申し訳ない。遅れました。弁明はいたしません。ただただ申し訳ない。
今回は、人によっては温度差感じるかも。
では、どうぞ。
所変わって遥のトレーナールームへと移動した遥とサイレンススズカ。そして、対面に座った二人の間には気まずい雰囲気が漂っていた。
「あ、あの……ご、ごめんなさい」
「つーん」
主に、未だ子ども扱いされたことを不服に思っている遥のせいで。ただ、この空間に幸運があったとすれば、
「ハルちゃん、そんなに拗ねることはないと思いますよ~。スズカ先輩だって、謝ってますし、悪気があった訳ではないのですから。ね?」
「むぅっ」
本日は、トレーニング終わりのグラスワンダーがいたことだろう。グラスワンダーは、二人分の紅茶を淹れて机の上に並べながら、遥を宥めてみる。
グラスワンダーに宥められた遥は、唇をツンと尖らせてこう言った。
「別に拗ねてないし」
「拗ねてるではないですか。ほら、ハルちゃんが好きなケーキもありますから」
「……たべる」
「はい、どうぞ~♪あ、スズカ先輩もどうぞ」
「あ、ありがとう。グラスさん」
「いえいえ~。それにしても、やっぱりハルちゃんが最初に会ったのはスズカ先輩でしたか」
グラスワンダーは配膳を終えると、自身の分も用意して遥の横に座ってサイレンススズカと話を始める。
「最初に会った?予想してたの?」
「えぇ、そうですね。スズカ先輩は良く門限ギリギリまで走ってますからね。ハルちゃんと遭遇するならスズカ先輩が走ってる時間かな?と思いまして」
「え……知ってたの?」
「はい。結構皆さん知ってますよ~」
「そうなの……!?」
グラスワンダーの言葉に静かに驚くサイレンススズカ。どうやら、彼女は自分がほぼ毎日寮の門限ギリギリまで走り、それどころか、たまに門限を大幅に過ぎて寮長に怒られているにも関わらず、彼女が問題児であることを自覚していなかったみたいだ。これだから頭サイレンススズカとか言われるんだぞ、お前。
だが、そんな頭サイレンススズカな彼女よりも頭が悪くなっている存在がこの場にはいる。
そう、遥だ。その遥は先程からケーキをモグモグとリスのように口をパンパンにしながら食べている。
「くりーむ、ふゎふゎ……あまぁ、うまぁ……」
そして、語彙が溶けている。これで子どもじゃない。って言って怒るってマジ?何回も言ったと思うが、コイツ、来月で二十歳になるらしいですぜ?信じられますかい?アニキ。俺は信じられないですぜ☆
と言うか、遥が元に戻らないと話が進まないのだ。なので、時間よ進め。
――――――
数分後
「……シテ……コロ…シテ」
「あらあら~」
「あ、あの……」
顔を真っ赤にして常に持ち歩いている抱き枕に顔を埋めながら介錯を求める遥。そんな遥を片手で頬を抑えながら微笑ましげに頭を撫でるグラスワンダー。その優しさが遥に更なる羞恥を与え、より強く抱き枕を抱き締める。そして、サイレンススズカはどうしたら良いのか分からずオロオロとしている。
そんなことをすること更に数分後。
「さて!話をしようか!サイレンススズカ!」
「ハルちゃん。お顔がまだ赤いですよ~♪」
「う、うるさいな!」
グラスワンダーにからかわれてほんのりと赤かった頬が更に赤くなる遥だったが話を続ける。
「取り敢えず、わたしは一応教師としてキミに注意をしないといけないんだけどー、わたしの見立てだと注意しても意味なさそうだからねー。わたしから言うことはないや」
「え?いいんですか?それで」
「いいよー。但し、一つだけ守って欲しいことがあるかなー」
遥はそう言って人差し指を立てる。サイレンススズカは首を傾げてそれが何なのかを聞いた。そしたら、遥はこう言った。
「それはねー、トレーナーと契約して出来る限りの調整を受けること。そうしないと、ケガしちゃうからねー」
「契約、ですか……」
「あり?嫌だった?…………あ、ちょーっと待ってねー」
困ったように眉を寄せたサイレンススズカにそう言ってから、遥はタブレットを取り出してトレセン学園のデータベースからサイレンススズカの情報を引っ張ってきて読み始める。
最初は顎に指を添えて考え込んでいたが、徐々にその表情は固くなっていき、やがて蟀谷がひくつき始め、そこを揉むように顎に置いていた指を動かす。
