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学生の頃読んでいたグラップラー刃牙の渋川剛気に強烈に憧れた
小さい体の老人が並みいる巨漢を圧倒し、力に対して技で戦う姿は、小柄な自分に強烈に刺さった
似たようなポジションに郭海皇がいたがテメーは駄目だ。設定が妖怪じみてて、全然魅かれなかった。(何なら逆に引いた)
自分もああなりたい。あのように生きてみたい。彼のように強く、そしていろいろな技を極めたい
武術家を目指すのに躊躇いはなかった
武を初めて30年
ミーハー心で多少打撃系に浮気もしたが、基本柔術と合気に精を出した
そしてやっと武の本質が見え始めたところで死んでしまったらしい
らしいと言うのは今しがた説明を受けているから
役所のような場所で大勢の人間が個別対応を受けている。
自分に付いてるリーマン風の男が話を進める。
「なのでこちらとしても予想外な、大規模な脱線事故が起こってしまい、その事故で亡くなった方たちの対応をしているわけです。」
「はぁ、ご苦労な事です・・・。つまりおいらもその事故で死んだ一人だと。」
「えぇ、ですので魂の振り分けをしている訳でして・・・」
話が長かったので要約すると、
・死ぬ予定のない人が大量に死んだ
・放っておくと大変なことになるので、緊急処理をしている。
・悪人はそのまま地獄に、残りは希望者は天国に。それ以外は転生させる。
・転生の場合、記憶の有無が選べてある程度の力をもらって、ランダムな世界に行くらしい。
「ランダムな世界ってのはどういうことですかい?」
「分かりやすく言うと、世界というのは一つではありません。いろんな種類の映画や漫画、ゲームなどそれぞれの世界が独立しているように、この世界も独立しています。その独立した世界を仮に小世界としましょう。その小世界が数多折り重なって大世界が出来ています。
基本小世界同士は繋がらないのですが、今回の事故は予定外な上死亡した人数があまりに多いのでこの世界の魂の受け入れが間に合わない事態が起こってしまいました。なので緊急措置として他の世界に振分けをしているのです。」
「元の世界にっていうのは無しなのかい?」
「残念ながら選ぶことはできません、不公平にならないようにランダムに送られます。運が良ければ元の世界もあるでしょうが、あまり期待はなさらないほうがいいでしょう」
「そうですかい、そりゃあ残念です」
「保障というわけではありませんが、ある程度の能力の付与をご用意しております。魔法や超能力が使えるようになったり、乗り物や銃の操作が上手くなったり肉体の強化や他の動物になったりと様々なプランを用意しております。ご希望があればお伺いいたしますが・・・」
「いや、何にもいらねぇよ。記憶と健康な体がありゃそれで十分だ。」
「ですが、行き先によっては剣と魔法の世界だったり、魑魅魍魎が跋扈する世界だったり、戦争やSFの世界だったりしますよ?多少なりとも能力があった方が安心かと思うのですが・・・」
「お役人さんよぉ、俺ぁ武術がしてぇんだ。魔法やら鉄砲やらを打ちてぇ訳じゃねぇんだ。鍛えぬいた技で闘いてぇんだよ。」
「おっしゃりたい事は分かります。ですが、例えばいきなり魔法で眠らせてきたり一面の炎を出してきたり、そもそも物理無効とか酷いのだと隕石を落としたり時間を止めるやつまでいる場合がありますよ、それでもよろしいのですか?」
「どうせ一遍死んでんだ。そん時ゃあ運がなかったて諦めらぁな」
「そうですか・・・。でしたら・・・そういった超常現象が効かない体というのはいかがでしょうか?これでしたら最低限戦いになると思うのですが・・・」
「はぁ・・・、もうなんでもいいから好きにやっちまってくれ、俺ぁもう疲れちまったよ」
「かしこまりました。では処理を進めさせていただきます。記憶有り、付与能力『超常無効』、オプションとして健康な体。記憶の方は一度に戻すと脳障害が起こる可能性がありますので、段階的に戻して大体3歳までにはすべて戻るように致します。
ただし、おかしな3歳児として見られたくなかったら自制はきちんとしてください、その辺のさじ加減は上手いこと調整してください。以上になります、何かご質問は?」
「ねぇよ・・・」
「そうですか、ありがとうございます。長々とお付き合いさせてしまって申し訳ありませんでした。夢半ばで死んでしまって、気落ちしてしまうのも分かります。ですが次の人生まで持ち越さないようにしてください。
さる武術家がギリギリ勝利した勝負の後に言ったそうです『武に関わった時間がそのまま明暗を分けた』と。あなたはこれまでの人生で長いこと武に携わってきました。そのアドバンテージをもって次の人生で長生きできれば最強だって夢じゃないかもしれませんよ?」
「!?・・・お前さん、そりゃあ・・・」
「さて、お時間が来たようです。 願わくばあなたの次の人生に幸多からん事とを。」
「あんがとよお役人さん、少し来世が楽しみになってきたよ。どれ、ちょっくら行って最強にでもなってくるかね、はっはっはっはっ」
笑いながら男は粒子となって消えていった。
「私も刃牙は好きですからね、同好の士によき来世を。さて・・・次の方どうぞー」