翌日から普通の授業が始まった
けして舐めてた訳ではないが授業のレベルが当たり前に高い。これまでの様に適当に受けていたらあっという間に振り落とされてしまうじゃろう。ここは甘んじて真面目に授業を受けるしかない
内容次第では帰ってからの自習も考えねばならん
修行の時間を削るのは忸怩たる思いじゃが、落第なんぞしようものならじい様に修行自体を禁止にされてしまうやも知れん
なんと恐ろしい事か、そっちの方が洒落にならん!
クラス内の空気は初日のディスカッションのお陰か、とても居心地の良い物になっていた。儂も中学までとは異なり、周りには出来る者が少なからずおる上に未来の武道家候補もわんさかしておるんじゃから会話に混ざる事に苦はなかった
手っ取り早く隣の席に居た小大に話しかける
「のぉ小大よ、ちと授業が難し過ぎはせんか?付いていけるか不安しか無いわい」
「ん」
「なるほどのぅ、今の所は問題無しか。やはりあの受験を潜り抜けるだけあって優秀なんじゃの」
「ん」
「ほぅ小大は英語が苦手か。それくらいならば良いではないか、儂は苦手な物しかないぞ」
「ん」
「・・・お前らすげぇな、どうやって会話成立させてんだ?」
鱗が会話に混ざってくる
「「?」」
「なんで俺が変な事言ったみたいな空気出してんだよ、多分だけど俺は間違ってねぇぞ!」
「鱗よ。確かにこ奴は口数こそ少ないがの、目や表情でしっかり読み取れる様にしとる。会話くらい出来るじゃろ」
「ね」
「いや、普通に無理だよ。なんなんだよお前のその観察眼」
「そんな事よりも授業が難しいと言う話じゃ、お主はどうなんじゃ?」
「俺か?まぁまずまずってとこだな、今の所分からなくなるって事は無いしな。
それよりも俺は普通の授業より、この後にやるヒーロー基礎学ってのが気になるな。何をやるのかさっぱり分からねぇ」
「ん」
「小大の言う通りじゃの、分からんものを気にしても始まらん。気にするだけ損じゃぞ」
「だからどうしてわかんだよ・・・」
教室内はこれから始まるヒーロー基礎学を前に浮足立った空気が流れていた
そんな中あのナンバーワンヒーローが現れた
「わーたーしーがー!
普通にドアから来た!!!HAHAHAHAっ!!!」
「うおぉ、オールマイトだ!」
「本当に先生やってた!」
「初めて生で見た、カッコイイ!」
「ふむ、ガリガリじゃのう」
「画風が違いすぎる!」
「英雄招来」
「ん」
突然のオールマイトの登場に騒然となる教室内。オールマイトは落ち着くのを待って授業の説明を続ける
「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地を作る為様々な訓練を行う科目だ!!単位数も最も多いぞ!早速だが今日はコレ!」
手に持った『BATTLE』と書かれたカードを見せつけてくる
「戦闘訓練!!!」
「戦闘訓練・・・」
「よっしゃぁ!」
「気合が入りますぞ」
「うらめしい・・・」
「かっかっかっか!」
「ん」
再びざわつく教室内、それを無視してオールマイトがリモコンを操作する
「そしてそいつに伴ってこちら!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って作られたコスチューム!!!」
「「「おお!!!」」」
教室の壁がせり出してくる。この学校金掛けすぎじゃ、いちいち派手にせんと気がすまんのか
「恰好から入るのも大事なんだぜ少年少女!!自覚するのだ!今日から自分はヒーローなんだと!!