「はー……本当に何やってんのかな?あいつら。何で、サイレンススズカの可能性を奪ってるのかねー。ま、どうせ自分の評価が落ちるのが嫌とか言う下らない保身とかそんなところでしょ。だったら、わたしが………………いや、でもなぁ………………はぁ、やりたくないとか言ってる場合じゃなさそうだしなー。仕方ない、かー」
ぶつぶつと呟きながら遥はタブレットをスクロールして情報に目を通す。そこには、サイレンススズカが今まで担当契約を結んだトレーナー達のトレーニング計画やトレーナー自身の素性が書かれていた。
「ホントに、名門を名乗るならそれ相応の実力を示して欲しいよねー。サイレンススズカに窮屈な走り方を強要して、なにが名門だってんだ。確かに、名門の確立されたトレーニング法は強い。それは認めるさ。だからと言ってそれが誰にでも適用出来る万能なものである訳がない。そんなのにも気付かなくてウマ娘に負担を強いて、自分の昇進に使えなかったら直ぐポイかよ。ふざけるなよ」
「ハルちゃん。落ち着いて下さい」
徐々に怒りが沸いてきたのか遥の口調が乱れ始める。それを見たグラスワンダーが遥を宥めにかかる。
宥められた遥は、数回深呼吸をしてから、遥の呟きが聞こえていたのか少し落ち込んだ様子のサイレンススズカの方を一瞬だけ見てから虚空に向けて一言呟く。
「わたしがやるしかない、か……でも、その前に――」
遥は呟いた後に正面からサイレンススズカを見据えて口を開いた。
「ねぇ、サイレンススズカ。一つ、わたしと勝負しない?」
「勝負、ですか……?」
少し前から緊張した様子のサイレンススズカが問い返してくる。遥は、一度頷いて言葉を続ける。
「うん。内容はグラスとレースをして貰う。そして、サイレンススズカが勝ったら、わたしがキミの走りを全力でサポートする。ね?どう?」
「えっと……」
「ハルちゃん、私達が勝ったらどうするんですか?」
「ん?そりゃまぁ、わたしがサイレンススズカを担当しよっかなーって思ってるけどー」
「は?」
思わずグラスワンダーからそんな音が溢れる。そのまま、グラスワンダーの口から言葉が続けられる。
「ま、待ってください!だ、誰が誰を担当するんですか!?」
慌てた様子のグラスワンダーに遥がにぱーっと笑って宣言した。
「わたしがサイレンススズカのトレーナーになる!」
その宣言にグラスワンダーは、口に手を当ててこう言った。
「ウソでしょ……」
「それ、私の……」
「ウソじゃない!」
今回は、トレーナールームに遥の叫び声が響き渡った。
解説と言う名の余談の時間です。
今作では、簡単に言うと、トレーナーと言う職業は人材不足かつ、顕示欲の強いおバカさん達が一杯います。と言うか、遥ちゃんと仲良くない中年トレーナーは大抵おバカさんです。
勿論、遥ちゃんと仲の良いトレーナーも一定数おりますが、そちらの方が圧倒的に少ないです。一応、遥ちゃんとそこまで親好がなくても普通にトレーナーしている人もちゃんとおりますのでご安心を。
そして、おバカさんは大抵の場合、名門と呼ばれるなかなか面倒臭い家柄にお産まれの方々なため、やよい理事長がそう簡単に手を出せませんでした。
多分、強引に追放することも出来たのですが、理事長には頼れるお姉ちゃんがおりますので、その方にぶん投げた訳ですね。
そして、皆さん。今回のサブタイトル、遥ちゃんが言ってると思ったでしょう。残念、グラスさんでしたー。
何故、遥ちゃんがこんな天変地異を巻き起こしそうなことを言ったのかと言うと、スズカさんがこのまま行けばケガをすると見抜いたからです。おや?沈黙の日曜日が沈黙しましたぞ!
はい、と言うわけでフラグが叩き折られました。僕はハピエン信者なのでバッドエンド直行√は先に潰しておきますね^^
因みに、グラスさんとスズカさんは互いに面識があり、それなりに仲が良いです。
後、その内スズカさんに何があったのかは書くと思います。閑話的な感じで。
次回かその次は、初めてのレース描写になりそうですね。もし、レースに入っちゃったらかなり時間がかかると思います。なので、下手したら次回投稿するの土日になるかもしれません。許してください。
まぁ、次回は今回の続きで埋まることでしょう。
では、また次回お会いしましょう。
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