ぐうたらトレーナーの怠惰(笑)な日常   作:タニコウ

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昨日の1話を見てくださった方、ありがとうございます。

お気に入り登録に評価をしてくれた人がいてビビり散らかしました。

これからも頑張っていくので、ゆるりとお楽しみ頂けたら幸いです。

では、2話です。よろしくお願いします。今回から予約投稿なるものを使います。明日も同じ時間です。

多分。


#2 中等部3-Bホームルーム

 

 お通夜の如き入学式が終わり、新入生が我先にと体育館から出ていった後、戦々恐々としながら自分たちの教室へと戻ってきた、グラスワンダーが在籍する3-B教室のウマ娘達。

 地獄のような体育館から抜け出して、グラスワンダーの機嫌も幾分か良くなったことで、安堵していたウマ娘達であったが、再び、彼女らの空気は固く凍り付いていた。

 

 彼女らの視線は額から冷や汗が止まらない様子で立っている細マッチョな担任。

 

 の、横で椅子に座りながらぐっすりと眠っている秋川 遥に注がれていた。

 

 前回と大して変わらないこの状況に至った経緯を諸君らに説明しよう。

 

 話は、入学式が終わり、教室に戻って空気感のせいか、ほんの少しだけ会話が聞こえる3-Bでのこと。ライトグリーンの髪をしたウマ娘――セイウンスカイがグラスワンダーに勇気を持って話し掛けた所から始まる。

 

 

 

 

 ――――――――――

 

 

 

「ねえねえ、グラスちゃんや。あの秋川 遥さんってヒト、もしかして、グラスちゃんの知り合いー?」

「あら、セイちゃん。そうですね~、私とハルちゃんはかなり長いお付き合いをしてますよ~。私がまだアメリカにいた子どもの頃から、私がトレセン学園に入学するまでですから~、共にいただけで8年、入学して離れた期間を含めると、今年で11年目になるんでしょうか?そう考えると随分と長い間一緒にいましたね~」

 

 セイウンスカイとグラスワンダーが話し始めると同時にピタリと教室の声が消えた。セイウンスカイが周りを一瞥すると、皆一様にグラスワンダーへと興味津々な視線を向けていた。

 まあ、当然か。と、思いながら、皆(自身を含む)が知りたいことを聞こうとセイウンスカイが口を開いた時だった。

 

「ほ、HR始めるから席に着けー」

 

 扉を開ける音と共に入ってきたのは、去年に引き続き担任を務めることになっていた教師だった。

 だが、このクラスに慣れている筈の彼が明らかに、そわそわと不安そうに入ってきたのに、ウマ娘達は疑問に思いつつも自分の席に座ろうとして固まった。

 

「ふわぁー。ねむー」

「「「「……………」」」」

 

 そう言いながら入ってきたダボシャツの少女――秋川 遥を見た瞬間にウマ娘達は担任が不安そうにしている理由を悟り、彼女達もそわそわと挙動不審になる。

 だが、当たり前のようにそんな空気は遥には伝わらず、教卓の前まで歩いていくと、近くにあった椅子を引き摺り教卓の横に置くと、昼寝スタイルになり寝息を立て始めた。その瞬間、

 

 ――ピシリ

 

 突如、聞こえたその音に、既に固まりつつあるクラスの空気が完璧に凍り付いた。そして、音の先には手に持っていたシャーペンをへし折った額に青筋を立てたグラスワンダーがいた。

 

「久し振りの再開なのに、それに約束を守らず、それなのに、私のことを無視して居眠りですか、そうですか~」

 

 グラスワンダーの言葉は教室に冷たく響いた。勿論、遥は今回も耳栓を付けているので一切聞こえていない。

 

 

 

 

 ――――――――――――

 

 

 

 

 そんな最悪に近い空気になりながらも、進級初日に終わらせるべき役員決めなどを胃を擦りながらも、終わらせることが出来た担任には両手放しの称賛を贈るべきだろう。尤も、彼には称賛よりも胃薬の方が必要な気がしないこともないが、きっと気のせいだろう。

 そして、やることがなくなったクラス内で、殆ど全員が気になっているのが、未だに眠り続けているあんぽんたんのことだった。

 

 全員の好奇の視線(約一名は殺意の波動に目覚めかけている)が秋川 遥に集中しているのを教師が感じて、彼女についての説明を始める。

 

