1話
あの世の役人に言われたように1歳のころからぼんやり記憶を思い出し、3歳になるころにはすべてを思い出した
運が良い事に生まれ変わった先は日本だった
ただ自分の居た世界の何百年か未来らしい。
大まかな歴史は一緒だったが人類はおかしな進化を遂げていた
どうやらほとんどの人間に『個性』という不可思議な力が宿っているらしい。
火や水を自由に出したり空を飛んだり、身体的に動物だったりと洋物映画みたいなやつが束でごろごろしてたりする。なんとも妙ちくりんな世界だ
初めて歩くトカゲ人間を見た時にゃ思わず「すげぇ~っ、トカゲ人間だー!」なんて声を上げて驚いた。その後爺さまに拳骨を落とされた。人の容姿をとやかく言うのはその人を傷つける場合があるから、直接的に言うのは駄目らしい
4歳になった頃に爺さまに連れられて個性を調べてもらいにいった。結果は『無効』という個性だった。
どうやら個性由来のものが一切効かないらしい。個性で出た火は熱くないし、個性で出た水は触れたそばから消えていく。後々分かったことだが相応にデメリットもあった。
まぁ色々差っ引いても武術家向けのいい個性だと思う
爺さまに個性を聞いたら、爺様は個性が無かった。
世の中には少数だか個性の無い人もいるらしい。爺さまからはむやみに人に個性を聞いたら駄目だと教わった
さっきからちょこちょこ出てくるこの爺さまだが本当の祖父ではない。
爺さまは町で小さな柔道場をひらいてるのだが、ある日道場の前に生まれたばかりの俺が捨てられていたらしい。朝稽古の最中に爺さまが気づいて、慌てて近くの警察署に連れて行ったらしいのだが、生まれたばかりの俺は爺さま(正確には爺さまの着ていた道着)から離れず、それにほだされた爺さまが俺を引き取ったそうだ。(よくやった当時の俺)
以来、爺さまと二人で暮らしている
爺さまの名前は渋沢三四郎(しぶさわ さんしろう)
実に惜しいっ!そこまで行ったら沢じゃなくて川でもいいだろうと思ってしまうのは、けして高望みじゃないはず。
俺は爺さまに渋沢四五六(しぶさわ じごろう)と名付けてもらった。
なんでも爺さまの父親は渋沢一二三(しぶさわ ひふみ)で、数字を続けてるらしい。
俺に子供が出来たら、男でも女でも六七(むつな)にしたいと言っていた。命名権を返せ。
非常に都合の良い事に、爺さまが柔道家なので小さい頃から稽古はスムーズに始められた。
小学校に上がるまでは、走り込みや柔軟、受け身や打ち込み、腕立てや腹筋・背筋等の基礎トレーニングを重点的に。
小学校に上がってからは、早朝に基礎、授業中は医学書などを使って人体の構造等を詳しく勉強。武術とは究極的に言ってしまえば、人体を効率よく壊す事。この知識はおろそかに出来ない。
そしてさすがに6年も費やせば、人体についてかなり詳しくなった。
帰ってからも修行三昧。小学生の時はただひたすらこの日常の繰り返し。
とてもじゃないが、精神年齢的に小学生と友達にはなれないし、一緒に遊びたい気分にもならない。授業を聞かなくてもテストで満点くらいは簡単に取れる。
そうして自ら進んで孤立していったのだが、子供は時に無邪気に、そして時に明確な敵意をもってじゃれついてくる。
敵愾心を持った輩を片っ端からぶん投げてたら、程なくして周りが静かになった。どうやら無視をすることにしたらしい。初めからそうして欲しいものだ。
修行を始めてから気が付いたことがある。
この世界特有の事象なのかもしれないが、肉体強化の成長率が非常に高い。
おそらく『個性』の出現に伴い、人体もそのように進化したのだろう。
面白い、益々修行に身が入る
そして進学し、中学生になった。
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儂は渋沢三四郎、御年70歳。自分で言うのもなんじゃが、こう見えて結構有名な柔道家じゃ。
格闘技は廃れていく一方だが、かといって全く需要がないというわけではない。
週に二度ほど地元の警察署に出稽古に行って指導しておるし、現役ヒーローに稽古を付けたこともある。
