ぐうたらトレーナーの怠惰(笑)な日常   作:タニコウ

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今日はいつもの時間に間に合いました。

今回は、少し?シリアス注意です。でも、これを乗り越えれば次から当分はのんびりです。

では、お楽しみください。


#8 ウマ娘は率先して夢を見て、皆に夢を見せるもの

 

 わたしには、夢があった。でも、その夢は――

 

 

 ――わたしがいる時点で叶わないものだった。

 

 

 

 

 

 

「ふーん、『OP三勝』ねー、で、こっちは、『重賞出走』、一番デカい夢が『G2勝利』、ねー」

 

 遥は不機嫌さを一切隠さずにそう言った。彼女の視線の先には、遥の目で見て、現在のセイウンスカイより少しだけ下()()の実力を持つ子達ばかりが集団で走り込みをしている所だった。

 そのウマ娘達は真剣に走ってはいる。だが、それは飽くまでケガをしないための走り方であるのは遥には丸わかりだった。

 

「うーん、余りにも意欲が薄いねー。何て言うか、諦めてるって感じかなー。そりゃー、学年にグラスがいればそうなるのも分かるんだけどさー。あちらが立てばこちらが立たずと言うか、なんと言うか……」

 

 遥は唇を尖らせながらタブレットに目を向ける。まぁ、こんな真面目臭いことを言っているが、画面にはカードゲームが映っているのだが…。

 

「まー、取り敢えずは様子見かなー……って、本当なら言いたいところだけど、後々の仕事を増やすのも面倒だしなー」

 

 そう言いながら、遥はカードを一枚プレイして、相手フォロワーの攻撃力、防御力を共に-5して、相手フォロワーを一掃してから四体の踊るカニ達が対戦相手を殴り倒した。

 

「さて、と、ゆるーくお仕事をやって、早くのんびりしよーっと」

 

 遥はゲームを落として、タブレットからドローンに指示を飛ばして立ち上がると、ゆっくり走るウマ娘達の元へと歩いていく。

 

「ねー、キミ達の夢、読んだよ。ホント―にこれでいいの?」

 

 遥はウマ娘達に声を掛ける。声を掛けられたウマ娘達は足を止めて、聞き返すために口を開く。

 

「これでいいの?とは、どういうことでしょうか?」

 

 訝しげに聞いてくるウマ娘達に遥は何でもないことを言う風に口を開く。

 

「ん?簡単なことだよー。キミ達はもっと大きな夢を抱いてもいいんじゃない?って思ってさー」

 

 そう言った遥であったが、ウマ娘達の反応は余り良さそうではない。実際に、

 

「私達みたいな才能のないウマ娘には夢を見る資格なんてないんですよ」

「え?」

「だから、私達には才能がない。結局、トゥインクル・シリーズは才能があるかないかなんですよ。私達はグラスちゃんのように迅く鋭い走りなんて出来ないし、スぺちゃんみたいな末脚も、エルちゃんのような力強さも、マックイーンさんのようなスタミナもない。私達は平々凡々なただのウマ娘。変に高い夢を見て志半ばで折れるなんてことをしたくない」

 

 ()()()()()()()ウマ娘達は、悲しそうな…いや、絶望したような表情でそう言った。

 

「そっか…でもさ、わたしはキミ達に夢を見て欲しいんだー、例え、難しくても叶えられる夢なら、ね?」

 

「だから、もう一回考えてみよーよ」と、遥は紙をウマ娘達に差し出す。だが、ウマ娘は遥の手を弾いて本音をぶちまける。

 

「さっきから何なんですか!?良いですよね!!教官は私達とは違って天才なんだから、何でも好きに出来たんでしょ!?どうせ、私達が思ってることなんて何一つ分からないんでしょ!?」

「うん、そうだね。キミ達が抱えているモノがわたしには分からない。何故、夢を抱けるのに、それを持たないのか分からない。でも、あるんでしょ?夢の一つや二つくらいはさ?」

「ありますよ!!そんなの!!有るに決まってるじゃないですか!?叶いもしない夢を持ってトレセン学園に入学して、自分たちの力の無さを思い知らされて、嫉んで、恨んで、僻んで、羨んだ!!なのに、今更夢を書け?ふざけないでください!!天才と呼ばれる子達だけが、トレーナーにスカウトされて、私達みたいな凡才は教官の汎用性だけを重視したトレーニングをさせられて、余計に差が開く!!貴方達トレーナーが私達の夢を壊しておいて、何を今更分かった風に言うんですか!?私達に貴女の夢を押し付けないでください!!」

「……そっか」

 

 遥はウマ娘の悲痛な叫びを受け止め、胸の内に刻みつける。彼女らの抱えているモノを脳内で繰り返す。それでも、遥には分からなかった。何故、夢を見れるのに見ないのか?何故、僅かにでも可能性があるのに、諦めてしまうのか?

