が、壁まで吹き飛ばされた。
いや、爆風ではない。
氷の塊が、膨らむ風船を早送りで見たように、爆発的に巨大化したせいで、青年の身体を叩き飛ばしたのだ。
野球ボール大だった氷の塊が、直径一〇メートルを超える巨大な塊へと膨張する。
客すら吹き飛ばす質量という名の爆風が、古臭いバーの床や天井を削り取り、瓦礫と共に粉塵を漂わせた。
とはいえ、威力自体は高くはない。せいぜい自転車に撥ねられる程度。吹き飛ばされた客も骨を折った程度だ。
しかし、オリアナの狙いは青年を牽制する事ではなかった。
緊急離脱。
膨張する氷の壁面に両足裏を重ねたオリアナが、まるで氷塊の膨張が自分を射出するカタパルトであるかのように、一気に店外へ飛び出した。
後に残されたのは、瓦礫に塗れたバーの悲惨な末路だった。
天井も床もカウンターもテーブルも、全てが削り取られ全てが砕かれた。店内の全員が氷塊の膨張に吹き飛ばされ、壁際まで押し潰されて呻き声を上げている。
ただ一人の人物を除いて。
魔術という異端に対抗しうるのは、同じ魔術を知る異端のみ。
そう。
雷神トール。
オリアナに声をかけた青年だけが、痛みに呻く周囲の客達とは違う言葉を発していた。
「ったく、人生初のナンパで、いきなり特大の振られ方を経験しちまった。これはさすがに堪えるぜ……」
ミシミシと。
彼の両手が、巨大な氷の塊を受け止めていた。
『メギンギョルズの力帯』。
雷神トールの怪力の加護を発揮する、彼の有する霊装の一つである。
背中の壁を殴り壊し、ド派手にバーから出てトールは、道の向こう側をオリアナが走っているのを捉えた。道端のバイクに飛び乗り、大通りへ走り去ってゆく。
「逃げる女のケツを追うのかぁ……まぁ、そういう『経験値』っつーのも悪くねぇか。期待してるぜ、『
敵の視認から牽制と離脱、逃走経路の思案、そしてトラップの設置と探知術式の逆算迎撃術式の構築。
ここまでの対応をワンセット・ワンアクションで決行しながら、オリアナは道端に駐車してあったバイクに飛び乗った。
唇で単語帳の二ページを挟んで引き抜き、それをバイクの前輪と後輪にそれぞれ張り付けた。
直後、エンジン点火もせずロックがかかっているにも拘わらず、バイクの車輪が駆動した。
『
それが彼女の全てだった。
どれだけ魔導書を書いても、安定せず暴走と自滅を繰り返す。魔術師としても魔導師としても半端な彼女の努力を、肯定的に評価する人間などいなかった。
それでも、自分にはこれしかなかった。これしか取り柄がなかった。五大元素の応用は誰でもできる単純な術式。故に解析も容易で敵に逆算されやすい。知識と経験が生死を分ける彼女の業界では、これだけ立ち回るのはどうみても厳しい。
でも、だからこそオリアナは強い。
彼女は自分の才能を後世に残す事を諦めた。
自分の積み上げてきた魔術の英知を、一回限りで使い潰すシステム。単純明快な五大元素の応用を、無限に広げた。色と名前、単語帳を咥えた際の角度、ページ数の数秘学的分解。
手札の多さ。
それが彼女の武器。自らの才能を浪費する覚悟の象徴。
だからこそ、彼女の魔術は規格外だった。
「お姉さんと夜遊びしたいなら、このぐらいにはついて来れないとねぇ。私より先に音を上げちゃ駄目よ?」
魔術によって駆動するバイクに跨り、オリアナは大通りに飛び出した。
普段の彼女なら人混みに紛れる方法を取るが、生憎、今は深夜で街は静まり返っている。車も少なく、雑多な喧騒に埋もれる事はできない。
だからこそ正攻法。
バイクという機動力に物を言わせて力ずくの逃走。
例え襲撃者の青年がアシを確保していたとしても、彼女の妨害トラップに対応している間に距離を稼いで逃げ切る事ができるだろう。
そう考えていた。
それなのに、
「さっきは忠告サンキューだ。早速アンタに一杯奢ってやるぜ」
真横の路地裏から、巨大な氷の塊がオリアナ目がけて飛来してきた。
(なっ――――――――ッッ!?)