着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」
「「「はーい!!!」」」
みなテンションが上がっておるのか子供のような返事を返し、それぞれの戦闘服を持って意気揚々と着替えに向かった
儂の戦闘服は上は白の道着、下は暗い深緑の袴と由緒正しき渋川スタイル。特にギミックなどはなく頑丈に誂えてもらった。さすがに裸足は厳しいので靴には丈夫な足袋を注文した。懐には各種応急キットと投擲用の棒手裏剣が準備されておる。投擲物は小銭とどちらにするか迷ったが、鎧等を貫けるように棒手裏剣を選ぶことにした
戦闘服に着替え続々とグラウンドに集まってくる、いやグラウンドと言うかまんま街なんじゃがの
派手なもの、私服の延長のようなもの、中には半裸の様なものまでおる。皆がそれぞれの戦闘服を寸評をしあっているとスタスタと小大が近づいてきた
「ん」
「そうじゃろう。まさしく道着のような物じゃからな」
「ん」
「そう言うお主はずいぶん小物入れが多いのぉ」
「ん」
「それは確かに便利そうじゃの」
「やっぱりわかんねぇって」
鱗がやや呆れた表情で近づいてくる
「渋沢、それって道着か?」
「うむ、柔道の物とはちと違うがの。儂にとって動きやすい恰好と言えばこれなんじゃよ。お主のそれはキョンシーを模しておるのか?それにしてはずいぶんと特徴的な腕をしておるが」
「おっ、キョンシーを知ってるのは嬉しいねぇ。腕のこれは後でのお楽しみだぜ!」
「ん」
「の」
「一言で会話してるんじゃねぇ」
「みんなそろってるかな?」
ワイワイしてるとオールマイトが現れて注目を集める
「さぁ始めようか有精卵共!戦闘訓練のお時間だ!
これから屋内での対人戦闘をしてもらう!なぜ市街戦じゃないのかって?確かにヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計的に言えば屋内の方が凶悪ヴィランの出現率は高いんだ
君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦をしてもらう!B組は21人だから1チームは3人になってもらうが、実際に戦う時に互いの人数が合うなんて場合はほとんどない。乗り越えてみせるんだ!」
「勝利条件はどうなりますか?」
「ぶっ飛ばしていいのか?」
「組み分けはどうするノコ?」
「1対20とかにはならんのかの?」
「成績とかってどうつけるんですか?」
「んんん~~~、こっちでも聖徳太子ィィ!!」
オールマイトがメモ用紙を見ながら説明をする
まとめるとチーム分けはくじ。準備時間に5分、そこから制限時間は15分、ヒーロー側はヴィランを捕まえるか核爆弾を回収すれば勝利、ヴィラン側は核爆弾を守り切るかヒーローを捕まえれば勝利、最終戦のヴィランチームが3人になる。
さっそく第1試合のヴィラン側で儂と鱗がコンビで出ることになった
対するヒーロー側は宍戸と小森。宍戸とは戦ってみたかったからいい機会じゃ
儂と鱗は先にビルに入り作戦会議を始める
「さてどうするよ?」
「儂は自分で闘うのは得意なんじゃが、こういった作戦立案は不得手での」
「実は俺もそうだ。索敵は出来るか?ちなみに俺は出来ん」
「出来るのは室内までじゃな、ビル全体というのであれば儂も無理じゃ」
「アイヤー、まいったな・・・」
「まあこっちはヴィランなんじゃし、バラけて場当たり的にでも動けば良いのではないか?」
「一応授業だぜ、いいのかそれ?」
「なに構わんじゃろ。仲良くチームワークを発揮するヴィランと言うのも気持ちが悪いじゃろ?ならば堂々と悪役らしく行こうではないか、ヒーローを見つけ次第各個撃破じゃ」
「見敵必殺ね、見事な脳筋だな。だが向こうは宍田がいるぞ?爆弾のそばを離れるとその隙に確保されちまう」
「ならば儂が守ろうかの、どちらかと言えば守りは得意じゃ」
「俺は攻める方が得意だ。なら決まりだな」
開始の合図とともに儂らは最上階に爆弾をセットして、儂はその前に陣取り鱗は敵を探しに出て行った
しばらくすると下の階から派手な戦闘音が響いてきた
どうやら鱗が接敵したようじゃ、音からすると相手は宍戸かの?