 例え、泡沫のように儚く散ると分かっていても手を伸ばす。それが、夢ではないのか?と。

 そんな疑問が遥の脳裏に溢れかえる。遥は、手を弾かれることで飛び散った紙を拾いながら、自身の過去を少しだけ彼女らに打ち明けるために口を開く。

 

「分からないよ。わたしには、キミ達が抱えてる苦悩を何一つ分からない。だって、わたしは才能と言う一点に関しては全てを持っているから。だけど、持っているが故の苦悩ならあるよ」

「は?何ですか?自慢ですか?」

「違うよ。確かにわたしはあらゆる才能に恵まれてた。だからかな?わたしには何もなかったんだ。金も権力も何もかもを幼い内に手に入れた。まるで、廃線されたレールの上を歩いて次の駅に行くみたいに簡単だった。でも、そこまでだった。色んなことをやって、勉強もした。それなのに、いや、だからかな?わたしはずっと一人だった。家に醜く絡みつくしがらみに、わたしを天才だ何だと持ち上げるだけ持ち上げて、まるで化け物を見るような目でわたしを見て一切近づいてこない親戚。わたしの才能を知った両親からの命令か、わたしに付き纏ってくる子供を欲望が籠った目で見てくる大人達」

 

 遥のその独白は何処か投げやりな雰囲気を漂わせた、何処かへ消えそうな程危ういものだった。

 

「そんなんだったからかな?わたしはどうしようもなく自由が欲しかった。金なんかいらない。権力なんかいらない。誰もわたしのことを知らない場所に行って、何もかもをやり直したかった。そのために家を……いや、唯一わたしと一緒にいてくれたやよちゃんを捨てて逃げ出した。今考えると、本当にバカなことをしたよね。当てもない旅を続ける途中に色んなことを考えたよ。バカな子を演じれば友達が出来るかな?とか、どんな人でも助けるヒーローみたいなわたしになれば友達が出来るかな?とか、本当に色々考えた。でも、そこにはわたしが願った夢は無かったんだよ。わたしの夢は『本当の意味で皆が平等に幸せになること』だった。その為に、わたしは金を力を手に入れて、それに全部を使うつもりだったし、今もそうしてる。でも、この夢は、わたしと言う存在がいる時点で叶うことのない夢」

 

 遥は遠くを見つめながら言葉を紡ぎ続ける。

 

「その事に気付いた時、わたしはわたしと言う存在がどうでもよくなったんだ。夢も才能も何もかもがどうでもいい。そう考えるようになったら、ただただ惰性で生き続けるわたしがいた。当てもなく、ふらふらと海を渡って、大陸を歩き続ける。

 ただただ生きるために動いていた。止まったら、わたしが自分で命を絶つ。そんな気がしたから。夢を無くしたわたしには、生きること自体が苦痛だった。自殺も考えた。でも、それすら面倒臭かった。

 その間の記憶は本当に今でも思い出せない。そんな時だった。偶々辿り着いた、自由を謳う自由のない国。そこで、わたしはグラスに会った。グラスには夢があった。『ウマ娘という種の生き方。その道を窮めて、果てを見ること』。わたしと初めて会ったときのグラスは本当に楽しそうに走ってたよ。何も考えずに只管、疲れて倒れるまで走る。その姿がどうしようもなくわたしの瞼の裏に焼き付いて離れなかった。正直、羨ましいと思ったよ。でも、それと同時に、『この子の行く末を一緒に見届けたい』って思ったし、わたしはどうしようもなくウマ娘のことしか考えられないバカ(秋川家)なのだと理解させられた」

 

 そこで遥は言葉を切ると、ウマ娘達を見回して手に持った紙束を押し付けながら口を開いた。

 

「だから、キミ達には夢を掴める機会があるなら掴んで欲しい。それを、わたしは横でも前でも後ろでも、どこでもいいから見ていたい。つまりね?少なくとも、わたしはキミ達に夢を見るんじゃなくて、キミ達の夢を共に見たいんだ。だから、キミ達の夢を教えて欲しい。キミ達の夢を世間に見せつけてやりたい。この紙は、その為の一歩になるものなんだよ」