もし今もオリンピックが続いておれば、金メダルを何個も取っとたじゃろう。
生涯現役をモットーに今も柔道に精を出しておる。
時がたつのは早いもんじゃ。孫がこの間小学校を卒業しよった。
道場の前に捨てられておったあ奴を拾ってもう12年になるのか。
当時、58歳じゃった儂は、独り身で道場の後継もおらなんだ。
朝鍛錬で外に出たら道場の前に赤子が捨てられておった。
大慌てで警察まで行ったが、身元を証明するものもなく、それらしい出生届も無かった。結局親は見つからなんだ。そしてなぜか儂から離れようとせん。無理矢理はがすと泣き出す始末。それがとても愛おしく感じられた。これが子を持つ親の気持ちなのかと。しかしいかんせんわしも年じゃ、息子というよりは孫といったところか。
この子が成人するまでは寿命も問題無いじゃろうと言う事で、この子を養子にし四五六と名付けた。
四五六が3歳になった頃、自発的に稽古を始めよった。
何事も基本が肝心、子供にもわかりやすいように受け身や投げこみ、簡単な基礎鍛錬を教えたら毎日飽きもせず一心不乱になって繰り返し続けおる。かわいい
流石に小さな子に同じことばかりさせるのも飽きるじゃろうし、下手したら柔道を嫌いになってしまうかもしれんと思い、何か技でも教えようかと聞いてみたら
「基本は大事、ちゃんと出来るようになってからでいいよ」
と言いおった。
大人でも忘れがちになってしまう基礎の大切さを、この年できちんと理解しておる。
儂の孫は天才かもしれん。そしてかわいい
小学校に上がってからは、早起きして基礎鍛錬。学校から帰ってきたらひたすら稽古漬けの毎日。
誕生日(四五六を拾った日)に何が欲しいか聞いたら、意外にも医学書と答えおった。
医者にでもなりたいのかと尋ねたら、柔道をする上で人体の事について詳しく知りたいからと言うた。
やばい、わしの孫は本物の天才じゃった。あと孫かわいい
四五六が小学3年のころ学校から連絡があった。
どうやら集団いじめにあっていたらしい。
ほぅ・・・・・・・。
こりゃあ、いくら子供とは言えしっかり躾けんといかんのぅ・・・。
親も含めて、一人当たり骨の5・6本位なら問題にはならんじゃろう。
どれ、支度でもするかのぅ。
えっ、違う?もう終わっとる?四五六が自分で解決したと?
詳しく聞けば、最初は同級生からの悪質なちょっかいが原因だったらしい。
それを四五六がぶん投げたそうな。
そしたら次に友達数人で徒党を組んできて、それもまとめてぶん投げて、今度は其奴らの兄やら友達やらが十数人で襲い掛かって、まとめて返り討ち。
いずれの件も四五六からは手を出しておらず、手を出してきた相手のみをぶん投げたらしい。
けが人の数が多かったことで事案が発覚。校内の巡視カメラや聞き取り調査の結果、以上の事が判明したと。
学校からは、向こうの親と当該児童に厳重注意をし、反省が見られなければ退学案件に。
児童の将来もあるので、今回はそれで矛を収めてもらい、警察案件にするのは容赦願いたいと。
あと襲われて相手に怪我をさせた事に対しては、仕方のない事ではあるし十分理解もできるが、何人か骨折している者もいるので、手加減を覚えさせてほしいと。あと真面目に授業を受けてほしいと。
なるほどのぅ、まあそうじゃろうなぁ。
あ奴に勝てる小学生など想像もつかんわい。それに充分手加減もしとるじゃろう、本気だったら殺しておるわ。
しかし授業をしっかり受けとらんのか、どうせ稽古に熱が入りすぎて授業中に居眠りでもしておるんじゃろう。その辺は成績が落ちたら注意すればええかのぅ。
一応確認の為、四五六の学校のノートを見たら、人体の構造や軸の崩し方についてよくまとめられておった。
人体の急所一覧と、突いたときに起こる作用
構造的に起こる人体の反射
反射を利用してのバランスの崩し方
効率的な関節の外し方
等々・・
ほぅほぅ・・・
どうやら儂の孫は並の天才ではなく大天才だったらしい。なるほどこれは為になる。
どれ儂も少し勉強してみるかのぅ。やっぱり孫かわいい