それは紛れもなく、彼女がバーで発動した魔術そのものだ。
慌てて単語帳の一ページを引き抜いた。発生した炎の網が、氷塊を絡み取り蒸発させる。発生した水蒸気で視界が真っ白な世界に呑まれた。
バイクの速度を上げ、水蒸気から抜け出そうとした矢先、その真っ白な世界を切り裂く電光の刃が見えた。
一本ではない。
五本の電光の刃が、オリアナを待ち受けるギロチンの刃のように、前方から勢いよく迫る。
「ッ!?」
『
次の瞬間、オリアナと影が逆転した。
彼女の姿が影となって地面に張り付き、彼女の影がオリアナ=トムソンとなって三次元の身体を手に入れる。
厚さという概念を失い紙一枚より薄い姿へと化けたオリアナが、地面を滑るように疾走する。そんな地面のオリアナから、影が三次元的に浮かび上がるという、奇妙な現象が生じていた。
故に、迫りくる電光の刃が切り裂いたのは、オリアナの影でしかなかった。真っ黒な人影が電光の刃に斬り裂かれ、霧散する。
影を失ったオリアナが、再び地面からのっぺりと浮かび上がり、三次元の身体を取り戻した。
バイクの速度を全く落とさず青年の奇襲を潜り抜けた。安堵し、振り返る。
どうして自分に追いつけたのか分からない。それも、半端とはいえ『原典』クラスの迎撃魔術も仕掛けていたのに。
そう思案しながら振り返った彼女の視界の隅、そこに捉えた襲撃者の青年に驚愕する。
「やるじゃねぇか、さすがは『
青年、雷神トールが、馬車に乗って道路を爆走していたのだ。
いや、注意深く見ると違う。
二頭のヤギだった。
馬と同じぐらいの大きさの二頭のヤギが、古代の戦で使われた戦車を牽いていたのだ。
「雷神トールの術式ッ!?」
アスファルトで舗装された道路を爪で砕きながら、その戦車の轟音は雷鳴にも似た重低音を発していた。
「俺の『タングリスニ』と『タングニョースト』は、骨さえ無事なら何度でも再生する!!腹が減って肉を食べても復活する食糧問題に優しいエコロジー仕様だぜ。アンタがどれだけトラップ仕掛けようが関係ないね。力任せのゴリ押しでブチ抜いてやる!!」
「あら、お姉さんのちょっかいにめげずに夜遊びに誘ってくれるのは嬉しいわ。でも、そんな古臭いリヤカーみたいな乗り物じゃ、お尻が痛くなるわ。スポーツカーで出直してくれるかしら?」
「安心しな、無理矢理にでも乗せてやる――――射程圏内に捉えたぜッッ!!」
まるでオオカミのように吠える二頭のヤギが、雷鳴のように地響きを立てながらオリアナのバイクに迫る。
二〇メートル。
それが雷神トールの必死圏内。
彼が生み出すアーク溶断ブレードのような電光の刃の射程距離だ。
今度はさっきのようには逃したりしない。
片手ではなく両手。十指からアーク溶断ブレードを展開させる。
しかし、
「ぎ、ァ、――――――なん、だッッ!?」
トールの指から電光の刃が伸びる事はなかった。
激痛。
まるで内臓に爆弾でも突っ込まれたかのような痛みが走り抜ける。耐えられず、戦車の中で丸くなって呻き声を上げた。
肺が痙攣して息がうまく吸えない。
原因が分からず、ひとまず電光の刃を展開しようとして、再び激痛が体内で炸裂した。嘔吐感がせり上がり、思わず口からネバネバとした物を吐き出した。
真っ赤な液体だった。
「早漏ねぇ。まだまだ夜は長いのよ、そんな簡単に出しちゃったら駄目でしょう?」
前方を走るオリアナが、こちらを振り返りながら不敵に笑った。
これは、つまり、
(術式そのものを逆算してるんじゃねぇ!!俺の魔力を個人識別して迎撃術式を組みやがったってのか、あの女!!ありえねぇ、そんな一瞬で、こんな簡単に……)