「えー、皆も気になってる秋川 遥トレーナー兼教官なんだが、まぁ、見ての通り、色々と人間として終わっている。そして、理事長や理事長秘書、そして、不服なことに、このバカの元担任の俺が話し合いを重ねた結果、こいつの手綱を握れる数少ない人物であるグラスワンダーのいるクラスに副担任として入れることになった。つまり、こいつはトレーナー兼教官兼生活指導兼3B副担任となる訳だ」

 

 そう言うと、担任は遥のヒトミミから耳栓を引っこ抜き、出席簿を片手に持つと、遥の頭に思いっきり落とした。

 

「むぎゃっ!?何するのー?たけちゃん」

「たけちゃんと呼ぶな。武田先生もしくは武田さんと呼べと何度言えば分かる。ふざけてる暇があれば、生徒達にしっかりとした自己紹介の一つでもやれ」

 

 そう言った武田改めたけちゃんは、「えー」などとごねる遥の頭を左手で掴むと、ぎちぎちと握りしめた。

 

「イダイィィ…あだまがもげるぅぅ!!」

「はっ…いい様だな」

「いったぁ…本当に取れるかと思ったー。はぁ、またやられたくないし、やるかー!」

 

 やっとこさ目が覚めた遥は立ち上がると、教卓の前に立って生徒達を見回しながら口を開いた。

 

「秋川 遥! 19歳! 来月20歳! よろしく!」

「ちゃんとやれって言ってんだろうがァ!!」

「イダイイダイイダイ…ギィャァァァァア!!」

 

 雑にも程がある自己紹介をした遥に再びアイアンクロ―をかますたけちゃん。涙目で頭を擦る遥は仕方ないなー。と、言わんばかりの、やれやれ顔で口を開いた。

 

「えーっと、名前は秋川 遥で、来月で20歳になる19歳で、やよちゃんのお姉ちゃんで、トレーナーと教官と何でか分かんないけど、生活指導とこのクラスの副担をやることになりましたー。皆は殆どわたしに頼ることはないと思うけど、何かわたしに聞きたいこととかあったら、一階のトレーナールームに来てくださーい。わたしはそこに住んでるんでー。これから暫くの間はよろしくー」

「はぁ、ギリギリ及第点ってところか。…褒めてないからな?何だそのドヤ顔は?…まぁ、バカは置いといて、こいつに聞きたいことあるか?…結構いるな。じゃあ、セイウンスカイ」

 

 グラスワンダーを除いた全員が手を挙げたのを見て、たけちゃんはセイウンスカイを指名する。

 指名されたセイウンスカイは「はーいー」と言って立ち上がると、のんびりと口を開いた。

 

「遥先生とー、グラスちゃんってーどういう関係なんですかー?」

 

 全員が聞きたいことをいち早く聞いてくれたセイウンスカイに全員が心の中でサムズアップをする。

 遥は、ん-?と、顎に指を当てて考え込むと、口を開いた。

 

「わたしにとってのグラスかー、えーっと、嫁?」

 

 ざわりと教室が騒つく。まぁ、その反応も当然だろう。生徒が教師に自分の友人とどういう関係だ?と聞いたら、まさかの恋人を通り越しての嫁宣言である。驚かないほうが無理がある。

 ただし、遥の脳内では嫁の前に「怒ると怖い鬼」が付いているが。

 

「うふふ、そうですね~」

 

 だが、そう言われたグラスワンダーは本日、いや、級友のウマ娘達が3年間共に過ごした中でも一番の笑顔で肯定したのだ。尻尾もブンブンと振り過ぎて扇風機の如く回転し、彼女の後ろに座るウマ娘の筆箱が吹き飛ばされた。

 どうやら、グラスワンダーの機嫌が最高潮に達したのを見て、クラス内の雰囲気は良くなった。これには、たけちゃんもガッツポーズをした。

 雰囲気が良くなったが故に、ウマ娘達の思考能力の全てを二人の関係につぎ込むことにしたようだ。

 

「他には…じゃあ、スペシャルウィーク」

「はい!遥先生はグラスちゃんと担当契約を結ぶんですか?」

「ん-、どうすんのー?グラスー」

「うふふ、勿論結びますよ~」

「だってさー。じゃあ、皆とは教官として会えないねー。残念だー」

「全然残念そうに見えねーな。だが、残念だったな遥」

「ん-?」

「理事長が言うには、オホン!『余裕ッ!姉上はグラスワンダー一人と契約しても、他の業務は問題なくこなせるッ!』とのことだ。残念だったな」

「なぁんでぇーーーーー!?」

 