音を聞いて状況を探っていると部屋の入口に小森が現れた
「こっちに渋沢がいるなんて!相性最悪の外れキノコだよ!」
「ならばどうするヒーローよ。今の儂は悪役じゃ、女子供でも容赦はせんぞ?それとも尻尾を巻いて逃げるかの?」
「何にもやらないで逃げるなんてダメキノコだもん。私がやっつけちゃいノコ!」
小森が腕を振ると部屋中に色とりどりのキノコが生えだす、もちろん儂には何のダメージもない
「分かってたけど全然生えない!」
「終わりかの?ならばキノコ狩りの時間じゃ」
「いや~っ、収穫されちゃうノコ~!」
間合いを詰め腕を取って関節を極める。動けなくなってる間に確保完了。これで一人目じゃ、しかしこ奴は個性が無いと弱いのぉ
「なんにも出来なかった~、くやし~!」
「もう少し体を鍛える事じゃな、武道を始めることを勧めるぞい」
小森を確保し待っていると今度は宍戸が現れた。体のあちこちにウロコが刺さっている。ふむ鱗は負けよったか
「小森さんが囚われてしまいましたか。しかしこちらも鱗くんは捕らえました。あとは君を捕まえればこちらの勝ちですぞ!」
「かっかっかっか、お主にそれが出来るかの?さあどこからでもかかってくるがよいヒーロー、返り討ちにしてやるわい!」
宍戸が間合いを詰めようとこちらに進んだ瞬間に、逆に一気に間合いを詰め宍戸の目前で止まる
驚いている隙に握手の形で宍戸の手を握る
「うぉ!?・・・なんの真似です、個性封じですか?それとも和解のつもりですかな?」
「そんなつもりは無いわい。ほれ握りつぶしてみんかい力自慢」
向こうが手に力を籠める、それに合わせてこちらも技を仕掛ける
「力がっ!?」
宍戸がひざから崩れ落ち徐々に倒れていき、最後には膝をたたみ仰向けに寝そべった形になる
「これで終いかの」
「グゥ~・・・、動けない・・・」
動けなくなってる宍戸をそのまま捕縛。儂らの勝利じゃな
『ヴィランチーム、WI~~N!!』
「何も出来ませんでした・・・」
「儂の最初の動きに対応出来ていれば何とかなったかも知れんぞ」
「冷静に行動する為に元に戻って動いたのがまずかったと言う訳ですか・・・」
そのままみんなで地下のモニタールームまで行き講評を受ける
「今戦のベストは渋沢少年と宍戸少年だな!なぜだかわかるかい?」
オールマイトが結果に対しみんなの意見を求める
「そうね、確かに二人とも捕まえた渋沢に目が行きがちだけど、きちんと作戦立案、索敵、確保とすべてをこなした宍戸もよくやったんじゃないかな。鱗は馬鹿正直に攻めるだけで特に作戦も無かったし、希乃子は勝てないと思ったらいったん引いて宍戸を待てば打開の目もあったと思う」
拳藤が意見を上げる中、鉄哲も我慢できずに発言を始めた
「でもよっ!やっぱり俺は渋沢がすげぇと思うぜ!小森は瞬殺してたし宍戸にも力比べで勝ったんだからな!」
「それは違います。あれは力比べではありませんでした、体の力が抜けていったのです」
「なんだそりゃ?『無効』って動くのも無効にしちまうのか?」
「ありゃただの技じゃよ。柔術にはそういった技もあるんじゃ。どうじゃ、武術とはすごいじゃろう?」
「うおぉぉっ武術かっけぇぇ~~!」
鉄哲が吼え、若干周りが引きながら講評が終わり次の試合へとなだれ込む
儂らはモニタールームで観戦し試合が終わったら講評と作業を続け、最後の講評が終わり最初の集合場所まで戻った
「みんなお疲れさん!初めての実習にしては上出来だったぜ!じゃあ後は着替えて解散!」
それだけ言い残し、オールマイトは足早に去っていった
教室に戻ると今日の授業は終わりなので帰り支度を始める。予定の無いものはこの後集まって反省会をするそうじゃが、儂は辞退し家に帰って修行に精を出す事にした
不完全燃焼じゃ・・・