 

「だから、もう一度だけ考えて欲しい」そう言った遥に、ウマ娘達が何を思って何を考えたのかは、本人達にしか分からない。

 

 ただ、離れて、遥から渡されたトレーニングメニューを熟そうとするウマ娘達を眺める遥の手に持った紙には、彼女らが幼い頃に抱いた夢が書かれていた。

 

 遥はその紙束を捲って、それぞれの想いを確認しながら、「良い夢、もってんじゃん」と呟き、更に口を動かす。

 

「決して、才能のないウマ娘なんていない。キミ達にだって長所がある。それを見つけられなかったトレーナー(わたし達)が悪いだけで、キミ達に悪いことなんて何一つない。わたしは、今日見つけたキミ達の可能性を見逃さない」

 

「だから――」と、遥は優しい微笑みを浮かべて誰にも届かないだろう言葉を続けた。

 

「どんなに無謀だと言われても、わたしが肯定しよう。刹那にでも可能性があるのなら、わたしがその可能性を見つけ出して、可能性を広げる躍如になろう。だから――」

 

「キミ達が、わたしに、世間に、世界に、キミ達が望む未来を、願った夢の先を見せてくれ」

 

 遥の呟きは、春風に乗って第7レース場に静かに響き渡った。遥の心に、新たな願いを刻み付けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、それはそれとして――

 

 

「それにしても、わたしの夢の押し付けかー」

 

 いつもの様子に戻った遥の胸には、先程のウマ娘の言葉が深々と突き刺さっていたみたいだ。

 

「まぁ、そんなのは後で考えればいいやー。……あー、疲れたー。やっぱり真面目な空気はわたしには似合わないよねー」

 

 遥は、ソファーに身を沈めると、タブレットを操作してから、心地よい空気に身を任せながら眠りについた。

 

 

 今、授業中なんですけど……………。





では、前回は急いでてタイトルコールし忘れてた第7回、解説と言う名の余談です。

遥ちゃんは、全く無関係なウマ娘でも助けようと、願いを叶えようと動いてしまいます。秋川家ですからね。血の宿命と言うヤツです。
ただ、頑張りすぎると、元からゼロに近い労働意欲がゼロを下回って、回復するまでよっぽどのことがない限り、自分の部屋から出てこなくなります。
なので、この日が終わるまでの数話の後は、完全にぐうたらトレーナーになって使い物にならなくなります。今まで働きすぎでしたからね(遥ちゃん基準)実際は、起きて仕事をしていたのなんて二時間いくかいかないか位です。つまり、そろそろ休憩のお時間です。

なので、章が変わります。

それと、ちょっとだけ遥ちゃんの過去を明らかにしました。おかしい、プロット段階では今回じゃなかった筈なのに…。
遥ちゃんの夢は『あらゆる人間が平和に、平等に過ごせる世界を作る』ことでした。それを実現するための資金や、権力を手に入れて、後一歩というところで、遥ちゃんが、常に一人のワンマンだったことに気付き、そこから徐々に遥ちゃんの心の崩壊が始まりました。
始まりは、孤独を悲しむ子供らしいものだったのですが、徐々に、自分がいなければ、世界を平等に出来るのでは?と、大分飛躍した発想をするものの、既に、あらゆることが面倒になっていたため、命拾いしました。
惰性で過ごすのも面倒になり、当てのない旅に出た。という形になります。この頃の遥ちゃんの記憶は本当にないので、あやふやな時系列がバラバラになってますが、実際はこんな感じです。
因みに、何回か警察やそれに準ずる組織に保護されかけてますが、普通に脱走して旅を続けてました。勿論、その記憶もありません。
そして、ほぼ世界一周を終えて、アメリカに辿り着いて、偶々グラスに出会ったことで自我を取り戻して、なんやかんやあって今に至ります。





次回は、軽めのワイワイ回です。お楽しみに。




最後に、皆さまにご相談があります。実は、今日ですね。本当に恥ずかしいのですが、友人にこれを書いているのがバレましてね。いや、本当に黒歴史なんですがね。
そこで、言われたのが、タグを増やせ。と言われました。言われたんですけど、なーんにも思いつかないんですよね。なので、何か思いついたかたは、意見箱兼質問箱にて教えて頂けると幸いです。

因みに、謎の「サザエさん時空」タグを付けた理由ですが、これを付けることで、当分はエタらない。と言う意思表示のようなものです。

どうか、協力していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。


▼質問箱兼意見箱

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=299297&uid=420333


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