 グラスワンダーと契約して自堕落な生活を満喫する気満々でいたところに、イケてる低音バリトンボイスから一転して理事長そっくそのままの声で、天国気分の遥を地獄に叩き落したたけちゃん。

 今まで遥によって溜められたストレスを少し発散出来てホクホク顔のたけちゃん。一人を担当して教官業務もこなすことになった(既に決まってた)遥は床に崩れ落ちた。

 

「はっはっは!お前が無駄に優秀なのがいけないんだよぉ!」

「ぐぬぬぬぬぅ」

 

 ここぞとばかりに遥のことを煽るたけちゃん。一見、いい年した大人が子供を煽っているという大人げないように見えるが、それを指摘して攻めるような生徒はこの場にいなかった。既に、遥によってたけちゃんが苦労していることを察したからだ。つまり、全て遥の自業自得である。

 そして、幾つか遥に関わる質問をしていると、こんな質問が一流を目指すウマ娘ことキングヘイローから出された。

 

「なぜ、遥先生は先程から、働きたくない。などと仰りながらも、このトレセン学園にいらしたんでしょうか?」

「あー、その話ねぇ…」

 

 遥は当時のことを思い出して、トレセン学園に来て初めて眠そうな顔を崩した。

 

「まぁ、簡単に言うとねー、ママに脅されちゃったんだよねー。秋川家の権力をフルで活用してわたしの銀行口座とわたしが持ってる免許証も凍結させられちゃってねー、戻して欲しければここで働けー、ってママに言われちゃったんだよー」

「そ、そこまでなさるのですね…秋川家って」

 

 秋川家のぶっ飛んだ行動に絶句しつつも、生徒の心の声は「何でこんな人にここまでするのか?」という疑問で溢れていた。

 それを見抜いたたけちゃんは、遥にこう聞いた。

 

「遥。お前が持っている免許と資格を適当に言ってって見ろ」

「えーっと、全部は覚えてないけど、まず、トレーナーでしょー、それに船舶と調理師に教員免許全部に理学療法士と作業療法士に医師免許全般と大型車に基本情報、応用情報、スペシャリスト全部と、えーっと、後は―」

「いや、もういい。こいつに秋川本家がここまでしたのは、こういうことだ。やる気にさえなればこいつはエグいくらい優秀になる」

「いやー、それ程でも―」

 

 と、口をあんぐりと開けて呆けているウマ娘達の前で、遥が「照れるー」なんてほざいていると予鈴が鳴り、ホームルームが終わった。この日は入学式ということで午前授業なため、ここで各自解散となった。

 

「よし!定時だ!さっさと帰ろーよグラス!」

 

 予鈴と共に元気になった遥はグラスワンダーに近づいてそんなことを言った。

 

「遥先生はお仕事はないのですか?」

「ない!「いや、あるd―」ない!「いや、体育館の片づk――」わたしがそこまでやる義理はないから帰る!」

「「「「……………」」」」

 

 早速サボろうとしている遥。そんな彼女を連れて行こうとたけちゃんは試みたが、どうやらたけちゃんには無理だったようだ。グラスワンダーは溜め息を一つ吐いてからこう言った。

 

「今日中にトレーナールームにある荷物を全て片付けること。約束出来ますか?」

「うん!グラスも手伝ってくれるんでしょ?」

「いいですよ~。じゃあ、帰りましょうか~。あ、その前に~、セイちゃん」

「んー?このセイちゃんに何か御用かなー?グラスちゃんや」

「えぇ、後でハルちゃんのルームに来て頂けますか~?」

 

 遥と一緒に帰ることになったグラスワンダーは、セイウンスカイにそう言った。セイウンスカイはピタリと止まり、その高度な頭脳で思考を行った。

 数秒の後に夕方ごろに向かう約束をして、遥とグラスは校舎を出てトレーナールームが並ぶ建物へと向かった。





 余談ですが、今作の設定としましては、トレセン学園にはウマ娘達が通う学校とは別に、トレーナーを育成する学校があり、そこに、遥が通っていて、当時の担任がたけちゃんでした。

 更に、遥がいたことによって、グラスさんは原作よりも早く日本に来ています。

 二人の出会いは、そのうち書きます。


   おまけ

 遥が言う事を聞くランキング

 グラスワンダー=秋川やよい>>>たけちゃん>>>>越えられない壁>>>>遥の親友である博士=ウマ娘達>>>>秋川母>>>>>越えられない壁>>>>その他

 こんな感じです
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