本来は処刑塔やウィンザー城地下など、魔術師を収容する専門の大規模拘束施設が必要となるレベルの魔術だ。
それを、生身の身体一つで、瞬時に生命力の探知・逆算・応用・迎撃までやるとなると、辿りうる結果は一つしかない。
「……アンタ、『原典』持ちだったのか」
「そんな大層な物ではないわ。でも、一瞬の輝きに全てを託す魔導書ってのも、儚さがあって趣き深いと思わない?」
これではトールは生命力を魔力へ変換できない。全ての魔術が封じられてしまっている。
「問題ねぇよ、『タングリスニ』と『タングニョースト』だけでもアンタには追いつける」
そう、純粋な速度ならトールの戦車の方がオリアナのバイクよりも早い。
魔力を封じた上で、それでもオリアナの劣勢は変わらない。
交差点でのコーナリングで巧みに距離を離すが、やはりじりじりと戦車に間合いを詰められていた。この速度ならバイクから飛び降りる訳にもいかないし、不意打ちを仕掛けにトールの戦車に飛び乗ろうとも、二頭の巨大なヤギに轢き殺されるのがオチだ。ヤギを直接狙おうにも、奴らは不死身の再生力を持っている。
圧倒的に不利。これが客観的な判断だった。
こと戦闘において、オリアナ=トムソンが雷神トールに勝てる見込みはないだろう。
しかし、
「残念ね。これは坊やが得意とする純粋な戦闘なんかではなく、あくまで撤退戦の逃亡劇。私の独壇場に上がり込んだ事を後悔させてあげるわ」
オリアナが立体駐車場に飛び込んだ。
バーを撥ね飛ばしながら、螺旋状の階層をひたすら上へとバイクで駆け上がっていく。
「狭いトコに逃げ込んで、身動き取れない所を奇襲しようってか?甘ぇーよ。ブチ抜け、『タングリスニ』と『タングニョースト』!!」
立体駐車場は天井が低く、駐車中の車が多いため、トールの戦車では小回りが利かない。そこで奇襲をかけるのがオリアナの魂胆だろう。
だが、オリアナはトールの規模を測り違えていた。
雷神トールは北欧神話最強の戦神。
織り成す破壊の規模は『戦争』に匹敵する。
小回りが利かないとか、車が障害物になるとか、そんな程度の要素など『戦争』のハードルに成り得ない。
宣言通り、ブチ抜いた。
天井を削り取り、コンクリートの柱を砕き、自動車を弾き飛ばしながら、雷神トールが使役する魔法のヤギ、『タングリスニ』と『タングニョースト』が雷鳴にも似た地響きを放って爆走する。
オリアナに逃げ場はない。立体駐車場は螺旋構造なので曲がり角が多く、一見すると小回りの利くバイクの方が有利に見えるが、それも一時の気休めにしかならない。上へ上へと逃げるが、ついに最上階の屋上へと到達してしまう。
「逃げ場はねぇぞ、観念しろ」
オリアナの背を追ってトールが屋上へ飛び出した。
五階。行き止まりだ。
隣接して同じような高さの立体駐車場があるせいで錯覚するが、それでも地上から二〇メートルもある。
オリアナがバイクから降りた所を狙い、戦車で突撃して吹き飛ばす。
そう考えた。
オリアナもそう考えていると思った。
全然違った。
ニヤリとした笑みを顔に貼り付け、オリアナはバイクをそのまま屋上の鉄柵に突っ込ませたのだ。
「――――――――は?」
鉄柵を魔術で突き破り、全速力の最高時速でバイクが屋上から飛び出す。
大空へと、飛び出した。
オリアナ=トムソンが、地上二〇メートルからバイクで飛び降りたのだ。
自殺するようなものだ、とトールは結論を出しかけたが、違う。
彼女の狙いは、向いの立体駐車場だ。
五階の屋上から飛び出して、向いの立体駐車場の二階辺りに着地する腹なのだろう。
(やられた!!狭い立体駐車場に誘い込むのが目的だったんじゃねぇ!!端から立体駐車場をジャンプして、俺を振り切るつもりだったんだ!!)
今から立体駐車場を降りていたら、オリアナには逃げ切れてしまう。
ここから飛び降りようにも、二頭のヤギは再生できるが、戦車は粉々に砕け散ってしまう。そして魔力を使えない現状では、戦車を失えば、『タングリスニ』と『タングニョースト』の制御が自分の手から離れてしまう。
こいつらは、決して雷神トールに忠義を尽くす使い魔である訳ではないのだ。
「だったらやるしかねぇ!!チキンレースで男が女に負ける訳にはいかねぇよ」
ブレーキをかけるのやめた。
「跳べェぇぇぇえええええええええええええええええええええッッ!!」
雷神トールが叫ぶ。
彼の声に触発された二頭のヤギが、屋上からオリアナと同じように大空へ突っ込んだ。
オリアナが向いの立体駐車場の二階に着地する。魔術仕込みのバイクの車輪が、落下の衝撃を殺して吸収する。
それと同時。
トールが空中で戦車から身を乗り出した。
彼の両足を、それぞれ『タングリスニ』と『タングニョースト』の頭に乗せる。
「俺を弾き飛ばせ!!」
二頭のヤギが雷鳴のような唸り声を発した。思い切り頭を振り回し、カタパルトの要領でトールの身体をミサイルの如く向いの立体駐車場の二階へ突っ込ませた。
まるでパチンコのゴムに引き絞られた弾丸。
トールが、階下のオリアナ目がけて体当たりをした。
ビキキキッ!!と、骨に亀裂が入る嫌な音が身体の芯を伝播した。
それでも構わない。
自分の身体に頓着する発想があれば、そもそも『戦争』と評されるような荒くれ者にはなっていない。
命懸けのダイブ。
バイクから弾き飛ばし、吹っ飛んだオリアナが柱に激突して項垂れた。
トールもただでは済まなかった。
足はへし折れ受け身も取れず、どこの骨にヒビが入っているのか分からないほど全身が悲鳴を上げていた。
だが、勝った。
勝利だ。
魔力を封じられたとはいえ、これだけのダメージがあればオリアナは戦闘不能だろう。
「―――――って、あれ?」
奇妙な光景を目にする。
柱に項垂れるオリアナの身体が、ボロボロと崩れて土へと変わっていった。
「な、ん―――――ッッ!?」
激痛で動かない身体を無理やり起こして、もそもそとした動きで後ろ、立体駐車場の屋上を見上げる。
そこに、オリアナの姿があった。
キョロキョロと双方を見やり、遅れて事態に気付いた。
「まんまとやられたぜ……いつから変わってた?」
「螺旋構造のこの立体駐車場なら、曲がり角で一瞬だけ坊やの見えない隙を作りやすい。だから、曲がった瞬間に泥人形に成り変わっていたのよ。私は屋上からジャンプなんて馬鹿な真似なんてしないわ」
「ははは……言ってくれるぜ。俺がもし屋上からジャンプしない冷静さがあったら、アンタは立体駐車場を引き返した俺に見つかってたんだぜ?賭けじゃねぇか」
「坊やが猪突猛進なヤンチャな子だって分かってたから、必ずこうなるって想像できたわ」
「そうかい。こりゃ完敗だね」
そう言うと、オリアナは向かいの立体駐車場の屋上から投げキッスをしてきた。
腹が立つが、身体中に落下のダメージを受けたトールは身動きが取れない。もぞもぞと芋虫みたいな動きで這おうとしたが、疲れて諦めた。
「今回は俺の負けだ、『
という訳で、盗んだバイクで走り出すオリアナさんとのカーチェイスでした。
この後、警察に追われたトールが全能化して逃げるっていう別の逃走劇もありますww
戦闘描写のみにしたかったので詳細は省きましたが、今回の事件の真相。
魔術結社の抗争があり、一方はオリアナに運び屋の依頼を、もう一方はトールに運び屋を妨害するよう依頼してたって構図でした。
この後、オリアナとトールが互いが互いの依頼主の組織を潰す訳で、なんというかお互いの知らない所で共闘する感じになります。
読んで下さりありがとうございました。感想・評価など気軽にお願いします。